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2016-11-24 19:49:33

来季のチーム編成も見えてきた年内最後のテストは野尻智紀がトップタイム

合同テスト・ルーキードライバーテスト

 この季節としてはまだ早い寒気が日本列島に流れ込んだ11月24日(木)。三重県鈴鹿サーキットでは全日本スーパーフォーミュラ選手権恒例の年内最終テスト、「メーカーテスト・ルーキードライバーテスト」が実施された。セッションは午前8時50分から3時間、午後1時から3時間、計6時間。1回目のセッションはダンプコンディションで始まったが、午後の2回目は天候が回復し、温かな陽射しに恵まれ、完全なドライコンディションでの走行となった。この6時間を通して、トップタイムを奪ったのはNo.40 野尻智紀(DANDELION RACING)。以下、僅差でNo.1 石浦宏明(INGING MOTORSPORT)、No.20 関口雄飛(TEAM IMPUL)と続いている。

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今回、テストに参加したのは、18台20名のドライバー。来季から新規参戦を発表したB-MAX Racing teamがテストに初参加したほか、ホンダのエンジンテスト車が走行。レギュラーチームでは、INGING MOTORSPORT、KONDO RACING、TEAM IMPUL、VANTELIN TEAM TOM’S、DANDELION RACING、NAKAJIMA RACINGがそれぞれ2台での参加となったが、もともとシリーズに1台体制で参戦しているTEAM 無限、KCMG、に加えて今回はチーム ルマンとREAL RACINGも1台で参加。ドライバーに関しては、今シーズンのレギュラードライバーを乗せたチームも多いが、KONDO RACINGが昨年の全日本F3王者のニック・キャシディと今年の全日本王者である山下健太を起用。チーム ルマンには大嶋和也、KCMGには中山雄一に加えて登録された小林可夢偉(中山は登録されていたものの結局ドライブせず)、DANDELION RACINGの41号車には伊沢拓也、ホンダのテスト車には牧野任祐が搭乗。B-MAX Racing teamは、午前中に小暮卓史、午後には佐々木大樹がステアリングを握った。また、このテストでは、各車に対して、今季スペックのスリックタイヤの新品が3セット、来季を見据えた新スペックの新品が1セット、それぞれ供給されている。

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 前夜雨が降った鈴鹿は、曇り空の朝を迎える。すでに雨は止んでいたものの、1回目のセッションが開始された午前8時50分の時点で路面はウェット。レインタイヤで走行すると、若干水しぶきが上がるようなコンディションとなる。そのため、序盤は各ドライバーともに、1分52秒~53秒台のタイムとなっていたが、そこから次第に路面コンディションが回復。開始から1時間15分ほど経ったあたりではトップタイムが1分48秒台、さらに1時間半ほど経過したあたりでは1分47秒台に突入してくる。その後は、レインタイヤで走るにも、スリックタイヤで走るにも難しいコンディションとなり、一時は全車がピットイン。そして、開始から約2時間半というあたりから、遂にスリックでの走行となった。

 ここで、まず1分40秒408と、この日初めて40秒台をマークしたのは、No.65 ベルトラン・バゲット(NAKAJIMA RACING)。これを皮切りに、No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)、No.18 小林可夢偉(KCMG)、No.10 塚越広大(REAL RACING)、No.3 ニック・キャシディ(KONDO RACING)、No.50 小暮卓史(B-MAX Rzaing team)らが続々40秒台に突入。さらに、セッションの残り時間が約10分となったところで、小暮が真っ先に39秒台を叩き出す。これを機に、No.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)、No.2 国本雄資(INGING MOTORSPORT)、No.16 山本尚貴(TEAM 無限)、可夢偉、バゲット、No.41 伊沢拓也(DANDELION RACING)、そしてセッション終盤からようやく走り始めたNo.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)らも次々に39秒台のタイムをマークした。

 しかし、チェッカーまでわずかとなったところで、さらにタイムを伸ばして、38秒台に入ってきたのは、キャシディ。続いて、塚越がキャシディのタイムを書き換える1分38秒628をマーク、今回のテストでは1回目のセッションしか乗らない予定の小暮が、ここでニュースペックのタイヤを真っ先に投入し38秒台に突入してくる。結局、チェッカーが出されたところでトップタイムとなったのは、塚越。これにキャシディ、小暮というトップ3。以下、山本、可夢偉、オリベイラ、ロッテラーと続いている。

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 1時間10分という短いインターバルを経て、2回目の走行が始まったのは午後1時から。昼休みには、青空がのぞき温かな陽射しも降り注いだ。その後は薄曇りの天候となったが、路面は完全ドライとなり、最初からスリックタイヤでの走行。開始から10分余りが経過すると、早くも一貴が午前中のトップタイムを上回る1分38秒341をマークする。また、山本も1分38秒439とこれに続いた。その後、開始から約40分というところでは、ロッテラーが今日最初に37秒台に突入。1分37秒796をマークしてトップに立つ。その直後、午後1時42分に、セッションは赤旗によって中断される。これは山本が2コーナーでコースアウトしたため。このマシンの回収が終わり、セッションが再開されたのは、午後1時51分だった。そこから20分ほどが経った、午後2時10分、赤旗前のトップだったロッテラーのタイムを破る1分37秒629を出してきたのは、伊沢。伊沢は、先月行われた最終戦での自身の予選タイムを2秒近くも上回る好アタックを早くもこの時点で見せた。その10分後には、チームメイトの野尻も1分37秒256と伊沢を上回り、2台揃っての好調ぶりを見せている。

 その後、セッションが折り返した午後2時32分には、この日2回目の赤旗が提示される。これはNo.05 牧野任祐(ホンダテストカー)がダンロップでコースアウトしたため。1回目のセッション終盤にトラブルに見舞われた牧野のクルマは、2回目のセッション開始から1時間余りというところで修復が終わり、ようやく走り出したところだった。そのマシンの回収が終わり、セッションが再開されたのは午後2時39分という時点。このタイミングで、No.7 大嶋和也(チーム ルマン)がニュースペックのタイヤを装着して、コースイン。またオリベイラ、一貴、塚越も従来スペックのニュータイヤでアタックに向かう。その後、セッションの残り時間が約1時間となったところでは、伊沢と野尻がニュースペックのタイヤを投入。伊沢が1分37秒397、野尻が1分36秒586という非公式コースレコードを叩き出す。また、これに続いてニュースペックタイヤでのアタックを行った国本が、伊沢のタイムをわずかに上回り、2番手に浮上してくる。

 その10分後、残り時間が40分となったところで、セッションはこの日3回目の赤旗によって中断される。これは、ロッテラーがヘアピン立ち上がりでスピン、コース上にストップしたため。このマシンの回収が終わると、セッションは午後3時25分に再開。チェッカー予定時刻は10分間、繰り下げられることとなった。だが、ここから立て続けに2回、赤旗が提示され、セッションは中断続きに。一度はスプーンのコース上に落下していたデブリ回収のため、またもう一度は、ようやくコースに戻った山本が、S字でスピンを喫したためだった。オフィシャルの手を借りて、山本が自走でピットに戻ると、セッションは午後3時41分に再開。いよいよ各ドライバーはテストの仕上げに入る。ここでまず自己ベストを伸ばしたのは、キャシディ。また関口が1分37秒080、塚越が1分37秒540、石浦が1分37秒452、ロッテラーが1分37秒514など、次々に自己ベストを更新。さらに、セッションの残り時間が10分余りとなったあたりからは、タイムアタック合戦が激しさを増す。

 ここで、それまでトップだった野尻のタイムを破ったのは、石浦。石浦は1分36秒474を叩き出してくる。続いて、可夢偉、国本、ロッテラー、山本が36秒台に突入。さらに、セッションの残り時間が2分を切ってから、次々にタイムが書き換えられる。その中で、石浦のタイムを1000分の18秒逆転する1分36秒456をマークして、総合トップタイムを奪ったのは野尻だった。以下、石浦、チェッカー目前にタイムを上げた関口、ロッテラー、国本、オリベイラ、可夢偉、塚越、山本。ここまでが36秒台をマークしている。またシリーズ未参戦のドライバーでは、昨年に続き2回目のテスト参加となったキャシディがトップ。これに、No.4 山下健太(KONDO RACING)、牧野、佐々木という順になっている。

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 次回、SFの公式合同テストが行われるのは、3月7~8日の予定。舞台は今日と同じく鈴鹿となるが、そこではどのチームに誰が乗っているのか。また、誰が速さを見せるのか。これからシリーズは3ヶ月余りのウィンターブレイクに入るが、その舞台裏ではまだまだ動きがありそうなだけに、新たな情報を楽しみにしていただきたい。

総合トップタイム No.40 野尻智紀(DANDELION RACING)
 今日は、いつものセットで走りはじめましたが、そこから色々試しました。今年、ストフェルと僕で、どのコースに行っても、同じようにセットアップの違いがあったんですけど、シーズン中は、なかなか思い切って彼のセットをトライすることもできませんでした。一方、エンジニアの杉崎さんも多分、試したいと思っていた所もあると思うので、僕が「これでいいかな」って思っている所から、少し違いがあったストフェルのセットアップの方向にさらに振ったりして、ストフェルのいいところ、悪いところが体感できました。僕としては、どちらも走れるイメージだったので、“使い時”をしっかり見ていきたいですし、セットアップに幅も出たと思います。あと、シーズン中の答合わせをしたような感じで、1個1個まだ定かじゃない部分を詰めて、正解を出して行きました。午後の中盤には、2017スペックのタイヤを試しましたが、この新しいスペックの方がタイムが出るんじゃないかと思いましたね。正直、あのタイミングで36秒5が出た時は、「え? そんなに出たの?」っていう。36秒5っていう数字だけを見て、ちょっと怖くなってきてしまったような感じでした。ビックリしちゃって。でも、それだけ踏んで行ったっていうことですから、グリップはしているんでしょうね。最後は今年スペックのタイヤでしたが、それを履くまでに路面が良くなった分、さらにセットアップで補えるように詰めて行きました。そのほんのわずかな違いで、コンマ1、コンマ2と変わってくるなっていうのは、チームとしても分かりましたし、僕も分かりました。細かい所ですけど、そのコンマ1を獲りに行くために、どうしたらいいかとか、こういうフィーリングだったらこうした方がいいんじゃないかっていうのが、また二つ三つ、僕の中で出てきたので、すごくいいテストになったかなと思います。最後にニュースペックを履いていたら35秒台に入っていましたね。って書いておいてください(笑)。僕は新しいシーズンのスタートがこのテストだと思っているので、いいスタートが切れたと思います。

総合4番手 No.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)
 今日の午前中は、乾きかけのコンディションだったし、余りテストをしても仕方がないかなと思って、路面が良くなるのを待って、余り周回はしなかった。レースウィークだったら、走るけどね。でも、一貴がそのコンディションの中で、ある程度テストをしてくれたから。午後からのテストでは、2種類のタイヤを比較したけど、新しいスペックはこれまでのものより、ものすごく良くなっていると思う。これまでの物よりコンマ5秒以上速いと思うし、全体としてグリップの幅も広いから、これまで以上にプッシュできるんだ。たった1周タイムアタックしただけで、ロングランした時にどうなるかはまだ分からないけどね。今日のテストでは、これまでよりももっとポテンシャルが得られるように、新しいセットアップを探っていたんだけど、悪くなかったよ。今年も冬のテストではパフォーマンスが良かった。空気密度が高いこの時期は、ダウンフォースも充分に得られているし、いつもいいんだよね。今回は、そこからシーズンを見据えて、いくつかのオプションを用意しておけるようにトライしたんだ。レーシングドライバーにとって、このクルマに乗るのは最大の楽しみ。SFのクルマで冬の鈴鹿を走るのは、最高の気分なんだよね。このクルマに乗って1年を締めくくれて良かったよ。

総合5番手 No.2 国本雄資(INGING MOTORSPORT)
 今日のテストでは、たくさんメニューがあったので、それを色々やりました。足回りや空力など含めて。本当はもう少し走りたかったんですけど、やらなくちゃいけないことはしっかり見られたかなと思います。本番のレースウィークとはコンディションが違うので、今日の状況に合わせてしまうと本番は厳しいでしょうけど、データも取れたし良かったです。また、タイヤの比較テストもやりました。僕は新しいスペックを入れた時、赤旗が出てしまったんですけど、ちゃんとアタックすれば、感触としてはあと1秒ぐらい上がるんじゃないかと思いました。一方、最後は今年のスペックでした。2種類で、やっぱり違いはありましたね。新しい方がグリップが高いと思います。僕は今年のタイヤにも特に不満はなかったので、新しいタイヤになったら、また色々と合わせなくちゃいけないところもあるでしょうし、まだまだ勉強中です。もう少し合わせ込みたかったんですけど、時間もなかったですし。ただ、何となく違いは分かったので、そこをもう少し合わせ込めば、ホントにコンマ5秒とか1秒近く上がるんじゃないかと思います。

総合7番手 No.18 小林可夢偉(KCMG)
 これまで開発車と8号車にしか乗ったことがなく、どこかほかのクルマでテストしたいというお願いをしていて、今回KCMGに乗る機会をいただきました。チーム監督の土居さんのことは前から知っています。僕と一貴がマカオに行って、2人で全損して帰ってきた時も、土居さんに担当してもらっていたので。それに土居さんはWECにも来ていて、一番顔を合わせているぐらいなので、チームにも違和感はなかったです。朝の走り始めはアクセルが戻らないというトラブルがあったんですけど、それ以外は問題なく走行できました。最初は今まで余り経験していないクルマのバランスから乗り始めましたね。今まで悩んでいたことが違う方向に行きつつあるようなバランスで、今日はセットアップできました。そういう意味では、僕が乗っていたバランスだけではないんだということを感じられましたよ。最後のアタックでは、トップタイムも狙えるという感覚がありました。ただ、デグナーが西日で見えなくて…。飛び出したくないから安全に行ったら、左に一車身ぐらい空いていて、“あれ?”ってなりました。また、最終コーナーで他のクルマに引っ掛かってしまった。それでコンマ3~4秒のロスがありましたね。ただ、クルマさえしっかりしていればそこそこ走れるんだなというのを実感できたので、自分自身、自信を持ってやっていけばいいかなと思います。今日のテストでは、手応えがあったというか、そんなに悪くなかったんですけど、逆にホントに速いクルマっていうのは、どんな感じなんだろうということも、ふと思いました。でも、1年の締めとしては、いいテストになりました。