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TOYOTA RI4A - ENGINE SUPPLIER

佐々木 孝博

トヨタテクノクラフト/TRD

1.第4戦・ツインリンクもてぎを振り返って
Q

2016年後期仕様のエンジンの組み立て~実戦投入はスムーズに進みましたか? レースの準備が世間一般の夏休み時期と重なったこともあり、いろいろ大変だったのではないかと思いますが。そこに至るスケジュールなども含めて振り返ってください。

A

仕様決定した部分から比較的早く、部品供給と組付けを行っていただきましたので、とてもスムーズに準備ができたはずでしたが、エンジン供給間際になって別のエンジンを分解したところ、「ある部品」に異常が見つかり、部品の不具合とわかりました。
レース用エンジンに組まれている当該部品がロットを調べると、スペアも合わせてほぼ全基に組まれており、1週間で全て置き換えることになってしまいました。最終的にはエンジン抽選日も遅らせていただき、ギリギリ間に合いました。

*ロット:ある製品(部品)を同じ素材、手順、条件などで一連に製作した始まりから終わりまでのこと。
*エンジン抽選日:スーパーフォーミュラのエンジンは、各サプライヤーが用意したものの中からどのユニットをどの車両に積むか、抽選で決めている。今回、後半戦仕様を投入するにあたり、この抽選が行われた。何らかの事由による積み替えの場合も同様に選択可能なエンジンの中から抽選する。

Q

予選、決勝を通して、新仕様エンジンのパフォーマンスについて、どう判断されていますか? 開発時にターゲットとしたレベルを達成していましたか? 前期仕様と比較しての向上点・良かったこと、まだ足りないな、と感じていることなども語っていただければと思います。

A

事前テストで確認できていたとおり、ドライバビリティは改善し、さらに細かい適合も可能になりました。
性能面ではホンダさんと相対的に見ても、もっとパワーアップが必要だと思っています。

*適合:エンジンの制御に関しては、あらかじめ準備し組み込んだ制御プログラムに、その時の気象条件や走らせ方に応じて可能な範囲で微調整を加え、より状況に合わせた特性に仕上げること。

Q

暑い上に雨も降ったもてぎのレース週末でしたが、エンジンおよびその周辺要素側に何か問題が発生した事例、車両はありましたか? あった場合、その内容についても教えてください。

A

天候や暑さに起因する大きなトラブルはありませんでしたが、#19オリベイラ選手の車両で変速ができないトラブルが発生しました。ステアリング交換はすぐにできるので試していただきましたが解消せず。後ほどチェックしたところシフト系の「ある部品」のトラブルでした。メーカー調査も終わり、原因も断定できましたが、非常に残念でした。

2.第5戦・岡山国際サーキットに向けて
Q

もてぎ戦での状況把握・分析から、岡山戦に向けてさらなる開発、改良を進められていることと思いますが、その内容について、差し支えない範囲で教えてください。

A

基本的にもてぎ戦から大きな変更はありませんが、先のテストでトライして良いデータが得られた要素がありますので、これは岡山で採用する予定です。

Q

前回の岡山戦(第2戦)とは異なる仕様のハードウェアになるわけですが、制御も含めて、「今回のエンジンは、岡山のコースのこのポイント、こんな状況で、こんな良さが出る(はず)、出したい」というポイントはどのあたりでしょうか?

A

レスポンス、リニアなトルク特性、ターボラグの減少は、第2戦の時からさらに改善しているので、低速からの立ち上がりと中間加速で、ドライバーから良いコメントを頂けるとうれしいです。

*レスポンス:「応答」。エンジンの場合はアクセルを踏み込んだ時にトルクが立ち上がる速さと強さ。それに加えて途中の変化、現れ方など過渡特性が「ドライバビリティ」。
*リニア:素直に、「直線的」に変化するか、の意。本来の意味は「線形」。つまりグラフに描いたときに直線で表される特性。
*ターボラグ:「ラグ」は遅れ。排ガスでタービンを回し、それに直結した圧縮機で吸入気を加圧するターボチャージャーはアクセルを踏み込んだ時、燃焼→排ガス増加が発生してタービンを加速するまで過給が立ち上がってこない。その反応の遅れのこと。

Q

今戦は、土曜日が1回の予選と110kmの決勝、日曜日が2ステージのノックアウト予選と190kmの決勝というフォーマットで行われますが、このスプリント・フォーマットの戦いをエンジン側から見ると、いつもの3ステージ予選~250kmの決勝と、負荷の加わり方などに違いが出る可能性はあるのでしょうか? とくに何か対応を考えられていますか?

A

とくに大きな違いはないと思います。

Q

岡山のコース特性、スプリントレース・フォーマットなどを考えた時、エンジンのパフォーマンスは「こんなところに現れる(はず)」というポイント、見どころを教えてください。

A

オーバーテイクが難しいサーキットなので、少々無理をしても攻める場面が見られるかもしれません。車両挙動が乱れたような場面でもアクセルコントロールでリカバリーがしやすくなってくれていれば、少ないチャンスでも前走車をパスできるかもしれません。

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