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「一度では解けない連立方程式」・・・開幕戦テクラボ目線

2018年5月8日

両角岳彦
未知数は二つ。「ソフトタイヤ」と「300km」

No.16 山本尚貴: ポールポジション。スタートではミディアム装着、フルタンク。32周完了で1ストップ。ソフトに換装、十分な量(40L程度)の燃料補給。
No.19 関口雄飛: 14番手グリッド。スタートではソフト装着、フルタンク。24周完了で1ストップ。ミディアムに換装、タイヤ交換作業時間の中で燃料補給(30L程度)。
No.5 野尻智紀: 3番手グリッド。スタートではミディアム装着、フルタンク。29周完了で1ストップ。ソフトに換装、十分な量(40L程度)の燃料補給。
No.1 石浦宏明: 6番手グリッド。スタートではミディアム装着、フルタンク。32周完了で1ストップ。ソフトに換装、残り周回分+α(35L程度)の燃料補給。
No.65 伊沢拓也: 4番手グリッド。スタートではミディアム装着、フルタンク。30周完了で1ストップ。ソフトに換装、十分な量(38L程度)の燃料補給。給油ノズル差し込み で1.8秒ほどロス。
No.17 塚越広大: 5番手グリッド。スタートではミディアム装着、燃料搭載量少し軽め(70L程度か。フルタンクと比べて19kgほど軽い)。19周完了と34周完了の2ストップ。それぞれソフトに換装、タイヤ交換作業時間の中で燃料補給(それぞれ30L軽度)。

 2018年開幕戦鈴鹿で最終的に上位6位までに入った各車のストラテジー(レース戦略)を要約してみると、それぞれにこんな選択をしていた。年間を通してミディアムとソフト、2スペックのタイヤを使い分けて戦うことになった緒戦をこうして振り返ってみると、レースをどう組み立てるか、その「正解パターン」はまだひとつには絞れない状況なのが浮かび上がる。
 もちろん今回は2スペックタイヤだけでなく、いつもより50km長い300kmのレース距離という“変数”もあって、その分だけストラテジー構築の幅は広くなっていた。今戦からこのウェブサイトに事前掲載している「TECH-LAB.流“深読み”レースシナリオ」で紹介したように、300kmを走るためには途中で燃料補給が必ず必要であり、その補給量、すなわち燃料補給リグのノズルを差し込んでいる時間がポイントになってくる。一般的な燃費ではタイヤ4本を3人のメカニックで交換するのにかかる時間よりも3~4秒長く燃料補給ノズルをつなぐ必要がある。これを削った分だけは燃費を稼がなければならない。
 その一方で、ソフトタイヤはミディアムタイヤよりどのくらい速く走れるのか、逆にどこまでの距離を走れるのか。この基本的なデータも見えないままのスタートになっていた。300kmを走り終わった今もまだ、確実なところは誰もつかめていない、と言っていいだろう。

いつものプログラムだけでは読めないタイヤ特性

 タイヤのパフォーマンス確認がそれほどに難しかった…という状況を軸に、今回のレースの流れを振り返ってみるべく、時計の針を金曜日にまで戻して話を進めよう。
金曜日の専有走行1時間の中では、多くの周回を重ねるドライバーは少なかった。このレースウィークに使えるタイヤは新品4セット(ミディアムとソフト各2セット)とシーズン前テストからの持ち越し2セット(やはり多くのチーム/車両がミディアム、ソフト各1を選択していた)。この最初のセッションではまだ路面コンディションも良くないし、翌日以降に確認したい内容も多いので、タイヤを温存することを選んだドライバー/エンジニアが多かったのである。でも塚越広大と小林可夢偉はセッション終盤に持ち越しのソフトを履いてクイックラップを試みている。
 その一方でこの週末は初夏を思わせる好天。この日も気温は24℃、路面温度は30℃を越え、同じ鈴鹿で3月上旬に行われた公式テストの時より10℃以上も上昇している。つまり事前テストでのタイヤ特性、ウォームアップやデグラデーション、摩耗などのデータは役に立たない状況に直面していた。
 一夜明けて土曜日。午前中のフリー走行では、多くの車両が昨年までと同じようなセッティング確認・微調整のプログラムに取り組んでいることがうかがえる流れだったが、その中に2種類のタイヤの使い方を考えようとするトライも見受けられた。例えば中盤で持ち越しのソフトを履いたのがTCS NAKAJIMA RACING、そしてTEAM IMPULの2台ずつ。逆にP.MU/CERUMO・INGINGの2車をはじめとする何台かは走行時間枠の後半でミディアムの新品を履いてコースに出た。予選Q1はミディアム装着が指定され、Q2、Q3でソフトを履くとすれば、そこでは新品を投入する。となると新品のうちミディアム1セットを投入してQ1のアタックのシミュレーションをしておこう、という考え方だ。逆にセッション終盤でクイックラップをトライする時にソフト(もちろん持ち越し)を履いた車両もあり、タイミングモニター上位に飛び込んできた野尻、山本はこのプランを選択。3番手には塚越が付けたがこちらはミディアム。どのタイヤをいつ使ったかが異なるので、各自の最速タイムだけを比較しても意味がない状況が生まれていた。

ソフトの“一撃”をどう引き出すか

 午後も遅めの時間帯に始まった予選、まずQ1は前述のようにミディアム装着が指定されているので、このタイヤにうまくセッティングとドライビングを合わせ込めるか、がテーマになる。いつものように20分の時間枠の中でまず1回のクイックラップ・トライ。この段階でタイミングモニターには上から山本、松下信治、N.カーティケヤン、福住仁嶺と並ぶ。そして残り7分というところで一斉にコースに向かう。その列の先頭に出た山本がまずトップタイム。それを松下が上回り、3番手には福住と、SF初参戦の若手2人がヨーロッパ仕込みの「一発」の集中力を見せた。とはいえトップから10番手までのラップタイムが1秒以内、Q1通過の14番手まででも1秒156という秒差の中に詰まっているという、SFならではのタイトな戦いが今年も始まった。
 Q2ともなればアタックは1回だけ、開始早々は誰も出て行かないのがいつものパターン。今回も残り9分というタイミングでまず山本、福住、塚越が動き出し、これに残りのメンバーが続いてコースインしてゆく。アウトラップ1周だけをタイヤのウォームアップに使い計測1周目からアタックに入るか、その周回を使って2周暖めてアタックに入るかでも、選択は分かれた。ここで早めにタイムを出したのが野尻、山本、福住、伊沢、石浦、そして平川亮。しかし平川のタイムは1分37秒台後半でけして十分とはいえず、もう1周のアタックを続けたのだがデグナーカーブでコースアウト、グラベルにスタックしてしまう。これで赤旗提示、走行中断。残り1分を切るこのタイミングにアタックラップを走っていたドライバーも多い。とくに松下は2周のウォーミングアップを走ってアタックに入ったところでの赤旗で、アタックのタイミングを失してしまう。
こうした赤旗中断の時にはアウトラップの後に1度のアタックを可能にする残り時間、鈴鹿では3分間を設定しての再開となる。ここで野尻、山本、福住はピットで待機。他の11台がコースインしてゆく。その中でQ3進出を可能にするタイムを刻んできたのが塚越、そして中嶋一貴。石浦はセクター1、2と自己ベストを記録したがその時点でQ2通過が明らかになってアタックをそこで止めている。ただ彼はこの時、2セット目の新品ソフトを投入しているので、Q3に向けては不利になってしまった。
そのQ3。残り5分でまず伊沢がピットを後にする。続いて野尻、福住、山本、塚越と次々にコースイン。このセッションでは7台ともに(8番手の平川はQ2の赤旗要因を作り自力でピットに戻れなかったので出走不可)アウトラップ1周でタイヤを暖め、計測1周目にアタックというパターンを選んだ。まず伊沢が1分37秒935を出すが、野尻が1分37秒040で上回り、さらに福住が1分36秒991、そのすぐ後から山本が1分36秒911。この3人が0秒129の中に入って、そこからは1秒近いタイム差が開くという結果になった。
 結果的に予選上位5番手までをホンダエンジン搭載車が占めたけれども、そのポールポジション・タイムは昨年の開幕戦鈴鹿で彼自身が記録したQ3のタイムより0.9秒遅い。気温と路面温度はほとんど変わらず、風の方向が今年は例年とは逆の海側から(ストレートが向い風、デグナーカーブやスプーンカーブの進入が追い風)だったが、一方、ソフトタイヤによるラップタイムの寄与は1秒かそれ以上あると見込まれているので、何か他にもラップタイムが伸びない要因があったと見るべきだろう。昨年の予選1・2・4番手はトヨタエンジン搭載車であって、コースレコードも記録している。その1年前と比べると中嶋も石浦も1秒以上の遅れを喫する状況だった。遅れ幅としてはホンダ勢のほうが少なかったわけだ。

ソフトのレース適性を確かめる最後の機会

 決勝レースを午後に控えた日曜朝のフリー走行。この気象と路面の両方の状況に対してソフトタイヤがどのくらいのグリップとその変化(いわゆるデグラデーション)、そして耐久能力を示すかを確かめる最後のチャンスだ。
この30分間をソフトで走り続けたのは、福住(17周)、山本(15周)、国本(15周)の3台。2018年仕様のソフトは、軽量化のためにトレッドゴム層の厚みを減らしているので、その使用限界はラップタイムの低下(デグラデーション)よりも摩耗限界で決まってきそうだ、と横浜ゴムのエンジンニアは語る。その視点からすれば鈴鹿のレースで20周かそれ以上は走れそうだ。一方、グリップ=ラップタイムで見ると、おそらくフルタンクで走り始めた福住を例に取れば3周目に1分41秒5、17周走って1分43秒6。でも平川は走行開始から4周目に1分40秒17、7周走って履き替えた石浦はすぐに1分40秒4を出している。彼らのミディアム装着時のラップタイムと比べると状態の良いソフトであれば1.5秒ほど速そうだが。燃料搭載量、すなわち車両重量と、何を狙って走っているかで、ラップタイムは変動するので、ソフトがどう使えそうかはまだまだ見えてこない。
 と、こうした状況でこの記事の冒頭に記したスタートの瞬間を迎えたのではあった。

安定して速いミディアム、走らせ方が難しいソフト


 
 ここからは、主だったマシン+ドライバーのラップタイム推移とタイム間隔・順位変動のグラフ、そして各車のピットストップによるロスタイム(インラップ+アウトラップからその前後2周のラップタイムを差し引いた時間)というデータを確かめつつ読んでいただければ、いろいろなことが少し具体的に“見えて”くると思う。私自身は映像で捕えられていた範囲で、静止時間・燃料補給リグのノズル接続時間も手計測してみたので、その数値も含めて分析を試みようと思う。
 まず優勝した山本の場合。フルタンクでスタートしてからミディアムタイヤで走った前半のペースが群を抜いていた。これが直接の勝因である。少なくとも「ピットウィンドウ」が開く、すなわちそこでフルタンクにすれば300kmのレース距離を走りきれると考えられた16~17周目までは、後方につけるミディアムタイヤ装着グループよりも毎周ほぼ1秒速く走った。これでレースも半ばを過ぎるところでは同じ戦略を採る福住に対して15秒、野尻、伊沢に対しては20秒以上のアドバンテージを築く。ピットストップもフルタンクの燃料を少し余した32周完了時で、燃料補給ノズル接続時間も18秒と補給量には十分に余裕を持たせ、タイヤ交換も急がず確実に完了。山本をコースに送り出している。

 問題はそこから先。レースの後に優勝車両担当のトラック・エンジニアをお迎えするのが恒例になっている「TECHNOLOGY LABORATORY」トークショーで阿部和也エンジニアはこう語っていた。「ソフトに履き替えてからペースが上がらず、(関口に)抜かれることはないと思いましたが、ちょっとヒヤヒヤしました。予選の『一発』はドライバーもがんばってくれて、Q2からQ3へ、常識的な範囲のアジャストで対応できました。でもソフトを履きこなせていないのは間違いない。次戦に向けた課題です」。
 同じタイヤ戦略で、山本と同じタイミングでピットストップした石浦は、燃料搭載量が軽くなったピットイン直前の数周にペースを上げ、ソフトに履き替えたところでその“一撃”を引き出して山本より0.5~1秒ほど速い周回を4周ほど続けてみせたが、その後は前の野尻に追いついてペースを押さえられてしまう。
その野尻は、29周完了でソフトに履き替えてコースに戻った後は7~8周にわたってそれまでのミディアムより明らかに速いタイムを続けている。何よりもスタート直後の加速が鈍く、7番手までポジションを落としたことがレース運びを難しくした。レース距離の3分の1を経過したあたりでいったんペースが落ちて順位をさらに落としたりもしたが、その後で復活してきたので、これはタイヤ・コンディションなどの影響だったようだ。
 そして最前列右側のグリッドから2番手をキープして走り続けた福住。スタートしてからミディアムのグリップが落ち着いたあたりから、前を行く山本に対して毎周0.6~1秒ほどペースが遅く、塚越に抜かれてからは後続のミディアム装着勢と同じようなラップタイムを続けた。山本より1周速くピットストップしたがここで停止位置を少しオーバー、それもあってか燃料補給ノズルを差すのに少し手間取るなどして、ノズル接続時間は15秒弱。そしてアウトラップでパドルシフトのトラブルが発生、ソフトでどう走れたかを確かめることはできずに終わった。

燃料補給時間を切り詰め、燃費走行で得た2位表彰台

  一方、同じ1ストップでもソフトでのスタートを選んだ一人が関口。しかも彼(とチーム)は他のソフト→ミディアム組とは異なるストラテジーを選んでいた。それは「タイヤ4輪交換に費やす時間以上の燃料補給はしない」。ピットでの静止時間13.8秒、その中で燃料補給ノズルをつないでいた時間12.6秒。1ストップを選んだ他の多くのマシンの燃料補給ノズル接続時間は短くても15秒、16~17秒が多かったので(ということは静止時間は17~18秒)、関口のマシンに注ぎ足されたガソリン量は他よりも6~8L少なかったことになる。大ざっぱな計算だが、彼は300kmのレースを2.46km/Lの燃費で走りきっている。昨年後半戦のF.ローゼンクヴィストには及ばないにしても、現状のSF14+NREで鈴鹿を走った燃費としては上限に近いだろう。

  もう一点、スタートからソフトを履いていた関口だが、前半3分の1あたりまでのラップタイムは少し前を行くミディアム+フルタンク勢よりもさらに遅い。ピットストップはレースも半ばの24周完了時であって、そこまでソフトが全摩耗しないように、タイヤを傷めないようなドライビングを徹底したのだろう。ドライバー+エンジンニアの判断として、ソフトの特性をつかめていない、という実感もあったのではないだろうか。
それに加えてアクセルペダルの踏み込みに対してエンジンへの燃料供給を減らす「エコノミー・モード」を選んでいたはず。ミディアムに履き替えた直後には一度その走り始めのグリップを使って7~8周速く走り、そこからまたペース・コントロールして燃料残量の見通しもついたであろう45周目以降は上位陣では最速のペースに上げた。ここでソフトとの相性に苦しむ山本に対して1周で1.6秒も速く走り、10秒以上あった間隔をみるみる詰めてゆく。しかし残り3周では山本も踏ん張り、1.7秒差まで詰め寄るのが精一杯だった。2位の表彰台に歩みを進める関口が憮然とした表情だったのも、彼のドライバーとしての本能が不完全燃焼に止まった感情の現れのようにも見えた。

燃料重量を削り、ソフトの“一撃”を二度使えば。。。

 こうした中であえて2ストップ作戦を選んだドライバー/チームもいた。その一人が塚越であり、彼を担当する田坂泰啓エンジニアはかつて同様の奇襲を成功させた実績の持ち主だ。スタートはミディアムだったが、途中2度のピットストップともタイヤ4輪交換に要する時間の中で燃料補給ノズルをつなぎ、合わせて62Lほどを注ぎ足している。ということはスタート時の燃料搭載量はフルタンク勢よりも26L、19kgは軽い。これを活かしてまずスタートダッシュで4番手に、そして1周目終わりのシケインで伊沢を、さらに3周目に入るストレースで福住を切れ味良く抜きさって、山本の背後に迫る。しかし山本も他より一段と良かったミディアムでのペースを使って防戦。塚越は結局、2番手のままレースを3等分した形の最初のスティントを終えてピットに滑り込むことになった。「タラレバ」ではあるけれども、車両重量差が大きい序盤に山本の前に出られていたら、優勝は難しくても表彰台に上がるところまで進出できてきた、という計算にはなる。1セット目のソフトに履き替えてコースに戻ると他を圧倒する速いラップタイムを刻んだが、それも先行する車両に追いつくところまで。再びソフトに履き替え、燃料も追加して戻ったところは9番手。この3スティント目は2台をかわし、また前を走っていたドライバーのピットストップもあって順位を上げたが、常に前にクルマがいる状況で5位まで戻ってレースを終えている。

  他に、山下健太が12周完了という早いタイミングでピットイン、静止時間17秒、燃料補給ノズル接続時間15.7秒と、その状況ではぎりぎりまでガソリンを注ぎ足したもののやはり燃料は足りず、37周完了で2度目のピットストップ。ミディアム→ソフトのタイヤ交換も含めたフルサービスを行った。
 18周終了でピットストップ、タイヤ交換終了と同時に燃料補給ノズルを引き抜いた国本雄資もまたこれでは走り切れず42周終了でピットに入ってスプラッシュ。
もう一人、平川もピットウィンドウぎりぎりの17周終了で入り、関口と同様にソフトからミディアムに履き替え、その交換作業時間が終わると同時に燃料補給ノズルを引き抜いた。静止時間は14秒強。序盤も関口より速いペースで走っていただけに燃料が足りなくなる可能性は高かった。7周後にピットストップした関口のアウトラップで追いつくやすぐに抜きにかかったのは、2ストップ目がありうるという戦略上のプレッシャーがあったのかもしれない。いずれにしてもチームインパルの2人ともにピットストップのロスタイムが短く、コースに戻ってポジションが上がったのは、前後に空圧作動のジャッキを使うなどしたからではなく、燃料補給ノズル接続時間を他よりも数秒も切り詰めたから、だった。

 ちなみにインパルがフロントに空圧持ち上げ・ウィング接触による自動作動のジャッキを導入したのは昨年後半戦であり、今回はトムスも似た仕掛けを使っていたのを確認している。他に、人力作動ジャッキを使っているチームの2、3も含めて、ピットにマシンが滑り込んでくる時にフロントジャッキを保持するメカニックがいない、すなわちドライバーがクルマを停めるのに失敗した時にジャッキが跳ねられる状況になっているのが、いささか気がかりではある。前述のように今回は福住が数10cmだがジャッキをノーズで押してしまい、移動しつつ上げる担当のメカニックが引き戻したことでわずかな時間をロスしている。あえて停止→リフトまでフロントジャッキに保持者を付けているチームの中には、そうしたリスクを考え、実際の作業時間にほとんど差が出ないことも確認しているところもある。

ソフトをどう使うか、その“定番”確立はまだこれから

  こうして実際のレース展開、ピット作業の内容、それを計時データでも確認しつつ読み解いてゆくと、今回は「ソフトタイヤの特性がつかめない」と「300kmを走り切るための燃料量」の二つが、これまでにない“変数”として作用していたことがはっきりと見えてくる。いつもより50km、2割も長いレースが、最初から最後まで緊迫感にあふれ、観る側も1時間半にわたって集中したまま楽しめたのも、ここまでに整理してみたような“綾”が次々に、途切れることなく現れたからだ。
そして、この300kmを走り終わっても、ソフトタイヤのグリップがどう現れるか、どう変化して、どのくらい走れるのか…は、未だ「未知数」のままのように見える。状況分析と最適化に優れる日本のレースチームが、こうした内容を把握すれば、レース戦略はあるパターンに落ち着いてゆく。それがこれまで何度か見てきたパターンなのだが、我々観戦者の側からはまだ何戦か、ドライバーが、そしてエンジニアたちが、未知数に取り組む状況を見守りつつ、あれこれ推測する楽しみが続きそうである。

「トップ8+松下のラップタイム推移」

上位8位までの入賞者・車ともう一人、2番手スタートから表彰台県内を走り、エンジニアリング・トラブルがなければ…と思わせた福住を加えた51周のラップタイム推移。2ストップ作戦を選んだ塚越が、スタートから、そして2スティント目と、燃料搭載量の軽さがアドバンテージになる状況で、他より速いラップタイムを刻んだことがよくわかる。序盤、彼を押さえ込んだ山本は、他のミディアム+フルタンク勢よりも格段に速いペースで走り、前半1/3で十分なリードを築いた。逆に2位入賞の関口はソフトを履いていた前半、とくに15周目までがミディアム勢よりも遅い。燃料使用を押さえるエンジン制御マップを使い、摩耗予測が立たないソフトタイヤがどこまでもつか、探りながら走っていたことがうかがえる。ミディアムに履き替えた後半、ペースを抑えていた10周ほどを速く走っていれば…と思わせるが、おそらくそれをやると燃料が足りなかったはずである。石浦のミディアム終盤とソフトに履き替えてからの速さは、さすがに「ここは」というポイントを外さないチャンピオンの戦い方。予選で1ラップの速さ・集中力を見せた福住だが、レースでのタイヤの使い方などは日本で走り込んだドライバーたちの経験値に追いつく必要がありそうだ。これは松下も同様。

「周回ごとの順位変動」

毎周の計時ラインの通過時刻から、優勝者・車を基準に各車の差を計算し、それを周回毎にプロットしてゆくと、このようにそれぞれの間の差を表しつつ順位変動を追うグラフになる。個々のラインが急に折れて落ち込んでいる周回はピットストップ(やトラブル)、逆に優勝者に対して上昇する周(今回は32~33周目)は、優勝車両がピットストップしたことを示している。最終盤に山本と関口の差が一気に詰まったこと、塚越がスタート、1回目と2回目のピットストップそれぞれの後に順位を上げていることなどはすぐに見て取れる。とくに塚越は序盤で山本の前に出るチャンスがあったことを考えると、そこでトップに出て後方との時間差を広げていれば、後半のラインの位置ももっと上になったはず。福住はソフトに履き替えてからのペース、他との相対差が見てみたかったところだ。終盤で山下がタイヤ交換+燃料補給、国本が燃料補給のためにピットストップして順位を下げているが、最初の補給量を考えるとやむをえない。

「ピットストップによるロスタイム」

ピットストップに入ってくる周回(インラップ)と、コースに戻った周回(アウトラップ)の所要時間を足し、その前後のラップタイム2周分との差を求めると、ピットレーンを走行し、作業のために静止、そこからピットアウトしてタイヤが暖まるまでにどれだけのロスタイムがあったか、が見て取れる。全車の正確な所要時間を計測できていないのでここには記していないが、映像が捉えた範囲で静止時間、燃料補給ノズル接続時間も手計測してみた。今回はレース距離が300kmだったので、1ストップ作戦だと燃料補給時間が4輪タイヤ交換にかかる時間よりも3~5秒長くなる。トータルロスタイムが42~44秒の場合は、タイヤ交換に要する静止時間(約14秒)しか止まっていない、すなわち燃料補給ノズル接続時間がそれよりも短いピットストップであることを示している。その1ストップで走りきったのは関口だけ。他より作業静止時間を短くすることでコース上の順位を上げようという戦術を選んでいたのだ。

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