2011年シーズンの開幕を間近に控え、フォーミュラ・ニッポンを運営する株式会社日本レースプロモーション(JRP)の白井裕代表取締役社長に、今季の見どころやレースへの施策などを聞いた。
−フォーミュラ・ニッポンの2011年シーズンについてですが…。
白井裕 株式会社日本レースプロモーション代表取締役社長
白井裕JRP社長(以下、白井) 最初に、このたびの東日本大震災で亡くなられた方々に深く哀悼の意を表すとともに、被災された地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます。そして、復旧、復興にご尽力されている皆様に敬意と感謝を表すると共に、被災地の一刻も早い復旧、復興を祈念しております。
フォーミュラ・ニッポンでは、震災の影響で今季の開催スケジュールが変更となりました。先に発表した新たなスケジュールのように、開幕戦は5月14、15日に鈴鹿サーキットで行います。まだまだ日本自体が厳しい状況ではありますが、良いレースを行い、フォーミュラレースの持つ力強さを通じて、皆様が元気に、笑顔になっていただけるよう、JRPはじめフォーミュラ・ニッポンに関わる全員でがんばってまいります。
−では、改めて今シーズンの見どころなどお聞かせください。
J.P.デ・オリベイラ選手
白井 私自身も本当に楽しみなんですよ。なにより、昨シーズンより参加チーム、選手が増えたことで、より迫力も興味も増していますからね。チャンピオンシップの中心になるのは、やはり昨年のドライバーズチャンピオンであるJ.P.デ・オリベイラ選手(No.1 TEAM IMPUL)、そして彼とタイトルを争った小暮卓史選手(No.32 NAKAJIMA RACING)やアンドレ・ロッテラー選手(No.36 PETRONAS TOM'S)でしょう。しかし、平手晃平選手(No.2 TEAM IMPUL)、大嶋和也選手(No.7 Team LeMans)、山本尚貴選手(No.16 TEAM無限)、伊沢 拓也選手(No.40 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)など若手も経験を積み、今年はタイトル候補と言えるのではないでしょうか。
そして、今シーズンは新チームが参戦し、ルーキーが多い点にも注目してください。
−確かに新しいチームや新人選手は楽しみですね。
白井 新たに参戦するチームは、全日本F3選手権で活躍してきたLe Beausset Motorsports(ル・ボーセ モータースポーツ)です。
嵯峨宏紀選手ドライバーの嵯峨宏紀選手(No.62)も昨年Le Beausset MotorsportsからF3に参戦して2勝。注目のパッケージです。
新人ドライバーでは、中嶋一貴選手(No.37 PETRONAS TOM'S)も注目してほしい。フォーミュラ・ニッポンは初参戦なので“ルーキー”なのですが、F1を経験してきている選手だけに、皆さんも大いに期待していることでしょう。そして、彼の弟である中嶋大祐選手(No.31 NAKAJIMA RACING)も今季が初参戦。ふたりの父である元F1ドライバーの中嶋悟監督(NAKAJIMA RACING)と共に早くもマスコミに取り上げられる話題の存在です。
中嶋一貴選手
彼らを含め、今日現在で6人のルーキーが参戦します。昨年の全日本F3選手権Cクラスチャンピオンの国本雄資選手(No.33 Project μ/cerumo・INGING)、同じくNクラスチャンピオンの小林崇志選手(No.10 REAL RACING)。そして、実力ある挑戦者がそろっており、歴戦のドライバーたちを脅かす可能性も十分にあるでしょう。彼らの活躍にもご注目ください。
−昨年の最終戦は2レース制で、とても好評でした。今季は新しい試みはありますか?
白井 今季は、震災の影響で開催スケジュールが当初から変更されました。今シーズンのカレンダー変更については、4月7日付で発表させていただいておりますが、どの大会でも均質で、競技性の高い、楽しいレースをご覧いただけるよう努力いたします。
昨年の最終戦で実施した2レース制は、確かにご好評を得ました。今季も行いたいと考えております。ただ、今季の最終戦がツインリンクもてぎに変更されました関係で、現在サーキットと調整しておりますので、こちらも発表までお待ちください。
スポーティング・レギュレーション(競技規定)の改訂では、昨シーズン中に課題とされました“ノックアウト予選が途中で中断した場合の不公平感”を無くすようにいたしました。これで参戦するチーム、ドライバーも予選から思い切って走れるはずです。観戦の皆さんもぜひ予選から注目してください。
−2012年より使用するという“System-E(システムE)”について教えてください。
白井 フォーミュラ・ニッポンでは、2012年より新システム“System-E(システムE)”を全車に搭載する予定です。これはエンジンに加え、専用バッテリーをエネルギー源とするモーターをギアボックスに装着するものです。
補助動力としてモーターを使用することで燃費の向上がなされ、環境への配慮に繋がります。また、追い越し時やコーナーでのパフォーマンスアップにもなり、レースに新たな変化、楽しさを追加できるでしょう。
モーターは全車同じものを使いますが、バッテリーに関してはチームや提携メーカーにより自由競争となります。バッテリーはHEV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)などに使用され、これからの自動車技術においてとても重要な部品です。フォーミュラ・ニッポンという厳しい環境で開発することで、自動車産業にも貢献できると考えています。
震災の影響で変更もあるやもしれませんが、2011年シーズン途中よりテストを開始する予定です。こちらもぜひご期待ください。
System-E 概略図
−また、2012年には海外でのフォーミュラ・ニッポンの開催を検討されているとか。
白井 2012年にはシンガポールの新設サーキット、SGチャンギにてアジアラウンドを開催する予定です。
モータリゼーションの発展著しい東南アジアで、アジア最高峰のフォーミュラレースであるフォーミュラ・ニッポンを開催する。これをきっかけに、この地域のモータースポーツの振興、そしてモータースポーツを愛好する方たちにとって高いレベルの目標としてもらいたいです。また、日本のファンにも新しいコースでのレースをお見せできるでしょう。楽しみにしていてください。
−では、最後に開幕を楽しみにされている皆さんに一言お願いします。
白井 繰り返しになりますが、モータースポーツは、中でもフォーミュラレースはスピード感と迫力のある力強いレースです。また、参加するドライバーたちも他のスポーツに負けない素晴らしいアスリートです。我々は、このレースをしっかりと運営することで、ファンの皆様、日本の皆様に感動と興奮をお届けしたい。
そして、今、大きな災害で元気や笑顔が減っている日本を大いに盛り上げていきたい。さらに海外の方々にもフォーミュラ・ニッポンを通じて『日本は元気だ。モータースポーツもこんなに盛り上がっていて、日本の自動車文化・産業はがんばっているんだぞ!』と言うメッセージを伝えていきたいです。
大変な始まりとなった今シーズンですが、我々フォーミュラ・ニッポンは、よりよりレースを皆さんにお見せできるようがんばってまいります。ぜひサーキットで、テレビで、また雑誌、新聞などで観て、楽しんで、選手やチームの応援をしていただければと思います。