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2014-10-02 00:00:00

SUPER FORMULAを支える『中の人』たち

春那の連載インタビュー 第4回「鈴木隆史(レースディレクター)インタビュー」

スーパーフォーミュラ・ナビゲーターの春那美希です。
スーパーフォーミュラの「中の人たち」に迫るこの企画。

レースにバトルやアクシデントは付き物!!
でも、今のペナルティじゃないの?とか、このタイミングでセーフティカー入った!って思う事ってありますよね!
それって誰がどの様に決定しているのか…
今回は、それに重要な役割を果たしておられるスーパーフォーミュラのレースディレクター鈴木隆史さんに迫りました!


鈴木隆史レースディレクター(以下、鈴木RD)は2枚の写真をお持ちになられました。最初の一枚がこちらです。

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鈴木RDこの写真はね、2006年F1日本グランプリの時、鈴鹿サーキットの旧コントロールタワーで撮った写真なんですけど、F1が2007年から5年間は富士スピードウェイで開催される、鈴鹿にはもう戻って来ないかもしれないという風に聞いてたんですよね。5年後に戻ってきたとしても、もう世代交代のタイミングかなと…。ということで、この年でF1日本グランプリの競技長を辞めることに決めたんです。そこでチャーリー・ホワイティングさん(FIAのF1レースディレクター)とハービー・ブラッシュさん(F1オブザーバー)が私のところにやって来て、「長い間お世話になったので、これをあなたに贈ります」と言って、日本グランプリに参戦していたドライバー全員とFIAのデレゲート他FIAの要職の方々が現地でサインしたパネルを渡してくれたんですよね。その時の写真です。

春那F1日本グランプリが初めて鈴鹿で開催されたのが1987年で、2006年までずっと競技長をお勤めになられたのですか?

鈴木RD最初は矢吹圭造さんという方が競技長をやっておられました。ボクは1990年代前半から2006年までやらせていただきました。ちなみにチャーリー・ホワイティングさんは1997年からレースディレクターを担当されています。チャーリーはもともと技術畑の人でね、最初の頃はクラッシュとかが起こると顔が真っ青になったりしていたんですよ…余談ですけどね。それからずっと現在までやってらっしゃるわけですよ。彼はとても賢い人だなという印象を持っています。

春那F1日本グランプリの競技長をお勤めの当時はどんなことをお考えでしたか?

鈴木RDやはり「ジャパニーズ・グランプリ」なので、マーシャルさん含め、「日本人ここにあり!」という大会にしたいと思っていました。だからマーシャルさんの動きについては、レスキュー活動を含め相当訓練しましたね。

春那たとえばどういった訓練でしょう。

鈴木RDF1を始める前はね、レースカーが何らかのトラブルでコース内で止まっても、コースマーシャルが現場に急行し、安全な場所に撤去するということはあまりなかったんです。やはり危険を伴いますし、怖いですから…。
そこで、コース内の監視ポスト、例えば常設の1番ポストと2番ポストの間に「1.5番ポスト」という臨時ポストを設けてマーシャルを配置し、1番ポストから2番ポストの範囲内でレースカーが止まった時にはすぐに駆けつけ、撤去を行うようにしたのです。そのために、撤去作業中のマーシャルはどこを見ながら作業をするか、どうやって迅速に撤去を行うか、撤去作業を行っている現場の直前のポストなどでの黄旗対応をいかに迅速かつ明確に行うか、コントロールタワーとの相互の連絡をいかに的確に行うか等々、安全を確保しながら素早い作業を行う訓練を繰り返しました。

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春那今では鈴鹿のオフィシャルさんと言えば、作業が速いことで世界的にも有名ですよね。

鈴木RDそれはね、やはりF1をやってきたおかげだと思います。
話を写真に戻しますけど(笑)、自分がやって来た中での宝物ですね。シューマッハ、アロンソ、ライコネンもいるしね。

春那5年間は鈴鹿で開催されないといったお話を伺ってこの写真をあらためてみると、とても切ない写真ですね。

鈴木RDボクはね、「ヤッター!終わった!」でしたよ。

春那どちらかと言うと「やりきった感」のほうが強かったのですね。

鈴木RDそうなんですね。大切な宝物です。


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春那もう一枚のこの写真は古い写真ですね。

鈴木RDこの写真はね、F1が開催される前、私たちが大変お世話になった方々と当時の歴代の競技長が写っています。鈴鹿サーキットでのF1初開催前に当時のコントロールタワーを建て替えるというので、みんなで記念写真を撮ったんですね。懐かしい方々が皆さんいらっしゃる。

春那この当時は、鈴木さんは何をおやりになっていたのでしょう。

鈴木RD当時はね、競技長、副競技長をやったりコース委員長をやったりしてまして、レースコントロールを担当していましたよ。
レースのオフィシャルの皆さんは、ごく一部の方を除けば別に職業を持っていて、レースのたびに集まるという形なんですね。鈴鹿に関して言うと、サーキット走行ができるクラブ組織があって、それに所属している方々を中心にオフィシャルやマーシャルをやってもらったりしてるんですね。ボクも本業は別の仕事を持っています。

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春那ある意味ボランティア的な関わり方をされている中で、とても大きな、重要なレース大会の競技長や、レースディレクターを担当されるというのは、とても大きな決断が必要かと思うのですが。

鈴木RD鈴鹿サーキットで2009年にF1日本グランプリが再開され、再び競技長となりましたが、その時にね、後継者のためにマニュアルだとか、FIAとの会議資料だとかをまとめて、もう一度作り直していたんですね。2010年は、経験者として副競技長に就いて、その年のF1の競技長をサポートしたりもしていました。その頃、当時のJRPの方々から、フォーミュラ・ニッポンを手伝ってもらえないか、というお話を頂いたんですね。ボクはもう引退しようと考えてたんですけど、フォーミュラ・ニッポンなら今までやって来たことを活かしてやれる、と判断したんですね。当初はスポーティングレギュレーション(競技規則)を担当することになっていたんだけど、ボクがJRPでレースディレクター的な仕事をしているのを見たJAFさんが、翌年の2010年に「これを機会にレースディレクターのポジションをつくろう」ということを決められたんですよ。

春那そのJAFの規則書には第44条に、「シリーズ戦における競技/ジャッジの平準化」の重要性について書かれていますね。

鈴木RDレースという競技の運営に関わる判断は、基本的には各サーキットが選任する大会競技長に委ねられています。ボクの立場は、シリーズを通した一貫性の中で判断し、大会競技長と協議し、競技長が迅速に判断できるようにサポートすること。サーキットによって判断にばらつきが出ないよう横串を刺すイメージですね。それが「ジャッジの平準化」に繋がると思っています。

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春那とても難しいお立場だと感じます。

鈴木RD最初の頃はね、夜10時、11時頃まで各サーキットの競技担当の方々と議論することがザラにありましたね。今は夜7時にはご飯を食べられるようになりました(笑)。

春那JRPとしての平準化基準を説いていったわけですね。

鈴木RDレースには大小含め、いろいろなトラブルがあります。レースディレクターがいない頃は、JRPはある意味外野として何時間もレース運営に関わる議論を眺めていた。そこに公式のスタッフ(JRPのレースディレクター)を送り込むことで横串も刺さるし、判断が早くなる。それが重要な事だと思っています。スーパーフォーミュラのレースディレクターの役割というのは、今まで主催者ごとに個々に判断していたものを、実質一貫性を求めるために「判定」「運営」「手順」「レギュレーションの解釈」「ルールに書いていないものについての判断」について助言する、ということなんですね。

春那前のレースのことも全て覚えてらっしゃる?

鈴木RDお見せしてもいいけど、毎戦レポートを書きます。細かく時系列で書いてあるので、もしかすると記者の方々のレポートより詳しいかもしれませんね(笑)。でもそれは自分のためでもあるんです。次の年のため、周りの人のためなんですね。

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春那ちょっと別の質問になりますが、セーフティーカーのタイミングって難しくないですか?

鈴木RDボクが初めてセーフティーカーが運用されるのを見た時には、とても理不尽に感じましたね。だってタイム差がなくなってしまうわけだからね。
でもね、例えばプロモーションの観点やレースを判りやすくするという観点から見ると良い発想だと思いました。
質問は「どのタイミングで出すか」でしたよね。それは、赤旗でレースを中断することなく問題を解決可能と判断した時、あるいは、ここ2大会、雨でセーフティーカーが入っているけど、例えば突然の雨で、水量がタイヤの許容を超えていると判断した場合は入れますね。
つまり、人命第一で判断します。ドライバーに対してもコースマーシャルに対してもね。

春那話を戻しますが、SUPER FORMULAは全日本選手権ですので、いろんな方々、審査委員とか技術系の方とか、大会競技長、レースディレクターなどたくさんの方々がそれぞれの立場で関わってらっしゃるので、全体の構造がよくわからないんです。

鈴木RD昔から言われていることだけど、「三権分立」をイメージするとわかりやすいんじゃないかな…、「司法」、「行政」、「立法」があるんです。「立法」がJAFですね、全日本選手権のいろいろな規則を作るところ。審査委員会は「司法」、裁判所です。大会競技長とかレースディレクターは「行政」だね。よく間違われるのは、競技長やレースディレクターが罰則まで決めていると勘違いされるんだけど、そこは「司法」である審査委員会が決めるんですよ。ボクたちは「違反行為がある、ない」「あったと思われることに対しては、事実を審査委員会に報告する」ということをやっているんです。そこから先、違反と認めるかどうか、罰則を科すかどうかの判断は審査委員会の領域になるわけです。
細かくは若干違いますけど、皆さんにイメージをつけていただくためにはそういう構造ですよ、と説明しています。ちなみにテクニカルディレクターと技術委員長も我々同様「行政」にいます。どこで何が起こっても、どんな問題も、まずは大会競技長に集約されます。

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春那ピットでチームの人がメモにサインをしたりする光景をたまに見ます。

鈴木RD何か違反が見つかった場合は、ピットマーシャルがレポートを作成し、違反ですよと書いたメモにチームの承認サインを貰うんです。それが大会競技長、レースディレクターのところに上がってくる。サインを貰えない場合は、チームの然るべき人に後でコントロールタワーまで来てもらって事情を聴くこともあります。

春那鈴木さんにはこれまでの履歴の中で、フォーミュラレース以外も含めていろんなレースの競技長をおやりになったり、審査委員会のメンバーになられたりしてらっしゃいますけど、SUPER FORMULAのレースディレクターをする場合、何かしらベンチマークをお持ちになってらっしゃるのでしょうか?

鈴木RDトップフォーミュラですから、やはりF1の運営ですね。F1の中には「ドライバーズ・スチュワード」と言って、最高峰のフォーミュラレースに参加経験のあるドライバーが審査委員に入っている。この仕組がSUPER FORMULAにあるともっと良いと思う。
余談だけど、昨年のモナコグランプリでのGP2レースは、スタート直後に混乱がありました。日本グランプリでチャーリー・ホワイティングさんに会った時に、「スタートをやり直す際、戻ってきた12台近くの車両のグリッドはどうやって決めたんだ?」と訊ねたんですね。そしたらチャーリーは「オレが決めた」と言ったんですよ。「競技長は正義の刀を持った独裁者になれ」ってね。忘れられない言葉だね。

春那「正義の刀を持った独裁者になれ」…、実行するのはなかなか難しい言葉ですね。

鈴木RD日本のモータースポーツにおいて、ボクは4つほど基本的な考え方を持っていてね、一つは「安全」。ドライバー、クルマの安全はもちろんですけど、サーキットの安全性、維持管理も重要な要素ですね。2つ目は「公平・公正」。若干哲学的な要素があるけどバランスが必要ですね。3つ目は「競技性」。競技性の中にどうやってプロモーション的な要素を入れていくか、これは今後の課題でもありますね。4つ目は「国際性」。個人的にはアジアシリーズができれば素晴らしいと思うね。
実はFIAの定めるドライバーズライセンス発給のルールがあってね、SUPER FORMULAのシリーズ上位3名のドライバーには、F1に乗るための「スーパーライセンス」を申請する権利がある、と書いてある。GP2以外のフォーミュラカテゴリーはチャンピオンだけなんですよ。この事実は重いですよね。

春那鈴木さんの夢は、SUPER FORMULAをアジアシリーズにする、ということなんですね。

鈴木RDこれからJRPに取り組んで欲しい課題の一つかな。「純粋競争自動車レース」「ノーコンタクト/ノープッシュ」・・・昨年の菅生大会の終盤の戦い、心の中で「うーん」と力が入る、ああいうレースをアジアで展開できれば良いなと思います。ドライバーも一流、今年に関しては間違いなく車両も高性能になった。ドライバーだけでなく、いろいろな国のチームが参加することで、国際性は高まって行きますよね。

春那出来ると本当に良いですよね。最後に、鈴木さんにとってレースディレクターとは?

鈴木RDF1といったヨーロッパイズムのあるレースが来ると、慣習や慣例にとらわれない新しい方向への刺激がありますよね。マーシャリングシステムやレース運営と一体になったテレビカメラのスイッチングなどいろいろな所に質の高さを感じられる。やはり格式のあるフォーミュラのレースディレクターをやるのであれば、F1のような世界的イベントの運営方法を自分の大きな指針として役割を果たしていきたいということですね。

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レース観戦って、基本は応援しているチームや贔屓にしている所があるから、
薄々わかってはいてもつい今のペナルティじゃないの?って偏った目でみてしまいますが…
今回お話を聞いて、何人もの方が関わって、沢山の事例の元、公平・公正な判断がされてた事が非常によくわかりました。(これからはちゃんと受け入れよう。と思いました。笑)
F1の競技長を一旦引退される時に、ドライバーさん全員のサインをいただけるなんて!!
鈴木さんがいかに日本のモータースポーツに貢献されてきたかがわかりました。
夢はスーパーフォーミュラをアジアシリーズにする事。とおっしゃってましたが、中の人第一段の白井社長の目標もそうでしたね。
2人目の井藤さんに関してはSFを盛り上げるにはまずサーキットに来て頂けたら。とおっしゃってました。。

何度も言う様に、SF14はコーナースピードはもの凄く速くって、
ドライバーも国内外最高峰のメンバーが揃っていて…
ではF1と違う所ってどこだろう?
F1みたいに盛り上げる為には何が必要か?
マネをする訳では無くて、良い所を取り入れて、それにSFの良い所がプラスされたら、
アジア選手権…世界3大選手権と呼ばれるのも夢じゃないですよね?!
役者も道具もほぼ揃ってるハズなんです!
主催者の皆さんも審査する方々もプロモーションする人たちも、それぞれがスーパーフォーミュラの未来について見ている方向は同じ。プロモーションも皆で協力しあって、レースと同じでチームワークが大事なんだと思いました。まだまだ課題は多そうだけど、きっと実現して欲しいですね。

皆さんはSFの未来がどのようになっていって欲しいですか?
今のSFの方がのんびり観られるし、SFが好きな人だけ集まって楽しんでいれば良いよ。って思われますか?
私は選手やチーム、マシンの性能や技術が沢山の方の目にふれて、世界に認められて、「純粋競争自動車レース」であるSFを筆頭に日本のモータースポーツがもっと盛り上がって欲しいと思います!
観てる側だって、SFの未来への方向性が同じだったらきっと実現出来ますよね!?

今回はそんなことを強く感じた取材となりました。


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春那の連載インタビュー・バックナンバー

第3回「井藤敏也(株式会社トムス)インタビュー」
第2回「白井社長インタビュー・後編」
第1回「白井社長インタビュー・前編」