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メカニカル・グリップとエアロ・バランスの割合を重視

HP REAL RACING

11大駅 俊臣

ドライバー:中山 友貴

1.前戦・富士スピードウェイについて
Q

“もはや真夏”という高温下で、しかしタイム競争は非常にシビアなものになりましたが、土日2日間の各セッションの組み立てを振り返って、うまく行ったこと、行かなかったことはどのあたりでしょうか?

A

土曜日午前のフリー走行では、準備してきたセットアップの方向性でうまく進んだ。
しかし予選では、最終的に路面に合わせきれず、Q1突破はならなかった。レースではトラブルを出してしまい、リタイヤとなってしまった。

Q

担当されているマシンのセットアップに関して、うまく仕上がったところ、逆にもうちょっとだったな、と思うところを教えて下さい。

A

セクター3を重視したセットアップの方向性はうまくいったと思うが、ストレートスピードが伸びず、セクター1のタイムロスが大きかった。

2.ツインリンクもてぎというコースについて
Q

ツインリンクもてぎは「ストップ&ゴー」タイプのサーキットだと言われていますが、エンジニアの視点からはどんな性格のコースだと考えていますか

A

基本的にブレーキに厳しいサーキットであり、かつエンジンの加速性能が求められるサーキット。

Q

短い直線の後に回り込むコーナー、というパターンが続く中にダウンヒル・ストレートが入る、というツインリンクもてぎにおいて、どんな挙動や特性を示すマシンが「速い」あるいは「強い」と思われますか?

A

ブレーキング・パフォーマンスが高い車両が速い車両になると思います。「しっかり止まる車両=曲がる車両」。この状態を空力だけに頼らず達成することでストレートの加速区間でのタイムも稼ぐ。そんな車両が速い車両ですね。

Q

上記設問の回答を受けて、ツインリンクもてぎにおけるマシン・セッティングを組み立てる上で、重視されるコーナー、セクションはどこですか? また、そこで鍵を握るものと考えられる車両諸元はどのあたりですか?

A

S字区間、T13-T14 。メカニカル・グリップとエアロ・バランスの受け持つ割合を重視したい。セットアップとしては、リアのメカニカル・グリップの確保と 車両レイクのバランスですかね。

*メカニカル・グリップ : サスペンションをうまく動かして様々な動きの中でタイヤを路面にしっかり接地させ、そのグリップを引き出し、粘らせるるようにすること。空力(エアロ)でタイヤを路面に押し付ける効果は車速の二乗に比例するので低速になるほど極端に弱くなる。それに頼らず、車体の機構側でタイヤを接地させること、その狙いを言う。
*車両レイク : 車体底面と路面の間の気流によって多くのダウンフォースを得る今日のレーシングマシンでは、底面全体を後上がりにして、後方に行くほど空気流路の断面積を大きくし、ここで圧力が下がって車体が路面に押し付けられるようにしている。この「後上がり(前下り)姿勢」を「レイク(rake : レーキとも発音する)」という。初期設定とともに、ダウンフォースが作用した状態、そして加減速で車体がピッチング(前後に傾く動き)を起こす中でどうなっているか、が問題。

Q

ツインリンクもてぎは「ブレーキに厳しい」と言われていますが、マシンの細部仕様を選び、その結果を確認しているエンジニアとして、実際にはいかがですか? このコースに関して特別な対策を施されますか?

A

実際に現状のBRAKE SPEC では熱容量的に余裕はありません。ブレーキを多用するここ茂木では他のサーキットより確実にBRAKEには厳しいサーキットだと言えます。クーリング性能の高いBRAKE DISCとストッピングパワーの高いPADを選択し、クーリングには注意しています。

3.第4戦に向けて
Q

ツインリンクもてぎを2013年仕様タイヤで走るのは初めてとなります。しかも気温、路面温度とも高くなることが予想されます。この条件で、タイヤとコース(路面)との相性をどう予想されていますか? また、走らせた時にそれをどこで判断しようとイメージされていますか?

A

ここまでのタイヤの状況からみると、相性は良いのではないかと思います。
ブレーキング時のリアタイヤのグリップと、高荷重域でのコーナーリング性能で判断できると思います。

*高荷重域でのコーナーリング : コーナリング時にタイヤ(とくに旋回外側)に加わる荷重は、旋回速度と旋回半径で決まる遠心力の大きさ、だと考えればよい。それを受け止めているのがタイヤと路面の間の摩擦力。つまり高速で深く回り込むようなコーナーが「高荷重域」となる。

Q

今回の予選は「スペシャルステージ」方式で、まず全車出走のQ1が30分、その上位8台が1台ずつ単走のタイムアタックとなります。このフォーマットに対して、どう臨む心づもりですか? マシン・セッティングの仕込みと修正、タイヤの使い方など、ここまでの「ノックアウト」方式とはどのように変わるのでしょうか?

A

「スペシャルステージ」は計測1ラップの戦いとなります。Q1でのアタックも、計測1ラップでタイムが出せるセットアップを意識して準備していきたいです。

Q

今回のレース距離は250km、燃料タンク容量制限は2013年規定(車両の最大容量ー約6L=約104L)というフォーマットになります。この条件におけるツインリンクもてぎでの決勝レースについて、現在どのくらいの戦略パターンを想定されていますか? 他のチーム/ドライバー・エンジニアが「こんなことをやってくるかな?」と予測(期待、あるいは危惧)されていることはありますか?

A

2013年仕様TYREのパフォーマンス次第です。いくつかパターンは考えられますが、スタンダードな作戦となるでしょうね。Fuel effect(重量Lap Time感度が大きい)の大きいサーキットなので軽いFuel 搭載量でSTARTするTeamはあるでしょうね。

Q

暑さの中での予選、決勝になることが予想されますが、それに対してマシンを準備し、走らせる上で、とくに気にかけ、目を配るポイントはどのあたりでしょうか?

A

エンジン、ブレーキ等、クーリングには十分注意したいと思います。

*クーリング : エンジン冷却(冷却水ラジエーターとオイルクーラー)、エンジンルーム内の通風、ブレーキ冷却(通風)、ダンパーやエンジン制御コンピューターなど熱によって性能が変動する機器の過熱抑止など、車両における「冷却」の全てを指している。

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