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セクター3が鍵

Honda HR12E - ENGINE SUPPLIER

坂井 典次

本田技術研究所 SUPER FORMULA プロジェクトリーダー

1.前戦・鈴鹿サーキットについて
Q

土曜日の予選は好天、日曜日の決勝2レースは一転して雨が降ったり止んだりの安定しない天候の中で、チャンピオン決定のドラマが演じられました。この戦いをエンジン開発・供給者の側からはどうご覧になりましたか?

A

スーパーフォーミュラのドライバーとエンジニアの集中力・気力には敬服致しました。
とくに、チャンピオンが掛かった#16山本選手には圧倒されました。Q3での赤旗中断という予期せぬ状況に対しても、かつ、ちょっとデグラデートしたタイヤの状態においても全神経を研ぎ澄まし、全セクターにおいてそれまでのタイムを更新、ファステストタイムを叩き出して来た時には痺れました。“Fantastic & Good Job”でした。

*デグラデート(デグラデーション) : 直接の意味は「劣化」。タイヤが磨耗の進行とともに性能(グリップ)が低下してゆくこと。

Q

事前に伺った「作成計画」では、最終戦かつスプリントレースだからこそ「パワー追求」というお答が印象的でした。実戦を振り返っていかがでしたか? 狙いどおりにうまく仕上がったところ、逆にもうちょっとだったな、と思われるところを教えて下さい。(セットアップ面)

A

エンジンマップの煮詰め、ギアレシオ選定においてもバッチリでした。

*エンジンマップ : アクセル操作やエンジン回転速度に応じて、燃焼を決める燃料噴射量、点火時期をどうするかを設定した制御の内容は、複数のパラメーターに対する多次元のマップ(地図)の形で表現できる。
*ギアレシオ選定 : 競技車両の変速機(トランスミッション)は、各変速段の歯車の歯数組み合わせ=変速比(ギアレシオ)を、細かく選択して組み替えられる。エンジン特性と各コーナーから加速、その先の到達速度、風向きなどに合わせてギアセットを選ぶのも重要なセッティング。

Q

2013年シーズンの選手権レース全てを終えた今、その6戦をエンジンの側から振り返って、戦いの印象、達成感あるいは未達感を味わっている内容などをお答えいただければと思います。

A

もてぎで良い結果を出せずに終わったのが大変残念です。

2.JAFグランプリ・富士スプリントカップに向けて
Q

今回は土曜日に1セッションだけの予選、日曜日に22周・距離100kmのスプリントレース、というフォーマットになります。スーパーフォーミュラ用エンジンとしては、どのような方向で仕上げられるのでしょうか? シリーズ第3戦(富士)と異なるポイントはどんなところでしょうか?

A

セクター3が鍵なので、中速トルク重視は変わりません。シフトアップ後の繋がりも重視です。

*中速トルク重視 : 富士スピードウェイのセクター3はきつい上り勾配の中、深く曲がり込むコーナーが連続する。したがっていったんエンジン回転が落ち、そこ(中速)からマシンを押し出す力(エンジン・トルク)の強さがタイムに直結する。
*シフトアップ後の繋がり : 同様にコーナーからの旋回加速の中でエンジン回転が上限に達してシフトアップすると、いったんエンジン回転が落ちる。そこで駆動力が途切れないように加速が続くかどうか。

Q

スーパーフォーミュラ、スーパーGTそれぞれ距離100kmのスプリントレースが2日間で3戦行なわれます。エンジンの特性や戦闘力を見て取るには、どんなところに着目すれば面白いでしょうか?

A

上述のように、セクター3のタイムですね。

Q

エンジンのパフォーマンス以外に、今回の富士スプリントカップの戦い、マシンの走り方・走らせ方に関して、どんなところに注目すると面白そうですか? ご自身はどんなところを楽しみにされていますか?

A

100Rとセクター3が見所です。

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