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REAL RACING

11大神 槙也

ドライバー:伊沢 拓也

1.前戦・ツインリンクもてぎについて
Q

例年はシリーズの中で最も暑い気象状況の中でのレースになるもてぎ戦であり、それを想定したセッティングを組み立てて持ち込まれたのでしょうか? そして今回は気温が意外に上がらず、路面のグリップも低かったようでしたが、その中で「持ち込みセット」での走り始めはどんな状況でしたか?

A

気温の高さは当然考慮していましたが、「持ち込みセット」に特別大きな変更を加えたわけではありません。
走り始めは少しアンダーステア傾向でバランスは悪くないというコメントでした。ベースのレベルは上向いてきたと思いますが、他車対比のパフォーマンスはまだまだだったと思います。

*バランス: マシンのセットアップと挙動の中で「バランス」と言う場合は「前後の」であることがほとんど。この場合はコーナリング・プロセスの中で前後のタイヤが発生する横力が、それぞれの局面で求められるバランス(力の大きさと釣り合い)に落ち着くか、ということ。

Q

フリー走行を終えてから予選に向けて、さらに予選を戦う中でマシンのセットアップはどのように進めましたか? その方向性、変更の内容について、差し支えない範囲で書いていただければと思います。

A

予選前のセッティング変更では、フリー走行で試したアイテムの中で良好な結果が得られたものに加え、ブレーキングからターンインにかけてのリアグリップ・レベルの向上を狙って、リア・サスペンションに変更を加えました。
思いのほか良い効果が得られ、予選中も同じ方向性でセッティングを煮詰めていきましたが、路面の良化に起因するアンダーステアが強くなり、Q2ではQ1の10番手から順位を落とすことになってしまいました。

*ターンイン: コーナーに向けてステアリングを切り込んでフロントの横移動からマシン全体の"向き変え"運動を起こし、旋回運動に持ち込むプロセス。この後にミドル・オブ・コーナー〜アウト・オブ・コーナーと続く。
*路面の良化: 多くのマシンがレーシングスピードで走り続けることで、タイヤのトレッド表面が溶けて路面に擦りつけられ、それと粘着することでグリップが高まる。

Q

予選全体について、うまくいったところ、うまくいかなかったところ、全体の印象などを振り返ってください。その内容を自己採点すると100点満点で何点でしょうか?

A

50点。
Q1を10番手で通過できたことは良かったですが、Q2に向けて路面の良化を読めずに順位を落としてしまったことが反省点です。

Q

決勝レースを前にかなりの雨量が落ちてきましたが、その対応は? とくに8分間のウォームアップからスターティング・グリッド上まで、マシン・セッティングに関してどんな作業を行いましたか?

A

8分間ウォームアップは、ウェット仕様の車高に変更し、ウェットタイヤで走行しました。グリッドに向かう際も車高は変更せず、タイヤだけドライタイヤに変更してトラックコンディションの確認を行いました。スタート前のグリッド上で雨の可能性は低いだろうという判断のもと、車高をドライ仕様に戻しました。

*ウェット仕様の車高: ウェット路面ではタイヤとの摩擦係数が低下するので、車体の動きを大きめにして荷重移動を減らし、タイヤが仕事をしやすくする。あるいは路面に水が溜まると、ギリギリまで地上高を落とした状態では車体底面が水に着くと、滑走してしまう。これらの理由からウェット路面に対しては車高(地上高)を上げる方向となる。

Q

決勝を走ったセットアップ(結局ドライ路面仕様だったかと思いますが)において、もてぎならではのボイントはどんなところでしたか。その良かった面と「もう少し」という面はどのあたりでしたか? そのセットアップを自己採点すると100点満点で何点でしょう?

A

50点。
全体的に(とくにブレーキング〜ターンインで)リアグリップが得られたことは良かったと思う。それに対して、フロントグリップを得られる良い方法が見つけられなかった点がもう少し、というところでした。

Q

決勝レースの戦略面を振り返ってください。うまく行ったところ、うまくはまらなかったところはどのあたりですか? トラブルに遭遇された場合はその状況・内容などにも触れていただけるとうれしいです。

A

おおまかな流れという意味では戦略は悪くなかったと思います。カルダレッリ選手の前に出るべくピットインのタイミングを計っていました。カーティケヤン選手がピットアウトした直後のラップで、カルダレッリ選手と争っていてラップタイムが良くなかったので、カーティケヤン選手の次の周にピットに入れていれば、二人の前に出られたかもしれないという点を反省しています。

Q

ドライバーのパフォーマンスはいかがでしたか?

A

コメントも的確で、レース中のパフォーマンスも素晴らしかったと思います。

*コメント: 自動車競技でも、一般車の開発でも、計器やデータロガーで得られるのは「代表的な特性」だけであり、「どこで、どんなことが起こっているか」はドライバーが瞬時の記憶から引き出して言葉(コメント)にして伝えるのが最も有効。

2.第5戦・オートポリスに向けて
Q

改めて、オートポリスのコース特性・個性・特徴をどうとらえていますか?(とくにアップダウン、コーナー、舗装などについて) セッティングを組み立てる時に考えることが多い、難しい、あるいはそうでもない…。いかがでしょう?

A

走り始めの路面が悪いことが多いと思います。
セッティングを組み立てる際に考えることは他のサーキットと大きく変わりません。

Q

オートポリスのコースに合わせるマシン・セットアップの方向性、マシンの基本特性はどうなる(のが良い)とお考えですか? あるいは担当するドライバーに対して「ここではこんな特性にしてあげたい」というものはありますか?

A

オートポリスでは特にセクター3でアンダーステアを出したくないですし、前回の茂木でもアンダーステアが課題だったので、フロントの接地を改善したいと考えています。何点かアイテムを用意していますが、リアを犠牲にせずアンダーステアを解消したいと思います。

*アンダーステア: 車両運動における本来の定義は「車速=遠心力の増加に応じて舵角一定であれば旋回半径が大きくなってゆく」特性。それに対して挙動を感覚的に表現する場合は、コーナーの中でフロントが外にふくらんでいこうとして修正が必要なさまざまな状況を、この言葉で表すことが多い。上り勾配のコーナーでフロントが入ってこない/逃げる、という挙動が出るとアクセルオンを待つしかない。

Q

無給油だった昨年と異なり、レース距離250kmで給油が必要なレースになりますが、それに対応するマシン側の準備はいかがですか? ピット設備・ピット作業の準備など何か特別なこと、新しいことはあまりますか?

A

車両の準備としては給油口の位置を右側から左側に変更しました。コレクタータンクや燃料リストリクターのレイアウトの関係で以前の車両よりも大変でした。
あとは、ピット作業のフォーメーション(メカニックの位置と動き)の確認を行っています。

*コレクタータンク: 主燃料タンクのガソリンを汲み上げて一度貯め、そこからエンジンに安定した流量を送り出すための小タンク。SF14では主タンク内・燃料補給口の反対側に燃料ポンプを収めた円筒状のコレクタータンクが組み込まれている。

Q

給油が必要になったことで決勝レースの流れは昨年とは違ってくると思いますが、いかがですか? 現時点では何種類ぐらいのシナリオを描いていますか? 基本戦略、それに対して変数となるのはどのあたりでしょうか?

A

昨年が特殊なフォーマット(レース距離215km・給油なし)だったので、普通のフォーマットになったと思っています。そのため、想定している戦略は他のサーキットと変わりありません。予選順位・タイヤのデグラデーションなどが変数になると思います。

*(タイヤの)デグラデーション: タイヤ磨耗が進むにつれてグリップが徐々に、あるところからは急に落ち、それがラップタイムの低下としてどう現れるか、を指す。

Q

ストレートが比較的短く、コース幅も広くはなく、アップダウンが多い、とくにコース後半は上り勾配が続く、というオートポリスですが、オーバーテイク・システムの効果的な使い方として何かお考えはありますか?

A

これまでの実績から目星はついていますが、実走にて確認をしたいと思います。

Q

担当されるドライバー、自車のセッティングの方向などから「こういうところを見てください」というポイントになるのはどんなところでしょうか? それを見て取ることができる(できそうな)観戦ポイントとしてはどこがお勧めでしょうか?

A

課題にしているアンダーステアが解消されているかどうか、セクター3で観戦してみて下さい。

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