冷たい雨が降り続いた初日に引き続き、3月26日(金)も、フォーミュラ・ニッポン第2回公式合同テストが静岡県・富士スピードウェイで行なわれた。この日は、前日キャンセルされたセッションの時間を振り分ける形で、午前中3時間、午後3時間と計6時間のセッションを実施。午後のセッション後半にはようやくドライとなった。その中でトップタイムをマークしたのは、やはりNo.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)。2番手にはNo.2 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、3番手にはNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)という結果となっている。
水曜日から降り続いた雨は止んだものの、どんよりとした曇り空の朝となった富士スピードウェイ。陽射しがないため、セッション開始時には完全なウェット路面となった。参加したマシンは、本日もシリーズに参戦する14台に加え、トヨタのテスト車両という15台。昨日、走行を見合わせたPETRONAS TOM'Sは、レギュラードライバーのNo.36 アンドレ・ロッテラーとNo.37 大嶋和也が都合により欠席ということで、代わりに片岡龍也と国本雄資がステアリングを握って走行を行なった。
この日は午前9時の段階で、気温3度、路面温度4度と、初日以上に冷たいコンディション。そんな中、ピット出口がオープンされると、間もなく3分の1ほどのマシンがコースインし、レインタイヤでマシンの感触を試していく。ここで序盤からトップタイムを刻んだのは、デ・オリベイラ。だが、セッション開始10分過ぎに、ディフェンディングチャンピオンのNo.1 ロイック・デュバル(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がコースに入ると、トップタイムを書き換えた。デ・オリベイラも負けじとタイムアップし、再びトップに浮上する。一方、この頃、コースに入ったのは、小暮。小暮はまず計測7周目にトップに立つが、デュバル、デ・オリベイラを加えた3人が、次々にタイムを書き換え、トップも目まぐるしく入れ代わった。その後、セッション開始から45分あまりが経過すると、小暮が他の2人を大きく引き離す1分35秒台に突入。頭ひとつ抜け出した。開始から1時間が過ぎると、デュバルとデ・オリベイラも35秒台に入れてくるが、小暮はさらにタイムアップ。1分34秒914というタイムをマークし、午前中のトップを決定付けている。これとほぼ同時に1分35秒170というベストタイムをマークしたのはデュバル。今回が今年のフォーミュラ・ニッポン初走行にも関わらず、いきなり速さを見せ付けた。これ以降、セッションが後半に入ると天候は回復方向となり、路面の水がほとんどなくなったため、レインタイヤでのタイムアップは望めず。終盤に入ってから、No.32 山本尚貴(NAKAJIMA RACING)が唯一タイムを伸ばし、1分35秒379で3番手に滑り込んでくる。その他のマシンのうち数台は、残り時間が10分を切ってから、スリックタイヤを装着してコースイン。だが、この時間帯でも路面温度が6度しかないため、タイヤを温め切れず、レインタイヤのタイムを上回ったドライバーはいなかった。
その後、完全なドライコンディションになるかと思われたが、午後のセッション開始1時間ほど前から、富士スピードウェイにはあられ混じりの雨が降り始める。そのため、路面はウェットに逆戻り。セッションが開始される頃には、雨は上がったものの、スリックタイヤでは走行できない状況となった。また、寒さも相変わらずで、セッション開始時刻の午後2時の段階で、気温は7度、路面温度8度。それでもピット出口がオープンされると、間もなく数台のマシンがコースイン。セッション開始から15分という段階で、10台あまりが走り始めた。しかし、開始から28分という時点で、この日初めての赤旗が提示される。これはNo.29 井口卓人(DELIZIEFOLLIE/CERUMO・INGING)が100Rでコースアウトしたため。マシンの回収が終わると、午後2時36分にセッションは再開された。それから約20分後に、まずはデ・オリベイラが1分36秒312をマークしてトップに立つ。このタイムをまず破ってきたのは、山本。セッションが折り返す頃になると、小暮やNo.8 石浦宏明(Team LeMans)やNo.7 ケイ・コッツォリーノ(Team LeMans)、伊沢らが1分35秒台に突入し、上位グループを形成する。一方、セッション開始1時間余りというところからは、スリックタイヤを投入するドライバーも。ただし、気温が低い分、セクター2から3にかけては、完全に乾いておらず、スリック勢はなかなかレインタイヤを履くドライバーのタイムを上回れなかった。しかし、開始からそろそろ2時間になろうかというところで、No.17 塚越広大(HFDP RACING)がついにスリックでトップタイムを書き換える。塚越はその後もタイムを更新し、レイン勢のタイムを3秒半ほど上回った。この頃から、数台のマシンがやはりスリックタイヤでのアタックを開始。デュバル、さらにはデ・オリベイラが塚越のタイムを上回ってきた。オリベイラは、ここからさらにプッシュ。まず真っ先に1分30秒を切り、1分29秒870までタイムを伸ばす。これを見て、多くのマシンがスリックを投入。タイムアタック合戦の様相を呈し、めまぐるしくトップが入れ代わった。その中で、残り約20分という段階で、唯一1分25秒台のタイムをマークしたのは、小暮。これに石浦、伊沢らが続く展開となる。そして、残り時間が約10分となったところで、ほとんどのマシンが最後のニュータイヤを装着。再びタイムアタックへと向かった。ここでまずトップタイムを書き換え1分25秒436をマークしたのは伊沢。しかし、間もなく小暮が1分25秒287を叩き出す。小暮はさらにもう1周アタックを続け、チェッカーと同時に1分25秒066までタイムアップ。レインでもドライでもトップを守って、開幕前最後のテストを打ち上げている。これに伊沢、デ・オリベイラ、石浦、No.20 平手晃平(TEAM IMPUL)、ルーキートップの山本、最後のタイムアタック前にギヤトラブルが発生してしまった塚越と続いた。走り始めから好調を維持していたデュバルは、最後のアタックで原因不明の失速。8番手で走行を終了している。
■2日目トップ3ドライバーのコメント
総合1位:No.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)
雨は基本的なセットアップの確認をしただけです。だから、車高とか空力ぐらいしかやっていません。今ひとつ納得していない部分があります。もう少しタイムが出てもいいんじゃないかなとも思いました。最後セッションは2セット、ドライのニュータイヤを使いました。フィーリングは結構良かったですね。路面がところどころ濡れていて、スピンしそうにもなったんですけど。クルマに関しては、若干のアジャストしたぐらいで、バランスを見ただけでした。でも、富士を走った中では、そんなに悪くない前後バランスでした。基本的なクルマのセットが確認できて良かったです。一番タイヤの状態がいい時のアタック中、濡れている所でバランスを崩して“タコ踊り”になっちっゃたんですけど、それがなければクルマのパフォーマンス的には24秒台に入れたと思いますし、もったいなかったですね。開幕前のテストは、鈴鹿もドライはトップで終えられましたし、今回もトップで終えられたので、上出来かな。ただ、みんな半分ぐらいしかメニューをこなせていないと思うんですよね。その点、ウチは去年からの引き続きで一歩リードしているのかな? というイメージを持っているので、その点はアドバンテージになるんじゃないですか。
総合2位:No.2 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
午前中は走り始めはいい感触じゃなかったんですけど、午後にその原因を探ったら、レインでもいい感触を得られました。午前中に使っていたタイヤが結構摩耗していたので、その辺も原因のひとつかなという感じでしたね。ドライに関しては、コンディションがどんどん良くなっていく方向だったので、何とも言えないんですけど。セットアップも車高をアジャストしたぐらいで、何もしていません。でも、ああいうコンディションの中でもアクセルを踏んで行けるクルマの状態になっていたので、それはいいかなと思います。ただ、トップとコンマ4秒差あるので、そこはもっと詰められるようにしておかないと。『これでいいや』だと、レースでは前に行けない。次のレースまでにその差を埋められるようにしたいです。今季、ロイック(・デュバル)と田中(耕太郎)エンジニアが加入したことで、プラスになる部分はあると思っていますし、特に気温が高くなってきてからは心強いと思ってます。お互いにいい所を取り合ってやっていけば、NAKAJIMA RACINGに勝てるんじゃないかなという手応えはありますよ。
総合3位:No.19 J.P.デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)
今日は、昨日よりも収穫の多いテストができた。ウェットコンディションが長かったけど、昨日よりは運転しやすい路面だったし、いくつかのセットアップを試すことができた。クルマは進歩したし、雨の中ではバランスもすごく良かったよね。本当に、ウェット用のセットアップに関してはハッピーだよ。ドライに関しては、アタックしたタイミングとかあるから、このリザルトが実力どおりか、ちょっと疑わしい。今日はニュータイヤを3セット使ったけど、そのうちの1セットは、1周アタックした後に1コーナーで飛び出して、すぐにピットに入った。もうセッションの残り時間が少なくなったし、最後のニュータイヤでも、何箇所か失敗しているんだ。最終セクターは湿っていて滑りやすかったから。それでも、ドライコンディションのクルマのバランスに満足している。多分、小暮選手と同じぐらいのタイムは出せたと思うし、タイム差も気にしていない。
□ピックアップ:新規参戦チームのドライバー
No.16 井出有治(MOTUL TEAM 無限)
コンディションのせいもあって、今回はあまりテストメニューをこなすことができませんでした。それに、ギヤボックスのトラブルが昨日から少しあって。特に、今日はシフトアップの時に弾かれてしまって入らないとか、ニュートラルに入らないとか、ニュートラルからスイッチを入れていないのに1速に入ってしまうとか、そういう状況だったので、余り走れなかったんですよ。セットアップを進めるより先に、そういう問題があって。原因もまだ掴めていないので、最後まで解決できませんでした。セッション最後も応急処置をして、ニュータイヤでアタックに行ったんですけど、途中4速でスタック(動かせなくなる)してしまったので、アタックできていないんです。鈴鹿のテストでも同じような症状がありました。走れば走るほど、ひどくなってしまうような感じで。工場に持って帰って調べてもらったら、原因も判明するとは思うんですけどね。そういう状況だったので、開幕に向けての準備も十分とは言えません。だから、あまり最初から高望みしないでおこうかなと…。でも、チームも開幕戦にはちゃんと準備を整えてくれると思うので、僕も筋力トレーニングして、それに備えようかなと思います。
第2回公式合同テスト 2日目ラップタイム
2010-03-26 富士スピードウェイ 4.563km
Session 1: 9:00〜12:00 天気:曇り コース:ウェット
Session 2:14:00〜17:00 天気:曇り コース:ウェット/ドライ
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1 | 32 | 小暮卓史 | NAKAJIMA RACING /H | 1'25.066 | 1'34.914/1 | 1'25.066/1 |
2 | 2 | 伊沢拓也 | DOCOMO TEAM DANDELION RACING /H | 1'25.436 | 1'36.262/7 | 1'25.436/2 |
3 | 19 | J.P.デ・オリベイラ | TEAM IMPUL /T | 1'25.613 | 1'35.459/4 | 1'25.613/3 |
4 | 8 | 石浦宏明 | Team LeMans /T | 1'25.650 | 1'36.004/5 | 1'25.650/4 |
5 | 20 | 平手晃平 | TEAM IMPUL /T | 1'25.761 | 1'36.187/6 | 1'25.781/5 |
6 | 31 | 山本尚貴 | NAKAJIMA RACING /H | 1'26.032 | 1'35.379/3 | 1'26.032/6 |
7 | 10 | 塚越広大 | HFDP RACING /H | 1'26.187 | 1'36.391/8 | 1'26.187/7 |
8 | 1 | ロイック・デュバル | DOCOMO TEAM DANDELION RACING /H | 1'26.289 | 1'35.170/2 | 1'26.289/8 |
9 | 7 | ケイ・コッツォリーノ | Team LeMans /T | 1'26.648 | 1'36.651/9 | 1'26.648/9 |
10 | 37 | 国本雄資 | PETRONAS TEAM TOM'S /T | 1'27.010 | 1'38.635/13 | 1'27.010/10 |
11 | 36 | 片岡龍也 | PETRONAS TEAM TOM'S /T | 1'27.329 | 1'39.751/14 | 1'27.329/11 |
12 | 18 | 平中克幸 | KCMG/T | 1'27.412 | 1'38.017/12 | 1'27.412/12 |
13 | 29 | 井口卓人 | DELIZEFOLLIE/CERUMO・INGING /T | 1'27.870 | 1'37.706/11 | 1'27.870/13 |
14 | 16 | 井出有治 | MOTUL TEAM 無限/H | 1'29.415 | 1'37.035/10 | 1'29.415/14 |
*:セッションタイムの後の数字はセッションの順位。チーム名の後の略称はエンジン、H:ホンダ、T:トヨタ。
*:No.36はA.ロッテラーが欠席のため片岡龍也が、No.37は大嶋和也が欠席のため国本雄資がドライブした。