2015 SUPER FORMULA
Round3 Fuji Speedway
- Fuji Speedway
-
公式予選 7月18日(土) /
決勝レース 7月19日(日) [55 Laps / 250.965 km]
富士スピードウェイ : 4.563 km
Race
ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが独走で今季初勝利!
復帰戦の中嶋一貴が2位、石浦が連続表彰台の3位でランキングトップをキープ
No.19 J.P.デ・オリベイラ
7月19日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で2015年全日本選手権スーパーフォーミュラ第3戦の決勝レースが行われた。予選2位から好スタートを切ったNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(LENOVO TEAM IMPUL SF14)が、独走状態で今季初勝利をで飾った。2位は復帰戦のNo.1 中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)が入賞。3位にはNo.38 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING SF14)が入り、シリーズランキングトップの座をキープした。
絶好のスタートを決めたデ・オリベイラと一貴
昨日の雨から一転、朝から真夏の太陽が顔を出した富士スピードウェイ。この好天と、夏休みに入ったばかりの週末という効果で、スタンドには多くの観客が来場。気温28℃、路面温度37℃。湿度が熱く、蒸し暑いコンディションの中、フォーメーションラップがスタートしたのは午後2時。ダミーグリッドからゆっくりと隊列走行に入った19台のクルマが、いよいよ正規グリッドに着く。そして、シグナルオールレッドからブラックアウト。第3戦の決勝レースがスタートを切った
このクラッチミートの瞬間、ホイールスピンして出遅れたのが、今季初のポールポジションからスタートしたNo.20 アンドレア・カルダレッリ(LENOVO TEAM IMPUL SF14)。チームメイトのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラは、2番グリッドから無難なスタートを決めて、カルダレッリの前に出る。これに続いたのは、8番グリッドから6台抜きの好スタートを決め、そこからアウト側にラインを取った中嶋一貴。さらに最もイン側から好ダッシュを見せたNo.8 小林可夢偉(Team KYGNUS SUNOCO SF14)と続く。カルダレッリは、動き出しで遅れた後、ポジションを守るべくイン側に進路を変えたが、そのさらにイン側にラインを取っていた可夢偉の左リヤタイヤにフロントウィングの右側をヒット。さらに左側の真横に迫っていた、5番グリッドのNo.41 ナレイン・カーティケヤン(DOCOMO DANDELION M41Y SF14)ともタイヤとタイヤが接触する。カーティケヤンは、この接触でバランスを崩し、さらにアウト側のほぼ真横に迫っていたNo.64 中嶋大祐(NAKAJIMA RACING SF14)に接触。大祐は右リヤタイヤがスローパンクチャーし、カーティケヤンは左フロントサスペンションにダメージを負ってスピンアウト、ストップ。
またカルダレッリも、フロントウィングを破損してしまい、大祐とカルダレッリはピットインを余儀なくされる。これで予選上位グリッドにいたドライバーたちがいきなり3台、トップ争いから脱落。カーティケヤンのクルマやデブリ(車両の破片)回収のため、コース上には間もなくセーフティーカーが導入された。この段階でのオーダーは、デ・オリベイラ、一貴、可夢偉、No.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)、No.7 平川亮(ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14)、No.3 ジェームス・ロシター(FUJI×D'station KONDO SF14)、石浦宏明、No.2 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM'S SF14)。そのままセーフティーカーランは、5周目まで続行。ちょうど5周を終えたところで、再スタートが切られた。この時、ほぼ全ドライバーがオーバーテイクボタンを使用して、ポジションを上げようと試みる。ここで入れ替わりがあったのは、7番手争い。ロッテラーが石浦攻略に成功し、ひとつ順位を上げた。
そのロッテラーは、わずか10周を終えたところでピットイン。給油のみを終えてコースに戻る。これを見て、翌周には、後方からの追い上げを図っていたNo.16 山本尚貴(TEAM 無限 SF14)やカルダレッリもピットインし、やはり給油だけでコースに戻った。さらに続いて、12周を終えたところでNo.10 塚越広大(REAL SF14)、スタート直後の1コーナーでブレーキロックし、大きくポジションを落としてしまっていたNo.18 中山雄一(KCMG Elyse SF14)、13周を終えたところでNo.11 伊沢拓也(REAL SF14)とNo.4 ウィリアム・ブラー(FUJI×D'station KONDO SF14)もピットイン。やはり給油のみでコースに戻っている。
No.1 中嶋一貴
立場の違いで分かれたピットインの作業とタイミング
一方、トップ集団では、次第にデ・オリベイラが一貴を引き離す展開。一貴も可夢偉をジワジワと引き離す。国本は可夢偉を1秒以内の差で追っていたが、攻略までには至らなかった。さらにその後方では、平川とロシターも接近戦を演じていたが、やはりポジションは入れ代わらないまま、レースは進んで行った。この前方集団の中で、まずピットロードに滑り込んできたのは、可夢偉。可夢偉は、20周を終えたところでピットに戻ると、給油とタイヤ交換を行い、ロッテラーの後ろでコースに戻る。さらに、23周を終えたところで、2番手を走行していた一貴がピットイン。こちらも給油とタイヤ交換を行った。一貴はロッテラーの前でコースに戻っている。さらに、24周を終えたところで国本がピットインし、給油とタイヤ交換。この時の作業が可夢偉よりも2秒ほど長く、コースに戻った時には、再び可夢偉の後ろということになる。さらに25周を終えて平川、26周を終えてロシターがピットインし給油とタイヤ交換。さらに、27周を終えてトップを快走していたデ・オリベイラもいよいよピットイン。ミスなく給油とタイヤ交換を終え、事実上のトップを守ったままコースへと戻った。
その頃から、激しくなったのは、事実上の4番手争い。ストレートは伸びるものの、コーナー区間でなかなかペースを上げられない可夢偉の後方に、国本が迫るが、可夢偉は1コーナーからコカ・コーラコーナーにかけて、F1仕込みの強烈なブロックを見せて、ポジションを守る。しかし、30周目の1コーナーで、国本との攻防の中、可夢偉は白煙を上げながらブレーキロック。左フロントタイヤにフラットスポットを作ってしまう。それでも踏ん張りを見せていた可夢偉だが、32周目の1コーナーではついに国本が前に出ることに成功。激しいバイブレーションに悩まされた可夢偉は、その後もペースを上げられず、ポジションを落としてしまう結果となった。だが、その後も終盤にはカルダレッリとの攻防戦を演じるなど、多くの見せ場を作っている。
No.38 石浦宏明
レースが折り返してからもまったくピットに入る動きを見せなかったのが、石浦。石浦は、その間、コース上でトップを走行していたが、クルマのセットアップも良く、前が開けていたこともあり、1分26秒台のタイムを連発。計算上、デ・オリベイラと一貴には届かないが、タイヤ無交換でペースが上がらないまま、ポジション的に一貴の後ろを走行していたロッテラーの前に出ることを狙った。そして、41周終了時にようやくピットイン。ロッテラーの前に出ることに成功し、3番手まで浮上する。アウトラップではロッテラーに迫られる場面もあったが、それを凌ぎ切った。
その後、上位陣には大きな動きはなく、デ・オリベイラは独走で今季初優勝。開幕戦後に参戦した他カテゴリーのレースでケガをして第2戦岡山を欠場した一貴が、見事復帰戦を表彰台で飾った。さらに、3位に入った石浦は前戦の優勝で手にした“リーダース・レッド(ポイントリーダーが付ける赤いオーバーテイクランプ)”を死守。以下、国本、ロッテラー、平川、ロシター、17番グリッドから巻き返したNo.40 野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40S SF14)までがポイントを獲得している。
No.39 国本雄資
No.2 アンドレ・ロッテラー
記者会見
2位 No.1 中嶋一貴 / 優勝 No.19 J.P.デ・オリベイラ / 星野一義 優勝チーム監督 / 3位 No.38 石浦宏明
- 今回は基本的にクルマが良かった。これが勝因です
優勝
朝のフリー走行でも手応えを得ていたので、決勝では雨でも晴れでもいける状態でレースに臨みました。レースではスタートが大事なので、うまく行くように集中し、逃げる展開にしたいと考えていました。パーフェクトとはいきませんでしたが、アンドレア(カルダレッリ)を抜いて、1コーナーに入るときにはもう(中嶋)一貴が近くに居ることがわかったし、油断できないなと思いました。
No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(LENOVO TEAM IMPUL SF14)
セーフティカーがコースインしてからは、トリッキーなコンディションになると思ったのですが、一貴に比べてダウンフォースがあると思ったので、リスタート時のストレートで彼に抜かれないように集中したいと思っていました。そこでリスタート直前の最終コーナーからうまく合わせ込んでリスタートしました。結果うまくリスタートしてギャップを広げることができました。
今回は基本的にクルマが良かった。これが勝因です。もちろんスタートも決まり、一番に立つことができたというのが大きいですね。これでチャンピオン争いにからむことができるようになりました。タイトルを狙うドライバー同士の戦いがフォーカスされることになるんでしょうが、とくに次のもてぎ戦あたりからそういう戦いになってくると思います。- これからうまく流れに乗っていきたい
2位
昨日の予選、今日のフリー走行も含め、ペースも流れも良くないという状況でしたので、正直決勝に向けては多少の不安というか、それ以前に予選のポジションも良くなかったので、あまり明るい見通しはなかったんです。レース直前の8分間のウォームアップでちょっとダウンフォースをつけて、フィーリングが良くなったので、“いいスタートが切れたら、行けるかな”という思ってレースに挑みました。
No.1 中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)
スタートがほぼすべてでした。僕のスタートも多分良かったんですが、周りは良くなくて…。いい具合にみんながイン側に行ってくれて、僕はアウト側に行ったら、1コーナーに行くまでに2番手に立てたので、今日のレースはほぼそこで決まったと思います。JP(デ・オリベイラ)よりかなりダウンフォースが少ないことはわかってたので、セーフティカーのあそこ(リスタート)は(逆転の)狙いどころだったので、そこで前に出られなかったのが残念です。ただレースペースを見てもちょっとJPにどのみちかなわなかったかな、とも思います。前に出られたとしてもどこまで(デ・オリベイラを)抑えられたかなと思うし、今日は2位で満足すべきかなと思います。
久しぶりのレースで、長くて暑かったですが、先にル・マン(24時間レース)で走っているし、体力的にも問題なかったので、結果をしっかり残すことができたので安心できました。自分としてもチャンピオンシップのリスタートを切ることができたと思うので、これからうまく流れに乗っていきたいと思います。- 最終的にチームやエンジニアの判断がすごく良かった
3位
昨日と今朝の状態で、フロントのサスペンション周りにトラブルが見つかって、昨日から違和感がずっとありました。それに昨日の予選ではタイヤ選択に失敗し、クルマのフィーリングも良くなかったのですが、それが決勝を前に改善されて、だんだんフィーリングも前回の岡山のように戻ってきました。決勝直前の8分間でこれは行ける! と手応えもあったので、スタートを決められればいろんな選択肢が広がると思いました。
No.38 石浦宏明(P.MU/CERUMO · INGING SF14)
スタート自体は悪くなくて、1コーナーを立ち上がった段階でも良かったんですが、国本(雄資)選手ともう一台左側のクルマに挟まれる形となってぶつかりそうになったんです。こちらはブレーキを踏んでよけたのですが、その間に3台くらい先行されました。そこでちょっと運が悪かったし、リスタートのときにはオーバーテイクボタンを押したものの、同じように(ボタンを)押していたアンドレ(ロッテラー)に抜かれてしまいました。
かなり流れが悪い中、どうやって戦っていこうと思った上に、前を抑えられていたので、自分のほうが速いということをピットに言ってたんですが、無線が壊れていたようで、向こうの声は聞こえているのにこちらの声が聞こえていないことがわかりました。そのあとは“前の方が遅くてペースを抑えられているのなら、イン側に寄って!”っていうやり取りを何度かしてコミュニケーションを取っていました。
その後、アンドレ(ロッテラー)との勝負になったのですが、アンドレが後ろを抑えているという情報は入っていました。(ピットイン後に)彼の前に出るにはまだまだタイムが足りないと、無線で言われたのでプッシュし続け、どんどんギャップを詰めていきました。この周では入ればアンドレの前に出られそうだというタイミングでやっとピットに入ったんです。予定どおり前に出ることができました。それから後は前後とも誰もいない状態で、できる限り最後までプッシュして走りました。
今回、僕はレース前に、早めのピットインがいいと言ってたんですが、逆にエンジニアは引っ張ったほうがいいんじゃないかと、なかなか作戦が決まらなかったんです。最終的にチームやエンジニアの判断がすごく良くて、巻き返して3位になれたので、今日のレースとしては満足しています。また(オーバーテイクボタンの)リーダーズレッドをキープできるんですが、僕自身からは見えないんですよね(笑)。今週末一度も見てません。でも次のレースもまたキープできるようにがんばります。- 逃げ出さないでチャレンジして良かった
優勝チーム監督
今回、練習そして予選からずっと調子が良くて、周りからも“今回は(優勝)いけるね”と言われ、プレッシャーが溜まるばかりでした。それほど心配はしていませんでしたが、アンドレア(カルダレッリ)がこれまでのスタートでうまくいってなかったので、JP(デ・オリベイラ)のデータを見ながら、スタートのやり方などをいろいろと言ってたんです。でも本人に任せるしかないからね。だから、“とにかく好きなようにやってみろ”って言ったんです。そしたら、本当に好きなようにやってくれたねぇ(笑)。まぁ、いい意味で次回のレースでパワーをつけてくれたらいいですよ。JPのことは(中嶋)一貴が後ろから追いかけてくるから、“もう止めてくれよ”っていう思いでしたね(笑)。
星野一義 監督(LENOVO TEAM IMPUL)
今回一番大きかったのは、チームがもうちょっといい結果を残したい、いいクルマにしたいという気持ちを汲んで、ちょっと料理した(スタッフの入れ替え)こと。それがすごくいい方向に行ったようです。チームのレベルがさらにアップしたようだし、常にチャレンジを続ける中、時には逃げ出したくなるときもあるんですが、でも逃げ出さないでチャレンジして良かったなと思います。ありがとうございました。