2013 SUPER FORMULA
Round1 Suzuka Circuit
- Suzuka Circuit
- 公式予選
決 勝 -
: 2013年4月13日(土)
: 2013年4月14日(日) -
鈴鹿サーキット : 5.807 km
決勝レース : 51 Laps [296.157 km]
Race
残り2周の大逆転劇。伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が初戦を制す!
小暮卓史はトラブルに泣き3位。平川が初レースでポイントを獲得。
No.40 伊沢拓也
4月14日(日)、鈴鹿サーキット(三重県)で2013年全日本選手権スーパーフォーミュラ開幕戦の決勝レースが行われた。No.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が、ラス2周で逆転して優勝。スーパーフォーミュラ最初のウイナーとなった。2位はNo.20 松田次生(Lenovo TEAM IMPUL)、3位にはNo.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)が入賞した。
違う作戦を採った伊沢と小暮
午前中は晴れ間が見えていたものの、午後になって薄曇り。しかし、気温は高く、過ごしやすい1日となり、鈴鹿サーキットには2万9000人の観衆が詰めかけた。
フォーメーションラップがスタートしたのは、午後2時30分。気温18 度、路面温度26度というコンディションの中、19台のマシンがいよいよ決戦に向けて滑り出して行った。1周の隊列走行を終えて、全車正式グリッドに着くと、シグナルオールレッドからブラックアウト。ここで抜群の動きだしを見せたのは、ポールポジションのNo.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。これに続いたのはNo.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)。予選3番手だったNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL)は若干加速で出遅れ、チームメイトのNo.20 松田次生(Lenovo TEAM IMPUL)が先行。デ・オリベイラは後方から迫ったNo.16 山本尚貴(TEAM 無限)とサイド・バイ・サイドでの競り合いとなったが、何とか4番手のポジションをキープした。この競り合いの隙に、No.15 佐藤琢磨(TEAM 無限)が5番手に浮上。チームメイトである山本の前に出た。しかし、山本はオープニングラップの130Rで琢磨を抜き返すことに成功。5番手に浮上している。
その直後、トップ争いに早くも動きが。最終コーナーから伊沢の背後にぴったりと付いた小暮が、アウトから伊沢をオーバーテイク。これでトップに立った小暮は、1周約1秒というペースで、伊沢とのギャップを広げて行った。これは、小暮が燃料を軽めにしてスタートしたいたため。その分ピットイン時の給油量は多くなるが、それまでにできるだけギャップを広げる作戦だった。一方、伊沢以下、多くの選手は満タンでスタート。リーンマップ(エンジンを燃費走行にする設定)を上手く使いながら、ピットストップでの給油を短くする作戦。小暮は全く逆目の作戦に打って出たことになる。
ピットイン後も小暮が先行し、伊沢が追う展開に
No.20 松田次生
その後方では序盤、5番手争いが白熱。デ・オリベイラと競っていた山本が3周目のシケインでバランスを崩すと、そこをNo.1 中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM'S)が突き、山本をかわして浮上してくる。その後も、この2人はテール・トゥ・ノーズで周回を重ね、11周目のシケインでは、山本が再び一貴をオーバーテイク。一貴も負けじと1コーナーで抜き返しにかかるが、ここは再逆転ならず。しかし、この激しいバトルの応酬に観客も沸いた。
さて、小暮の一人旅となった前半だが、その小暮がピットに向かったのは、22周終了時。予想通り給油時間が長く、小暮は34秒2という作業を終えてコースに戻る。
これに続いて、トップグループが動きを見せたのは、4周後。まず、26周を終えたところで松田がピットイン。これを見て、27周を終えたところでは、小暮に代わってトップに立っていた伊沢、デ・オリベイラの2人もピットに入った。しかし、デ・オリベイラはピットストップの定位置から若干前方に止まってしまい、ここで大きくタイムロスしている。
一方の伊沢は、20秒2と短い作業時間を終えて、小暮の前でコースに復帰。しかし、すでにタイヤが温まっていた小暮は、2コーナーの立ち上がりで伊沢のインに並びかけると、続くS字1つ目のアプローチで、アウト側から伊沢をかわした。さらに、山本と前半7番手を走っていたNo.38 平手晃平(P.MU/CERUMO・INGING)が28周を終えたところでピットインしている。そして、上位集団で最後にピットに入ったのは一貴。一貴がどんな作業時間&作業内容でコースに戻るか、場内の期待は高まっていたが、32周を終えてピットに入った一貴は、他陣営と同じ作戦。20秒という作業を終えてコースに戻ったが、ポジションアップは叶わなかった。
トラブルを抱えたマシンで小暮が見せた意地
No.32 小暮卓史
その後は、前半と違い、各車がトップ6それぞれが1秒から5秒差以内にひしめく接近戦となる。中でも、3番手争いとなった松田と山本の戦いは熾烈を極めた。クルマがアンダーステアで、次第にタイヤが厳しくなってきていた松田。対する山本はクルマのバランスも決まっており、再三、松田の背後に迫る。しかし、松田は抜かれないポイントに気をつけ、山本の攻撃を防御し続けた。
そして、最後のドラマが起こったのは、チェッカーまで残り5周を切ってから。小暮がトラブルを抱えたためだ。症状として、エンジンが吹け上がらなくなり、小暮のペースが落ちる。小暮はメインスイッチのオン・オフや車体を揺すってみるなど、復調させるためのあらゆる手段を講じたが、この状況が回復することはなかった。そして、レースも残り2周を切った50周目の130R。ストレートでスピードを伸ばせない小暮を伊沢がオーバーテイクし、トップに立つ。
No.8 平川 亮
さらに最終ラップのシケインでは、松田も小暮をアウトからかわしていった。小暮は、松田を僅差で追っていた山本にも、あと少しでかわされるところだったが、何とかここは踏ん張り、3位でチェッカーを受けた。しかし、終始レースをリードしていただけに、悔し過ぎる結果となった。一方、トップチェッカーを受けた伊沢は、レース内容として小暮が一枚上手だったということで、破顔一笑ではではなかったものの、幸先のいい優勝を果たしている。
また、予選8位からスタートしたNo.8 平川亮(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)は、スタートに失敗し、1周目で10番手までポジションを下げてしまう。だが、コンスタントなラップを刻み、ピットインも無難にこなす。そして、レース終盤には9番手に。ラストラップでは直前を行くNo.38 平手晃平(P.MU/CERUMO・INGING)がストップしたため、8位でゴール。若干19歳のルーキーは、なんと初レースで1ポイントを奪い取って見せた。
次戦、スーパーフォーミュラが開催されるのは、6月1日(土)〜2日(日)。その舞台は、大分県のオートポリスが舞台となる。昨年は、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGが初のワン・ツー・フィニッシュを飾った1戦だが、今季はどんな戦いが展開されるのか。期待していただきたい。
2位 No.20 松田次生 / 村岡潔 優勝チーム監督 / 優勝 No.40 伊沢拓也 / 3位 No.32 小暮卓史
記者会見
- 結果よりも自分の姿を(小暮選手の)ミラーに大きく見せたかった
優勝
絶対にスタートを決めようと思っていたのですが、(実際)いいスタートを切ることができました。1周目の時点で小暮(卓史)選手は作戦が違うというのが明らかだったので、すぐに抜かれてしまいましたね。その後はこういう戦い(小暮選手を逃がしすぎないよう、かつ自身は燃費走行を心がける走り)になるだろうということもあり、最初から最後までプッシュし続けました。セカンドスティントで小暮選手に抜かれたんですが、あとは結果どうこう、というよりも(小暮選手は)SUPER GTで一緒に戦っているチームメイトだし、結果よりも自分の姿を(小暮選手の)ミラーに1ミリでも大きく見せたいという思いやプライドだけで攻めていこうと思いました。
No.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
(今日のレースで)自分たちの作戦はすべてうまく遂行できたと思いますが、最終的に小暮選手に抜かれてしまったのは小暮選手たちが選んだ作戦とその速さを持っていた小暮選手が(僕らを)上回ったのだと思います。
300kmという長い距離を走ったことで、こういう結果(小暮選手のトラブルによる自身の優勝)をもたらしてしまったようで、僕としては勝負で勝ったというより相手のトラブルで勝ったことになるので、ウレシイというよりも戦いに負けたという思いだし、心の中では悔しく思っています。ただ、チームとHondaさんがシーズンオフにしっかりクルマを仕上げてくれたので、それに対しての結果が出たという意味では非常にうれしく思っています。
- 2位は大きな結果であり、苦しい中での最大限の結果だった
2位
朝のフリー走行ではタイヤがどう変化するかを見るために、最後まで走り続けたのですが、そこで課題になっていたフロントタイヤのアンダー(ステア)がきつくなって…。対策してレースに挑んだのですが、やっぱりそれでも足りませんでした。スタートは決めることができて、小暮選手の真横まで並ぶことができました。かわすまでは至りませんでしたが、3番手まで上がったので伊沢選手に着いて行こうと思ったのですが、そのとき、燃料が重い状態でプッシュしすぎたのでフロントタイヤを傷めることになりました。結果、クルマをコースに留めるのがやっとの状況でした。燃料が軽くなる後半は、多少改善されるかと思ったのですが、後半も同じようにフロントタイヤが厳しかったですね。
No.20 松田次生(Lenovo TEAM IMPUL)
そんな中、山本(尚貴)選手が後ろから接近する一方、『小暮選手にトラブル発生』っていう無線を聞いたので、めいっぱい走っていきました。最後は小暮選手とフェアにシケインで戦えたので良かった。また、今日の小暮選手は本当に速く、このままじゃ、今後はHonda勢にやられてしまうっていう危機感も持ちました。そこでの2位は僕にとって大きな結果となったし、苦しい中での最大限の結果でもあったので、これを機に、残り6戦、チャンピオンシップを考えてがんばっていきたいと思います。
(長距離レースでの表彰台は)もう何年以来でしょうか。 僕は一時期フォーミュラレースから抜けた(休んだ)ときもありましたが、開幕戦でまず2位に入ったことで、自分の中では復調してきてる部分も感じ取れたし、あとはもうちょっとチームワークを良くしていきたいですね。
- 最後の最後にこういうドラマが待ち受けているとは思いもしなかった
3位
すごく悔しいレースというか、300km走って最後の最後にこういうドラマが待ち受けているとは思いもしませんでした。長くレースをやっていると、いろんなことがあるなと感じました。今回、作戦が違ったので(伊沢選手を)パッシングすることができたんですが、伊沢選手とのバトルではかなりプッシュしていましたね。引き離すところか、差が縮まってきたし、最後はパワーもなくて2番手は死守できるかと思ったのですが、最後は松田選手がすごいブレーキングでシケインに来て、抵抗もできませんでした。山本選手にも抜かれそうになったですがギリギリ防ぐことができて3位でゴールできました。
No.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)
エンジンが吹けなくなったというトラブルは30周目以降、単独で走っているときはほとんど出なかったんですが、ちょこちょことなんかおかしかったですね。途中でバラバラってエンジンがいいはじめたのでおかしいなぁーと思ってたら、最後の3周は、高い回転数でのドライブができなくなりました。
(オーバーテイクボタンを押さなかったのかという質問に)それを使うということまで頭は回りませんでした(笑)。でも僕がおかしな動きをしていたので、後ろにいた伊沢選手は何やってるんだろうと思ったかもしれませんね。いろんなスイッチをオンにしたりオフにしたり、ちょっとでも長持ちさせよう(走り続けよう)と思いました。
松田選手とはこれまで何度もやりあって悔しい思いをさせられているんですが、またやっつけてやろうという思いはありますね(笑)。(若手選手を含めて)だんだんライバルが増えていくのは楽しいですし、速い人と争うのは楽しいので、こういう場所(表彰台)に帰ってこれてウレシイです。
- 我々は総合力で勝てたなと思います
優勝チーム監督
ドライバーの戦いを見る限り、トラブルがあったりいろいろありましたが、悔しい人、うれしい人がいるようでした。我々のチームは(その戦いを)象徴するように協賛企業さん中心に総合力で勝てたなと思います。伊沢君も言ってたようにシーズンオフからずーっとみんなで積み上げたものが結果としてトラブルも出ず、一定のペースを維持できて、トヨタさんにも勝てたというのが一番の収穫だったと思います。
村岡潔監督(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
総合力を証明できたので、これからも伊沢君にリードしてもらいながら、チームに関係する人が成長できれば……、という思いです。それができればいい形でタイトルを獲りたいですね。そういう意味ではいいスタートが切れました。目標は高く、淡々とレースを続けていきたいなと思います。