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Special Issue

SUPER FORMULA TECHNOLOGY LABORATORYTEXT: 両角岳彦

「勝負の確率」は論理的思考で決まる
2015 Round3 Fuji Speedway

両角岳彦

脚の“硬さ”は「路面–タイヤの摩擦」に応じて。

 前戦・岡山に続いて再び…。「今、このレースを『やる』側には立ちたくない」と痛感した瞬間から今回のレポートを始めよう。
 レース・ウィークエンドの初日、土曜日。朝から断続的に降っては止み、降っては止み、を繰り返していた雨が昼前には上がり、局地気象予報も「午後は降雨なし」というところに落ち着きつつあった。しかし背後に山並みが迫る富士スピードウェイの天候が思わぬ変化をみせることは、ここに通う人々なら何度も体験している。ちょうどそんな空模様の下、自ら小型フォーミュラカーを企画・製作・開発する「学生フォーミュラ」チームの大学生たちとともにチーム・ルマンのピットを訪れた。
 平川亮のマシンを担当する田中耕太郎エンジニア(学生フォーミュラのデザイン審査に参加した経験あり)が、サスペンション・セットアップとその確認方法の解説に始まり、学生たちの質問にも丁寧に回答していただいていたのだが、その間にも空を見上げて「胃が痛い…」と。2時間後に迫った予選に向けて、どんな路面に合わせたマシンを「造る」のか、学生たちと会話を続けながらずっとそればかりを考えていることが伝わってきた。他のトラック・エンジニア全員も、この時間帯は空を見上げ、局地予報や雲の動きを繰り返し確かめ、様々な調整項目を思い描いて、胃が痛くなる思いを味わっていたはずである。
 つまり、路面がどのくらい濡れた状態でタイムアタックをすることになるか、それに応じてマシン・セットアップを合わせ込む必要がある。これが「悩みどころ」になっていたのである。

 車両運動とサスペンションの基本設定の理論的関係は、車体に加わる慣性力(旋回時ならば遠心力)と、今日のレーシングマシンでは空力荷重の最大値を受け止めた時に、サスペンションの縮みストローク量が許容下限に収まるように主バネ(メイン・スプリング)の硬さを決める。遠心力を受けて車体が旋回外側に傾くロール運動に関しては、その動きに対して働くバネ、いわゆるアンチロールバー(ARB)の効果(反力)がそれに加わる。路面が濡れればタイヤとの間で発生する摩擦力が減るから、主バネとアンチロールバーはそれぞれの動きに対して発生する反力、つまりスプリングレートが低いものでも狙ったサスペンション・ストロークに収めることができる。そしてタイヤの接地荷重変動を小さくして路面をとらえ、摩擦力をより多く引き出すためには、車体とタイヤの間をつなぐバネの反力は柔らかいほうがよい。というわけで、ウェット路面に対しては主バネとARBのどちらか、もしくは両方を、よりバネ定数(スプリングレート)の低いものにするのが定石ではある。するとバネ系の振動特性も変化するので、ダンパーの減衰特性もそれに合わせて調整することになる。
 ここでSF14のサスペンション機構に目を移すと、フロントのARBとダンパーが細く絞られたモノコック前端の空間の中に収められていて、そこに手を入れるためのアクセスハッチも最小限の開口に止められている。もちろん車体骨格としてのモノコックの剛性を落とさないようにするためだが、アンチロールバーの硬軟調整や交換(バネ鋼棒をねじる機構が2タイプ、それぞれに鋼棒の太さの違いがあって合計5種類が用意されている)、ダンパーの減衰力調整には時間がかかる。とくにアンチロールバー全体を交換するとなると20分かそれ以上が必要だろう。フロントの主バネであるトーションバー・スプリングはモノコック前面から差し替えられ、リアはコイル・スプリング、ダンパー、ARB、ピッチング方向の動きを受けるサード(第3の)ダンパーはすべてトランスアクスルケースの外郭に取り付けられているので、交換や調整はすぐにできる。したがって、予選までの限られた時間の中でサスペンションのセッティングを大幅に変えようとするのであれば、フロントのアンチロールバー周辺の作業時間が「制約条件」となる。他の段取りも考えれば、予選開始30〜40分前にはどんな仕様で行くかを決断する必要がある。

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刻々と変化する「空」が「賭け」を求めた。

 しかし天候がどちらに振れるかの予測は、いつもの富士スピードウェイよりさらに難しかった。GTアジアのレース途中、つまり13時頃からまた雨が降り出し、路面はみるみる濡れてゆく。しかし予選30分前になると雨はやみ、風もあるので、マシンが一斉に走り出せばレーシングライン上からみるみる乾いてゆきそうな状況になってきた。雲が流れてくる富士山側の空には明るい帯も現れる。降るか、乾くか。こうなると局地予報ももはや役には立たず、どちらかに「賭ける」しかないところに追い込まれたエンジニアたちの胃は、さらにキリキリと痛んでいただろう。
 結果的に、雨足が止まったのは短い時間だけで予選が始まろうという時にはまた雨。Q1・20分間の途中からさらに強まる、という空模様の中でのタイムアタックとなった。当然、路面はフルウェットだが、コース上の水たまりや「川」の水深は浅く、車体底面が水膜に乗って滑走するのを避けるために地上高を上げなくてはならない、すなわちヘビーレイン対応のセッティングを施す必要はなさそうだ。
 最終的に予選2番手のタイムをQ3で記録したJ.P.デ・オリベイラは「最初に履いた(ウェット)タイヤが合っていなかった」とこの予選を振り返ったが、その意とするところは「ある程度走って溝が浅くなっていたタイヤを装着してコースに出たら、意外にグリップしなかった」ということ。現在のスーパーフォーミュラにおいて、ウェットタイヤは単一スペックで「競技会期中を通して使用できるウェットタイヤは最大4セット」と規定されている。しかし使用・未使用、減り状態などは規制されていないので、テストや実戦に使ってある程度磨耗したタイヤを「インターミディエイト」相当として準備しているチームも多い。しかし今回の富士スピードウェイの路面状況、雨量の変化に対しては、新品かそれに近い状態のウェットタイヤのほうが合っていたのである。
 一方、予選3セッションの全てで最速タイムを記録してポールポジションを獲得したA.カルダレッリは「我々(のチーム/車両)は磨耗したタイヤを持っていなかったので、最初から新品を投入した。Q2もそのまま走り、すでに暖まっているそのタイヤで行くか、新品にするか、エンジニアとも相談したが、ボクの判断で新品に履き替えてアタックした」と語っている。ウェットタイヤの場合、路面との間に入り込む水を排出するのが「溝」であって、水量が増えるほどその深さが必要になるわけだが、同時に新品タイヤは溝で切られた接地面の「ブロック」の角がシャープな直角になっていて、ここが舗装表面の水を切り、路面を捕える「エッジグリップ」という効果が期待できる。これは一般の乗用車用タイヤやスタッドレスタイヤでも「グリップ」を生み出す要素のひとつになっている。今回の予選では、新品ウェットタイヤの「エッジグリップ」がひとつの鍵になったという推論が成り立つ。

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「ウェット・セッティング」って何?

 それにしても、刻々と変化する水量、路面状態に対して、各車+エンジニアはどんな「ウェット・セッティング」を施し、どれが「当たった」のだろうか。そう考えて事後検証の証言を取りにパドックを歩いてみた。すると…
 予選1、2位を獲得したインパルは「(サスペンションの仕様に関して)特別なことはしていません。もちろんコーナリング・スピードが低下するのに合わせて、空力セッティングはダウンフォースを強めましたが」とのこと。前出の田中エンジニアも「(サスペンションに関して)特別な『ウェット・セッティング』なんてないですよ」と言う。他にも何人か、同様のコメントを返してくれたエンジニアがいた。もちろん、「車両の運動特性を『最適化』する基本のセットアップが見出せていれば」という前提においての話、であるはずだが。
 それに対して予選3番手を手にした中嶋大祐の車両は午前中のフリー走行の中にピット内でかなりの時間を費やしていたから、この時にアンチロールバーを含めたフロント・サスペンションのコンポーネンツ変更を行っていた可能性が高い。他にもルーキーながらQ2に進出したW.ブラーなど、何台かの車両は前述の「バネ系のセオリー」に沿って「ウェット・セッティング」を施して好結果につなげたのではないか。
 逆に山本尚貴をはじめ予選タイムが伸び悩んだ何人かの車両に関しては、ダンロップコーナーへのハードブレーキングで路面のうねりを通過する時など、フロントの上下動(振動)のピッチが速く、主バネの共振周波数が高い、すなわちバネレートが高い=硬いことをうかがわせるものが多かった。Q3に向けて路面が乾いていってコーナリング・スピードが通常のドライ路面レベルまで上がり、マシンに大きな慣性力と空力荷重が加わることを想定していたのではないか。そんな推測もできる。
 台風11号は西日本直撃から日本海側に抜けていたが、それに向かって吹き込む湿度の高い風が作り出す雨雲の気まぐれに翻弄された予選。その裏側では、知恵を巡らせ、賭けとしての要素も含めて決断し、そしてドライバーが感覚を研ぎ澄ませて最善の結果を追い求める、というドラマが19人・19台分、演じられていたのである。

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富士スピードウェイは「中速コース」である。

 一夜明けて。
 天候も、路面も、前日からは一転。ドライ路面での戦いに臨む。各チーム、エンジニアそれぞれに「富士スピードウェイ最速のマシン・セッティング」を組み立ててきたはず。しかし予選ではその仕様で走ることができなかった。どれだけのパフォーマンスを実現できたのかを確かめるのは、決勝レースの「一発勝負」だ。
 ここで『観察者』の側も改めて「富士スピードウェイというレーシングコース」の特質を確かめておく必要がありそうだ。とかく、「富士スピードウェイは日本有数の“高速コース”」といった表現が使われてきたが、本当に「高速コース」なのだろうか?
 それを確かめるのは簡単な計算ですむ。スーパーフォーミュラが走り、戦う6つのサーキットの、それぞれ1周のコース長をラップタイムで割れば「平均速度」が算出できる。その数値を比較したグラフをご覧いただこう。SF14で記録されたそれぞれのコースでの予選ベストタイムと決勝レースのベストラップの2種類を計算してみた。2015年に既に実戦が開催された鈴鹿、岡山、富士(予選は雨)と、富士については燃料リストリクターによる流量上限100kg/hで行われた2014年第2戦(2レース制)の予選、第3戦(250kmフォーマットの決勝)のレース中ベストラップも併記。そして残る3つのコースについては2014年のデータである。

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スーパーフォーミュラの戦いの舞台となる6つのサーキットの「周回平均速度」を算出・比較してみる。予選はポールシッターのラップタイム、決勝はレース中のベストラップで計算した。上3列は2015年の実績。富士スピードウェイの予選は雨/ウェット・コンディションで周回平均速度は大幅に低下している。そこで参考として2014年のデータも掲載したが、これは燃料リストリクターによる最大流量制限100kg/hで、今年よりも5kg/h多い。各サーキットの「個性」として、富士スピードウェイは長い直線と上り勾配のタイトターン連続、ツインリンクもてぎは「ストップ&ゴー」の回り込むコーナーと直線の組み合わせ、といったところがセッティング上の「味付け」要素となってゆく。

 このグラフと数字から一目瞭然なのは、周回平均速度において鈴鹿が圧倒的な「高速コース」であり、それよりも5%ほど低いのがスポーツランドSUGO。富士スピードウェイは燃料流量の上限値が高い、すなわちエンジン出力が高いにも関わらず、もう少し遅い「中速コース」なのである。オートボリス、岡山国際サーキットは「低速コース」に分類でき、予選の周回平均速度に比べてレースペースが遅くなっていることも共通している。回り込むターンが多くタイヤが傷みやすいことで、ドライバーがペースをコントロールして走るとか、燃料搭載量の影響が大きいことなどがこの傾向につながっているのではないかと思われる。
 あるエンジニアとの会話の中で「平均速度が決まれば、それに応じてエアロダイナミクス(空気力学的特性)をどの速度域に合わせるかが決まる。それを基本に、コースの特性に応じたアジャストをするのが、論理的なアプローチ」という示唆があった。たしかにそのとおりなのであって、だとすれば富士スピードウェイに対しては平均速度190km/hを基本にダウンフォース(揚力)とドラッグ(抗力)のバランスポイントを求めれば、コカ・コーラコーナー〜100R〜アドバンコーナー(旧称「ヘアピン」だがいまや中速コーナー)〜300Rと続く中高速セクションのエアロ・バランスが決まる、はずである。さらにこの速度域における空力特性は、最終コーナーの旋回から直線加速の立ち上がりにも効いてくることになる。
 空力荷重、すなわちダウンフォースによって「速さ」を得ている今日の競技車両だからこそ、その特性をコースに適合させる基本は「周回平均速度」にある、と考えてよさそうだ。

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「1周の速さ」か、「直線勝負」か。

 ここからの「コース特性に応じた味付け」を考える時に、 富士スピードウェイの「個性」のひとつ、長いストレートがポイントになることはいうまでもない。ここでどんな戦い方をするのか。とくに決勝レースではスリップストリームが効いた中からさらに車速を伸ばし、「ここぞ」という時にはオーバーテイク・システムの燃料流量10kg/hも投入して、到達速度をさらに高めて、1コーナーに向かうブレーキングに入るまでに前走車に並びかける、逆にそれをディフェンスする、というシーンが演じられる。エンジニアとしては(ドライバーも、だが)それを頭に置いて、自車のスタート・ポジションと、そこからの戦略を検討する中から、揚力と抗力のバランスポイントをオフセットするかどうかを導き出すことになる。
 ここでもうひとつ、今回の戦いの中から参考になりそうなデータを引き出すことを試みた。上位に入った者、あるいは特徴的な傾向をみせたドライバー+マシンをピックアップして、各セクターを走るのに費やした時間と、直線終端近くでの到達速度を拾い出し、比較できるグラフをまとめてみたのである。セクタータイムについては各ドライバーがレース中にベストラップを出した周回、直線到達速度については、オーバーテイク・システムを発動させたと思われる飛び抜けて速い値やスリップストリームで車速が一気に伸びたと思われる速い値、明らかにペースを落としたと見受けられる遅い値を除外した上で平均値を算出したものである。
 もちろん直線到達速度はドラッグを減らす、すなわちダウンフォースを削ることで速くなる。その一方で、周回平均速度レベルの中高速コーナーが続くセクター2のタイムは、ダウンフォースによるタイヤ荷重が働いたほうが速くなるはずである。上り勾配の中でタイトターンが続くセクター3は、空力効果よりもむしろ旋回性と、とりわけエンジンの出力をどれだけ「蹴る」力として使えるか、いわゆる「トラクション」がタイムに現れる区間であり、しかも距離があって平均速度が遅いために時間もかかり、ラップタイムの半分を占める。つまり、ここを走るタイムを切り詰めることの意味は大きい。これを見逃さないようにしたい。

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今戦・富士スピードウェイにおける直線終端付近の到達速度(下から上へ=上に伸びるほど速い)と、各セクターの所要時間(上から下へ=短いほどタイムは良い)を整理してみた。セクタータイムは各人のレース中ベストラップの時のもの、直線到達速度はとくに速い値(オーバーテイク・システム作動、スリップストリーム効果大と判断される周回)を除いた上での平均値である。
直線到達速度が上に伸びるほど、ダウンフォースを削ったセッティングだったと見ることができる。それに対してダウンフォースがブレーキング〜旋回〜加速開始の速さに最も大きく影響するのは100R〜アドバンコーナー〜300Rと中高速コーナーが連続するセクター2と考えられる。上り+タイトターン連続・平均速度も低いセクター3は空力荷重よりも、とくにトラクションの影響が大きく、かつドライビングによる差も現れやすい(所要時間が長いことも含めて)。しかし最終コーナー〜直線への立ち上がりはダウンフォースが効き、直線後半からコカ・コーラコーナー手前までのセクター1も最終到達速度だけでなく、そこに至る加速がタイムに影響する。オリベイラは、直線到達速度はこの中では最も伸びていないが、区間タイムはセクター1が2番手(最速はカルダレッリ)、セクター2も2番手(トップは1/100秒差で野尻)、セクター3は石浦を0.1秒以上離して最速(野尻、山本のホンダ2車はここで0.5秒前後後れを取る)。カルダレッリ、ロッテラーはレース中にタイヤ交換をしていないため、セクタータイム(ベスト)では不利。カルダレッリの空力セッティングは同チームのオリベイラのそれとは若干異なることがうかがえる。

 このグラフを見渡すと、大きな傾向としてやはり直線到達速度が低いマシン+ドライバーはセクター2が速いことが浮かび上がる。でもあまり大きな差ではない。逆に見れば、直線到達速度を高めても(ダウンフォースを削っても)ラップタイムの向上にはつながらない。しかし平川亮、小林可夢偉のチーム・ルマン2車と国本雄資は、最前列のインパル2車との間に3〜4車をはさんだグリッド・ポジション、あるいはさらに後方からのスタートを前提に、直線速度を伸ばしつつセクター2でも速さを失わないようなセットアップを狙い、ある程度成功していたのではないかとも推定できる。ただ小林は周回を重ねるにつれてラップタイムの低下が大きめに現れていて、こうしたセッティングの方向性と彼のドライビング・スタイルの両面からタイヤの消耗が厳しかった可能性がうかがえる。

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 ちなみに、予選終了後の記者会見でオリベイラは「我々二人のセッティングは別々のアプローチで、ボクのは去年ここで良かったので、それをベースにセッティングを進め、彼(カルダレッリ)は岡山戦のマシン・セッティングが良かったので、それを出発点にリファインしている。それが同じ速さに到達したのは興味深い」と語っている。今年のインパルの技術体制からしても(とくにこのレースから本来の狙いに沿った人員構成となった)、実際には両車のセットアップの基本思想は共通であり、その上に立って、オリベイラが「昨年、ここで良かった」という感触を得ていた内容を加えてチューニングする、というアプローチであったのではないかと推察する。その成果は前出の「セクタータイムと直線端到達速度」のグラフに明確に現れている。「直線到達速度の伸びは抑え、ダウンフォース・レベルを合わせたセクター2で速く、セクター3ではタイヤがしなやかに路面を捕えてトラクションを出し、最終コーナー立ち上がりではダウンフォースと合わせて駆動を路面に伝えて加速を良くする」という車両特性だ。スタートでトップに立つことに集中してそれをなし遂げたことで、オリベイラはこの特性を活かして誰より速く4.563kmのコースを駆けてゆける状況を掌中に収めた。それを脅かす存在はいなかったし、乱れをもたらすアクシデントもなく、戦いはここに決したのだった。

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決勝レース ラップタイム比較

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上位10車の決勝レース55周ラップタイム推移を見る。ポールシッターのカルダレッリがスタートに失敗。オリベイラが先頭に立ったことでレースの流れが決まった。そこからはセーフティカー・ピリオド終了直後の6周目に中嶋一貴がOTS作動、オリベイラもディフェンスで使って差を保った後は、コンスタントに他を0.5秒かそれ以上引き離すラップタイムを続けた。ピットストップでタイヤ交換した後、燃料重量がスタート時より軽いのと、新しいタイヤのグリップを活かして一気にペースを上げている。小林が1周目の混乱を切り抜けて3番手につけたが、その後ペースが上がらず、後方につけた何車かが“付き合わされた”こと、後半、さらにペースが落ちる中でポジションを守ろうとするドライビングをした周回のタイムが大きく低下している。自由に走れるようになってからの石浦のペースが良く、雨の予選で後方に沈んでいなければ、オリベイラと競り合うシーンが見られたかもしれないのが惜しい。

決勝レース ラップチャート

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決勝レースの周回毎順位とその変動を表したラップチャート。まずスタートで、グリッド3番手以降でクラッシュ発生、順位が大きく変動した。5周完了時までセーフティカー・ラン。その直後、6周完了が「ピット・ウィンドウ」が開く周回で、ここからピットストップが始まる。10周完了でまずロッテラーがピットへ。給油のみとして順位回復を狙い、後半で4番手まで上がったが、そこからペースが落ち(タイヤ磨耗のためか)、国本にかわされた。スタートに失敗したカルダレッリも11周完了でピットストップ、給油のみ。しかしセーフティカー・ランの中でダメージ修復のためにピットインして最後方に近い位置まで落ちていたので、そこからの順位回復は難しかった。上位グループのピットストップはレース中盤、ハーフウェイよりは前の周回で次々に行われている。

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