No.37 大嶋 和也
昨日の曇天から一転、秋晴れとなったスポーツランドSUGO。眩い陽射しの下、フォーミュラ・ニッポン第5戦の決勝が行なわれ、随所で激しいバトルが繰り広げられた。その戦いの中、ノーピット作戦を敢行し自身初の優勝を遂げたのはNo.37 大嶋 和也(PETRONAS TEAM TOM’S)。通常のピットイン作戦を採り終始プッシュを続けたNo.1 ロイック・デュバル(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が2位、No.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)が3位に入賞した。レース終盤にトップに立ったNo.19 J.P・デ・オリベイラ(Mobil 1 TEAM IMPUL)は、ファイナルラップでまさかのガス欠によりストップ。ノーポイントに終わっている。その結果、シリーズランキングでは、5位に入賞した No.32 小暮 卓史(NAKAJIMA RACING)がトップに浮上。オリベイラとデュバルが3ポイント差、ロッテラーが5ポイント差でこれを追うことになり、チャンピオンシップはますます混戦模様となった。
午後2時半、フォーメーションラップがスタート。この時点で、気温は21℃、路面温度は33℃まで上昇し、温かなコンディションとなる。1周の隊列走行を終え正式スタートが切られると、まず抜群の加速で小暮がトップに立つ。デュバル、No.8 石浦 宏明(Team LeMans)がこれに続いた。またスタートでの加速に失敗したオリベイラとロッテラーが1コーナーで並びかけるが、2台は軽く接触。アウト側にいたオリベイラは、ハーフスピンする形でバランスを崩す。さらに、これを立て直そうとカウンターを当てたところで、オリベイラは左フロントをNo.31 山本尚貴(NAKAJIMA RACING)の右リヤにヒット。山本はスピンを喫し、コース上にストップした。またオリベイラの方もフロントウィングを破損し、左フロントタイヤもパンクさせてしまう。後方では、2コーナーの入り口でNo.16 井出 有治(MOTUL TEAM 無限)がNo.18 平中克幸(KCMG)に追突。平中はコースアウトし、タイヤバリアにクラッシュ。ここでレースを終えることとなった。この直後、コース上には山本のマシンを回収するために、セーフティーカーが導入される。この間に、マシンにダメージを負ったオリベイラと井出はピットイン。オリベイラはノーズ交換やタイヤ交換だけでなく、給油も行って同一周回で隊列に戻った。
No.32 小暮 卓史
No.1 ロイック・デュバル
4周を終了しセーフティーカーがピットロードに戻ると、レースは再開。ここでポジションの入れ代わりが起きる。リスタート直前の最終コーナーから小暮の背後にピタリとつけたデュバルが、1コーナーでオーバーテイクに成功。トップを奪い返すと、2番手以降のマシンを大きく引き離し始めた。また6周目の 1コーナーでは、No.10 塚越 広大(HFDP RACING)がロッテラーをオーバーテイク。4番手に浮上している。しかし塚越は、14周目にスローダウン。ドライブシャフトに問題を抱え、駆動が路面に全く伝わらない状態となってしまい、リタイヤを余儀なくされている。この時点でのオーダーはデュバル、小暮、石浦、ロッテラー、No.2 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、大嶋となった。
上位陣のピットに動きが出始めたのは、62周のレースの3分の1が過ぎたあたりから。25周を終えてまず真っ先にロッテラーがピットに入る。その3 周後の28周終了時には石浦が。石浦のピット作業はロッテラーよりも2秒余り長かった。そのためピットアウトした時には、ロッテラーに先行される。さらに、30周を終えたところで、小暮がピットイン。リヤタイヤだけを交換する作戦を採った小暮は給油時間も短く、わずか10秒1というストップ時間でロッテラーの前でコースに戻った。そして32周を終えたところで、トップを走っていたデュバルがピットイン。やはり小暮の前で、コースに戻っている。その後小暮とロッテラーの争いは激化する。2本交換の影響から小暮はアンダーステアに苦しみ、ペースをなかなか上げられなかったため、ロッテラーが真後ろに迫る。 34周目の1コーナーではいよいよロッテラーからアウト側に並ばれるが、小暮が若干はらみ2台は接触。ロッテラーは軽くコースアウトする。だがすぐに体勢を立て直し、再び小暮に迫った。そして36周目の1コーナー、今度はインから小暮に仕掛けたロッテラーがオーバーテイクに成功。ポジションを上げた。さらに38周目の1コーナーでは、石浦がインから小暮に並びかける。2台はブレーキをロックさせサイド・バイ・サイドで軽い接触をしたものの、石浦がここで小暮をオーバーテイクし、やはりポジションを上げた。
小暮をオーバーテイクした後、この時点で5番手のロッテラーは猛チャージを見せる。ファステストラップを次々に書き換える勢いで、前を行くデュバルとの差を削り取っていった。一方、この時点でトップに立っていたのが大嶋。No.20 平手 晃平(Mobil 1 TEAM IMPUL)、オリベイラがこれに続いていた。大嶋はノーピット作戦を採っていた。またオリベイラもスタート直後のピットインの際に給油したことで、その後は最後までピットに入る予定なく走り続けていた。これに対し平手は最初からピットインを行なう予定であり、45周を終えたところでピットイン。この時、油温のアラームが点灯していたため、サイドポンツーンの掃除を行なってコースに戻ったが、アラームが消灯せず再度ピットインを余儀なくされポイント圏外に後退してしまった。
No.37 大嶋 和也
No.19 J.P・デ・オリベイラ
レースが終盤に入ると、トップ争いは激化。2番手のオリベイラが1分09秒台のタイムを連発し、前を行く大嶋を追う。そしてチェッカーまで8周を切った55周目の1コーナーで、オリベイラはあっさりとトップを奪った。その後オリベイラは1分10秒台にタイムを落としたが、そのままチェッカーまで突き進むものと思われた。ところが最終ラップの1コーナーで突如スローダウン。ガス欠のために、ストップすることとなる。惰性で転がるマシンをSPアウトコーナー外側の芝生に止めたオリベイラは、コクピットを下りるとガックリとうなだれ、その場に座り込んだ。
これで再度トップに立った大嶋は最後の1周を危なげなく走り切り、自身にとっての初優勝を果たす。10秒以上あった差を最後には2秒まで削り取ったもののデュバルは2位。ロッテラーは3位。さらに、石浦、小暮、伊沢と続いた。7位にはNo.7 ケイ・コッツォリーノ(Team LeMans)、8位にはNo.3 松田 次生(KONDO RACING)が入賞。いずれも今季初のポイントをゲットしている。 今日のレースの結果、さらに混沌としてきたタイトル争い。残り2戦でどんなドラマが待っているのか、全く予断を許さない状況だ。
2位 No.1 ロイック・デュバル / 優勝 No.37 大嶋 和也 / 3位 No.36 アンドレ・ロッテラー / 舘監督(PETRONAS TEAM TOM'S)