No.36 アンドレ・ロッテラー
前日に続き、温かな秋晴れとなったオートポリス。スタンドから多くのファンが、熱心な声援を送った。そのフォーミュラ・ニッポン第6戦決勝は、スタート直後に4台が巻き込まれる大きなアクシデントが発生。セーフティーカーがいきなり導入されるという波乱の展開となった。その中で抜群のダッシュを見せ、セーフティーカー中のピットイン作戦を見事に成功させたのが、昨日ペナルティーを受け5番手からスタートしたNo.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)だった。その結果、ロッテラーは昨年の第6戦以来、約1年2ヶ月ぶりとなる今季初優勝を果たした。同様にスタートダッシュからセーフティーカー中にピットインし、ロッテラーに続く2位となったのが、No.19 J.P・デ・オリベイラ(Mobil 1 TEAM IMPUL)。3位にはNo.8 石浦 宏明(Team LeMans)が入った。一方ロッテラー、オリベイラとともに激しいタイトル争いを繰り広げているNo.1 ロイック・デュバル(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とNo.32 小暮 卓史(NAKAJIMA RACING)はリタイヤに終わり、ノーポイント。ランキングトップはオリベイラとロッテラーが36ポイントで並んだ(優勝回数は同じだが、2位への入賞回数の多いオリベイラが1位)。さらに5ポイント差で小暮、8ポイント差でデュバルが続き、タイトル争いはますます混沌としてきた。
気温21℃、路面温度38℃というコンディションの中、午後2時30分にフォーメーションラップがスタート。1周の隊列走行を終え、注目のスタートが切られた。このスタートでフロントロウの2台、No.37 大嶋 和也(PETRONAS TEAM TOM’S)、No.20 平手 晃平(Mobil 1 TEAM IMPUL)がともに加速に失敗し、出遅れる。そしてこの2台の中央を突破するべく真ん中に飛び込んで行ったのが、セカンドロウの石浦とデュバルだった。ここでデュバルは平手と石浦の前に出たが、平手が若干右に動き、接触を避けるためにデュバルも右に動く。この時、石浦は右側に大嶋がいたこともあり、やはり接触を避けるために、アクセルをオフしてデュバルに進路を譲ろうとした。ところがデュバルが右側に動いてきた時に石浦の左フロントタイヤがデュバルの右リヤと接触し、デュバルは時計回りにスピン。コントロールを失い、大嶋の左リヤにヒットする。大嶋はこれにより、反時計回りにスピンしながらコースを横断する形に。また前方でのクラッシュを避けようと左側にラインを変えていたNo.2 伊沢 拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とNo.16 井出 有治(MOTUL TEAM 無限)はその大嶋のマシンを避け切れず、3台は激しくクラッシュ。デュバルも右側のガードレールに衝突し、一度に4台のマシンが戦列を去ることになった。
1コーナーにトップで飛び込んだのはオリベイラ。No.31 山本 尚貴(NAKAJIMA RACING)、平手、ロッテラーがこれに続く。そして直ちにセーフティーカーが導入。ここでいち早く、オリベイラとロッテラーがピットに飛び込んだ。ロッテラーは給油とリヤタイヤ2本のみを交換しコースに戻り、オリベイラは給油とタイヤの4本交換を行った。この作業時間の差で、オリベイラはロッテラーに逆転を許すことになる。また同周に石浦もピットイン。給油とタイヤ交換だけでなく、デュバルと接触した際に曲がったトーロッドを応急修理してコースへと戻った。この翌周には、No.29 井口卓人(DELIZIEFOLLIE/CERUMO・INGING)、3周目を終えた所では小暮が、それぞれピットインを敢行。コースへと戻っている。
5周目を終えたところでクラッシュ車両の回収が終わり、レースは再スタート。トップは山本。平手、No.10 塚越 広大(HFDP RACING)、No.7 ケイ・コッツォリーノ(Team LeMans)、No.3 松田 次生(KONDO RACING)がこれに続く。さらにその後ろに、ピットインを終えたロッテラー、オリベイラ、石浦、井口、小暮が続いた。 セーフティーカー中にピットインしなかったドライバーたちは、ここからピットインを終えた組を引き離し、充分なマージンを稼ぎたいところだ。しかし、なかなか大きなギャップを築くことが出来ない。その一方では18周目の第2ヘアピン手前で松田がスピンアウトし、エンジンを止めリタイヤ。松田の真後ろまで迫っていたロッテラーにとっては前が開けたことになり、トップを走る山本にギャップを広げられない好展開となる。
その後、21周を終えたところでトップを走っていた山本がピットイン。山本はその際にエンジンストールしてしまい、大きくポジションを落とす。さらに、25周を終えたところでコッツォリーノ、28周を終えたところで塚越がピットイン。ところが誰もロッテラーの前で戻ることは出来なかった。また前半、山本に抑えられる形となっていた平手はこの頃、毎周のように1分35秒台を連発しマージンを稼いでいた。そして32周を終えた所でピットイン。何とか4番手でコースに戻ることに成功する。平手はここからフレッシュタイヤのアドバンテージを生かし、前を行く石浦との差を削って行ったが、残り10周あたりから急激にペースダウン。燃料系のトラブルからガス欠のような症状になり、塚越、コッツォリーノ、山本らに次々とオーバーテイクされ、最終的に9位でゴールした。一方、レース中盤、思わぬトラブルに見舞われて戦列を去ったのが小暮。セーフティーカー中のピットインのタイミングが悪かったことで井口に抑えられる形となった小暮は、29周目に突然左フロントのナックルが破損し、コントロールを失う。そしてそのままコースオフしグラベルストップ。ノーポイントでレースを終えることとなった。
結局、50周のレースを終えてトップでチェッカーを受けたのはロッテラー。最初から最後まで、これを僅差で追ったオリベイラが2位。石浦は3位で、ようやく今季初表彰台を獲得した。以下、塚越、コッツォリーノ、山本、井口、No.18 平中克幸(KCMG)、平手の順でゴールしたが、レース後の再車検で塚越のマシンに違反が見つかり、塚越は失格。5位以下のドライバーはひとつずつポジションを上げた。平手も8位となり、貴重な1ポイントを得ることとなった。
2位 J.P.デ・オリベイラ/優勝 アンドレ・ロッテラー /3位 石浦 宏明