2012 Formula NIPPON
No.1 アンドレ・ロッテラー
7月15日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で2012年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第4戦の決勝レースが行われた。雨が降ったり止んだりという難しいレースで、No.1 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)が今季2勝目を挙げた。2位にも同じチームのNo.2 中嶋一貴が入り、ワン・ツー・フィニッシュを果たし、中嶋はドライバーズ・ランキングでトップに立った。
梅雨特有の不安定な天候となった第4戦の決勝日。この日は、朝から雨が降ったり止んだりというハッキリしない天候となった。全車がダミーグリッドについた時点では雨は上がっており、路面も完全なドライだった。だが、湿度は高く、気温は26℃、路面温度は33℃と蒸し暑いコンディションとなった。その後、フォーメーションスタートが近づくと、再び雨が舞い始める。ここで唯一タイヤをレインに交換したのは、No.3 安田裕信(KONDO RACING)。その他の17台は午後2時、スリックタイヤのまま1周の隊列走行に向かった。
正式スタートが切られると、好ダッシュを見せたのは2番手スタートのNo.7 大嶋和也(Team LeMans)。ポールポジションのNo.2 中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM'S)も、スタートはまずまずだったが大嶋に先行を許し、2番手に後退する。予選3番手のNo.41 塚越広大(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はスタート直後の混乱の中で、6番手にドロップ。4番手グリッドのNo.39 国本雄資(Projectμ/cerumo・INGING)が3番手に浮上した。この国本に続いたのは、8番手グリッドからスタートしたNo.1 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)。得意のロケットスタートを決めると、1コーナーでは一番イン側のラインをキープ。前方の選手たちがブレーキングを遅らせて、ラインがワイドになったところで小回りすると、そこからの加速を生かして4番手に浮上する。さらにオープニングラップで、国本のテールに食らいつくと、ストレートでオーバーテイクし、早くも3番手まで浮上してきた。その翌周の1コーナーでは、2番手の一貴がオーバーテイクボタンを使って、大嶋の攻略を試み、一旦前に出る。だが、ブレーキングで一貴は若干オーバーラン。大嶋がトップを守った。これにロッテラーが肉薄する形でレースが進行していく。その後方では、3周目のコカ・コーラコーナーで、No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)が国本をオーバーテイク。さらに4周目の1コーナーで塚越、12周目の1コーナーで国本をかわしたNo.20 松田次生(TEAM IMPUL)が5番手まで浮上し、そこからチームメイトのデ・オリベイラを追う展開となっている。
No.7 大嶋和也
レースが一旦スタートすると、雨は小康状態になっていたが、時折セクター3方向から雨が舞ってくる状況。その影響で、各ドライバーのギャップも広がったり縮まったりを繰り返していた。特に、レース折り返しの25周過ぎからは一気に雨脚が強まり、セクター2の途中からセクター3にかけては、水飛沫が上がる状態となる。そこで前半、なかなかペースを上げられなかった国本と塚越は、29周を終えたところでピットイン。給油と同時に、レインタイヤに交換して一発逆転に掛けた。一方、トップ集団はこの濡れた路面の中でも、スリックタイヤのまま我慢の走行。一時はレインタイヤ組の方が、1周あたり4〜5秒も速いという状況となったが、天気予報で「雨は止む方向」と言われていたため、コース上に留まった。この中で突然ペースが落ちたのはロッテラー。エンジンの調子に問題を抱えたロッテラーは、30周を終えたところから少しずつ引き離され、一時は一貴から6秒近く遅れることとなった。このため、最後は大嶋と一貴の一騎打ちになるかと思われた。
No.2 中嶋一貴の後ろに迫るチームメイトのNo.1 アンドレ・ロッテラー
そのトップ集団が、ようやくピットに入ったのは、55周のレースも残り15周あまりとなった時点。まず最初に動いたのは2番手を走行していた一貴。39周を終えたところでピットに入った一貴は、タイヤ交換は行わず、給油作業だけを行ってコースに戻る。これを見て、大嶋が翌周ピットイン。同じく給油作業だけでコースに戻るが、コースイン直前に問題が発生。ピットロードリミッターのスイッチが解除されず、大きくタイムロスし、一貴の先行を許すことになった。さらに、この翌周にピットに入ったのは、ロッテラー。ロッテラーも給油だけ終えると、大嶋の後ろでコースに戻った。
この頃、路面は再び乾き始めていたが、このコンディションの中でロッテラーのエンジンが復調。ここから激しい追撃が始まった。「まだ少しポケットの中に隠している部分があったんだ」というロッテラーは、最終盤、またしても雨がパラつきはじめると、抜群のマシンコントロールを見せて、48周目には大嶋とテール・トゥ・ノーズ状態に。逃げる大嶋は、オーバーテイクボタンを利用してポジションを守ろうとしていたが、49周目の1コーナーでは、ブレーキングで若干オーバーラン。そこを見逃さず、ロッテラーが2番手浮上に成功する。これで前が開けると、ロッテラーはさらに猛プッシュ。特にセクター2で大きくタイムを伸ばして、トップの一貴に迫った。
No.8 ロイック・デュバル
No.20 松田次生
そして、残り3周というところで、2台はやはりテール・トゥ・ノーズに。この周のダンロップコーナーに入るところのブレーキングで、一貴がわずかにミスすると、ロッテラーはやはりチャンスを見逃さず、13コーナーでインに飛び込むと、いよいよトップに浮上した。この翌周には、そのロッテラーもダンロップコーナーでブレーキングミスを犯すが、一貴が再逆転するまでには至らず。そのままロッテラーは逃げ切り、劇的な展開で今季2勝目を挙げた。一貴は2位フィニッシュながら、昨日のポールポジションと合わせて、9ポイントを獲得。ランキングではトップに返り咲いている。
3位には大嶋が入る。4位は終盤に松田とNo.8 ロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO)が激しいバトルを繰り広げ、ラスト3周で松田を抜いたデュバルとなった。
2位 No.2 中嶋一貴 / 優勝 No.1 アンドレ・ロッテラー / 優勝チーム 舘 信秀監督 / 3位 No.7 大嶋和也