SUPER FORMULAの最終戦が楽しみで仕方がない、SUPER FORMULAアンバサダーのイゴール・フラガです。
いよいよ今週末はスーパーフォーミュラ2023年の最終戦が行われます。今年は最初から最後まで何が起こるかわからないシーズンとなり、見ている側としてはこれまでにないすごく面白い展開になったと思います。鈴鹿の最終戦を前にして、今シーズンの全体を振り返っていきたいと思います。
今年のスーパーフォーミュラのマシンはリニューアルされ「SF23」と名付けられました。シャーシ自体は去年と同じものを使っているんですが、エアロパッケージやタイヤのコンパウンドで天然素材を使ったり、後ろの車が前の車を近くで走りやすくしたり、レースをもっと面白くするように色んな工夫がされました。なぜそんなに近距離で前の車を追うのが難しいかと言うと、トップカテゴリーのフォーミュラカーは車の全体がもう「羽の形」をしています。ただ、車の場合は「飛ぶ為の羽」じゃなく、「車を地面に押し付ける役割の羽」を使用しています。そしてその羽は風が当たれば当たるほど機能します。なので 前に車がいると後ろの車に風がほとんど当たらなくなり、羽の効果もだいぶ薄れてしまい、コーナーで同じスピードを駆け抜けるのがほぼ不可能になってしまいます。それを少しでも改善するためにエアロパッケージが大きく変更されました。
そんな大きな変更をされた車に対して、シーズンが始まる前には2日間のテストしか行われませんでした。なので、どのドライバーやチームが強いかは富士の開幕戦になってからようやくわかることができました。新しいタイヤのコンパウンドに対してデータも本当に少なかったので、どういう展開がレースに待ち受けているのかも全然読めない状況でした。そこで前半戦をものすごいパフォーマンスを発揮していたのはTEAM MUGEN、P.MU/CERUMO・INGING、そしてTEAM TOM’Sでした。初戦ではリアム選手が参戦初戦で見事優勝し、第2戦ではチームメイトの野尻選手が負けじと優勝を飾り、開幕戦の富士ラウンドではTEAM MUGENが制しました。第3戦では宮田選手が念願の初優勝を獲得しました。それからはこの3人が優勝争い、そしてタイトル争いを繰り広げてきました。
シーズン序盤で非常に良いパフォーマンスを見せていた坪井選手はシーズンの終盤に入り苦戦を強いられています。予選のペースが非常に良くて、レースペースがもう少し伸びれば優勝も目に見えていました。ただし最後の 2 戦から他のチームがパフォーマンスアップしたのか、予選でもなかなか前にでられなくなりました。ただ今年の鈴鹿では今年のベストリザルトの2位を獲得しているので、ここでまた良いパフォーマンスを発揮してくるかもしれません。
逆にTEAM DANDELION RACINGセットアップなどに苦戦し、シーズン折り返し地点の合同テストでセットアップで何か見つけたのか、そこから非常に良い流れで来ています。牧野選手は第6戦の富士で今年初ポール獲得し、レースでは2位でフィニッシュしました。その前の菅生でも表彰台に乗っており、鈴鹿の最終戦の期待が高まります。チームメイトの太田選手も予選ではかなりいいパフォーマンスを発揮しているんですがなかなかスタートが決まらず、決勝では結果につなげられていません。ただしスピード自体では牧野選手と比較しても負けていません。
そして今年のTEAM IMPULは予選でとても苦戦していて、後方のスタートが多い中、平川選手はレースでの凄い追い上げで3回も表彰台に登っています。もう一人はTGM Grand Prixの大湯選手。ポールを二回獲得していますが、レースの方で苦戦しており、第7戦の茂木で表彰台に立つ事ができまた。シーズンを通して記憶に残るレースが本当にたくさんあったと思います。でもラスト2大会はさらに上回る事を期待しています。
チャンピオンシップのトップ3がたったの10ポイント差で、チャンピオンシップ自体には関係していなくとも、レースで上位争いに入ってくる選手が現れそうで見逃す事ができません。誰が勝とうと、ファンからすると本当に素晴らしいシーズンだったと思います。皆さんもぜひ最終戦を現地で観戦しにきてください！

Written by イゴール・フラガ
日本生まれの日系ブラジル人レーシングドライバー。幼い頃からカートのタイトルを獲得し、その後多数の国でF3に参戦し好成績を残す。同時に「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」のワールドチャンピオンを獲得し、23年はSUPER FORMULA Lights、SUPER GTに参戦。e-Motorsports界でも有名なリアル＆バーチャルの『二刀流』ドライバーとして活躍している。