宮田莉朋が3位フィニッシュで初戴冠! 太田格之進が有終の美を飾る
2023.10.29
3位表彰台を獲得し初のドライバーズ・タイトルを獲得した宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
見事な秋晴れとなった10月29日(日)、三重県・鈴鹿サーキットでは、いよいよ今シーズンを締めくくる全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦・第22回JAFグランプリが行われた。このレースはタイトル争い決着の1戦となったが、その中で予選2番手から嬉しい初優勝をもぎ取ったのは、昨日の第8戦に続いて抜群のスタートを決めた太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。スタートの出足が少し遅れたリアム・ローソン(TEAM MUGEN)が2位、スタート直後の1コーナーで野尻智紀(TEAM MUGEN)をかわしたのが決め手となった宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)が3位。スタートでひとつポジションを落とした野尻は、終始なかなかペースが上がらず、4位でフィニッシュした。その結果、宮田が今シーズンのドライバーズタイトルを獲得している。
午前中に行われたノックアウト予選から約4時間のインターバルを経て、決勝に向けてのスタート進行が始まり、各ドライバーは8分間のウォームアップ走行を行う。ここでトップタイムを出したのはローソン、野尻がそれに続いた。これに対して、宮田はマシンの確認を行っただけで、プッシュしたラップは見せなかった。その後、各ドライバーはダミーグリッドへ。午前中と比べて追い風が強まったこともあり、ダミーグリッド上ではフロントのトーションバーを交換したり、車高を微調整するチームも見られた。
午後2時30分には、気温20℃、路面温度29℃と、昨日よりも少し暖かいコンディションのもと、フォーメーションラップがスタート。笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)と大津弘樹(TCS NAKAJIMA RACING)が欠場となったため、20台のマシンが1周の隊列走行に入る。そして、全車が正規グリッドに着き、後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。31周先のチェッカーフラッグに向けて、全車が一斉にスタートを切った。
ここで前日に続いて抜群の蹴り出しを見せたのは、予選2番手の太田。PPのローソンは若干動き出しが鈍る。ローソンは後方の野尻を警戒してラインを中央に振り、野尻の鼻先を抑え込んだが、太田の先行を許した。ローソンに詰まってしまう形となった野尻は3番手のままだったが、1コーナーでは予選4番手の宮田が早くもオーバーテイクシステムを作動させ、アウトから豪快に野尻を抜き去っていった。
トップに立った太田は、オープニングラップから飛ばしに飛ばし、1分41秒台のタイムを刻む。2周を終えたところでは、2番手のローソンに対して早くも1秒438というギャップを築いた。しかし、4周目あたりからは、逆にローソンが太田とのギャップを削り取っていく展開となり、7周を終了したところでは1秒046まで迫る。また、3番手の宮田もローソンに迫り、一時1秒692まで開いた差を、同じ7周終了の段階で1秒359まで縮めてきた。これに対して、野尻は少しずつトップ3台に引き離されていくことに。また、トップを守っていた太田は、この頃になるとリヤタイヤのグリップダウンを無線で訴えている。そのため、タイヤ交換のウィンドウが開いてすぐに太田はピットに入るのではないかと思われた。
しかし、周りのドライバーも同じような状況だとチームが伝えると、太田はそのまま走行。一方、10周を終えると、松下信治(B-Max Racing Team)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)、福住仁嶺(ThreeBond Racing)、ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)がタイヤ交換のためにピットイン。その翌周には、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、小高一斗(KONDO RACING)、ラウル・ハイマン(B-Max Racing Team)もピットに入る。そして、トップ集団では、12周を終えたところで宮田が真っ先にピットロードに滑り込んだ。クルーは6秒2という素早い作業で、宮田をコースに送り出している。
この宮田の動きを見て、TEAM MUGENは、ローソンに対してプッシュを指示。そして、13周を終えたところでローソンがピットロードに滑り込む。こちらもクルーは6秒5という作業でローソンを宮田の前でコースに戻すことに成功した。しかし、アウトラップのタイヤの温まりに苦労したというローソンの背後に、すでにタイヤが温まっていた宮田が迫る。ヘアピンでは真後ろまで迫った宮田。しかし、ここはローソンがインをがっちり守り、宮田はアウトにマシンを振った。そこからの200Rでもローソンは宮田の先行を許さなかった。
そして、この2台に続いて、14周を終えたところでトップの太田がピットイン。クルーは5秒4という驚きの早さでタイヤ交換を終えると、太田をローソンの前でコースに戻すことに成功した。ここから太田は踏ん張りを見せる。太田の前にはまだピットに入っていないドライバーたちのトラフィックが現れたが、太田、ローソン、宮田はそれを1台ずつかわしていった。
一方、太田がトラフィックに遭遇している間にプッシュしたのは、前が開けた野尻。だが、野尻のタイムは1分42秒台の真ん中から43秒。なかなかペースが上がらない。これに対して、タイヤ交換を行なった太田、ローソン、宮田の3人は、1分41秒台後半から42秒前半のタイムを刻んでいた。
23周を終えたところでは、まだピットに入っていなかった野尻、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、山下健太(KONDO RACING)がようやくピットイン。野尻のクルーも素早い作業を見せて、野尻は松下信治(B-Max Racing Team)の前でコースに戻る。しかし、冷えたタイヤの野尻を松下は逆バンクで捉えていった。野尻は、そこからニュータイヤのグリップを生かして、26周目のシケインで松下を逆転。4番手に再浮上したが、すでに3番手を走る宮田とのギャップは15秒以上まで開いていた。
その後、レース終盤に入って緊迫したのはトップ争い。一時は2秒以上に開いていた差をローソンがジワジワと詰め始め、27周を終えたところでは0秒926まで縮まってくる。その翌周には太田がその差を再び1秒042まで広げたが、29周を終えたところではまたしてもローソンが接近し、その差は0秒768。それでも、太田は最後の踏ん張りを見せて、ポジションを守り切る。そして、31周を終えてトップチェッカー。1年の締めくくりとなる一戦で、涙ナミダの初優勝を飾った。これに続いたのは、”最後の10周必死でプッシュした”というローソン。さらに宮田が3位でゴールし、最後も表彰台で締めくくった。野尻は前の3台には届かず4位。以下、最終盤に松下をかわした坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が5位、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が6位、松下が7位、国本雄資(Kids com Team KCMG)が8位、山下健太(KONDO RACING)が9位、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が10位と、ここまでがポイントを獲得している。
その結果、トータルで宮田は114.5ポイントを獲得し、見事にチャンピオンタイトルを獲得。トヨタエンジンユーザーのドライバーがチャンピオンタイトルを獲得するのは、2019年のニック・キャシディ以来4年ぶりとなっている。また、今日のレースを2位で終えたローソンは予選PP分を加えて106.5ポイント、野尻は106ポイントとなり、ローソンがシリーズ2位、野尻が3位。残念ながら、野尻の3連覇はならなかった。
今シーズンも開幕から激戦となった全日本スーパーフォーミュラ選手権。12月には早くも1年の締めくくりとなる合同テスト&ルーキーテストがやってくる。年が明ければすぐに来シーズン。来年はどんなドライバーが顔を揃えるのか、またどんなドラマが待っているのか。今から新しいシーズンが待ち遠しい。
初優勝を果たした太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)