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コラム【武士が斬る!】vol.11 役者ぞろいの今期、誰が勝ってもおかしくない!

2024.04.19

皆さん、こんにちは!SUPER FORMULAオフィシャルアドバイザーの土屋武士です。

 

先週の鈴鹿F1日本GP角田裕毅選手が素晴らしい走りでみんなの期待に応えてくれましたね!興奮しましたし、日本中に勇気と感動を与えてくれたと思います。今年の鈴鹿には現在SUPER FORMULAに参戦中の岩佐歩夢選手、昨年まで走っていた平川亮選手リアム・ローソン選手もいましたし、岩佐選手はフリー走行でのF1ドライブも達成して、日本のみんなにとってこの世界のステージが一段と身近に感じられるようになって来たと思います。その牽引役は間違いなく角田選手ですし、彼には日本人がまだ達成していない表彰台の頂点を感じさせてくれます。エンジンではHondaが何度も優勝を飾っているので、ドライバーとしての世界の頂点を期待していますし、応援したいですね!! 

 

岩佐歩夢選手

 

そんなF1鈴鹿の1ヶ月前にSUPER FORMULAの開幕戦が開催されました。例年にはない3月という早い開幕戦でしたが、こちらでも素晴らしいレースが展開されました。年々争いが拮抗して、コンマ1秒遅れるとポジションが5つも下がるような状況は、さらに激しさを増してきた印象です。これはドライバーの技量だけではなく、セットアップの良し悪しや、コンディションへの対応の時の選択が大きく影響してきています。よりチームとの綿密なコミュニケーションが必要となってきている状況なのかなと見受けられました。 

 

第1戦鈴鹿

 

その根拠の一つとして、今年初参戦の実力派ルーキーのFIA F2チャンピオンのテオ・プルシェール選手と同シリーズ4位の岩佐選手の二人は、シーズンオフの好調具合とは裏腹に、予選で上位に食い込めませんでした。二人ともに「こんなはずではなかった…」と感じていることと想像しますが、レースの中でたった一つ、選択をミスしてしまうだけで順位を大きく落としてしまうことになるのが今のSUPER FORMULAだと思います。その中で競い揉まれていくことにより大きく成長できるシリーズだといえるのだと。F1の関係者たちが候補生たちの最後のステップにSUPER FORMULAを選んでいることも合点がいきますね。プルシェール、岩佐の両選手もここで足踏みをしているような選手ではありません。きっと、この開幕戦の悔しさをぶつけてくると思うので、二人の動向に目が離せないですね。 

 

さて、そんな開幕戦予選では阪口晴南選手が自身初のポールポジションを獲得!これまでも速さはあるのになかなか結果に結びついていない印象でしたので、“やっとか”という感じで意外ではなかったです。このポールポジションの会見で「苦戦しているドライバーに対して“ダメ”だと思わないでください。何かがかみ合わなくて沈んでるだけで、みんな素晴らしいドライバーばかりなので」と、これまで低迷が長かった阪口選手だからこそ言えるコメントを残しています。私も本当にそう思います。タイムの良し悪しにはたくさんの要因が絡んでいます。阪口選手は自分を保つために、人には見せないような苦悩を経験してきたんだと思います。原因があっても“プロ”はあえて発言をしないことがあります。チームを守るために自分が犠牲になることも。阪口選手のこの発言は、自身がたくさんのことをグッとこらえてきた時間があったことを意味しているのではないでしょうか。だからこそ、苦しい思いをしている選手がいることを皆さんに“お知らせ”してくれたんだと思います。改めて素晴らしいポールポジション、おめでとうございます!!本当によかったね(^^) 

 

阪口晴南選手

 

そして決勝は気温と路温が非常に低く、スタート直後とタイヤ交換後のアウトラップに焦点があてられる状況でしたが、ふたを開けてみれば難しいタイヤの冷えたアウトラップで誰も足を取られることなく、2周目の国本雄資選手小高一斗選手のアクシデントによりセーフティーカーが出ましたが、それ以外はクリーンなレースとなりました。アウトラップについては多くの陣営が「何か起こるのではないか?」と不安だったと思いますが、「やっぱりみんなプロですね(笑)」と、当事者のドライバーたちがコメントしていました。 

 

この開幕戦をさすがの走り、そしてチームワークで制したのが野尻智紀選手チーム無限です。予選でもQ1トップ、Q2も途中までは圧倒的な区間タイムでしたが後半失速して3番手からのスタートでした。しかし決勝になると、フロントロウの二人を出し抜きホールショットを決めてからの落ち着きとマネージメントは素晴らしく、近年のSUPER FORMULAを引っ張ってきたと言える野尻選手の真骨頂だったと思います。こういうレースをさせたら誰も敵わない、そんな危なげのない走り、そしてピットタイミングもタイヤ交換作業も完璧にこなしたうえでの盤石の優勝でした。昨年までの「3連覇」にこだわっていた部分も荷を下ろせて、すごく自然体にレースをしている野尻選手の表情を見て、リラックスしている分、よりレースに凄みが出たように感じました。今年も野尻+チーム無限は強いと、そう感じさせるに充分なレースでしたね。 

 

第1戦鈴鹿

 

そして2位にはKONDO Racing山下健太選手。オフのテストから力強い走りがコーナーを見に行くと伝わってきていたので、今年のヤマケンは来そうだぞと思っていましたが、やはり来ましたね!(ちなみにSFgoアプリのSF BINGOでは決勝2位 山下健太、決勝3位 山本尚貴を当てました(^-^v ) もともと速さも強さも兼ね備えている選手なので、これくらいは当たり前だとは思いますが、山下選手の今年への意気込み、というか覚悟はすごく感じます。気づいたら8年目のシーズンになるので、後がないと本人は感じているのでしょう。私のGTのチームでも乗ってくれましたが、ある意味ヤマケンほど“レーサー”なドライバーはいないと感じるドライバーです。どの辺りが、そう感じるのかはまた機会があればお話ししますが、生粋のレーサーの躍動を今年は見守りたいと思います。 

 

見守ると言えば、18歳でデビューしたJuju選手のこともお話ししないわけにはいきません。日本人女性で初とか、史上最年少とか、いろいろありますが、この日本トップフォーミュラのカテゴリーはそんなに甘いものではありません。J SPORTSの放送でもゴール後に言いましたが、このカテゴリーに乗ったことがある人でなければ、本当の大変さは分からないでしょう。私もトップフォーミュラで長年走ってきましたが、Juju選手のこの開幕戦の走りは大きな驚きでした。まずフィジカル的に走り切れるかどうかというハードルを、寒い時期の鈴鹿でクリアしたことは本当にすごいことだと思います。高速コーナーが多く、路面のμが高いこのサーキットは体力的に非常に厳しく、大きなGとの戦いになります。その中で決勝中のラップタイムは非常に安定していて、しっかりとこの舞台で走れることを証明しました。もちろんラップタイムではまだまだ競争力のある所にはいませんが、経験値としては少なく、まだこれから成長していくことを考えると、非常に楽しみな存在になりそうだなと感じています。長いレースを走り切り身体がGを覚えたので、この先はJuju選手にとってまた新しい景色の中でドライブできることと思います。今回はオフのテストを重ねた鈴鹿ということもあり、今後のサーキット全てがSUPER FORMULAでの初の走行ということを考えると苦戦は免れませんが、そう言ったことも踏まえて、今後の成長を見守っていきたいなと思います。いやいや、新しい風が吹くというのはいいですね! 

 

Juju選手

 

そしてこのレース、私のハイライトは何といってもPONOS NAKAJIMA RACING山本尚貴選手の復活です。昨年9月、スーパーGTの大クラッシュで入院、そして手術を経て、この開幕戦にカムバックしました。しかもそれだけでなく3位表彰台…。山本選手については、クラッシュ後から私自身が少し近くで見てきたことがあり、今回のコラムでは話しきれないので、別のコラムで話をさせていただこうと思います。本当によかった、帰ってこれて。。。ファンのみんなも山本選手の走る姿に大きな感動をもらえたと思います!本当にお帰りなさい!! 

 

第1戦鈴鹿

 

まだまだ話したいことやフォーカスしたい選手がたくさんいるんですが、今回はこの辺にしておきますね。気がかりなことは、オフのテストで好調だったのに、本戦で調子が出なかった選手が多数いるということです。牧野任祐選手はその筆頭ですし、坪井翔選手も。全選手の予選のオンボードをSFgoアプリで見たんですが、坪井選手の予選アタックのコーナリングを見ていると、順位が下なのが謎なくらいです。阪口選手のコメントにもありますが、“何かがかみ合っていないだけ”という選手が多数いそうなことがSFgoアプリから見て取れますので、皆さんも是非チェックしてみてくださいね。 

 

ということで、2024年シーズンも本当に役者ぞろいで誰が勝ってもおかしくないドライバーばかり。そんな中で今年は誰がチャンピオンになるのか?!私も楽しみながら大好きなSUPER FORMULAを追いかけ、そして盛り上げていきたいと思います。今年もよろしくお願いしますね!では次戦オートポリスでお会いしましょう!! 

 

written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシイングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。

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