冬晴れとなったフリー走行から一夜明けた3月8日(土)の三重県鈴鹿サーキット。この日は前日から一転して曇り空の朝を迎え、冬のような冷え込みとなった。その寒さを吹き飛ばすかのように、午前9時50分からは全日本スーパーフォーミュラ選手権開幕戦のノックアウト予選が行われ、22名のドライバーたちによる熱いタイムアタック合戦が繰り広げられている。その結果、今季開幕戦のPPを獲得したのは、野尻智紀(TEAM MUGEN)。野尻のPPはこれで通算20回目。シリーズのレジェンドでもある本山哲の最多PP記録に並んでいる。僅差でこれに続いたのは、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。3番手には太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)となっている。
 
前日のフリー走行ではメインストレートに強い追い風が吹いていた鈴鹿サーキット。開幕戦の朝を迎えるとその風は止み、セッションが始まる頃には逆に弱い向かい風が吹いていた。10分間で争われるQ1は2グループに分けて行われるが、まずAグループのQ1が始まったのは午前9時 50分。この時点で気温は8℃、路面温度は11℃と、前日よりも低くなった。
 
開幕戦ポール･ポジション 野尻智紀(TEAM MUGEN)
今回、Aグループに振り分けられたのは、ザック・オサリバン(KONDO RACING)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、Juju(HAZAMA ANDO Triple Tree Racing) 、三宅淳詞(ThreeBond Racing)、岩佐、高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)、小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)、サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)、大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO･INGING)、イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)の11名。Q1ではこの11台から上位6台がQ2に駒を進めることになる。ピットロード出口がオープンされると、まずはユーズドタイヤで牧野、フェネストラズ、可夢偉、オサリバン、高星、三宅がコースに入っていく。セッション開始から1分という所ではフラガもコースに向かった。だが、Juju、岩佐、小高、大湯の4人は最初からニュータイヤを装着してピットに待機。コースインのタイミングをはかっていた。この中で真っ先にコースに入ったのはJuju。Jujuは開始から約1分半という所で、ニュータイヤでピットを後にした。
 
ユーズドタイヤで一旦コースに出たドライバーたちは、アウトラップを終えると全員ピットイン。ここでニュータイヤに交換する。一方、岩佐、小高、大湯はセッション開始から約3分という所でコースイン。それに続いて、タイヤ交換したフェネストラズ、三宅、牧野、高星、オサリバンもコースに入った。さらに、開始から4分という所でフラガ、5分という所で可夢偉が最後にコースイン。多くのドライバーはアウトラップに加えて、2周のウォームアップを走ってからタイムアタックへと向かった。真っ先にアタックを敢行したのはJuju。Jujuは、セッションの残り時間が11秒という所でコントロールラインを切ると、さらにもう1周アタックを続行した。そして、チェッカーが提示されると、まずはタイヤのウォームアップを1周に留めた可夢偉が1分378秒770というタイムを刻む。続いて、岩佐が1分37秒034と一気にトップに立った。これに続いた小高は1分38秒835、大湯は1分38秒681、三宅は1分38秒914、牧野は1分38秒552と、岩佐のタイムには大きく及ばなかった。また、フェネストラズはアタックラップの2コーナーでハーフスピン。スロー走行状態でコースに戻ったが、アタックラップでそのフェネストラズを避ける形となったオサリバンは1分38秒694、公式テスト時からグリップ不足に苦しんでいる高星は1分40秒291。フラガが1分38秒325をマークした。その結果、トップでQ1を突破したのは岩佐。これにフラガ、牧野と続き、ホンダエンジン勢がトップ3を独占。さらに大湯、オサリバン、可夢偉までがQ1を突破している。これに対して、惜しくも小高、三宅、最後に自己ベストを大きく更新したJuju、高星、フェネストラズはQ2に駒を進めることができなかった。
 
開幕戦予選2位 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)
 
5分間のインターバルを経て、10分間で争われるBグループのQ1が始まったのは、午前10時05分。今回、Bグループには、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、山下健太(KONDO RACING)、太田、福住仁嶺(Kids com Team KCMG)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)、野尻、オリバー・ラスムッセン(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)に代わって急遽参戦することになった野中誠太、平良響(KDDI TGMGP TGR-DC)、阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO･INGING)、小出峻(San-Ei Gen with B-Max)、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)の11台が振り分けられた。ピットロード出口がオープンされると、太田、福住、坪井、佐藤、山下、小出はユーズドタイヤですぐにコースインし、アウトラップでマシンの状態を確認すると一旦ピットに戻る。これに対して、大嶋、野尻、野中、平良、阪口の5人は、最初からニュータイヤを装着し、コースに向かうタイミングをはかっていた。そして、セッション開始から2分という所でまずは野中がピットを後にする。これに大嶋や野尻らも続いた。また開始から3分という所では平良、阪口もコースイン。アウトラップを走行してニュータイヤに交換したドライバーたちも、福住、佐藤、太田、小出といった順でコースに入って行った。
 
この中で真っ先にタイムアタックに入ったのは、野中。ウォームアップラップではヘアピンの立ち上がりで姿勢を崩す場面もあったが、残り時間が2分となった所で初めてのアタックラップに入った。各セクターで自己ベストをマークしていく野中。しかし、セクター4で大きくタイムを落とし、タイムは1分43秒500。チェッカーまで残り10秒だったということもあり、野中はここから仕切り直しのアタックに向かった。チェッカーが提示されると、まずコントロールラインを切ったのは阪口。阪口は1分37秒782というタイムを刻む。続いてアタックした野尻は1分36秒983と、今日初めて36秒台のタイムを叩き出し、トップに浮上。続くドライバーはなかなかこのイムに及ばない。唯一僅差まで迫ったのは太田。太田は1分37秒026というタイムをマークしたが、野尻を上回ることはできなかった。結果、野尻はトップでQ1を突破。太田がそれに続いている。さらに、佐藤、ルーキーの小出とトップ4はホンダエンジン勢が独占。これに坪井、福住までがQ1を突破している。対して、福住と僅差の阪口、山下、大嶋、平良、最終アタックでは大きくタイムを伸ばした野中の5人はQ2に駒を進めることができなかった。
 
開幕戦予選3位 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
10分間のインターバルを経て、今回10分間で争われるQ2が始まったのは、午前10時25分。12台の中で、誰がPPを獲得するのか。注目のセッションは、薄日が射し始める中で始まった。ピットロード出口がオープンされると、まずは牧野、太田、オサリバンがユーズドタイヤでコースイン。さらに、開始から1分という所では可夢偉もコースに入る。この4人はアウトラップを走って、ピットイン。ここでニュータイヤへの交換を行った。一方、その他のドライバーたちは、最初からニュータイヤを装着して待機。セッション開始から2分余りという所で、まずは小出がコースに向かう。それに続いて、野尻、岩佐、坪井、佐藤、フラガ、大湯、福住もコースへと入った。さらに、タイヤ交換を終えた中では、開始から3分半という所でオサリバンがピットを後にする。これに続いて、牧野、太田もコースに向かった。そして、残り時間が4分45秒となった所で、可夢偉が最後にコースに入って行った。
 
アウトラップに加えて、2周のウォームアップを走ったドライバーたちの中で、最初にアタックに入ったのは小出。小出はセッションの残り時間が1分という所で、1分37秒153というタイムをマークしてくる。そして、チェッカーが提示されると、佐藤が1分37秒128までタイムアップ。それに続いてアタックした岩佐が1分36秒527を叩き出し、自身2度目のPPに王手をかけたかと思われた。しかし、わずかにこれを上回ってきたのが野尻。セクター1、セクター3で全体ベストをマークした野尻は、1分36秒505を叩き出している。結局、このタイムを上回ったドライバーはおらず、野尻は自身20回目のPPを獲得。わずか1000分の22秒差で岩佐が2番手につけた。さらに、アタックラップのセクター1で思うような走りができなかったという太田が1分36秒632で3番手。ここまでが予選ポイントを獲得している。さらに4番手には牧野。Q2でもトップ4はホンダエンジン勢が独占した。トヨタエンジン勢のトップは5番手で予選を終えた福住。これに佐藤、小出、フラガ、坪井と続いている。
 
午後の決勝レースでは、このグリッドポジションから、誰がどうスタートを切るのか。また誰がレースラップの速さや最適なストラテジーを見せるのか。多くのドライバーがテストやフリー走行で充分なロングランをできていないだけに、予想外の結果が待っているかも知れない。