2025年開幕戦 太田格之進が渾身のオーバーテイクで開幕優勝を飾る
2025.03.08
終日、曇り空とはなったものの、朝から多くのファンがスタンドに足を運んだ3月8日(土)の三重県・鈴鹿サーキット。午後2時45分からは全日本スーパーフォーミュラ選手権・開幕戦の決勝レースが行われた。3回ものセーフティーカーが導入され、荒れた展開となったこの1戦。その中で予選3番から逆転で優勝を果たしたのは、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。太田は昨年、同じ鈴鹿で行われた最終大会で2連勝しており、これで鈴鹿では3連勝となる。また、ルーキーイヤーだった最終戦も同じく鈴鹿で初優勝。通算4勝目を挙げることとなった。2位には予選2番手からスタートした岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。岩佐は好スタートを決めて序盤はトップに立ったものの、2回目のセーフティーカーラン明け間もなく、太田の先行を許している。さらに3位には佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が入賞。ホンダの若手ドライバーたちが躍動する結果となった。
午前のノックアウト予選終了から3時間のインターバルを経て、いよいよ全日本スーパーフォーミュラ選手権・開幕戦のスタート進行が始まる。コース上でセレモニーが始まる中、ドライバーたちは午後1時45分から15分間のレコノサンスラップへ。このレコノサンスラップの終盤にいきなりハプニングが発生する。デビュー戦ながら予選8番手につけていたイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が冷えたタイヤでのアウトラップの練習中にヘアピンでコースオフしてグラベルにストップ。自力では動けなかったため、フラガのマシンはクレーンで回収され、ダミーグリッドへの試走には間に合わなかった。ただし、マシンはノーダメージだったため、フラガはこの時点でピットスタートを選択している。その他のドライバーたちは無事にダミーグリッドに着き、最終的なマシンセットアップの微調整などを行う。そして、スタートの時を待った。
そして午後2時45分、気温13℃、路面温度21℃というコンディションのもと、フォーメーションラップがスタート。フラガを除く21台のマシンがダミーグリッドを離れる。そして、1周の隊列走行を終えると、正規グリッドにロックオン。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。27周先のゴールに向けて、全車が一斉にスタートを切った。ここで抜群の動き出しを決めたのは2番グリッドの岩佐。PPからのスタートだった野尻は若干動き出しでホイールスピンを起こし、1コーナーまでに岩佐の先行を許す形となった。これに続いたのは、セカンドロウの太田と牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、サードロウの福住仁嶺(Kids com Team KCMG)と佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)。さらに、9番グリッドからスタートした坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が7番手に浮上する。予選でルーキートップの7番手だった小出峻(San-Ei Gen with B-Max)には、フォーメーションラップ中にギヤボックストラブルが発生。2速に入れると駆動が伝わらないということで、スタートでも失速し、大きくポジションを落とすこととなってしまった。
そこからのオープニングラップでは、早くもアクシデントが発生する。16番グリッドからスタートした三宅淳詞(ThreeBond Racing)がプッシュしすぎてNIPPOコーナーで軽くコースオフし、その勢いのままガードレールにクラッシュしてしまう。三宅のマシンはリヤに大きなダメージを負い、NIPPOコーナーの立ち上がりにストップする形となった。ここでコース上にはすぐさまセーフティーカーが導入された。この時点でのオーダーは、岩佐、野尻、太田、福住、佐藤、坪井、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)となっていた。
三宅のマシン回収とコースの清掃が終わり、レースがリスタートしたのは4周を終えた時点。このリスタート直後には、上位集団でOTSを使用したポジションの入れ替わりが起こった。まずは佐藤が福住をオーバーテイク。それに続いて坪井と可夢偉も福住をかわしていく。福住はここではOTSを使用しなかったが、それが裏目に出た形だ。また同じ周のシケインでは、太田が野尻の背後に迫るが、野尻はガッチリとポジションを守った。この頃、トップの岩佐は、ファステストラップをマークしながら、野尻をじわじわと引き離す。その差は、8周を終えた所で、1秒824まで開いていた。
ところが、この周のS字の2つ目では再びクラッシュが発生。大湯の背後に迫り、2コーナーからサイド・バイ・サイドとなった小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)のテールが流れ、小高の右フロントが大湯の左リヤに接触。大湯はその衝撃でスピンしてストップ。小高はコースアウトしてクラッシュしてしまう。これによりコース上には、再びセーフティーカーが導入された。この時のオーダーは、岩佐、野尻、太田、牧野、佐藤、坪井、可夢偉、福住、阪口、ザック・オサリバン(KONDO RACING)、山下健太(KONDO RACING)となっている。そして、このセーフティーカーラン中に、周回数は10周を迎えた。そのため、コース上に残っていたドライバーたちは、10周を終えると全車が一斉にピットロードになだれ込む。2台体制のチームでは、後方にいたドライバーたちがタイヤ交換作業を待つ形となり、ポジションが大きく入れ替わった。タイヤ交換を終えてのオーダーは、岩佐、太田、坪井、佐藤、阪口、可夢偉、オサリバン、そして野尻。さらに、大嶋和也(docomo business ROOKIE)、高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)、サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)、平良響(KDDI TGMGP TGR-DC)、福住、フラガ、Juju(HAZAMA ANDO Triple Tree Racing)、山下。牧野はタイヤ交換を終えてスタートした際、ギヤが入ったままエンジンがストール。再始動に時間がかかり17番手までドロップすることとなってしまった。
この間も回収作業は続いていたが、それが終わると、レースは12周を終えた所でリスタート。このリスタート直後には3番手争いに動きが。佐藤が1コーナーでアウト側から坪井に並びかける。坪井も踏ん張りを見せたが、佐藤はS字の一つ目でオーバーテイクを成功させ、3番手に浮上した。また、同じ周には可夢偉が阪口をオーバーテイク。5番手にポジションを上げている。しかし、その後方では、またしてもアクシデントが発生。シケインで福住のインに飛び込んだ平良だったが、平良は縁石に少し乗り上げてしまう。一方の福住もラインを少し締めたため、平良のフロントウィング左側と福住の右リヤタイヤが接触。福住はタイヤとホイールにダメージを負ってスピンし、コース上にストップしてしまう。そこに差し掛かったのがフラガ。フラガもこの接触現場を避け切れず、福住のマシンに軽く接触する形となった。その後、フラガは何とか自走でピットロードに向かったが、福住は動けず。
その一方、この頃、すでに13周を終えてコントロールラインを通過していたトップ争いには動きが出た。14周目の1コーナーで、岩佐に迫った太田がアウトから豪快なオーバーテイクを見せて、トップを奪う。その後に、福住のマシン回収のために、コース上には3回目のセーフティーカーが導入された。
福住のマシン回収が終わると、レースは17周を終えた所でリスタート。残り10周の攻防が始まった。岩佐を引き離していきたい太田。しかし、岩佐のペースも良く、2台はなかなか離れていかない。19周目には岩佐が1分38秒922とファステストラップを更新し、太田までコンマ482秒差に迫った。2台はそれぞれタイミングを計りながら、オーバーテイクシステムを作動させていた。20周を終えた所で2台の差は一旦コンマ697まで開くが、21周を終えた所では再びコンマ357に縮まるなど、手に汗握る展開が続く。ファイナルラップには、両者ともに残っていたオーバーテイクシステムをすべて使い切っての勝負。しかし、太田は岩佐の攻撃を何とかしのぎきり、トップチェッカーを受けた。太田は、昨年の最終大会から続けて、鈴鹿では3連勝を達成。岩佐は序盤トップに立ちながら、悔しい2位でレースを終えた。この2台には少し引き離されたものの、佐藤は2022年第9戦・鈴鹿以来久々の表彰台獲得となっている。これに続いたのは、坪井、可夢偉、阪口のトヨタエンジン勢。以下、タイヤ交換でのポジションダウンから挽回した野尻、オサリバン、山下、牧野までがポイントを獲得。大嶋は9位でチェッカーを受けたが、タイヤ交換時のアンセーフリリースに対して10秒加算のペナルティーを課されたため、残念ながらポイント獲得はならなかった。
開幕戦は荒れ模様のレースとなったが、明日の第2戦はどのような展開となるのか。午前10時15分から始まるノックアウト予選から見逃せない展開となるはずだ。
優勝した太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
決勝2位 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)
決勝3位 佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)