宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)悲願の初優勝!
2023.04.23
優勝した宮田莉朋と舘信秀監督(VANTELIN TEAM TOM’S)
終日晴れ間が広がったものの、午後から風が強まった4月23日(日)の三重県・鈴鹿サーキット。午前中に行われたフリー走行に続き、午後3時45分からは、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦の決勝が行われた。スタート直後から各所で多くのバトルが見られたこのレースでは、早目のタイヤ交換を行なったドライバーと、引っ張る作戦に出たドライバーに分かれる形となったが、終盤になってセーフティーカーが導入されるアクシデントが発生。引っ張る作戦をとっていたドライバーたちは、この好機にピットに入った。その後、セーフティーカー明けから数周のバトルを制し、嬉しい初優勝を果たしたのは12番グリッドからスタートした宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)。宮田は、交換直後のタイヤのパフォーマンスを活かす形で残り2周でトップに立つと、そのまま逃げ切った。早目にタイヤ交換を終え、セーフティーカー導入前までトップを守っていた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)は悔しい2位。宮田とおなじく、タイヤ交換を引き伸ばした平川も、宮田と同じ周に前を行くリアム・ローソン(TEAM MUGEN)をオーバーテイク。9番グリッドからジャンプアップし、表彰台を獲得している。
決勝を前に午後2時40分からは8分間のウォームアップ走行が行われる。ここで各ドライバーは決勝用のマシンセットアップを確認。その後、ダミーグリッドへと向かった。ダミーグリッド上では、PPの大湯都史樹(TGM Grand Prix)やフロントロウの坪井がギリギリまでリヤのアンチロールバーなど、セットアップの詰めを行い、レースに備える場面も見られた。
ストレートは少し強めの追い風。気温は21℃、路面温度は36℃というコンディションのもと、フォーメーションラップがスタートしたのは、午後3時45分。22台のマシンがタイヤを温めながら、1周の隊列走行に入っていく。そして31周先のゴールに向けて、正規のグリッドに着いたが、ここで5番グリッドの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がエンジンストール。スタートはディレイされ、エキストラフォーメーションラップが行われることになる。これにより、レースは1周減算。30周で争われることとなった。グリッドにストップした牧野は、オフィシャルの手によって、ピットレーンに戻され、一旦ガレージへ。そこからエンジンをかけ直し、ピットスタートすることとなった。
これに続いて、トラブルに見舞われたのは、7番グリッドの佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)。エキストラフォーメーションラップ中に、ドライブシャフトに問題を抱えた佐藤は、そのままピットへ。マシンはガレージに入れられ、佐藤はコクピットを降りる。結局、佐藤は、スタート前にレースを終えることとなってしまった。
その他の20台は正規グリッドに到着。全車が停止すると、後方ではグリーンフラッグが振られ、シグナルオールレッドからブラックアウト。ここで好スタートを決めたのは、PPの大湯。2番グリッドの坪井、3番グリッドの野尻智紀(TEAM MUGEN)、4番グリッドの山下健太(KONDO RACING)がこれに続く。そこに迫ったのは、8番グリッドから好スタートを決めたローソン。そこに小高一斗(KONDO RACING)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、やはり好スタートを切った福住仁嶺(ThreeBond Racing)と続いた。
スタートでポジションを上げたローソンは、そこからも勢いを見せ、オープニングラップのスプーンコーナー1つ目では、アウトから山下をオーバーテイク。山下はその先の130Rでインにラインを振り、ローソンを牽制したが、再逆転には及ばなかった。この頃、山下はブレーキが深いという症状を無線で訴えている。
オープニングラップを終えてのオーダーは、大湯、坪井、野尻、ローソン、山下、阪口、小高、平川、福住、宮田、国本雄資(Kids com Team KCMG)、ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)。ここから接近戦が次々と演じられた。まず2周目の1コーナーでは、阪口がオーバーテイクシステムを稼働させながら、アウトから山下のに並びかけるが、ここは山下がポジションを死守。同じ周の130Rでは、平川がやはりオーバーテイクシステムを使いながら、小高をアウトから攻略する。さらに、3周目のシケイン進入では、ローソンが野尻のインに飛び込み、3番手に浮上してきた。野尻はタイヤを温存しているのか、序盤はペースが上がらず、 5周目の1コーナーでは山下の先行も許し、一時は5番手にドロップしている。
レースが6周を終えると、トップを走る大湯は、早くも「タイヤが厳しい」と無線でチームに連絡。タイムも1分42秒台中盤となっており、2番手の坪井を引き離すのは難しい状況だった。一方、この頃、41秒台のラップを刻んでジワジワとポジションを上げてきていたのが、宮田。宮田は4周目に福住をかわすと、7周目にはオーバーテイクシステムを使いながら、1コーナーで小高をオーバーテイクして行った。また、8周目に入ると、6番手争いが阪口、平川、宮田の間で激しくなり、その中で9周目の1コーナーで宮田が平川を攻略。7番手に浮上する。
そして、10周を終えたところでは、早くもピットに動きが出る。大湯、坪井よりもラップペースが良かったものの、なかなかオーバーテイクに至らなかったローソンが、アンダーカットを狙って真っ先にピットイン。同じ周に、山下、阪口、アレジもピットに向かい、タイヤ交換を行なった。さらに、後方では太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)もピットに入っている。
この動きを見て、11周を終えたところでは、2番手を走っていた坪井、野尻、さらに小高もタイヤ交換のため、ピットに滑り込んだ。坪井はローソンの前でコースに戻ることに成功。ここからのアウトラップでは、すでにタイヤが温まっているローソンに迫られたが、厳しくブロックして、ポジションを守り切った。野尻は、ローソンの後ろでコースに戻り、山下の前に出ることに成功。また、12周を終えたところでは国本、14周を終えたところでは福住もピットに入っている。
トップの大湯は引っ張る作戦に出たが、ラップタイムは1分41秒台後半から42秒台前半。タイヤ交換を行なった中で、一番前にいる坪井は、ここで1分40秒台から41秒台前半のタイムを連発して、大湯との見えない差を削り取って行った。その差は、15周を終えたところで、33秒336。そこから、32秒010、31秒669、31秒244と縮まっていく。しかし、この頃になると、ピットスタートとなった牧野が坪井の前に現れる。引っかかるとタイムロスしてしまうため、坪井は19周目の130Rで牧野を豪快にオーバーテイク。これを見て、19周を終えたところで、大湯がタイヤ交換のため、ピットに滑り込んだ。6秒というスムースな作業を終えた大湯だが、コースに戻った時には、坪井だけでなく、ローソンにも先行される。さらに、後ろからは、野尻が迫ってきた。何とかポジションを守りたい大湯と、前に出たい野尻。大湯は厳しいブロックを見せるが、S字2つ目の立ち上がりで野尻のフロントが大湯の左リヤに接触。これによって大湯はスピン状態に入り横を向いたままコースアウト。野尻もバランスを崩してコースアウト。最後はスポンジバリアに突っ込んだ大湯のマシンに、野尻のマシンが激突。2台はここでリタイヤとなった。
このアクシデントにより、コース上にはセーフティーカーが導入される。すると、ここまでタイヤ交換を引っ張っていた宮田、平川、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)がタイヤ交換のためにピットイン。宮田はローソンの後ろ、平川は宮田の後ろでコースに戻った。これでセーフテーカーラン中のオーダーは、坪井、ローソン、宮田、平川、山下、阪口、小高、アレジ、福住、松下となっている。
大湯と野尻のマシンの回収が終わり、レースがリスタートしたのは、23周終了時。早目のタイヤ交換をしていたトップの坪井は、ここで逃げを打つため、1分40秒230というファステストラップを記録する走り。ローソン以下を振り切ろうと踏ん張りを見せる。しかし、勢いはまだタイヤが新しい宮田や平川にあった。まず、宮田は25周目のシケインでアウトからローソンに迫るが、ここではローソンがポジションを死守。しかし、宮田は続く26周目の1コーナーでアウトから豪快にローソンをオーバーテイク。そこから区間最速タイムをマークして、ファステストラップを更新。前を行く坪井を追った。平川も3番手に後退したローソンにジワジワと迫っていく。
そして、29周目の1コーナーで、とうとう宮田がアウトから坪井をオーバーテイク。トップに立つ。その真後ろでは、平川も1コーナーから2コーナーにかけてローソンに並びかけ、S字の一つ目までに前に出ることに成功。表彰台圏内に入ってきた。
トップに立った宮田は、みるみる坪井を引き離していくと、30周を終えて嬉しい初優勝。最後の5周は厳しかったという坪井は、途中までレースをコントロールしながら、最後は不運に見舞われる形で、悔しい2位表彰台。そして、3位には平川。今日のレースでは、トヨタエンジンユーザーが表彰台を独占する形となった。これに続いたのは、ホンダエンジンユーザートップトなるローソン。以下、山下、阪口、小高、アレジ、最後にポジションを上げてきたブリュックバシェ、福住までがポイントを獲得している。
次戦、第4戦は5月20日(土)〜21日(日)に、大分県オートポリスに舞台を移して行われるが、どんなドラマが繰り広げられるのか。次も多くのドラマが繰り広げられるはずだ。
Rd.3 優勝 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
「ようやく優勝することができ、非常に嬉しいです。チームの皆さん、スポンサーの皆さん、応援してくださるファンの方々を長いことお待たせしてしまいました。参戦3年目での優勝ですが、昨日の予選が残念な結果でしたので、正直ポイントが獲れればば良いなという気持ちで望んでいましたし、まさか優勝できるとは思ってもいませんでしたので、本当に嬉しいですし、感謝しか無いです。
前回の富士大会でいいセッティングの印象を持つことができ、それを鈴鹿で確認し活かすことができたので良かったです。ストラテジー的には極めて行くとミニマムでピットに入るか引っ張るかしか無く、そのための走りをどうするかを常に考えますが、これまでクルマと走りがリンクしない状態が続いていました。そこを自分としてエンジニアリング目線でどうするかを考えてクルマを作っていきました。そのあたりの理解度が深まったところも結果につながったのだと思います」
Rd.3 2位 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
「悔しい結果になりましたが、レースは支配できていましたし、しっかりと予選から前にいれましたので、前回大会の2位よりは内容の濃い結果でした。正直あのタイミングでセーフティーカーに出られてしまったら非常に厳しい状況になるので、平川選手の前ではゴールできましたが、宮田選手には後ろから速いペースで来られてしまい、なかなかつらい状況が5周くらい続きました。このレベルの高いスーパーフォーミュラでこのような成績が出せるような状態ではない昨シーズンまででしたので、今年はいい流れでこれていると思います。宮田選手とはスーパーGTでチームメイトですし、GT開幕戦では悔しい思いをしたので、こうしてワン・ツーが取れて、莉朋には素直におめでとうと言いたいです」
Rd.3 3位 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
「昨日からあまり調子が良くなく、今朝も調子が上がらずで、正直3位になれるとは思ってもいませんでした。レースでもクルマの調子があまり良くなく、タイヤの状況も良くなく、かなり堪える場面が多くありました。そんな中でも粘り強い走りができて、セーフティーカー明けた後もチャンスのタイミングを逃さずレースができましたので、良かったなと思います。ローソン選手を抜いたシーンについては、何周か前からチャンスは有りましたが、シケインでブロックされていて少しカチンと来ていました。ですので彼がOTSを使えないタイミングを狙って1コーナーアウトから行きました。終わった後にローソン選手と話し、あそこで来るとは思わなかったと言ってましたが、ボク的には引く気は全くありませんでした」
BRM Winners Awordとして特製クロノグラフが贈呈された