タイトル獲得へ生き残りをかける重要な1戦 シリーズ第6戦富士大会レースプレビュー
2023.07.11
宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)が独走で今季2勝目をマークしたスポーツランドSUGOでのシリーズ第5戦から約1ヶ月。7月15日(土)〜16日(日)に、全日本スーパーフォーミュラ選手権は、いよいよ終盤戦の初戦となる第6戦を迎える。その舞台となるのは、静岡県富士スピードウェイ。富士ではすでに、2レース制の開幕大会が行われており、今季2回目の開催となる。また、SUGOでの第5戦の直後には、第2回公式合同テストが行われ、各チーム、各ドライバーは今後のシーズンに向けてのデータ採りを行った。つまりSF23にとっては、最も走り込んでいるサーキットが富士。それだけ各者の準備も整っているということになるが、今回のレースでは誰が速さ、強さを見せるのだろうか?
今季開幕戦のスタートシーン
ここまでの5戦を振り返ると、宮田が2勝、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)が2勝、そしてディフェンディング・チャンピオンの野尻智紀(TEAM MUGEN)が1勝を挙げている。ランキングでも、現在は宮田が75ポイントでトップ。ローソンが63ポイント、野尻が58ポイントでこれに続いている。さらに、今季表彰台の常連となっている坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が、ここまで50ポイントを獲得して4番手。以下、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が28ポイント、山下健太(KONDO RACING)が28ポイント、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が19ポイントとなっている。残る3戦で獲得できる最大得点が69ポイント。しかし、今回の富士の結果次第でタイトル候補はかなり絞り込まれることになる。それだけに、どのドライバーにとっても、この第6戦は決して落とせない重要な1戦となるだろう。
2勝を挙げランキングトップの宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
ランキング2位 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
ランキング3位 野尻智紀(TEAM MUGEN)
ランキング4位 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
その富士での1戦を占う上でも重要なセッションとなったのは、前述した第2回公式合同テスト。このテストは去る6月23日(金)〜24日(土)の2日間に渡って行われた。週末ということもあり、このテストは公開で行われ、多くの観客がサーキットに足を運んだ。その観客たちが見守る中、1日あたり4時間、計8時間のセッションは、幸いすべてドライコンディションとなっている。各チームはその時間の中で、レースウィークには試すことができないセットアップなど、多くのメニューをこなした。このテストで2日間を通じての総合トップタイムを奪ったのは、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)。これに牧野、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)、大湯都史樹(TGM Grand Prix)とホンダエンジンユーザーが続いた。トヨタエンジンユーザーでは、今回からジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)に代わって参戦することが決まった笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)が最上位。これに宮田が続いている。宮田とランキングを争うローソンや野尻は、どちらかというとレースを考えてのセットアップやロングランに注力しており、ニュータイヤの使用も少なめだった。ただし、第5戦・SUGOと比べても、テストの2日間は気温・路面温度が低く、富士でのレースウィークとも大きく違うコンディションとなった。それが、本番に対してどのような影響を及ぼすのか、その辺りは土曜日朝のフリー走行を見なければ分からない。開幕大会をほぼ完璧な形で終えているTEAM MUGENが、今回も勢いを見せるのか。あるいはここ数戦、特に決勝レースでの強さが際立っている宮田と、昨年富士を制している笹原を擁するVANTELIN TEAM TOM’Sがホームコースでも勝利を掴むのか。あるいは、ここまで悔しい思いをしている坪井が、今度こそ栄冠を勝ち取るのか。
合同テスト総合トップ 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)
合同テストトヨタエンジンユーザー勢最上位 笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)
さて、その富士は、とにかく予選タイムが拮抗するサーキット。決勝を前に、まずはこの予選がギリギリの戦いとなる。今回もよほどの天候の崩れがない限り、ノックアウト方式。ランキング順で2グループに分けられたAグループとBグループ、各11台がまずは10分間のQ1に臨む。Q1では各グループの上位6台に入ったドライバーがQ2へと駒を進める。そして、わずか7分間のQ2では、12台がPPを目指してアタックすることになる。先日のテストでは、半分ほどのドライバーがアタックを前にフロントタイヤだけをスクラブ。その後、リヤにニュータイヤを装着してタイムアタックを行なっていた。一方、4輪ともにニュータイヤでアタックしたドライバーも約半分。今回の予選でも、各ドライバーがどのようなタイヤの使い方をするかという点には注目していただきたい。また、夏場ということで路面温度がこれまでより高く、タイヤがより温まりやすいため、コースに出てアウトラップを走ったあと、すぐにタイムアタックに入るドライバーも複数出てくるはず。これに対して、アウトラップのあと、ウォームアップラップを挟んでタイムアタックに向かうドライバーもいるはずだ。アウトラップからいきなりのアタックを行なった場合、まだフルにタイヤが温まりきっておらず、セクター1で若干のタイムロスをしてしまう可能性もあるからだ。そうしたタイヤの温め方やアタックまでのラップ数の違いなどから、セクター3あたりではトラフィックが発生する可能性も捨て切れない。誰がどのタイミングでコースに出るのか、どのようなタイヤの使い方をしているのか。そのあたりを確認しながら見ていただくと、予選をより楽しめるはずだ。そして、もちろん各ドライバーのラップタイム差も非常に気になるところ。場合によっては、1000 分の数秒あるいは100分の数秒という超僅差で、Q2への進出を決めたり、Q1で敗退してしまったりと、天と地ほどの結果になることもある。またQ2でのPP争いも同じく超僅差となるはず。チェッカーと同時に次々に書き換わるタイムに注目だ。
戦略の分かれるタイヤ交換タイミング
そして、41周で争われる決勝レースは、ドライの場合、今回もタイヤ交換が義務付けられる。交換のウィンドウは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。ここまでの5戦を見ると、早めにピットに入ってアンダーカットを狙うか、かなり引っ張ってからニュータイヤの強みを生かすためにピットに入るか、戦略は分かれている。中でも、アンダーカットを上手く成功させ、たびたびポジションを上げているのは、牧野。牧野の動きには、今回もある意味注目だ。もし、牧野が早めにタイヤ交換を行なった上、交換後のラップタイムが速ければ、多くのドライバーがそこをターゲットに動く可能性がある。その場合、逆にステイアウトを選ぶのは誰になるのか。そちらにも注目していただきたい。ここ数年、タイヤ交換を引っ張る作戦を得意としているドライバーの筆頭は平川だが、今回も平川は他のドライバーと逆の作戦を取るのか。また、鈴鹿、オートポリスでは引っ張る作戦を成功させたものの、SUGOでは逆にレース中盤に差し掛かるところでピットに入って2勝目を挙げた宮田は、どんなストラテジーに打って出るのか。もちろん、ローソンや野尻の動きも見逃せない。開幕大会では、2レースともにセーフティーカーが導入されるクラッシュが発生したが、今回も場合によってはセーフティーカー導入という可能性はある。そのあたりも踏まえて、各チーム、各ドライバーがどのような作戦を取るのかは、レースの見所となるだろう。また、今回も、各ドライバーが計200秒ずつ使用できるオーバーテイクシステムを使いながらの迫力バトルが各所で起こるはず。ストレートが長い富士では、もちろんスタートから1コーナーにかけての攻防、またタイヤが温まりきっていないオープニングラップの競り合いも胸を踊らせるようなシーンとなるはずだ。そしてチェッカーの時、勝利の女神は誰に微笑むのか?
今回の第6戦は、『夏祭り in FUJI MOTORSPORTS FOREST』と題されており、サーキット内は家族で楽しめるイベントも盛りだくさん。そのメインイベントとなるスーパーフォーミュラの激走を堪能していただきたい。