コラム【THE 二刀流ドライバー、イゴール】vol.10 チーム目線で振り返る開幕戦
2024.03.28
皆さんこんにちは、SFオフィシャルアンバサダーのイゴールフラガ(大村くん)です!
今年からはポノス中嶋レーシングでリザーブドライバーとして採用して頂き、全てのイベントにチームと帯同しています。コラムの方もこれからチーム内の目線も含めて書いていこうかなと思います!
時間を少し遡って簡単に公式テストを振り返ると、ファンの方が沢山いてビックリしました。本当に寒い天候で、しかも初日は雨だと関係なしにたくさんの方達が応援しにきてくれるとドライバーのモチベーションも確実に上がります。チームやドライバーにとってもこのテストは非常に重要な場面で、開幕前にスーパーフォーミュラに乗れる機会はこの2日間しかありません。去年のルーキーテスト(3日間)と合わせて計5日間でしか、新しく共通されたサードダンパーのテストができないということです。サードダンパーは主に車高をコントロールしてくれるパーツですが、スーパーフォーミュラの場合はエアロが非常に敏感です。結果的に車のパフォーマンスに大きく左右する可能性のある部分なので、実際は全チームがもっとじっくり色々検証したかったはずです。
更にこの開幕前のテストでは山本尚貴選手のスーパーGTクラッシュ後の初ドライブでした。多くの読者は知っていると思いますが、山本選手は去年9月の菅生戦のクラッシュで大きな怪我を負ってしまい2ヶ月の入院となり、このテストでスーパーフォーミュラを操るのはおよそ半年ぶりになります。テスト初日レインコンディションとなり、2日目はダンプからのスタートで、早い段階でコースも乾きドライコンディションでの走行となりました。身体の様子をみながら、SF23の久々のドライブやダンパーなどの変更も含め、本当に大変な内容だったと思うんですが、どんなコンディションの中でも一周でも多く周回を重ね、順調に2日間のテストを乗り越えていました。
佐藤蓮選手は2日間を通してセットアップのメニューをこなし、どのコンディションでも良いタイムを刻むことができていました。2日目には最高速が伸び悩んでいた場面もあったんですが、セッション中に原因を見つける事ができ、すぐに解決されました。テストで2人のメニューのこなし方、ドライビングスタイルやエンジニアとのコミュニケーションもかなり違う部分があって、見ていてもかなり興味深い所がありました。テストの最後のニュータイヤアタックでもチームの2台ともいい順位で戦えるタイムを刻んで終える事ができました。
レースウィークのプラクティスでは持ち込みセットアップがいい感じに当たったようで、2台ともセットアップの変更を試みるんですが、あまり良い方向にいかず、結局ほぼ変更を加えずに予選へ挑みました。予選では2台とも無事にQ2へ進み、なんとQ2では山本選手と佐藤選手がほぼ同タイムで5位と4位からのスタートとなりました。この予選で見事に初ポールを獲得したのが阪口選手。太田選手も去年後半の好調に続き2位につけます。Q1でトップタイムを叩きだした野尻選手は後半セクターが伸びず3位。
決勝では阪口選手と太田選手がいいスタートをきれず、順位を落としてしまいます。その隙に野尻選手がトップへ、佐藤選手が2位、阪口選手が3位、そして4位に山本選手という順番になりました。その後ろでは牧野選手、太田選手、そして福住選手が激しい争いを繰り広げてくれました。レースの作戦としてはピットオープン直後でタイヤ交換を行った方が良かったみたいで、後半にあまりタイヤが垂れる事が無く、中盤か後半でタイヤ交換を行った所、後半のペースに大きな違いは無かったみたいです。佐藤選手はスティントを少し伸ばす方向に最初から作戦をくんでいたんですが、結局伸ばした分損をしてしまい、ピット発進時のミスも重り、ポジションを落としてしまいます。最後はいくつか順位を上げて5位フィニッシュ。山本選手はほぼピットオープンと同時にタイヤ交換を行い、ほぼロス無しにレースを進める事ができ、復帰レースでなんと3位表彰台獲得。このテストとレースは山本選手にとって最大の難関だったはずで、このパフォーマンスを早速発揮できるのは本当に凄いと思いました。
今回のレースの最終結果は1位野尻選手、王者のパフォーマンスを見せてくれました。2位はいいスタートと完璧な作戦で大きく順位を上げた山下健太選手。3位には復帰レースで表彰台を獲得した山本選手。4位にはスタートで順位を落としてしまったんですが、レースペースも良くバトルを繰り広げてくれた太田選手。5位には作戦が上手く噛み合わなかった佐藤選手になりました。
チームとしては凄く有意義な週末だったと思います。しかし次のレースからは気温もかなり上がるはずなので、そこでどのように合わせられるかが重要になります。レース中のタイヤの摩耗も酷くなっていく事が予想されるので、そこでいかに良いペースを保てるのか非常に大事です。
今回このレースをチーム内でずっとみていたんですが、とにかくSFに乗りたい、この場で戦いたいという気持ちでいっぱいでした。今年僕はスーパーGTのみの参戦になっていますが、この気持ちをGTの方で発散します!良い結果にも結び付けられるように頑張ります。
Written by イゴール・フラガ
日本生まれの日系ブラジル人レーシングドライバー。幼い頃からカートのタイトルを獲得し、その後多数の国でF3に参戦し好成績を残す。同時に「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」のワールドチャンピオンを獲得し、23年はSUPER FORMULA Lights、SUPER GTに参戦。e-Motorsports界でも有名なリアル&バーチャルの『二刀流』ドライバーとして活躍している。