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【武士が斬る!】vol.23 年に一度の東北大会!今週末はSUGOへ!

2025.08.08

皆さんこんにちは!SUPER FORMULAオフィシャルアドバイザーの土屋武士です。

 

前回の富士ラウンドは今年も“夏祭り”をテーマに開催されましたが、いかがだったでしょうか?? サーキットに来られた方はもちろん、放送でご覧になられた方も「これぞレース」「これぞトップフォーミュラ」という素晴らしいレースに魅了されたのではないでしょうか??各所でギリギリのバトルがあり、オーバーテイクシステム(OTS)を駆使した頭脳戦のバトルもあり、そして各選手のスポーツマンシップ溢れる、相手をリスペクトしたその中で己のプライドをぶつけ合う戦いは、そこにいる全員がヒーローと呼ぶに相応しいレースになったと思います。世界中に 「日本には本物のレースがあるよ」と、胸を張って言えるレースが今回の富士にはありました。

SF NEXT50と銘打って新たにスタートした試みは、ドライバーを主役にするドライバーファーストを掲げて、バトルができるようなマシン開発や、カーボンニュートラルを意識したサスティナブルな素材を使用したカウル、再生可能原料を取り入れたタイヤを採用し、社会課題にも挑戦してきました。そしてファンの皆さんがこのSUPER FORMULAに愛を持って応援いただける環境作りという部分も、レースの度に新しいアイデアを投入し色々と挑戦していることもファンの皆さんに受け入れられてきたように感じます。

 

 

そして何より、レース毎にファンの皆さんがどんどん増えていく様子にドライバーたちが意気に感じ、「いいレースを皆さんにお見せしたい」「もっとSUPER FORMULAの魅力を伝えたい」、そんな気持ちが強くなってきて、今回のようなレースが実現したのではないかと思っています。

ですので、ステージなどでは度々お話しさせて頂いていますが、SUPER FORMULAは“ファンの皆さんと一緒に作り上げているイベント”として成長をしている最中だと思っています。“世界に誇れるレースになっているという現実”を、チーム関係者をはじめサーキットやプロモーターのJRPの皆さんも実感していると思いますし、もっといいレースをファンの皆さんへお届けしたいとモチベーションが高く、そこは関わる皆さん同じ思いだと思いますので、これからもいい連鎖は続いていくのではないかなと思います。

 

 

 

そんな富士2連戦の振り返りをしたいと思いますが、本当に多くの選手を挙げなくてはいけないくらいの素晴らしいレースだったので、心苦しいですが特に印象深かった選手をピックアップしてみたいと思います。

 

まずは昨年から富士ラウンド4連勝を達成した坪井翔選手。予選2位からスタートした第6戦を優勝したのですが、ポールポジションの野尻智紀選手を1周目で攻略し、タイヤ交換のタイミングで一度は野尻選手に前に行かれましたが、全く危なげなくプラン通りにトップを奪い返してオートポリス戦から2連勝を遂げ、シリーズランキングもトップに躍り出ました。

このレースの前に富士スピードウェイで行われた公式テストで、ロングランに加えて予選で上位に行くセットアップを試していたように見えました。その結果は、第6戦予選が2位、翌日第7戦はポールポジションを獲得し、しっかりとテストでの成果が出たという状況です。決勝での強さはチームトムス共々、昨年から周知の事実で、これに予選も上位に安定してくるようになると隙がなくなってきますよね。また一段、階段を上がったように見えます。

 

坪井選手の真骨頂は、常に向上心を持ち成長を続けていくことにあると思っています。その象徴が今回の第7戦。優勝の翌日にしっかりとポールを獲得し、決勝は太田格之進選手に敗れ3位となったものの、セーフティーカー(SC)が出た影響と路気温が下がったことも影響して追い風ではない流れの中のレースでしたが、完勝というレースの後にまた闘争心溢れる走りを見せ、3位に不満な様子でした。普通の間隔であれば完勝と呼べるレースの後は少し緩むものだと思いますが、坪井選手には微塵もなかったですね。勝てなければ満足しないというのは、勝ち続ける人でしか知りえない領域です。過去、チャンピオンを幾度も獲得してきたドライバーは勝てない時は不機嫌なものでした。坪井選手もスーパーGTで3度のチャンピオン、SUPER FORMULAで1回という実績を持っていますが、まだまだ満足はいかないようです。先日F1での走行でも、充分にそのステージで通用するスピードを持っていることを証明しました。まだまだ成長中の坪井選手が、これからどんなレースを、走りを見せてくれるのか、非常に楽しみですね!

 

 

その坪井選手に待ったをかけたのが太田格之進選手。第6戦を終わった後、太田選手は「坪井選手を必ず止める !」と鼻息荒く、まるでここで坪井選手に勝たれてしまったら今シーズンの選手権が終わってしまうという危機感があったように見えました。

勝負師というのは、勝敗の分かれ目にものすごい集中力で挑むものです。ある意味、この第7戦は格之進選手の気迫がレースの流れを強引に自分に引き寄せたのかもしれません。先ほどSCが出たことで坪井選手に不利に働いたことを話しましたが、もしSCが出ていなければ岩佐歩夢選手とのタイヤのオフセット 先にタイヤ交換した選手とのタイヤ周回数の違いをオフセットと呼んでいます)を大きく取れたので、いったん前に出られたとしても前日の野尻選手を簡単にオーバーテイクしたように、岩佐選手も攻略されていたでしょう。SCでタイヤを休めることができたことも岩佐選手が2位に留まることができた要因だとも思います。そのようなレースの流れも味方につけ、そしてワンチャンスを見事に活かし切って格之進選手はトップに躍り出ることに成功しました。

 

「ことだま」という言葉の不思議が語られることがありますが、まさに運を引き寄せる格之進選手の“想いの強さ”を目の当たりにしたレースだったと感じます。

多くのレースファン、そして関係者も坪井選手の強さを感じ、「誰か坪井を止めてくれ」と願っていた人は、正直、多かったと思いますが、今のSUPER FORMULAのドライバーたちにそんな心配はいらなかったですね。それにちょっと前までは 「誰かダンディライアンを止めてくれ」って言ってたのに 笑)、周りの人はみんな勝手です(^-^;

 

 

 

 

そして第7戦のレースをドラマチックに演出してくれた立役者の一人、岩佐選手。ファンの皆さんはそのことを大いに理解していましたね。ファンの投票で決まるDRIVER OF THE RACEを岩佐選手が獲得しました。SCが入った時点でトップに立ちましたが、その時点のタイヤのオフセットは11周。後ろにはフレッシュなタイヤを履く強者が何台もいる中で、リスタート後の苦戦は必至でした。しかし岩佐選手は素晴らしい集中力で劣勢の中、隙を見せずに攻防を繰り広げていました。特に坪井選手がOTSで襲い掛かってきた際の1周にわたるサイドバイサイドのバトルは、お互いに紙一重の素晴らしい攻防で見ているすべての人を興奮させました !その1周によって坪井選手は優勝を逃がし、太田選手の優勝という勝負の分かれ目になったのですが、ここに岩佐選手の真の実力を見たように思います。まだ優勝に手が届いていない岩佐選手ですが、ひとたび噛み合い流れを掴めばいとも簡単に勝てる要素を持ち合わせていることは周知の事実。その日が近いことも予感されます。

 

 

それにしても第7戦の終盤3台にゆるトップ争いは凄まじいものでした。OTSを巡る頭脳戦、細い線を渡り続けるような集中力を研ぎ澄ました精神戦、そしてゴングが鳴ったかのようなギリギリの肉弾戦のようなバトル !3者ともに高次元過ぎる走りでした。

そして第7戦の表彰台にのった3人は、F1やIMSAの世界の舞台のレースに関わる仕事で翌日にはそれぞれ海外へ飛び立ちました。4位に入ったのが小林可夢偉選手だったということも、SUPER FORMULAのトップグループを走る選手たちが世界レベルということが測れます。

トップを走る選手たちが世界を見据えて常に成長を続けているという事実が、SUPER FORMULAを更に面白く、素晴らしいレースにしている要因の一つなことは間違いないですね。

 

成長を続ける一人、野尻選手も第6戦では通算23回目のポールポジションを獲得し、その記録を更新しました。しかし野尻選手の成長ぶりは決勝のレースペースにあります。予選の強さに比べ決勝でのレースペースに関しては、特に温かい季節ではウィークポイントと考えられていました。しかしオートポリスで2位に入り、第6戦でも2位で連続表彰台を獲得。第7戦こそ中団に埋もれてしまいましたが、野尻選手もいまだに成長過程にあるように見えます。何より車作へのこだわりは半端なく、常に速さを追及している部分はベテランの領域になっても陰りは見えません。この辺りが野尻選手がトップで居続ける所以なのでしょう。この数年、野尻選手はSUPER FORMULAを引っ張ってきた存在です。若いチャンピオンが2年連続で生まれていますが、まだまだ壁として立ちはだかって欲しいし、ファンの期待も高いでしょう。野尻選手もファンの皆さんと一緒に成長してきたチャンピオンだと思っています。このSUPER FORMULAの盛り上げてきた立役者の一人として、野尻選手にはまだまだ頑張ってもらってファンの皆さんと一緒に喜んでもらいたいですね。

 

 

そして第6戦でトップフォーミュラ参戦100戦を達成した大嶋和也選手。この厳しい戦いのトップフォーミュラで長く走ってきたことは本当に凄いですし、大嶋選手は身体的には小さくて恵まれた方ではないので、ここまでよく走ってきたと思います。

その大嶋選手が今シーズン限りでのトップフォーミュラ引退を発表しました。ふり返ると、2007年のシーズンオフテストが大嶋選手のトップフォーミュラ初走行でした。その時私も一緒に走っていたのですが、初走行だった大嶋選手にタイムで負けたことを思い出します。トヨタのスクール時代から見ていますが、とにかく走るのが好きでレースが好き。一緒にいた時間はレースのことを話していた記憶しかないですね。

引退発表をした第6戦のレースでは、予選13位から6位まで追い上げる素晴らしい走りを披露しました。クルマつくりに定評があり決勝のペースがいつも安定している印象の大嶋選手ですが、まだまだやれるということを証明しましたね。

100戦については、「勝ち続けての100戦はきっと楽しいだろうけど、勝てない苦しいレースがほとんどだったので、本当によくやったと思う(笑)」って言ってました。

やっぱり大嶋選手は走るのが好きなんだねって、改めてこれを聞いて思いました(^-^) 残りのレースも大嶋選手らしく思いっきり走って欲しいなと思います。

 

 

 

というわけで、まだまだたくさん活躍した選手はいるのですが、今回も長文になってしまったのでこの辺で。

そして菅生のレースが始まりますが、過去のデータ的に初優勝が多く生まれるのがこのスポーツランド菅生。体力的にも非常に厳しいサーキットで、夏の開催は久しぶりということもあって、各選手にとってはチャレンジングな週末になると思います。

今回も私は各放送の解説とステージイベントにお邪魔する機会がありますので、ファンの皆さんと一緒にSUPER FORMULAを存分に楽しみたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m ではまた!!

 

 

written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。

 

土屋武士オフィシャルアドバイザー

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