【武士が斬る!】vol.27 2026シーズンの幕開け!開幕戦の見どころ
2026.04.04
皆さんこんにちは!SUPER FORMULAオフィシャルアドバイザーの土屋武士です。
今シーズンもいよいよ開幕します。今年は例年と違ってモビリティリゾートもてぎでの開幕戦となりますが、まずはここが見どころ!という部分をお話ししましょう。

今年も2月に公式テストが鈴鹿サーキットで行われましたが、例年通り開幕前のテストはこの1回のみ。そしていつもと違うのが、テストで走っていないもてぎでの開幕戦ということです。これだけでも不確定要素の一つになり得るのですが、このオフシーズンにもてぎの舗装が改修され新舗装になったということ。これはチームにとって頭を悩ませる大きな要因となり得ます。
聞こえてくる話としては「かなり大幅にタイムがアップした」というカテゴリーもあるようで、SUPER FORMULAで走らせたらどんな特性を持つ路面なのか?? もちろん誰一人、SUPER FORMULAでは走らせたことがなく、走らせてみなければ全く分からないという現状です。特にエンジニアの皆さんは頭を悩ませていることでしょう。これまでのデータである程度いいレベルで走ることができるのか? それとも全く違ったセットを施さなければならないのか? 頭の中ではそんな考えがグルグルと巡っているはずです。
結局は走らせてみないと本当の答えは分からないのですが、この不確定な部分がこの開幕戦を面白くする要因だと思うのです。例年通りのスケジュールであれば、2月の鈴鹿テストでシーズンの幕を開け、開幕戦も鈴鹿でスタートするという流れですが、それだと大きな波乱は起きにくいと言えますよね。

2022年第8戦もてぎでチームインパルの関口雄飛選手以降、昨年の最終ラウンド鈴鹿大会まで30戦もの間、ダンディライアン・チーム無限・チームトムスのトップ3チームしか勝てていなかった中で、ナカジマレーシングのイゴール大村フラガ選手が、その牙城を崩して優勝を遂げました。佐藤蓮選手も表彰台の常連となりつつあり、ナカジマレーシングの勢いはトップ3チームに加わる要素を満たしつつあると言えますが、もし例年通り鈴鹿開幕だったとすると、この4チームの中から優勝者が生まれるというのが順当な予想だと誰もが思うところです。
そう思う根拠としては、昨年の鈴鹿3連戦の6位以内の席は6×3=18席ありましたが、そのうちの16席をこの4チームが占めていました。それくらい今のSUPER FORMULAにおいてチーム力というのが大きなウエイトを占めていると言えるのだと思います。
開幕戦はどのドライバーも気持ちを新たに、そして更なる覚悟を持ってシーズンに挑んでくるものです。そんな中で、例年と違う不確定要素が多く含まれている今回の開幕戦は、大きな波乱があってもおかしくない——、そんな予感がするのは私だけでしょうか?
今季はとにかく変化がたくさんありました。今季は5人のルーキードライバーが参戦します。残念ながらWRC世界チャンピオンのカッレ・ロバンペラ選手は参戦を見送ることが発表されましたが、他にも注目すべき選手がたくさんです。
海外からはルーク・ブラウニング選手、ロマン・スタネック選手、チャーリー・ブルツ選手、日本勢は野村勇斗選手、小林利徠斗選手がルーキーシーズンを迎えますが、なかなか個性的で実力派が揃ったなという印象です。


ブラウニング選手はウイリアムズ育成のF1候補生ですし、スタネック選手もFIA F2選手権で優勝経験のある実力派。この2人は2月の公式鈴鹿テストの時にS字で走りを見ましたが、すぐにでもトップグループに食い込んでくる実力があると感じました。
同じく非凡な才能を感じたのが野村選手。12月の鈴鹿ルーキーテストの時にも感じましたが、その適応力は素晴らしく、走りの印象は本山哲さんに似ているなと感じました。
この実力伯仲のシリーズでルーキーが上位に食い込むことは簡単ではありませんが、なかなか面白いことが起こるかもしれないな、という予感がします。
そして、移籍組や復帰、新規チームの参戦など、話題は盛りだくさんです。新規チームから復帰する松下信治選手は、シェイクダウンとなった2月の鈴鹿テストからいきなり上位のタイムをマークし、その存在感を示しました。メカニックやエンジニアも周知の仲間が集まったということで、新規チームとはいえ侮れない存在になると思います。
そして移籍組では、福住仁嶺選手は要注目です。昨年の鈴鹿3連戦の18席のうち2席を獲得していたのが、引退したルーキーレーシングの大嶋和也選手とKCMGの福住選手でした。今季ルーキーレーシングに移籍した福住選手は、昨年の最終ラウンドでの実績に加え、オフシーズンテストでもセッショントップタイムを刻む好調さを見せてくれました。1台体制という部分はあるもののチーム力は申し分なく、初優勝は今季中に達成される可能性は高いと感じています。

同じく初優勝を切望しているKCMGに移籍した山下健太選手も面白い存在です。9年間在籍したコンドウレーシングを離れ、10年目のシーズンに入る山下選手ですが、昨年のもてぎで獲得したポールポジションは大きなインパクトでしたよね。スーパーGTでも500クラスで3度のチャンピオンを獲得している山下選手は、まだSUPER FORMULAではその実力を爆発させていません。新天地での覚醒があれば、かなり面白いレースを見せてくれると思いますし、特に開幕戦もてぎは期待したいですね。
そして昨年まさかのノーポイントに終わったチームインパル。今年はザック・オサリバン選手が移籍し、1台体制で名門復活をかけて挑むことになりました。テストから精力的に走る姿が印象的で、コースインするとすぐにマックススピードで駆け抜けるのがオサリバン選手のスタイル。“大人しく”なんて言葉はきっと彼の辞書にはないでしょう。それくらいどんな時でもアクセルを踏んでいく姿は、“星野イズム”を継承するに相応しいと感じます。昨年苦しい思いをした分、その想いが噛み合ったとき、きっと爆発的なスピードを見せてくれるはずです。

他にも取り上げたい選手・チームはたくさんありますが、開幕戦もてぎにフォーカスすると、セルモインギングの阪口晴南選手と大湯都史樹選手がダークホースになるかもしれないなと感じています。二人とも一発の速さを持ち、レースではしぶといドライバーです。そして天気予報は不安定の様子。もし雨が絡めば、このチームの強さが際立つ可能性もあります。2月のテストでも様々なメニューを試していたように見えましたし、何かを掴んでいれば上位争いに加わってくることは間違いないでしょう。
さて、ここまで今年のSUPER FORMULAを盛り上げてくれそうな選手・チームを取り上げてきましたが、やはり中心になってくるのはトップ3+ナカジマレーシングの8人のドライバーたちでしょう。この8人は誰もが優勝、そしてチャンピオンしか見ていないはずです。
その中でターゲットになるのは、やはり昨年のチャンピオン岩佐歩夢選手でしょう。今年は15号車から1号車にゼッケンが変わり、ディフェンディングチャンピオンとして挑むシーズンになります。昨年はリタイヤがありながらのチャンピオンでしたが、シーズンを通しての速さや強さに関してはライバル勢も認めざるを得ない内容でした。

だからこそ「このままで終わらせない」と、誰もが打倒岩佐を掲げ、自分自身とチームを底上げして挑んでくるでしょう。
正直言って、今シーズンほど読めないと感じることはありません。取り組みレベルが非常に繊細で、かつ高次元で展開されています。岩佐選手が強いことは間違いありませんが、それを止める準備もライバルたちは着々と進めています。2月のテストでは、そんな空気感を強く感じました。
そして、ここまで挙げてきた役者たちと開幕戦の不確定要素。今週末、2026シーズンの開幕ラウンドが幕を開けますが、その舞台ではどんな展開が待っているのか——、怖いくらいにワクワクする要素が揃っています。
このステージを走るドライバーたちは、誰もが「自分が一番速い」と証明するために走っています。今年も、いや今年はさらに混沌としたシーズンになることでしょう。そしてその中で、素晴らしい走りとバトルがきっと生まれるはずです。
今年もファンの皆さんと一緒に、その戦いを見守っていきたいと思います。今シーズンも“HUMAN MOTOR SPORTS” SUPER FORMULAを楽しみましょう!!
written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。
