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コラム【武士が斬る!】vol.1 50年続くトップフォーミュラの魅力はここにある

2023.04.06

皆さんこんにちは。SUPER FORMULAアンバサダーの土屋武士です。

私は日本のトップフォーミュラに憧れてレーサーを目指し、プロのレーシングドライバーになり、2000年の全日本フォーミュラニッポン選手権にスポット参戦してから2008年までトップフォーミュラのレーサーとして参戦していました。そのきっかけとなったのが1980年代の全日本F2選手権。小学校の時から電車とバスで富士スピードウェイに通い、星野一義さん中嶋悟さん高橋国光さんなどの国内トップドライバーと、その後F1にも参戦する外国人選手もたくさんいて、選手の皆さんの緊張感みなぎるその雰囲気に魅了されていきました。でもレーサーのカッコ良さだけでなくて、チームのメカニックやスタッフの皆さんもそれ以上に真剣に取り組んでいる姿、レースの結果に一喜一憂・喜怒哀楽が爆発している姿を見て、子供の自分には、「大人がこんなに興奮しているところ見たことない!」と衝撃を受けて一気にレースの虜になっていったことを鮮明に覚えています。

そんな日本のトップフォーミュラは今年で50周年を迎えます。その歴史はSUPER FORMULAのホームページでも紹介されているので是非見て頂きたいと思いますが、その新しいシーズンが今週末に開幕します。本年度はSF23という新しいカウリングシステムをまとった新型車両に一新されますが、例年以上にこの開幕戦は不確定要素がたくさんあります。その理由のひとつが、開幕前のオフシーズンテストが3月に行われた鈴鹿サーキットでの2日間しかなかったことが挙げられます。例年は鈴鹿と富士スピードウェイという特徴の違う2種類のサーキットにより行われて開幕を迎えるのですが、この富士開幕戦は新しい車両になって実走経験なしでぶっつけ本番状態で迎えるからです。しかも現在の天気予報では少々雨が絡む様子・・・。チームのエンジニアにとっては、非常に悩ましい状況だと思います。「金曜日のフリー走行だけはドライ路面で走らせてくれ!」と切に願っているエンジニアがほとんどでしょう。鈴鹿テストでマシンのバランス、主にメカニカルグリップの部分と、エアロダイナミクスの部分とのすみ分けがある程度掴めているチームにとっては、金曜日の天気が雨になった場合、この開幕戦は大チャンスになると思います。鈴鹿テストでまだ方向性が定まっていないチームにとっては、テスト後に解析した結果をフリー走行で確かめて、そのうえで土曜日の第1戦に挑むという流れでプログラムを組んでいるはずですが・・・、お天道様はどんないたずらを用意しているでしょうか??

開幕戦には期待と不安が入り混じっています。レーサー、エンジニア、メカニック、スタッフ、チームオーナー、各々が各々の立場で色んな思慮があり、それぞれ違う期待と不安を抱いています。昨年まで好調だったチームにとっては、新しいパッケージになって不安なことの方が大きく感じているかもしれません。逆だったチームは、この機会を大きなチャンスととらえて期待の方が大きいかもしれません。

ちなみに、鈴鹿テストをS字コーナーで見ていた感じで、好調そうだなと思ったチームは、TCS NAKAJIMA RACINGKids com Team KCMGDOCOMO TEAM DANDELION RACINGdocomo business ROOKIEP.MU/CERUMO・INGINGでした。マシンの動きの中で、SF23はリヤの流れ出しがピーキ―という部分に手を焼いている様子が見て取れたのですが、あげたチームはその部分が比較的安定して見えました。

 

様々な変化がある中で迎える開幕戦。次の50年へというテーマで、昨年NEXT50プロジェクトが発足し、今シーズンからは新たに横浜ゴム・ADVANタイヤが、再生可能原料を33%使用したSUPER FORMULA用ワンメイクタイヤを製造し投入されることになりました。カーボンニュートラルへの取り組みは我々人類の大きなテーマとなっています。モーターレーシングの世界では、これまで「サーキットは走る実験室」というフレーズが使われてきましたが、現代のサーキットは「走る社会実験室」となり、社会に貢献しようと技術者たちがこぞって自分たちの英知を結集させています。この新しい取り組みの中で生まれたタイヤは、これまで使用されてきたレギュラータイヤよりも温度に対して敏感なように見受けられます。はたして、レースによるロングランにどのような影響を与えるのか?? こればっかりは実際にレースを走ってみないことには答えは出ません。この週末は2連戦ということですから、各チーム、土曜日の第1戦はしっかりとチェッカーを受け、その答え合わせを第2戦にしたいと目論んでいることでしょう。ですから、第1戦で答えを発見したチームが第2戦に大きく順位をあげることもあるかもしれません。そのような観点で見てもこの開幕2連戦のラウンドは見所たくさんだと言えるでしょう。

ここまでレースファンの気持ちで興味深い部分を綴ってきましたが、不安要素がたくさんあることは実際やっている方はたいへん過ぎてたまったもんではありません・・・。観ている方には楽しい部分ですけど(笑) 私は現在スーパーGTでチームを運営していますが、チームオーナーにとっては他の部分で心配事がたくさんなんです。その辺りもこのコラムでお話する機会があればしていきたいと思います。

 

ここまで50年続いてきた要素は、間違いなく、フォーミュラを愛し情熱を傾けてきた方々がいらっしゃったからだと断言できます。私もその一人だと自負していますが、それだけの魅力がトップフォーミュラのステージにはあります。誰よりも速くチェッカーを受けること、それだけの為に、1/1000秒をそぎ落としていく努力をしている。全員がその想いで集っているので、その空間を包む雰囲気が緊張感みなぎる、たくさんの人たちを魅了する場所になっているです。是非その雰囲気を感じにサーキットに来て頂きたいですし、ひとりでも多くの人にファンになってもらいたいなって思います。

そんなファンの皆さんに、SUPER FORMULAの魅力を少しでもお届けできるように、このコラムを綴っていきたいと思いますので、是非よろしくお願いしますね!ご意見もお待ちしています。では開幕ラウンドをお楽しみに!!

 

written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシイングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。

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