コラム【THE 二刀流ドライバー、イゴール】vol.3〇〇ならばAPは速い⁉️
2023.05.19
スーパーフォーミュラ第2戦、いかがでしたか?
スーパーフォーミュラ第2戦の鈴鹿ではドラマが生まれ過ぎてどこから書けば良いか迷ってしまいます。大湯選手の見事なポールポジション。レース後半での野尻選手と大湯選手のクラッシュ。完璧な作戦そして完璧なレースをしていた坪井選手と展開に恵まれた宮田選手の1位争い。同時に起きていた平川選手対リアム選手の3位争い。30周のこのレースで記憶に残るような場面がいくつもあった所を今回振り返って行きたいと思います!
フリープラクティスからこの週末で苦戦していたのは、なんと意外なチーム無限でした。難しいコンディションの中で挑んだQ1では、リアム選手が3番手でQ2へ進出し、なんと野尻選手はQ1で落ちてしまいました。。。と思った瞬間、可夢偉選手がシケインでコースアウトした為、タイムが抹消されて野尻選手が1ポジションアップ。なんとQ1が終わった数分後にQ2へと進みました。逆に一発アタックのペースが凄く良かったのは、大湯選手と坪井選手でした。Q1A組では大湯選手がトップに立ち、Q1B組では坪井選手がライバルをつき放してトップに立ちました。
Q2でポールポジションを獲得したのは大湯選手でした。走りがかなりアグレッシブでとにかく踏んでいってる感じです。2位でほぼ同タイムだったのは坪井選手でした。彼はドライビングスタイル大湯選手と正反対で、とてもスムーズです。アタックラップでもステアリングに修正を入れずに綺麗にまとめていくタイプで、車の個性も違うにのトップ2の差がたったの0.04秒差です。ちなみに平均的な「まばたき」のスピードは0.10秒から0.15秒かかります。ほぼ毎戦こんな戦いを繰り広げられると思うと、本当にすごいですよね。そして3位に食い込んできたのが野尻選手?!Q1で本当にギリギリだったのに、なんでこんなにパフォーマンスアップできたのか皆さん疑問に思ってますよね?はい、僕も同じく知りたい所です(笑)
レーススタート直前で残念ながら5番手スタートの牧野選手と7番手スタートの佐藤選手がマシントラブルでなんとリタイヤしてしまいました。レーススタートは特に問題無く、トップ3がスターティング順位をキープ。少し後ろではなんとリアム選手が上手いスタートを決めて2週目に入る前には4番手に上がっていました。なんと3周目ではシケインのブレーキングで野尻選手をかわして3位に上がってきました。ここでレースは一旦落ち着いて、11周目からピットへ入る車が増え、このタイミングでトップ集団で残ったのは大湯選手、宮田選手、そして平川選手。その後、20周目までは皆見えない相手とドライバー達は戦っていました。ピットインを早く済ませたドライバーはタイヤも新しい物に変えているので、なるべく速いペースで走行をして、後半でピットへ入るドライバーの前に出るのを狙います。ただ、後半でピットインすると、ポジションは失う可能性はありますが、レース終盤に良い状態のタイヤでコースへ復帰するのでタイヤが温めきった後はペースを凄く上げやすくなります。
トップで走行していた大湯選手が20周目でピットインを行い、ギリギリ野尻選手の前で3位にコースへ戻ります。そしてS字2個目から3個目、大湯選手がまだ冷えたタイヤでペースを上げられる前に野尻選手がオーバーテイクを仕掛けた所でレースが大きく変動してしまいました。なんとコーナー進入で野尻選手のフロントウィングが大湯選手のディフューザー付近にヒットし、2台ともクラッシュ。見ている側としてこんな事がおきてしまうんだと、一瞬声がでませんでした。そのインシデントをきっかけにセーフティーカーが入り、大湯選手の6秒ほど後ろで走行していた宮田選手と平川選手がこれ以上ないベストなタイミングでタイヤ交換をすませて、3位と4位にコースへ復帰。23周目にレースは再開され、残り7周トップ4のデットヒートが繰り広げられました。
OTSがほとんど残っていない代わりにタイヤが10周新しい3位の宮田選手、そして4位の平川選手。そしてタイヤの状態がもう良くない代わりにOTSの残量がまだ残っている1位の坪井選手と2位のリアム選手。宮田選手はリアム選手にプレッシャーを与えつづけ、26周目に2番手アップ。一息する間もなく、坪井選手をとらえていました。ほぼ2周テールトゥノーズ状態で、29周目で一気にかけにでた宮田選手、OTSの最後の残量で見事にトップにでました。OTS使用時は今年からランプの点灯がされなくなったので、前の車が対応しきれない場面が増えて、戦略としてさらに深みが加わったように見えます。ちょうど後ろでは同じタイミングで平川選手もリアム選手を交わして3位に上がり、ほぼ最終ラップまで続いたバトルが終え、30周目にチェッカーフラッグが振られ、見事に11位からスタートした宮田選手が大逆転勝利を獲得しました。
この鈴鹿ラウンドを終えた所で、なんとシリーズランキングトップ4が10ポイントという近差。まだまだ今シーズンを通して凄いレースが見られる予感しかしないです。今週末行われるオートポリス戦では、サーキットの特徴からしてハイスピードコーナーがかなりあるので、鈴鹿と似たような車作りになると思われます。そうすると鈴鹿で速かった選手とマシンが次戦でも高いパフォーマンスを引き出せるんじゃないかと僕は予想します。次戦こそリベンジを求める大湯選手、初優勝を飾った宮田選手、開幕から良い流れに乗っている坪井選手、3連覇を目指している野尻選手、そしてルーキーながら高いパフォーマンスを見せているリアム選手。果たしてオートポリス戦では誰がレースを制するのか必見です!
Written by イゴール・フラガ
日本生まれの日系ブラジル人レーシングドライバー。幼い頃からカートのタイトルを獲得し、その後多数の国でF3に参戦し好成績を残す。同時に「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」のワールドチャンピオンを獲得し、e-Motorsports界でも有名なリアル&バーチャルの『二刀流』ドライバーとして活躍している。