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コラム【武士が斬る!】vol.6 成長を共にするドライバーとチーム

2023.08.18

ちょっと、色々ありまして・・・コラムを書くのが遅くなってしまったSUPER FORMULAアンバサダーの土屋武士です(^^;

まずは前回の富士スピードウェイで行われた第5戦夏祭り!!たくさんのファンの皆さんにご来場頂きました!グランドスタンド裏のイベントブースではいつも以上の賑わいで、長年レースを観に来ていますが、こういった雰囲気は初めてでしたね。レースだけではない楽しみ方の扉を開いたような感じがしました。これには本当にたくさんの皆さんのご協力のもとに成り立っていたことをお伝えしておきます。

その一つとして、レース後にドライバー全員がステージに来てくださいました。順位が悪かったり、すぐにでもチームとミーティングに入っていきたいドライバーもいたと思います。でも、ファンの皆さんの前に笑顔で、サーキットに来てくださった感謝を伝えに来てくれたことは本当に感動しました!ドライバーのみんなもスーパーフォーミュラの魅力を、大変さを、尊さを、たくさんの皆さんに伝わってほしいんですよね。どれだけの想いでこのレースに懸けているかということを。

一度開いた扉、この先に進めていくためにはまだまだ努力が必要だということ、たくさんの課題があることが現実ですが、みんながやる気になればこういった空間が作れることが証明されたので、今後、みんなで作り上げていけたらいいなと思っています。何より、ファンの皆さんが喜んでくれることが一番ですので、レースという興行を、ファンの皆さんと一緒に盛り上げていければいいなと思います!今後ともよろしくお願いしますね。

さて第6戦富士もたくさんのドラマがありました。伝えたいことがたくさんなんですが、今回のコラムは牧野任祐選手のことを話したいと思います。2019年開幕戦でポールポジションを獲得して衝撃的なデビューを飾ったのですが、その後はなかなかリザルトに結びつかない期間がありました。2021年の前半は体調の問題で参戦出来ず、その速さ・実力からしたらもどかしい時間が本当に長かったと思います。

キャリアのスタートも、メーカーのスカラシップを獲得できる立場にいながら資金の問題で断念し、その後は牧野選手の才能を埋もれさせてはいけないと思う支援者が、彼のキャリアを繋いできたと聞きます。そのチャンスを生かし2015年のF4シリーズに参戦しましたが、坪井翔選手に僅差で敗れ、悔し涙を流した姿を知っている人も多いと思います。

今回のレース、自身2度目のポールポジションを獲得しましたが、決勝はリアム・ローソン選手に敗れて2位。私の眼には、決勝直後の牧野選手の悔しい表情を見た時に、F4最終戦の光景がフラッシュバックしてきました。牧野選手の走りを見ていると、「どうにかしてでも速く走るんだ」というような想いの強さが伝わってきます。まさに気持ちで走るを地でいっているドライバーだと思います。2位表彰台は実はこれまでの最高位です。前々回大会の菅生での表彰台が5回目3位だったのですが、一つ階段を上がった喜びは微塵も感じなかったですね。3位→2位、ときていますので、今回の茂木大会は自ずと期待が膨らんでしまうことでしょう。もちろんファンのみんなの期待も!あとは優勝だけ!!

「いいエンジニアが、いいドライバーを育てる。その逆もしかり」レース界には昔から伝わる定説がありますが、このことほど真髄をついている言葉はないような気がします。前戦富士で優勝したローソン選手とチーム無限の小池エンジニアは、共に急成長の過程にあり、そしてお互いがお互いを「いいドライバー」「いいエンジニア」に育ててる関係に見えます。

オートポリスでの見事な優勝はチーム全員で勝ち獲った優勝だったと、このコラムでお話しました。しかし次戦の菅生ラウンドでは、コミュニケーションミスからレースペースの良さを活かせず5位。ローソン選手も苛立ちを隠せず、かなり不満を露わにしていました。そして前回の富士は戦略もピット作業もバッチリで、完勝と言っていい勝ち方を披露してくれました。「あ~、やっぱりローソンは速いし強いよな~~」って、簡単に考えてる人、ちょっと待ってください。確かにアウトラップのコールドタイヤの速さや、タイヤをもたせる決勝での走りは秀逸なものを持っていますが、それだけで勝てるほどSUPER FORMULAは甘くありません。チームと一緒に、綿密にセットアップや戦略を練りに練って、共有してこそのこの走りと完成度があるんです。それを21歳の若者が、異国の地に来て言語の違いがある中でできている事実がすごいことだと思うんです。

小池エンジニアも、レース毎に無線のコミュニケーションレベルが上がっているように見えます。お互いに、勝つために必要なことを一つ一つ丁寧に積み上げているからこそ、この強さに繋がっているんだなって、傍で見ていると感じます。そしてこの取り組み方の礎は、野尻智紀選手&一瀬エンジニアのチャンピオンコンビが作り上げたものかもしれませんね。一つ一つを無駄にせず積み上げていく作業がこのレースを戦う上で必要だということを、チーム無限に関わる全員が知っているからこそ、今の強さになっているのではないかと思います。本当にいい循環で回っているんでしょう。今度田中監督に詳しく聞いてみますね。

いまや、F1に通用するタレントなのかという疑いを持つ方が難しいくらいのローソン選手と、間近でチャンピオンの“獲り方”を見ている小池エンジニアとのコンビはかなり手強いと思いますが、宮田莉朋選手&チームトムス陣営も、それに匹敵する強さを身に着けつつあります。そしてダブルチャンピオンのチームメイトも忘れてはなりません。この他にも、前戦驚異的な追い上げを見せた平川亮選手、初優勝を狙う牧野選手、好調の坪井選手、他にもまだまだ噛み合ったら一気に上位にくる選手もたくさん。このSUPER FORMULAの舞台では立ち止まった瞬間に、はるか彼方に置いてけぼりにされるくらいのスピード感で進んでいるように思います。

さて、次戦茂木ではどんな戦いが待っているのか——、私もみんなの成長についていけるように常に勉強していかなきゃと思います。

 

 

written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシイングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。

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