コラム【THE 二刀流ドライバー、イゴール】vol.7 最終戦、熱くならないわけがない‼️
2023.09.20
お久しぶりです、スーパーフォーミュラ アンバサダーのイゴール・フラガです。
モビリティリゾートもてぎでのラウンド7ではリアム選手が予選の順位(2番手)でポイントを獲得した結果シリーズポイントをリードをし、決勝は良い位置からのスタートでした。スタートもうまく決まって加速もよく野尻選手に並び1コーナーに飛び込んだのですが、出口でスピン。それがなんと4台を含む大クラッシュになってしまいました。結果、宮田選手がポイントリーダーに復帰し、優勝した野尻選手は上位の二人に急接近しました。
シリーズランキングトップ3のポイント差がたったの10ポイント差で最終戦を迎える事となりました。最終戦はいつなのか確認すると、あれ?2ヶ月近くまたないといけないですね。とくにこういう展開になってくると、僕は早く最終戦が見たくなってしかたがないです(笑)
今回はフリープラクティスから順調に来ていたのはチーム無限でした。やはりトラクションが要求されるサーキットでは、無限の車はリアがすごくしっかりしていて、茂木でも高いパフォーマンスを発揮していました。前回のコラムにも書いたんですが、チームダンディライアンも富士のテスト後からパフォーマンスをすごく上げてきました。そして今年かなり予選で苦戦していたチームインパルが2台ともQ2へ通り、関口選手も久しぶりに予選で高タイムをマークしてきました。
レースではポールからホールショットを決めた野尻選手がまずまずのスタートをきり、なんと2位につけていた太田選手が前回の富士レースに続きスタートで出遅れてしまいます。そして3位スタートのリアム選手が抜群のスタートを決めて、1コーナーを野尻選手とアウトから並んで飛び込みます。野尻選手がそれを防ぐために車を絶妙な位置につけ、リアム選手は一歩も引かず大外刈りを試みたんですが、出口で縁石の外側にタイヤを落とし車の真ん中をボトムアウトさせてしまいます。ボトムアウトとは「車の下の部分を直接地面にあててしてしまうこと」です。そうするとタイヤが地面に接地しなくなり、ハンドルなどを何も操作が効かなくなります。そこで彼は車のコントロールを失ってしまい、コースの真ん中までスピンしてしまいました。
そこで後方に迫っていた車両たちが次々に避ける動作を行い、何台かは前に何が起こっているのか見えずそのまま接触してしまいます。僕はラウンジでちょうど1コーナーの立ち上がりまで見えていたんですが、車が中を舞う姿を見て心配しました。最終的には4台を含むインシデントだったんですが、誰も大怪我は無かったのが本当に幸いでした。ただ接触以外にも避ける行為等で減速した車もあったり、ポジションが大きく変動しました。そこで大きく順位を落としてしまったのが宮田選手でした。予選でもあまり調子はよくなく8位につけていましが、そのインシデントで17位までポジションを落としてしまいました。赤旗中断中にリアム選手は緊急ピットインを行い、メカニックさんたちがギリギリで車の修理を間に合わせました。ただ赤旗中にピットレーンもクローズドになるので、リアム選手には後ほどドライブスルーペナルティが重なられます。
そしてレースがリスタートされた後に、一番最初に10周目でピットインを行ったのが大湯選手でした。他のドライバーはだいたい20周から25周くらいの間にピットインを行いました。いいタイヤの状態で大湯選手が一番前に出られると思ったんですが、野尻選手のペースがいい感じでピット作業も決まり、大湯選手のアンダーカット中でも順位を守ることができました。
平川選手も後ろから追い上げてきてオーバーカット作戦もかなりいいところまで来ていたんですが、ピット作業で大幅なタイムロスがあり野尻選手と大湯選手の前には出られませんでした。そしてタイヤが温まる前までに バトルで山本選手からプレッシャーを受け90度コーナーで2台は若干接触。山本選手は結果リタイアしてしまい、平川選手はスピン。それでもタイヤが大湯選手と比べかなりフレッシュだったので最後追い上げを見せ2位に食い込んできました。
その間後方でものすごい追い上げを見せていたのが宮田選手でした。オーバーテイクも「そこから行くのか!」という勢いで徐々に順位を上げ、4位でチェッカーを受けました。最終結果は野尻選手が優勝して平川選手が2位、そしても大湯選手がようやく3位で表彰台に上がってきました。宮田選手は4番手でゴール。阪口選手は今年ベストフィニッシュの5番手でレースを終えました。
この結果を踏まえると、最後の2レースは鈴鹿で行われるんですが、トップ3はわずか10ポイント差。ここまでを少し振り返るとチーム無限がほんの少し上のパフォーマンスを持っているように見えるんですが、ミスなくずっとトップ5を維持できている宮田選手が現在ランキングトップです。リアム選手もここまですごくいい平均順位を保ってきたんですが、今回のインシデントでノーポイントになったのが痛かったですね。野尻選手も体調不良で1回休んではいるんですが(ラウンド4オートポリス)、ラウンド3鈴鹿のクラッシュだけなければまだポイントリーダーだった可能性もあります。
今年の最終戦は本当に熱くなる要素しかないので、ぜひサーキットまで足を運んでみてください。スーパーフォーミュラでは近年一番ドキドキする戦いになると思います!!
Written by イゴール・フラガ
日本生まれの日系ブラジル人レーシングドライバー。幼い頃からカートのタイトルを獲得し、その後多数の国でF3に参戦し好成績を残す。同時に「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」のワールドチャンピオンを獲得し、23年はSUPER FORMULA Lights、SUPER GTに参戦。e-Motorsports界でも有名なリアル&バーチャルの『二刀流』ドライバーとして活躍している。