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2023年シーズン開幕!「SF23」を最初に制すのは誰だ!?

2023.03.24

昨年の開幕戦スタートの様子
野尻智紀(TEAM MUGEN)が圧倒的な強さと安定感を発揮して2連覇を達成した2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。そのタイトル決定戦となった三重県鈴鹿サーキットでの最終大会から5ヶ月余りのインターバルを経て、来たる4月8日(土)〜9日(日)には、いよいよ2023年のシーズンが幕開けの時を迎える。舞台となるのは、静岡県富士スピードウェイ。昨年の開幕大会と同様、2レース制で行われるこの大会は、全く予想不可能な展開となりそうだ。

今季、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦するのは、12チーム・22台。昨年よりも1台、参加台数が増加している。また、ドライバーの顔ぶれとしても、ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)に加え、今年はリアム・ローソン(TEAM MUGEN)、ラウル・ハイマン(B-Max Racing Team)、ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)と新たな外国人ドライバーが参戦。昨年、スーパーフォーミュラ・ライツ選手権でタイトルを獲得した小高一斗(KONDO RACING)、また同じく「SFL」で活躍した太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がステップアップを果たした。こうした若手を迎え撃つのが、野尻智紀(TEAM MUGEN)を筆頭に、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)といったベテラン勢。牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)や福住仁嶺(ThreeBond Racing)、松下信治(B-Max Racing Team)、また山下健太(KONDO RACING)、宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)、坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)といった中堅たちの戦いぶりにも注目だ。今年はハード面に多くの変更があるだけに、勢力図がガラリと書き換わる可能性もあるはずだ。

リアム・ローソン(TEAM MUGEN)ラウル・ハイマン(B-Max Racing Team)
ジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)小高一斗(KONDO RACING)

そのハード面に関しては、すでに各所で報じられているように、まずはエアロパッケージが刷新され、車名も「SF23」と改められた。このパッケージは「SF NEXT50」プロジェクトの一環として、昨年の開発テストを通じて仕上げられたものだが、これまで使われてきた「SF19」よりも全体的にダウンフォースが削られている。同時に、車体後方に流れる空気が中央寄りに集められ、乱流が起こりづらい設計。それによって、従来よりもスリップストリームを利用して前方の車両に近づくことを可能にし、オーバーテイクシーンを増やすことを目指している。これに従来から使用されているオーバーテイクシステムを組み合わせることで、どんなシーンが生まれるのか期待したいところだ。また、ハード面では、タイヤのスペックも変更。こちらも昨年の開発テストを通じて仕上げられたものだが、CO2削減を目指して、構造には植物性の材料など再生可能な素材が約30%使用されている。実際のレースコンディションになった時、このタイヤの性能がどのように変化していくのか。これは全チーム、全ドライバーにとって未知数だ。

「SF23」フロントビュー「SF23」リアビュー

さて、この新しいエアロパッケージをまとい、新しいタイヤを使って各車が初の走行を行ったのは、3月4日(土)〜5日(日)に行われた鈴鹿サーキットファン感謝デー。これに引き続き、6日(月)〜7日(火)には、第1回公式合同テストが行われた。このテストは幸い、両日とも好天に恵まれ、1日4時間、計8時間の走行が行われている。事前のシミュレーションは行ってきたものと思われるが、やはり初めてのパッケージということで、現場では各チームともに多くのテストメニューを敢行。空力や足回りなどに関して、細かなデータ採りを行っていた。また、2日目の午後になると、レースを見据えて、ロングランを行うチームも。そんな中、初日の午後に唯一1分35秒台のタイムをマークして、総合トップに立ったのはディフェンディング・チャンピオンの野尻。これに山本、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)とホンダエンジンユーザー勢が続いている。対するトヨタエンジンユーザー勢では、2日目の午後に可夢偉がトップタイムをマーク。総合でも4番手につけた。可夢偉に続いたのは、平川。平川は、初日の午後のタイムで総合5番手となっている。また、今季チームを移籍した大湯都史樹(TGM Grand Prix)が2日目の最後にクルマをまとめ上げ、総合6番手に滑り込んだ。こうした中で目立ったのは、山本や可夢偉、そして大嶋和也(docomo business ROOKIE)ら、ベテラン勢が多くのセッションで好位置につけていたこと。エアロパッケージの変更が、経験豊富なベテランにとって吉と出るのか。あるいは何の先入観も持たない若手たちがここから伸びてくるのだろうか。その点も気になるところだ。一方、他カテゴリーでのアクシデントによって、このテストに参加できなかったのが、山下と太田。山下の代役としては、昨年2勝を挙げ今年トヨタ陣営に移籍した笹原右京が、太田の代役としては大津弘樹がそれぞれステアリングを握っている。そのデータをもとに、開幕大会がSF23でのぶっつけ本番となる山下や太田がどのような奮起を見せるのかも、注目だ。

小林可夢偉(Kids com Team KCMG)大嶋和也(docomo business ROOKIE)山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

ただし、前述のように、開幕の舞台は富士。鈴鹿とは全くキャラクターの違うコースであるため、合同テストの結果だけでは誰が好調かを予測することは難しい。2レース制のため、今大会は7日(金)に専有走行が行われるが、どのチーム、どのドライバーにとっても、新たなパッケージで富士を走るのはこの時が初めてということになる。その短い時間の中で、本番に向けていかにマシンを仕上げていくのか。手腕が問われることになる。まずは、ここでの仕上がり具合をチェックしていただきたい。
この専有走行に続いて8日(土)には、すぐさま開幕戦の予選を迎えることになる。予選方式はノックアウト方式。昨年と同様、今年も「Q2」までで「PP」が争われる。開幕戦に関して予選前日に抽選が行われ、「Aグループ」、「Bグループ」ともに、11台が走行することになるが、そこからQ2に駒を進められるのは6台ずつ。裏を返せば各グループともに5台ずつ、ほぼ半数がQ1で敗退することになるため、超熾烈なタイムアタック合戦となりそうだ。続いて行われるQ2も、わずかなアタックタイミングの違い、些細なタイム差で順位がガラリと変わる可能性が大。今年も予選トップ3には3点、2点、1点とポイントが与えられることになるが、幸先のいいPPを獲得するのは誰なのか。最初から最後まで目が離せないセッションとなるだろう。

さらに、予選もさることながら、決勝レースもスタートからゴールまで、目まぐるしい展開が予想される。ドライコンディションであれば、今年も4本のタイヤ交換が義務付け。先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前までに各ドライバーはタイヤ交換しなければならない。このタイミングをどのように図るのか。金曜日の専有走行では富士に合わせてのセットアップを詰めていくことに時間を使い、ロングランまで確認できない可能性が高い。その分、レースになって初めて満タンでの走行をするドライバーも多いものと思われるが、その中でどう新スペックのタイヤをマネージメントするのか。すでに実績あるタイヤでレースしていた昨年は、タイヤ交換のウィンドウが開いてすぐにピットインするか、あるいは引っ張ってから入るか、周りの状況を見ながらとは言うものの、作戦的にはほぼ二択となっていたが、今年の開幕ではタイヤの持ち具合によって戦略にも違いが出てくるものと思われる。その点も興味深い。もちろん、開発の狙い通り、より多くのオーバーテイクシーンが生まれるかどうかにも期待だ。

この開幕レースを経て、翌日に行われる第2戦は、予選がランキング順に2グループに分けられ、顔ぶれが変わってくることから、ここでもまた違う争いとなることが予想される。昨年は、この第2戦を皮切りに、野尻が4戦連続「PP」を獲得するという速さを見せたが、今年はどのような展開となるのだろうか。最初の予選から大きく巻き返してくるドライバーや好調を維持するドライバー、逆に調子を落とすドライバーも出てくるかも知れない。ここでのPP争いも楽しみだ。もちろん、続く第2戦決勝も、ドライであればタイヤ交換義務付けありとなるが、開幕戦とはまた違うシナリオが待っているはず。とにかく1大会で2度オイシイ開幕大会は必見だ。

3年連続タイトルのかかる野尻智紀(TEAM MUGEN)

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