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宮田莉朋の初戴冠か、野尻智紀の3連覇か、それともリアム・ローソンの逆転チャンピオンか
2023シーズンクライマックス  

2023.10.23

2023年第3戦鈴鹿大会 スタートの様子
 
4月に開幕した2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、いよいよ10月28日(土)〜29日(日)に、三重県鈴鹿サーキットで今季の締めくくりとなる最終大会を迎える。この最終大会は、富士スピードウェイでの開幕大会に続き、2回目となる2レース大会。タイトル争いがここで決着するというだけでなく、どのドライバーにとっても、どのチームにとっても、肉体的・精神的に過酷な大会となる。日曜日の最終戦にはJAF GPのタイトルも懸けられているが、そこでタイトルを決定し、勝利の美酒を味わうのは誰なのか。宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)か、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)か、はたまた3連覇がかかる野尻智紀(TEAM MUGEN)なのか。ファイナルラップまでどうなるか全く分からない展開となるはずだ。
 
8月末にモビリティリゾートもてぎで行われた第7戦を終えた時点で、94ポイントを獲得してランキングトップに立っているのは、宮田。宮田はここまで2勝を挙げているだけでなく、その他の大会でも表彰台の常連となり、ポイントリーダーの座を堅持してきた。これに続いているのは、86ポイントを獲得しているローソン。開幕大会から優勝を果たし、安定した走りを続けてきていたローソンは、残念ながら前回のもてぎ大会で珍しく多重クラッシュの原因となるスピンを喫し、レースでもノーポイントとなった。ここまで7戦中3勝を挙げているが、もてぎの結果が大きく響き、宮田に遅れをとる形となっている。そのローソンに2ポイント差の84ポイントでランキング3位につけているのは、昨年、一昨年と連覇している野尻。野尻は今季第3戦鈴鹿で大湯と絡んでスピン、クラッシュ。ノーポイントに終わっただけでなく、続く第4戦オートポリスを肺気胸のために急遽欠場した。この2戦連続無得点が響き、宮田、ローソンの先行を許す。復帰戦となる第5戦スポーツランドSUGOでは踏ん張りを見せたが、第6戦富士では、予選・決勝ともにペースが上がらず、一時タイトル戦線からは脱落したかに思われた。ところが、もてぎでは王者の意地とプライドを見せ、完全復活となるポール・トゥ・ウィン。3連覇への大きな可能性を残している。宮田から野尻までのポイント差はわずかに10点。まだ2戦残していることを考えれば、どんな展開になってもおかしくはない。
 
Rank. 1 94pt. 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
 
Rank. 2 86pt. リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
 
Rank. 3 84pt. 野尻智紀(TEAM MUGEN)
 
来季、世界耐久選手権へのフル参戦が確実視されている宮田。もてぎ戦直後に怪我をしたダニエル・リカルドの代役としてFormula 1本戦にデビューして健闘を見せたものの、日本GPの場で来季フル参戦の道が絶たれたローソン。そして、これからも第一人者として日本を背負って行く立場の野尻。三者三様の思いが交錯するドラマの幕は、まもなく切って落とされる。
 
その最初のシーンが始まるのは、27日(金)から。今回は2レース制ということで、土・日にそれぞれ予選・決勝が行われる。それに先立ち、金曜日の午後2時から90分間に渡って専有走行が行われるためだ。この専有走行と土曜日の第8戦に対しては、前回大会から持ち越せるユーズドタイヤが3セット、またニュータイヤが3セット供給される。フリー走行での走り出しはどのドライバーもユーズドタイヤを選択するが、このセッションの最後には予選に向けてのシミュレーションで多くのドライバーたちが、1セットはニュータイヤを投入するのがセオリー。まずはここでどんなタイムを出すかで予選に向けての仕上がりの良し悪しが分かるはずだ。
 
翌28日(土)は、午前9時半から、ぶっつけ本番でノックアウト予選が行われる。現状、今週末はずっと晴れや曇りで、雨の予報は出されていない。最高気温も20〜22℃と、第3戦の時とほぼ同様だ。しかし、10月も終わりということで、最低気温はかなり低い。午前中はまだまだ気温が上がり切っておらず、前日のフリー走行と予選でもコンディションは違うはずだ。路面温度もフリーよりは低くなる可能性が高く、各ドライバーのタイヤの温め方やアタックへの間の取り方も重要となってくる。中でもQ1は常に激戦。100分台、1000分台のタイム差でQ2に進出できるか否かが決まってくるだけに、目が離せない。Q2はわずか7分間ということで、通常はいきなりニュータイヤでのアタックとなるが、ここでもコースに出るタイミング、タイヤのウォームアップにかける周回やスピード、そしてアタックするスペースの確保など、ドライバーたちにとってはタスクが多い。その中でPPを獲得するのは誰になるのか。トップ3にはそれぞれ3ポイント、2ポイント、1ポイントとポイントが与えられることもあり、タイトル争いをしているドライバーたちにとっては、上位に入ることが非常に重要となってくるだろう。
 
No.37 宮田莉朋
 
午後2時半にフォーメーションラップがスタートする決勝は31周の争い。ここで最初の見所となるのは、スタート。下り坂を1コーナーに向けて加速していく鈴鹿だが、誰が上手くスタートダッシュを決めるのか。また、そこからのオープニングラップではどんなバトルが演じられるのか。ポジションの入れ替わりがあるかどうかを含めて、注目だ。また、ドライのレースであれば、今回もタイヤ交換が義務付けられる。交換のタイミングは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。レース距離の約3分の1を終えたところからウィンドウが開くこととなる。ストラテジーは、スタート後のポジションや前後マシンとのタイム差など、状況によって分かれてくるはずだ。早目のタイヤ交換でアンダーカットを狙うのか、はたまた終盤まで引っ張ってオーバーカットを狙うのか。各チームのタイヤ交換作業のスピード、さらにはドライバーたちのタイヤ交換前後のラップタイムも大きな差を生む要因のひとつ。ここも注目のポイントだ。そして、最後に笑うのは誰か。この第8戦の結果によっては、ドライバーズランキングにも変化が出てくるかも知れない。
 
No.16 リアム・ローソン
 
そして、いよいよ29日(日)には、JAF GPのタイトルがかかった最終戦が行われる。この最終戦では、タイヤルールも少し変わる。前日の第8戦で使用可能となっていた6セットのうち、持ち越しできるものが4セット。さらに最終戦用として2セットのニュータイヤが供給される。このニュータイヤ2セットを、各チーム、各ドライバーは午前8時50分から行われるノックアウト予選に投入することになる。第8戦よりも40分早く始まる最終戦のノックアウト予選では、さらに気温・路面温度が低い状態となるが、その中でQ1を突破し、Q2でPPを獲得するのは誰になるのか。この日も、各ドライバーのコースに出ていくタイミング、タイヤの温め方、アタックへ向けてのスペースの取り方、そしてもちろんアタックラップのセクタータイムなど、細かい部分まで見ていくと、予選は堪能できるはず。もちろんトップ3が獲得できる予選ポイントの行方にも注目だ。
決勝は、前日の第8戦と全く同じく、午後2時半にフォーメーションラップがスタート。周回数も同じで、31周の争いだ。当然、これまでのレースと同様、ドライであればタイヤ交換も義務付けられる。中でもタイトルを争っているチームにとっては、この最終戦のタイヤ交換が最もプレッシャーのかかる場面。1秒でも速くタイヤ交換を終えるために、独自のエクイップメントを開発して持ち込むだけでなく、ファクトリーでも連日練習して現地に入る。そこで、いかに”いつも通り”の力を出せるかが大きなカギとなる。
 
宮田、ローソン、野尻だけにとどまらす、宮田同様SUPER GTとのダブルタイトルの可能性を残す坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)や、Formula 1 マクラーレンチームのリザーブドライバーに就任した平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)も、数字の上ではチャンピオンの可能性を残している。もちろん、出場全ドライバーにとっても様々な思いが交錯する最終決戦ということで、予選前からサーキットはビリビリとした緊張感に包まれる。その痺れる空気を切り裂き、最後に満面の笑顔、あるいは歓喜の涙を見せるのはどのドライバーになるのだろう。いよいよ今年もクライマックスが迫ってきた。
 
No.1 野尻智紀

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