終日、好天に恵まれたものの、メインストレートでは強い追い風が吹いた10月28日(土)の三重県・鈴鹿サーキット。午後2時30分からは、全日本スーパーフォーミュラ選手権・第8戦の決勝が行われた。全車が4周を終了した後、5周目の130Rで後方を走行していた大津弘樹(TCS NAKAJIMA RACING)と笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)の2台が絡む大クラッシュが発生。直後に赤旗が提示され、このレースは結局そのまま終了した。赤旗終了時に関するレギュレーションにより、全車が完了した4周から1周減算となり、リザルト上では3周での決着。結果、このレースを制したのは、PPから好スタートを決めた野尻智紀(TEAM MUGEN)。スタートでは太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)にかわされたものの、2周目の1コーナーでポジションを取り戻した宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)が2位、太田が3位に入賞。ただし、レース距離の70%を消化していないため、フルポイントは与えられず、ハーフポイントとなっている。その結果、野尻は97ポイント、宮田は103.5ポイント、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)は88.5ポイント。宮田もポイントを伸ばしてランキングトップを守ったものの、ランキング2位の野尻がその差を6.5ポイントまで縮めてきた。ローソンは逆に差をつけられる形となっている。
 
午前中に行われたノックアウト予選から約3時間。決勝レースのスタートに向けて、8分間のウォームアップ走行が行われる。ここで各ドライバーはレースに向けてのマシンの感触を確認。その後、各車はダミーグリッドに着き、最終的なマシンの微調整などが行われた。そして、午後2時30分、気温21℃、路面温度26℃というコンディションのもと、フォーメーションラップがスタート。PPの野尻智紀(TEAM MUGEN)を先頭に、22台のマシンが1周の隊列走行に入る。そして、正規グリッドに全車がロックオン。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウトし、31周先のゴールに向けて全ドライバーが一斉にスタートを切った。
ここで好スタートを切ってトップで1コーナーに入って行ったのはPPの野尻。予選2番手の宮田は若干加速が鈍る。また、予選3番手の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はクラッチミートこそ良かったものの、その後アンチストールが入ったのか加速が大きく鈍った。これに対して、抜群の蹴り出しを見せて、一気にポジションを上げたのが太田。太田は牧野と宮田を一気に抜き去り、1コーナーまでに2番手まで浮上した。これに続いたのは、宮田、牧野、坪井翔(P.MU/CERUMO･INGING)、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)。平川はスタート直後、ローソンと軽く接触があった模様で、ひとつポジションを落としている。
しかし、各所でバトルが勃発。オープニングラップの1コーナーでは、オーバーテイクシステムを使用しながら、宮田がアウト側から太田をかわす。そこから宮田は坪井に迫って行った。また、3周目からは、牧野と坪井の4番手争いが白熱。4周目の1コーナーでは、坪井がオーバーテイクシステムを使用して牧野に迫ったが、ここは牧野がポジションを守り切った。また、その周のシケインでは、ローソンが坪井のインをうかがったが、ここは坪井が防御。しかし、続く5周目の1コーナーではローソンが坪井をかわして行った。
 
ところが、ちょうど同じ頃、130Rで大クラッシュが発生。アウト側にいた笹原をかわそうとインに入り、笹原よりも少し鼻先が前に出た大津の右リヤタイヤが、ステアリングを切り込み始めた笹原の左リヤタイヤと接触。大津のマシンが浮き上がり、着地したところからスピン状態に入る。その時、笹原のマシンも巻き込む形となり、大津はスポンジバリアに激突、横転してストップ。笹原のマシンはエンジン&ギヤボックスとモノコック部分が真っ二つにちぎれる形となり、重量のあるリヤエンドはスポンジバリア後方にあるキャッチフェンスに激突して落下。モノコックはキャッチフェンスを飛び越えて、デグナーひとつ目内側の土手の上に落下し、そこから土手を転がり落ちる形でガードレールの手前にストップした。しかし、すぐにドクターはじめオフィシャルが現場に向かい、笹原は意識がある状態でモノコックから救出。その後、検査のためメディカルセンターに向かった。一方の大津も自力で脱出している。
 

 
このアクシデントにより、レースは赤旗によって中断。各ドライバーはメインストレート上の赤旗ラインにマシンを停止させる。そして、ドライバーやチーム関係者、多くの観客が再開の時を待った。しかし、キャッチフェンスのダメージが大きく、修復には時間がかかるということで、午後3時30分の段階で、第8戦は打ち切りが決定。3周を終えた時点での順位が最終結果となり、野尻が優勝。宮田が2位、太田が3位。以下、牧野、坪井、ローソン、平川、可夢偉、福住仁嶺(ThreeBond Racing)、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)までが入賞となった。
 
後味としては誰にとっても良くないものとなった第8戦だが、明日の最終戦・JAFグランプリはどんな展開となるのか。締めくくりは誰にとっても納得の行く1戦となって欲しい。
 
第8戦優勝 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 
第8戦2位 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

 
第8戦3位 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)