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2024年シリーズ第2戦九州大会 レースプレビュー

2024.05.13

3月初旬に行われた開幕戦から2ヶ月余り。3月末から4月にかけてフォーミュラEやF1が日本で開催された影響などもあり、今年は国内カレンダーが変更。シーズン中としてはかなり長いインターバルを経て、いよいよ今週末、全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦 九州大会が行われる。舞台となるのは、大分県オートポリス。九州地方では、今年も唯一のレースとなる。
 

昨年のスタートシーン


 

その前にまず開幕戦を振り返ると、今年は、タイトル奪還を狙う野尻智紀(TEAM MUGEN)が会心のレースを見せ、幸先のいい優勝を飾った。これに続いたのは、2位の山下健太(KONDO RACING)、3位の山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)というベテラン勢。また、予選では、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が自身初のPPを獲得。昨シーズンの最終戦で嬉しい初優勝を果たした参戦2年目の太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)もフロントロウにつけるなど、若手も存在感を発揮した。彼らが、今週はどんな戦いぶりを見せるのかにまずは注目だ。
 

開幕戦TOP3(左から山下、野尻、山本)


 

気になる第2戦が行われるオートポリスは、阿蘇の山懐に抱かれた雄大な景色のサーキット。全長約4.674Kmという中に、18ものバラエティ豊かなコーナーがある。山の傾斜を利用して作られているだけに、高低差は52mと大きく、コースの上り勾配は最大7.2%、下り勾配は最大10%。コントロールラインから日立Astemoコーナー(第1ヘアピン)までは下りで、そこから第2ヘアピンまでが上りとなっており、その先はジェットコースターストレートを一気に駆け下る。そこからは右コーナーが連続した後、再び上り区間に入るが、Rの違うコーナーが連続しておりドライビングやマシンセットアップが非常に難しくなっている。チームにとっても、ドライバーたちにとってもチャレンジングなサーキットのひとつだ。コース幅はそこまで広くないが、1〜2コーナーや第1ヘアピン立ち上がり、第2ヘアピンの進入など、オーバーテイクを仕掛けられるポイントもいくつかあり、例年決勝中には多くのバトルが発生。今年もいくつもの見所があると思われる。

 

ダウンヒル・ストレート(通称ジェットコースター・ストレート)


 

それに先立つ予選は、ドライであれば今回もQ1、Q2で争われるノックアウト方式(雨の場合、状況によっては計時予選となることも)。Q1は、ポイントランキングを基本として、2グループに分けて行われる。各グループのトップ6がQ2に進出。Q2では12台によってPPが争われることになる。3月に行われた開幕戦と比べれば、今回は晴れれば気温・路面温度がかなり上昇すると思われるだけに、各ドライバーのアタックタイミングなどが注目ポイント。オートポリスはタイヤにもかなり厳しいコースということで、アウトラップからすぐアタックに入るのか、あるいはアウトラップの後にウォームアップラップを走ってからアタックに入るのか、チームやドライバーによって方法が違ってくるはずだ。また、中には昨年の宮田莉朋やジュリアーノ・アレジのように、先にフロントタイヤだけスクラブし、そこからリヤにニュータイヤを装着してアタックに向かうチームが出てくるかも知れない。アスファルト舗装のランオフが少なく、一歩間違えばコースアウトというリスクもある中で、各ドライバーがギリギリのアタックをどう決めるか。これは大きな見所の一つとなってくる。予選結果を占う上では、午前中に行われるフリー走行での各車の仕上がり具合も気になるところだ。
 

他のサーキットとピットの位置が逆方向


 

予選の翌日、日曜日に行われる決勝は、41周(最大75分)で争われる。その最初の見所は、スタートから1〜2コーナーにかけてのバトルだろう。オートポリスはグリッドから1コーナーまでかなりの距離がある。そのためスタートでは、各ドライバーの出足の良し悪しにもよるが、1コーナーまでに3ワイドになることもしばしば。ここでのポジション取りによって順位の入れ替わりが発生することもある。序盤、タイヤが温まり切るまでにはその後も随所でバトルが勃発し、丁々発止の戦いが見られるはずだ。バトルの中ではOTSの使い方にも注目。今年も昨年と同様、各ドライバーは計200秒間、OTSを使えるが、それをどこでどのように使うのか。「SFgo」アプリなども活用しながらチェックしていただきたい。また、ドライコンディションの場合には、今回もレース中のタイヤ交換が義務付けられる。交換のウィンドウは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。昨年もタイヤ交換を早目に行って見えないタイム差を築いていくドライバー、終盤まで我慢してから交換して数々のオーバーテイクを成功させるドライバーと、作戦は様々。その時走っている順位や前後の状況、決勝でのマシンセットアップの仕上がり、ライバルの動きなどを見て、各陣営が臨機応変にストラテジーを組み立てていた。今回のオートポリスでは、誰がどのような作戦を採るのか。ピットへのインラップ、交換作業時間、アウトラップと、全てが勝敗に繋がってくるため、そのあたりも気になるポイントとなる。特に、オートポリスはピットの位置が他のサーキットとは反対側となっており、メカニックたちの作業も通常とは逆位置になってくる。ここでミスなくドライバーをコースに戻せるかどうかは、大きな鍵となるだろう。

 

開幕戦予選TOP3(左から太田、阪口、野尻)


 

そのオートポリス戦で、まず気になる存在は、野尻。野尻は昨年、この大会を突然の体調不良で欠場しており、実際にフォーミュラカーで走行するのは2年ぶり。車体の空力が大きく変わったSF23となってからは初となる。また、今回がオートポリス初走行となるのは、野尻のチームメイトである岩佐歩夢(TEAM MUGEN)やJuju(TGM Grand Prix)らのルーキー勢。もちろん事前にシミュレーターでの訓練は行ってくるだろうが、実際のコースで彼らがどのような走りを見せるかは興味深いところだ。また、大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)や坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、三宅淳詞(ThreeBond Racing)らも注目の存在。大湯は全日本F3時代にもオートポリスでは速さを見せていたが、移籍した今季はどんな結果を残すのか。チームにとってのホームレースともなるCERUMO•INGINGは、昨年もオートポリスで好調ぶりを見せていただけに、期待される。一方の坪井は昨年、このオートポリス大会でPPを奪取。今季はチームを移籍したが、TOM’Sも昨年のオートポリスでは予選から速さを見せていただけに、今年も上位争いに絡んでくるものと思われる。また、今季シリーズに復帰した三宅は、22年のルーキーイヤーにオートポリスで3位表彰台を獲得しており、相性は悪くないはずだ。さらに、開幕戦でPPを手にした阪口にとっても、オートポリスは初表彰台を獲得したコースということで、今回も注目される。もちろん、それ以外のドライバーたちに関しても、季節が進んだことで状況は色々と違ってくるはず。開幕戦とは戦力図にも変化が出てくるかも知れない。その中で活躍を見せるのは誰なのか。また新たなドラマが見られるはずだ。

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