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第3戦東北大会レースプレビュー

2024.06.17

昨年のSUGOスタートシーン
 
牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の劇的な初優勝で幕を閉じた大分県オートポリスでの第2戦から1ヶ月余り。全日本スーパーフォーミュラ選手権は、今週末、注目のシーズン第3戦を迎える。第3戦の舞台となるのは、宮城県スポーツランドSUGO。例年、思わぬドラマが生まれるこのサーキットで、今年勝利の美酒に酔うのは、誰になるのか?
 
シーズン中、唯一東北地方での開催となる今回の1戦。今年は全国的に梅雨入りが遅れており、今週も半ば過ぎまで仙台地方は初夏の陽気が続くものと予想されている。週末になると曇りや雨の予報も出されているが、できれば完全ドライでのレースになってもらいたいところだ。
 
舞台となるスポーツランドSUGOは、仙台市郊外、村田町の山懐に抱かれた緑豊かなサーキット。最終コーナーの先には、蔵王連山を望むことができる。観客席からコースまでの距離が近く、スーパーフォーミュラの迫力を最も体感できるコースと言っていいだろう。全長は、約3.586kmと他のサーキットと比べれば短いが、見所は満載。アップダウンが多く、ドライバーにとっては休める場所がないレイアウトとなっている。中でも、名物となっているのは、10%の上り勾配で知られる最終コーナー。スーパーフォーミュラのマシンが、アクセル全開で高低差約73mを一気に駆け上っていく場面は、見ているだけでドキドキと心臓が高鳴るだろう。コース幅が狭いこともあり、オーバーテイクポイントはそれほど多くないが、最終コーナー立ち上がりから上手く前車のスリップに入れれば、1〜3コーナーにかけてサイド・バイ・サイドに持ち込んで前に出ることができる。また、オーバーテイクシステム(OTS)の使い方次第では、S字からハイポイントコーナーにかけて、あるいはバックストレートから馬の背コーナーでのポジションの入れ替わりが見られるかも知れない。
 
第2戦で悲願の初優勝を果たした牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)

 
今回のレースでは、出場ドライバーの顔ぶれにも変更がある。ITOCHU ENEX TEAM IMPULが平良響の起用を発表したからだ。すでに報じられている通り、開幕に参戦したテオ・プルシェールはインディカーに転向。ITOCHU ENEX TEAM IMPULは、その代役として、第2戦では急遽ベン・バーニコートをスポットで起用した。但し、バーニコートは米・IMSAシリーズが主戦場ということで、今回は平良響に白羽の矢が立った。過去にルーキーテストでスーパーフォーミュラをドライブした経験こそあるが、平良がデビュー戦でどんな走りを見せるのか。それも、今回の見どころのひとつだ。ちなみに、今季のスーパーフォーミュラでは、プルシェールやバーニコートが唯一の外国人ドライバーとなっていたが、今回、平良が起用されるということで、出場全ドライバーが日本人となる。今回はまさに”日本一速いドライバー決定戦”と言っていいだろう。
 
ITOCHU ENEX TEAM IMPULより参戦する平良響

 

さて、そんなスーパーフォーミュラ第3戦では、他のサーキット以上に重要となってくるのがグリッドポジション。つまり予選だ。予選は、今回もノックアウト方式。ポイントランキング順を基本として、AとBの2グループに分けて行われるQ1に続き、各グループ上位6台ずつの計12台で行われるQ2を経て、PPが決定される。これは他のラウンドと同じだが、前述のようにSUGOはコース全長が短い。そのため、アタックのためのポジション取りがキーポイントとなってくる。コースインのタイミングやタイヤのウォームアップにかける周回数など、各チーム&ドライバーともに適切な判断が必要とされるが、それでもアタック直前にトラフィックが発生するケースも。その中で、誰が理想的なタイムアタックを見せるのか。最初から最後まで目が離せない展開となるだろう。また、コース全長が短い分、各ドライバーのタイム差も非常に小さいのがSUGOの特徴。1000分の1秒台、100分の1秒台というわずかなタイム差によって、大きくポジションが変わってくる可能性が高い。そういう意味でも、些細なミスさえ許されないコースだ。昨年PPを獲得した大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)や一昨年のポールシッターである野尻智紀(TEAM MUGEN)、また前回の優勝で波に乗っている牧野ら、強豪ひしめく中で、今回、初めてSUGOのコースをスーパーフォーミュラで走る岩佐歩夢(TEAM MUGEN)やJuju(TGM Grand Prix)、またルーキーの木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)らがどんな走りを見せるのか。岩佐は前回、初のオートポリスでいきなりPPを獲得したが、今回もPP争いを演じるのか。そのあたりも見どころの一つとなるだろう。
 
参戦2戦目でポール・ポジションを獲得した岩佐歩夢(TEAM MUGEN)

 
決勝に関しては、まず見所となるのはスタートからのオープニングラップ。グリッドから1コーナーまでの距離が短いものの、SUGOでは好スタートを決めれば、ライン取り次第でポジションアップが可能だ。また、バトルの中ではOTSの使い方にも注目。今年も、各ドライバーは計200秒間、OTSを使えるが、それをどこでどのように使うのか。オープニングラップから使ってくるドライバーもいるはずなので、そちらはSF50アプリなどでもチェックしながら楽しんでいただきたい。
 

 
その一方、過去のSUGOのレースではスタート直後のアクシデントでセーフティーカー(SC)が導入されたり、赤旗が提示されたりしたことも。SUGOはエスケープがそれほど広くないので、コースアウト車両などが発生した場合には、すぐさまSCが導入されるケースが多い。序盤、各ドライバーのタイヤの状態がいい時に繰り広げられるバトルの中で、アクシデントが発生するケースもたびたびあり、各チームは常にSCのタイミングを気にしている。ドライの場合は、それがレースでのストラテジーにも大きく関わってくるからだ。ドライの場合、各ドライバーは今回も1回のタイヤ交換が義務付けられる。交換のウィンドウは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。51周(最大75分)の周回のなかで、早目のタイヤ交換でアンダーカットを狙うか、はたまた引っ張ってからタイヤ交換を行なってオーバーカットを狙うのかは、チームによって、またその時に走っている位置や状況によっても変わってくるが、どこでピットインするのが最適なのか。SUGOの場合は早目に入ると、その後にSCが導入された場合、大きなマージンを稼ぐことも可能。但し、コース全長の短さから、SCが導入されない場合は、まだタイヤ交換をしていない集団に追いついてしまう可能性もある。その一方、タイヤ交換を引っ張ると、それまでせっかく稼いだマージンをSCで失ってしまうというパターンも考えられる。もちろん、SC中にタイヤ交換のウィンドウが開くというケースもあり、その際には、全車が一斉にピットインという緊急事態が発生することも。こうなると、作業時間の勝負となってくる。
 
昨年東北大会を制した宮田莉朋

 
そうしたすべての要素を刻々と進んでいくレースの中で考えながら、あるいは予測しながら、チームはドライバーと戦っていかなければならないが、一体誰がパズルのピースをピタッとはめてトップチェッカーを受けるのだろうか。今回も全く予想できない1戦となるだろう。

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