第3戦 東北大会 決勝レースは赤旗中断のまま終了。優勝は野尻智紀
2024.06.23
雨と霧という難しいコンディションとなった、6月23日(日)の宮城県スポーツランドSUGO。このコンディションの影響で、全日本スーパーフォーミュラ選手権 第3戦 東北大会の決勝レースは、当初の予定より大きく遅れてセーフティーカースタートの形で始まった。しかし、度重なるアクシデントが発生し、12周を終えた所で赤旗終了。その結果、PPからスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)が今季2勝目をマーク。2位に岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、3位に坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が入賞している。
アクシデントと天候不良の影響から、午前中のフリー走行がわずか5分で赤旗によって終了した今大会。その後も、宮城県・スポーツランドSUGOには、雨が降り続いた。時折、雨の止み間があっても、今度は霧が出る状況。そんな天候だったが、朝のセッションでほとんど走行できなかったということで、午後1時30分からは通常8分間のウォームアップ走行を20分間に拡大して行うこととなった。しかし、開始時刻が近づいてきた頃、霧が濃くなり視界は不良に。その回復を待って、午後1時35分からウォームアップが始まった。コースがオープンされると、ドライバーたちはウェットタイヤで続々コースイン。しかし、その直後に、山下健太(KONDO RACING)が4コーナーでスピンする。山下は、後続のドライバーたちが通過するのを待って、自力でコースに復帰した。その間も、他のドライバーたちはタイヤを温めるべく、コースを疾走。大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が1分30秒778、笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)が1分32秒773、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が1分32秒995など、タイムを刻み始める。ところが、開始から4分という所でセッションは赤旗によって中断。これは、最終コーナー立ち上がりで山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)がスピン、クラッシュしたため。山本のマシンは急にリヤが出る形となりスピン、コースのアウト側に滑っていった。そして、ちょうどタイヤバリアの切れ間となっている部分に激突。マシン左サイドだけはタイヤバリアに接触したが、後部中央はガードレールに直接ヒットした。ガードレールが大きく破損するほどの衝撃だったが、幸い山本は意識もあり、オフィシャルとも受け答えができた。救出されると自分で歩いて救急車に乗り、そのままメディカルセンターへと運ばれている。
ガードレールの修復作業を行わなければならないこともあり、セッションはそのまま中断。その間も天候はなかなか回復しなかった。これと並行して、審査委員会や組織委員会では、今後の対応が話し合われ、午後2時20分からはエントラント代表によるミーティングが行われる。その結果、午後3時から10分間、レコノサンスラップが行われる予定に。フォーメーションラップスタートは、当初のスケジュールより1時間05分遅れの午後3時35分になることが決定する。
そして、午後3時になると、レコノサンスラップが開始。各ドライバーは、コースの下見を行うとともに、マシンの感触を確かめる。このレコノサンスラップでは、メインストレートを通過することができず、ピットロードを通過することになるが、その中でも多くのドライバーは数ラップを走り、決勝に備えた。ピットロード出口では、スタート練習を行うドライバーも数多かった。そして、午後3時10分にピットロード出口がクローズドされるまでに、ダミーグリッドへと向かう。その中に、山本の姿はなく、決勝レースは20台で争われることとなった。
その後、フォーメーションラップスタートの時刻が近づいても、天候は思うように回復せず、競技団はセーフティーカースタートを決定。午後3時35分に、セーフティーカーの先導によって、20台のマシンが走り始めた。この時点で気温は20℃、路面温度は23℃。そのコンディションのもと、セーフティーカーはオープニングラップから2〜3周、時速80kmほどのスピードで周回。そこから次第にスピードを上げていった。その後ろで、ドライバーたちもタイヤを温めていく。そして、5周目の馬の背コーナー手前で、セーフティーカーのルーフのライトが消灯。5周終了時に実質的なレースがスタートする。ここで、トップを守ったのは、野尻。岩佐、坪井、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、大湯が順当にそれに続く。しかし、後方では1コーナーでバトルが勃発。佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)と小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が3ワイドとなり、一番真ん中のラインを取った可夢偉がポジションアップ。佐藤も阪口の前に出る。しかし、実はそれに先立つ最終コーナーではアクシデントが発生していた。これはリスタートに向けて 加速を開始した大嶋和也(docomo business ROOKIE)が最終コーナーでスピン、クラッシュしたため。そこで、再びコース上にはセーフティーカーが導入された。この時のオーダーは、野尻、岩佐、坪井、牧野、大湯、山下、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 、小高一斗(KONDO RACING)、木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)、可夢偉、佐藤、阪口、福住仁嶺(Kids com Team KCMG)、三宅淳詞(ThreeBond Racing)、笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)、平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、Juju(TGM Grand Prix)、松下信治(TGM Grand Prix)となっていた。
優勝した野尻智紀(TEAM MUGEN)
さて、大嶋のマシンの回収が終わると、セーフティーカーは再びスピードを上げ始め、12周目の馬の背コーナーの手前で、ルーフのライトを消灯した。トップの野尻は、一旦スピードを落とすと、SPアウトコーナー立ち上がりから一気に加速。最終コーナーからメインストレートへと駆け上がっていく。それに、岩佐、坪井、牧野、大湯、山下と続く。しかし、7番手につけていた太田は、リスタート直前の最終コーナーでアウト側のエスケープに飛び出し、大きくポジションを落とした。代わって、国本、小高、可夢偉、佐藤、阪口ら続くドライバーたちがポジションを上げている。リスタート後、野尻は逃げの体制。しかし、2番手争いは白熱する。岩佐が少しバランスを崩したため、馬の背では坪井が真後ろに迫るが、ここでは坪井のマシンも滑り、ポジションの入れ替わりはなし。それでも、ここから2台の争いは激しさを増していくものと思われた。また、その後方では、小高が国本の前に出ることに成功する。また、可夢偉が木村、さらには国本を攻略して13周を終えた所では8番手までポジションアップ。可夢偉は、その周を終えると、1コーナーではさらに小高に迫った。しかし、前周の最終コーナーでは、再び大きなクラッシュが発生していた。阪口がスピンしてアウト側のガードレールに後ろから激突。このアクシデントにより、すぐさま赤旗が提示され、レースはストップされる。幸い阪口は、コクピットから救出されると自力で歩いて救急車に乗り、メディカルセンターに向かったが、その後、ガードレールの修復作業が必要だっただけでなく、天候や路面状況の改善が見られないということで、第3戦はここで中止が決定された。
決勝2位 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)
最終結果は赤旗の1周前、12周を消化した時点での物となり、優勝は野尻、2位は岩佐、3位は坪井。以下、牧野、大湯、山下、国本、小高、木村、可夢偉までが入賞となった。ただし、レース距離の75%を消化していないということで、各ドライバーにはハーフポイントが授与されている。
決勝3位 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
次戦は7月20日(土)〜21日(日)、静岡県・富士スピードウェイを舞台に行われる。それに先立つ7月7日(日)〜8日(月)には、同じ富士スピードウェイで第2回公式合同テストが実施され、各チーム、各ドライバーは第4戦、またそれ以降のシーズンに向けて準備を進めていくことになるが、ここでまた戦力図が変わってくるのか。夏場以降、誰が強さを見せるのか、非常に興味深いテスト、レースになるはずだ。