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「第1回瑶子女王杯(Princess Yohko Cup)」 栄えある賜杯を下賜されたのは坪井翔

2024.07.21


 
午前中のフリー走行が終わってから約5時間。

1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦富士大会(Princess Yohko Cup Japanese SUPER FORMULA Championship Round4 Fuji Speedway)の決勝レースは、午後3時03分にフォーメーションラップがスタート。41周に渡る激しいレースが展開された。このレースで予選4番手から見事4年ぶりの優勝を果たし、賜杯を下賜されたのは、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)。2位には大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、3位には野尻智紀(TEAM MUGEN)が入賞している。PPスタートの福住仁嶺(Kids com Team KCMG)はスタートを決めてトップを快走していたが、タイヤ交換作業にミスがあり一時は大きくドロップ。そこから後半鮮やかなオーバーテイクを成功させ、4位でフィニッシュ。以下、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、実質これが初のレースとなった平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)までが入賞している。
 
スタートセレモニーの瑶子女王殿下(Princess Yohko)

 
朝からギラギラした陽射しに照らされた静岡県富士スピードウェイ。昼前後には一時曇りの天気となり、風も吹き始めたことで過ごしやすい時間帯も。その後、再び晴れ間が戻ったが、スーパフォーミュラのスタート進行として8分間のウォームアップが行われる頃になると、空に雲が湧き、そこからは晴れ時々薄曇りという天候となった。午前中よりは風も強くなり、メインストレートは予選日とは逆の向かい風。スタートが近づくに連れて、そこに少しずつ山の冷気が混じってくる。ただし、昨日に引き続いて湿度は高く、空気が肌にまとわりつくようだった。フォーメーションラップがスタートした時点で、気温は32℃、路面温度は45℃。そのコンディションのもと、21台のマシンはダミーグリッドに着いていた。しかし、メインストレート前方で行われた開会セレモニーが終わると、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)のマシンがメカニックによってピットガレージに押し戻される。これは太田がダミーグリッドに着く段階で、エンジンが失火する症状が出たため。オルタネータートラブルが発生していた。すぐには交換できない部品ということもあり、太田はここでリタイヤ。残念ながら決勝に出走することができなかった。
 

 
そして、午後3時03分、当初の予定より3分遅れで、太田を除く20台のマシンがフォーメーションラップスタート。1周の隊列走行を終えて無事に正規グリッドに整列すると、後方ではグリーンフラッグが振られ、シグナルオールレッドからブラックアウト。全車が41周先のゴールを目指して、一斉に加速する。ここで抜群の動き出しを見せたのは、PPの福住だった。予選2番手、フロントロウからスタートの岩佐歩夢(TEAM MUGEN)は、クラッチミートした所でエンジンがストールしかける。岩佐はすぐさまクラッチを切り、再スタートを切ったが、後方の集団に飲み込まれて大きくポジションを落とすこととなった。岩佐に代わって福住に続いたのは、大湯。これに、牧野、野尻、坪井、笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)、山本、可夢偉、小高一斗(KONDO RACING)、山下健太(KONDO RACING)、佐藤、国本と続く。岩佐は国本の後ろに続く形となる。一方、このオープニングラップではハプニングも発生。阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)のマシンにスロットルの問題が発生し、阪口はヘアピンのイン側にマシンを止める。土曜日のフリー走行、予選と続けてトラブルに見舞われていた阪口は、決勝でも問題を抱え、ここでレースを終えることとなった。
 
上位集団では、トップの福住が大湯をジワジワと引き離していく展開。その大湯に対して1秒差以内で牧野、野尻が迫る。しかし、それにも勝るペースを見せたのは、坪井。坪井は4周目の1コーナーで野尻をオーバーテイクすると、ここで予選と同じ4番手にポジションを戻してくる。坪井はさらに8周目の1コーナーで牧野も捉え、3番手に浮上。その後方では、国本が小高を捉え、さらに平良も小高をオーバーテイクするなど、序盤から各所でバトルが見られた。
 
決勝2位 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)

 
福住が10周を終え、タイヤ交換のウィンドウが開くと、ピットが慌ただしくなる。まず最初にピットに滑り込んだのは、5番手を走行していた野尻。さらに、国本、大津弘樹(TGM Grand Prix)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)もピットロードに滑り込んだ。その翌周には、牧野と可夢偉、笹原がタイヤ交換のためにピットイン。牧野は野尻の前でコースに戻ったが、アウトラップのコカ・コーラコーナーで、野尻の先行を許すこととなる。野尻はここから1分24秒990というファステストラップをマークし、トップ集団との見えない差を削り始めた。同じ頃、13周目には3番手を走行中の坪井が大湯の背後にピタリ。コカ・コーラコーナーで坪井がアウトから並びかける。しかし、ここは大湯がラインをがっちりキープし、坪井はオーバーランする場面も見られた。ポジションを守った大湯は、13周を終えた所でピットイン。野尻の前でコースに戻る。しかし、1コーナーまでに野尻が大湯の前に出ることに成功。さらに同じ周のアドバンコーナーでは、牧野も大湯の前に出る。しかし、ようやくタイヤが温まった大湯は、続くダンロップコーナーで牧野を逆転。ひとつポジションを戻した。
 
そして、その翌周、14周を終えた所では、トップの福住がピットイン。ところが、Kids com Team KCMGのクルーはここでミスを犯してしまう。左フロントタイヤの交換に手間取り、10数秒のロス。福住は大きくポジションを落とすこととなってしまった。その後、コース上でのアクションは、17周目に起こる。ジワジワと野尻の背後に迫った大湯が、1コーナーで野尻をオーバーテイク。これでタイヤ交換を終えたドライバーの中でトップに立った。この時の大湯のタイムは1分25秒台後半から26秒台前半。まだタイヤ交換を行っておらず、見た目上のトップに立っていた坪井のラップタイムは、1分26秒台中盤。ピットのロスタイムが32.5秒+タイヤ交換作業の秒数ということで、坪井としては大湯に対して40秒近い差をつけておきたい所だった。しかし、大湯のペースが上回っており、2台の差は17周を終えた所で36秒300。さらにそこから詰まって行き、18周を終えた所で35秒704、19周を終えた所で35秒550、20周を終えた所で35秒362、21周を終えた所で35秒022、22周を終えた所で34秒587、23周を終えた所では34秒449。大湯が逆にジワジワと差を縮めていった。この頃、後方ではタイヤ交換のミスからポジションを落とした福住が少しずつポジションアップ。21周目のアドバンコーナーで笹原を捉えると、24周目の1コーナーでは国本を捉える。これで福住はタイヤ交換を終えた中で、4番手まで浮上した。
 
その後、24周を終えた所で見た目上の4番手を走行していた山本がピットイン。さらに、見た目上の3番手まで浮上していた平良も、26周を終えた所でピットロードに滑り込む。さらに、27周を終えた所では、見た目上の2番手を走行していた佐藤もピットイン。そして、坪井は28周を終えた所で、いよいよピットロードに滑り込んだ。この前の周、27周を終えた所で坪井と大湯の差は33秒502、タイヤ交換を終えた中で2番手にいた野尻との差は36秒855、同じくタイヤ交換を終えた中で3番手にいた牧野との差は37秒988。VANTELIN TEAM TOM’Sのクルーは、6秒6という作業時間で坪井を送り出したが、コースに戻った時には、大湯、野尻、牧野の先行を許す形となった。しかし、坪井は新しいタイヤのグリップを生かして、ここから次々に前のドライバーたちを捉えていく。30周目のGR Supraコーナーで牧野を捉えると、最終コーナーの立ち上がりからは野尻に迫り、ストレートでは並走する形に。31周目の1コーナーまでには、坪井が完全に前に出た。ここから坪井は1分25秒178、1分25秒169と自己ベストを連発。1分26秒台中盤のタイムを刻んでいた大湯との差を1周につき1秒以上縮めていく。そして、34周目の1コーナーでは、坪井がアウトから大湯に並びかけた。そのブレーキングでは大湯が何とか踏ん張り、ポジションを守ったが、続くコカ・コーラコーナーへの進入で坪井が大湯を豪快にオーバーテイク。実質上のトップに立った。
 
決勝3位 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 
この時点でまだタイヤ交換を行っていなかったのは、岩佐のみ。スタートで遅れた岩佐は、ポイントを獲得するためにはセーフティーカーを待つしかないという作戦で、終盤まで走り続けた。しかし、39周を終えた所でピットイン。コースに戻った時にはポイント圏外までドロップしてしまう。これで名実ともにトップに立ったのは、坪井。これに大湯、野尻と続く。この野尻に続いたのは福住。福住は前を行く牧野との差を少しずつ詰めて、39周目の1コーナーでは前に出ることに成功。さらに、前を行く野尻まで1秒以内に迫った。
 

 
岩佐がピットに入った後、坪井は残る2周を危なげなく走り切ると、VANTELIN TEAM TOM’Sに移籍後の初優勝。自身4年ぶりとなる勝利を掴んだ。これに続いたのは、大湯。大湯も、VERTEX PARTNERS CERUMO・INGINGに移籍後初の表彰台獲得となった。そして、3位には福住の追撃を許さなかった野尻が入賞。福住は4番手まで挽回してレースを終えた。
 
このレースの結果、野尻が47ポイントまで伸ばしてランキングトップの座をキープ。坪井が37.5ポイントで2番手に浮上。牧野が33ポイントで3番手、岩佐が31.5ポイントで4番手となった。次は、8月24日(土)〜25日(日)、栃木県・ツインリンクもてぎに舞台を移して第5戦が行われるが、そろそろタイトル争いも視野に入ってくる頃。現在ランキング上位につけているドライバーにとっても、一気に浮上したいドライバーにとってももてぎは大切な1戦となる。ここを制するのは誰なのか。1ヶ月半先の熱い戦いが今から期待される。
 

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