2024年 第5戦 モビリティリゾートもてぎ大会 レースプレビュー
2024.08.20
坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が自身4年ぶりとなる優勝を果たしたシリーズ第4戦から約1ヶ月。全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦は、8月24日(土)〜25日(日)に、栃木県茂木町にあるモビリティリゾートもてぎを舞台に行われる。このレースは、3月に開幕したシーズンの丁度折り返し。ここから後半戦に向けてタイトル争いが加速していくことになる。現在、ポイントランキングは野尻智紀(TEAM MUGEN)がトップ。これに坪井、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、山下健太( KONDO RACING)と続いているが、この中から誰がもてぎで一歩抜け出すのか?
昨年のスタートシーン
例年8月の終わりに行われているモビリティリゾートもてぎでの1戦は2&4レースということもあり、一度で二度美味しいイベント。夏休みの終盤ということで、ファミリーで足を運ぶ観客も多い。同時に、シーズン中、最も暑いコンディションとなり、マシンやタイヤ、ドライバーたちにとって、過酷な1戦でもある。今年は8月に入って、次々に台風が発生。日本列島上空の大気は不安定となっており、今週末も曇りの予報が出されている。過去もてぎでは、レース中、突然の雷雨が降ったこともあり、今年も天気は一つのキーファクターとなる可能性がある。
舞台となるモビリティリゾートもてぎのコースは、ストップ&ゴーのレイアウト。路面がフラットで、コース幅が比較的狭いというのも特徴だ。とはいうものの、1〜2コーナーにかけて、5コーナーの進入、バックストレート先の90度コーナーと、オーバーテイクポイントは複数。ただし、前のクルマを捉えるのは、そこまで簡単ではなく、バトルが膠着する場面もたびたび見られる。その分、重要となってくるのは、グリッドポジションだ。
第3コーナー
第5コーナー
そのグリッドは今回もノックアウト方式(雨天の場合は計時予選に変更される場合がある)。現在のランキングをベースに2グループに分けて。それぞれのグループで行われるQ1、そしてQ1を突破した12台によって行われるQ2を経て、PPを始めとする上位グリッドが決定する。暑い季節ということもあり、この予選ではアウトラップからすぐタイムアタックに入るドライバーが複数見られるはず。これに対して、アウトラップを非常にゆっくりと走り、その後、ウォームアップ、タイムアタックという方法を採るドライバーも出てくるだろう。そのアタック方法の違いでコースインのタイミングも変わってくるが、気になるのはコース後半部分でのトラフィック。Q2では12台での走行となるが、それでもアタック前の90度コーナーあたりからはトラフィックが発生する可能性がある。その中でいかに自分のペースでタイヤを温め、最適のアタックを決めるのか? ドライバーやチームの力量が試される。その予選で注目されるのは、やはり野尻。野尻は昨年もこのレースを制しているが、過去何年かのリザルトを見ても、モビリティリゾートもてぎを得意としており、相性は抜群。今年もここで速さを見せるのか、気になるところだ。また、同じく気になる存在は、これがスーパーフォーミュラデビュー戦となるニック・デ・フリース(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。デ・フリースにとっては、実車でのテストなしのぶっつけ本番になるが、チームとしてはもてぎを非常に得意としており、過去何勝も挙げている。それだけに、デ・フリースがいきなり上位進出という可能性はゼロではない。彼がどのような走りを見せるのかは非常に興味深い。もちろん、野尻を追うライバルたちのリザルトも見逃せない。前述のように、もてぎはグリッドポジションがとても重要なコース。誰がPP争いに加わってくるのか、朝のフリー走行から各ドライバーの仕上がり具合をチェックしていただきたい。
ランキングTOP 野尻智紀(TEAM MUGEN)
9.5ポイント差 ランキング2位 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
決勝に関しては、グリッドから1コーナーまでの距離が比較的短いのがもてぎの特徴。それでも、スタート直後からオープニングラップにかけては、例年随所で激しいバトルが演じられる。ちょっとしたクラッチミートと加速の違いで、ポジションの入れ替わりも見られるはずだ。また、今回もレース中には、各ドライバーが計200秒ずつ、オーバーテイクシステム(OTS)を使用することができる。序盤からOTSを使った争いも見られるだろう。そして、今回もドライであれば、各ドライバーに4輪のタイヤ交換が義務付けられる。交換のウィンドウは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。もてぎではオーバーテイクがそれほど簡単ではないこともあり、集団の後方で走ることになったドライバーは早めにピットインするのが定石。しかし、それを逆読みして、前が開けるまで我慢して走り、開けたところからはクリーンエアの中で猛プッシュして、終盤にタイヤ交換するドライバーも出てくるだろう。37周(最大75分)のレースの中で、誰がどのタイミングでピットロードに滑り込んでくるのか。その辺りは、刻々と状況が変わるレース展開の中で、各チームのエンジニアとドライバーたちがやりとりし、それぞれ決定していくはずだ。真夏のもてぎで光を放つ存在となるのは誰なのか? あと数日で、決戦の時はやってくる。