太田格之進が自身初のポール・トゥ・ウィン チャンピオン争いは坪井vs牧野の一騎打ちに!
2024.11.09
優勝した太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
終日、ぽかぽかとした陽射しに恵まれた11月9日(土)の三重県鈴鹿サーキット。午後2時40分からは、大勢の観客が見守る中、全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の決勝レースが行われた。中盤から後半にかけて、2回セーフティーカーが導入される展開となったが、その中でスタートからしっかりポジションを守って初のポール・トゥ・ウィンを達成したのは、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。太田にとっては、昨年の最終戦以来の優勝となった。2位に入賞したのは、ピット作業でオーバーカットを成功させた坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)。牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3位に入賞した。予選の波乱により14番手からのスタートとなった野尻智紀(TEAM MUGEN)は、レース巧者ぶりを見せて大きくポジションアップ。5位でチェッカーを受けたが、坪井、牧野が野尻の前でゴールしたため、最終戦を前にチャンピオン争いの権利を失うこととなった。
午前中に行われたノックアウト予選から約4時間半のインターバルを経て、全日本スーパーフォーミュラ第8戦の決勝フォーメーションラップがスタートしたのは、午後2時40分。サポートイベントが長引いた影響で、当初の予定よりも10分遅れの進行となった。この時点で、気温は21℃、路面温度は31℃まで上昇。日向では上着がいらないような温かさの中、21台のマシンが1周の隊列走行に入る。そして、太田を先頭に、全車が無事にダミーグリッドにロックオン。後方でグリーンフラッグが出され、シグナルオールレッドからブラックアウトし、31周先のゴールを目指してスタートが切られた。このスタートで抜群の動き出しを見せたのは、PPの太田。しかし、セカンドグリッドの岩佐歩夢(TEAM MUGEN)には問題が発生する。ギヤが入らず、岩佐はグリッド上にストップ。これを避けて、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が2番手、牧野が3番手、坪井が4番手、山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が5番手、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が6番手で1コーナーに飛び込んでいく。その後方では、三宅淳詞(ThreeBond Racing)も岩佐と同じ症状を抱えてストップ。平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)もアンチストールが入る形となり遅れた。
決勝2位 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
オープニングラップを終えての上位のオーダーは、スタート直後と大きく変わらず、太田、佐藤、牧野、坪井、山本、阪口。これに福住仁嶺(Kids com Team KCMG)、大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)、野尻と続く。ここで激しくなったのは、2番手争い。牧野が2周目のシケインではオーバーテイクシステムを作動させながら、前を行く佐藤に迫る。続く1コーナーでは牧野が佐藤に並びかけたが、ここは佐藤がポジションを守った。また、4周目には笹原と野尻の9番手争いも激化。シケインで野尻が笹原のインに飛び込もうとするがここは笹原がポジションをキープ。続く1コーナーでも野尻が笹原に迫ったが、オーバーテイクするところまでは行かなかった。また、その前方では、4周目の130Rからシケインにかけて、阪口が山本をオーバーテイク。5番手に浮上した。
トップを走る太田は佐藤以下を全く寄せ付けないペースで周回。5周を終えたところで佐藤に対して2秒896というギャップを築く。佐藤から牧野も1秒2、牧野から坪井も1秒、坪井から阪口も2秒3と上位はかなり落ち着いた展開となった。しかし、その後方でまだやり合っていたのは、笹原と野尻。野尻は6周目の1コーナーで再びアウトから笹原に並びかけるが、笹原は一歩も引かない。それでも野尻は諦めず、同じ周のスプーンコーナー1つ目で笹原のインに飛び込み、9番手に浮上した。また続く7周目の1コーナーでは、山下健太(KONDO RACING)がアウトから笹原をオーバーテイク。ポイント圏内に入ってきた。
さて、太田が10周を終え、タイヤ交換のウィンドウが開くと、早くも多くのチームが動く。真っ先にピットロードに滑り込んだのは、牧野。これと同時に、阪口、福住、野尻、大嶋和也(docomo business ROOKIE)もピットロードに滑り込むが、ここでのポジションの入れ替わりはなく、牧野が最初にコースに復帰。阪口、福住、野尻、大嶋と続いた。この翌周には、佐藤、坪井、山下、国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、小林可夢偉(Kids com Team KCMG)がピットイン。ここでハプニングに見舞われたのは、スタートから2番手を走行していた佐藤だった。タイヤ交換作業を終えた佐藤が動き出した途端、左リヤタイヤが脱落し、佐藤はピットロードにストップ。ここでレースを終えることになる。それとは対照的に素早いピット作業でコースに戻ったのは坪井。坪井は牧野の前でコースに戻ると、がっちりポジションをキープする。アウトラップのシケインでは牧野に迫られる場面もあったが、オーバーテイクは許さなかった。そして、その翌周には、いよいよトップの太田がピットイン。序盤から大きなマージンを築いていた太田は、余裕を持って坪井、牧野の前でコースに戻った。
決勝3位 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
その後、見た目上のトップに立ったのは、大湯。これに笹原、木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)、平良と続いたが、この中で木村は17周を終えてピットイン。笹原と平良も18周を終えて、ピットに入る。しかし、ここで再びハプニングが発生。ピットロード出口で加速した平良の右リヤタイヤが突然脱落し、平良はその場でストップしてしまう。だが、外れたタイヤがコース上に転がり、危険な状況となった。そのため、コース上にはセーフティーカーが導入される。この間にピットに滑り込んだのが、それまで見た目上のトップを走っていた大湯と、スタートで大きくポジションを落とした岩佐だった。だが、大きな取り分はなく、大湯は10番手、岩佐は13番手でコースに戻ることとなった。
平良のタイヤの回収が終わり、レースがリスタートしたのは22周終了時。130R立ち上がりから上手い加速を見せた太田はトップをキープし、そこから後続を引き離しにかかる。しかし、24周目のスプーンコーナーでは、後方でアクシデントが発生。大嶋をアウトから抜きにかかった笹原が、コースアウト側のダスティな部分を通ったことで、バランスを崩してスピン。すぐ後ろにいた大嶋もこれに巻き込まれる形となる。大嶋のマシンは駆動を失いスローダウン。スプーンコーナー立ち上がりイン側のコース脇にストップすることとなってしまった。ここでコース上には再びセーフティーカーが導入される。そして、大嶋のマシン回収が終わると、28周を終えたところからレースはリスタートとなった。
ここからの3周、太田は1分41秒806、1分40秒821、ファイナルラップには1分40秒588というファステストラップをマークする走りで逃げ切り、見事初のポール・トゥ・ウィンを達成。昨年の最終戦以来となるキャリア2勝目をもぎ取った。これに続いたのは、5番グリッドからスタートした坪井と4番グリッドからスタートした牧野。以下、阪口、30周目の130Rでインから福住をかわした野尻、野尻にかわされた福住、山本、山下、岩佐、大湯までが入賞している。この結果、坪井は101.5ポイントまで点数を伸ばし、牧野に対するリードを広げた。今日のレースで3位となった牧野は83点。坪井とは18.5ポイント差になっている。野尻は5位に入賞したものの、計76ポイントと、坪井には25.5点の差をつけられる形となり、タイトル争いの権利は消滅した。
明日10日(日)には、いよいよシーズンを最終戦・JAFグランプリの予選・決勝が行われるが、誰が勝利の美酒を味わうのか。また、坪井と牧野、どちらがタイトルを物にするのか。ポイント上は、かなり坪井が有利となっているが、レースは最後まで何があるか分からないと、牧野は諦めない構え。坪井も油断は禁物と心を引き締めており、チェッカーまで緊迫の展開が続くことになりそうだ。