2025年 シリーズ第5戦 九州大会オートポリス レースプレビュー
2025.05.14
栃木県モビリティリゾートもてぎでDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが2レース続けて1-2フィニッシュを達成したシリーズ第3戦&第4戦から約1ヶ月。全日本スーパーフォーミュラ選手権は、今週末の5月17日(土)〜18日(日)、早くもシリーズ第5戦を迎える。例年、梅雨入り間近の5月なかばに開催されるこのレースの舞台となるのは、大分県オートポリス。シーズン中、唯一九州地方で行われる1戦ということで心待ちにしているファンも多く、毎年各種のイベントが催されるため非常に賑やかなイベントとなる。そのファンの前で、勝利の美酒を味わうのは、いったい誰になるのか?
昨年のスタートシーン
舞台となるオートポリスは、阿蘇の山懐に抱かれた自然溢れるサーキット。新緑の頃は、特にヨーロッパのような雰囲気が感じられる。山の自然な傾斜を利用して作られたコースは、1周4.674km。メインストレートから第1ヘアピン手前までが下り、第1ヘアピンから第2ヘアピンまでは上り区間となる。第2ヘアピンからはジェットコースターストレートを通って一気に下り、そこから複合コーナーが連続する上り区間を経て、コントロールラインに戻ってくる。2回のアップダウンと多彩なコーナー、高速区間と中・低速区間がバランス良く配されており、ドライバーにとっては、非常にチャレンジングなコースとなっている。オーバーテイクポイントも、1コーナーをはじめ、1コーナーから並走しての3コーナー、第1ヘアピン立ち上がりなど複数あり、バトルも随所で見られるはずだ。オートポリスはタイヤに厳しいサーキットとも言われているため、ストラテジーやタイヤの状態の良し悪しによって、多くのオーバーテイクのシーンが見られるだろう。
このオートポリスでは、事前のテストが行われていないため、ドライバーたちにとってスーパーフォーミュラで走行するのはわずかに年1回。過去のデータはあるというものの、今季はタイヤのスペックが変わっており、どのチーム、どのドライバーが最適解を導き出してくるのかは興味深い。特に、ザック・オサリバン(KONDO RACING)や高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)、平良響(KDDI TGMGP TGR-DC)、小出峻(San-Ei Gen with B-Max)、イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)らルーキードライバーにとって、スーパーフォーミュラでオートポリスを実際に走るのは初体験ということで、彼らがどのような走りを見せるかにも注目だ。
また、この第5戦からは、開幕大会の練習走行で負傷したオリバー・ラスムッセン(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)が復帰。ラスムッセンにとっては、久々のスーパーフォーミュラドライブであることに加え、ルーキーということで奮闘を期待したい。さらに、もてぎ大会をWECとの日程重複で欠場した小林可夢偉(Kids com Team KCMG)も今回はスーパーフォーミュラに戻り、シーズンのレギュラードライバーが全員顔を揃えることになる。その中で、現在ランキングトップに立っているのは、61ポイントを獲得している太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。チームメイトの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がわずか1ポイント差でそれを追っている。ランキング3位の岩佐歩夢(TEAM MUGEN)は太田と20ポイント差の41ポイント。ディフェンディング・チャンピオンの坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)は、もてぎの第4戦でトラブルに見舞われてノーポイントに終わったことが響き、ここまで31ポイントとなり、ランキングも4位に留まっている。太田や牧野にはほぼダブルポイントの差をつけられている形だ。岩佐や坪井がそのポイント差を詰めていけるのか。そこが今回の見どころのひとつとなる。但し、迎え撃つDOCOMO TEAM DANDELION RACINGは、今季絶好調。開幕から4戦すべてで優勝を果たすという破竹の勢いを見せている。巷では「今年はDOCOMO TEAM DANDELION RACINGがこのまま全レースで勝ってしまうのではないか?」という声も囁かれ始めているほどだ。しかも、オートポリスでは、昨年牧野が自身初優勝を果たしており、今年もいいイメージを持ったまま現地入りするのは確実。しかし、他のチーム、ドライバーもやられっぱなしではたまらない。それだけに、誰が牧野と太田の快進撃を止めるのかという点にも注目したい。
ポイントランキング 1位 61P
太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
ポイントランキング 2位 60P
牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
走行開始は土曜日の午前9時15分から。1レース制の大会ということもあり、まずは90分間のフリー走行が行われる。ここで各チーム&ドライバーは持ち込んだマシンの状態を確認するとともに、予選に向けてのセットアップを仕上げて行くことになる。セッション終盤には、多くが予選シミュレーションも実施するはず。ここで各ドライバーの調子が見られるはずだ。昨年PPを獲得している岩佐、同じく昨年フロントロウを獲得している牧野は、ここでどんなタイムを刻むのか。また、昨年は予選で7番手に留まった太田がどんなポジションで終わるのか。オートポリスと相性がいい阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、前戦で悔しさを味わった坪井、そろそろ優勝が欲しい佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、今季ここまで納得の結果が得られていない野尻智紀(TEAM MUGEN)らのポジションも気になるところだ。
午後からの予選はQ1、Q2で争われるノックアウト方式。Q1は2つのグループに分けて行われ、各10分間の走行となる。いずれのグループも上位6台がQ2に進出。7分間のQ2では12台がPPを争うことになる。そのアタックの方法にも、今回は注目。4月に行われたもてぎ戦では、多くのドライバーがニュータイヤを装着してからアウトラップ、1周のウォームアップラップを走った後、タイムアタックに入った。だが、去年のオートポリスではほぼ全員、アウトラップからすぐにアタックを行なっている。よほど気温が低くならない限り、今年もオートポリスではアウトラップからすぐにアタックに入るものと思われるが、そこにタイヤスペックの違いは影響するのか。また、アウトラップで各ドライバーがどのようにタイヤを温めて、どんなアタックを見せるのか。その点をじっくりと楽しんでいただきたい。
翌日曜日は、午前9時40分から30分間のフリー走行。このセッションでは、各チーム&ドライバーが決勝に向けてのマシンを仕上げて行く。ここでどれぐらい連続周回を行うのか、何回ピットに入るのか。アベレージタイムはどれぐらいなのかが、決勝を占う鍵となるはずだ。そして、午後2時30分からは41周の決勝レースが行われる。ここでまず注目したいのはスタートから2コーナーにかけて。1コーナーまでかなりの距離があるため、出足の良し悪しでポジションの入れ代わりが起こりやすい。また、スタート直後のライン取りによっては、2コーナーまでにポジションを上げて行くことが可能だ。さらに、タイヤがまだ温まり切っていないオープニングラップには、多くのバトルが生まれるはずだ。そして、ドライであれば、今回も1回のタイヤ交換が義務付け。交換のウィンドウは、先頭車両が10周を消化したところから最終周に入るまでだ。昨年もアンダーカットを狙ってミニマム周回でピットインするドライバー、オーバーカットを狙ってある程度引っ張ってからピットインするドライバー、タイヤの状態を見ながらレース中盤でピットに入るドライバーと、それぞれ作戦は分かれた。ストラテジーはスタート後に走っているポジションや前車とのタイム差などによって各チーム刻々と変わって行くが、誰がどのような作戦を採り、成功させるのか。その点も見どころとなるはずだ。結果、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGが開幕からの連勝記録を伸ばすのか。岩佐をはじめとする他のドライバーたちがそれを止めるのか。火花散る戦いが繰り広げられることだろう。