SUPER FORMULA NEXT50 2025年 第2回カーボンニュートラル開発テスト実施報告
2025.09.11
全日本スーパーフォーミュラ選手権(以下「SUPER FORMULA」)を開催する株式会社日本レースプロモーション(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:上野 禎久、以下「JRP」)は9月9日(火)から11日(水)の3日間、今シーズンの第2回目となるカーボンニュートラル開発テスト(以下CN開発テスト)を、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡)で行いました。
<開発テスト車両 通称「赤寅」(国本雄資選手)>
<開発テスト車両 通称「白寅」(山本尚貴選手)>
JRPでは2022年から「SUPER FORMULA NEXT50」プロジェクトを通じ、「カーボンニュートラルへの対応」と「エンターテインメント性の向上」の2つをテーマに、メーカーの垣根を越えてCN開発テストを繰り返し実施しています。
2023年に導入した現行マシン『SF23』は、カーボンニュートラルの対応として、原材料ならびに製造過程でのCO2排出量を約75%抑制した「Bcomp社」のバイオコンポジット素材や、今季より天然由来の配合剤やリサイクル素材等、再生可能原料の比率を45%まで向上させた横浜ゴムの「カーボンニュートラル対応レーシングタイヤ」を採用しており、そして今回の第2回CN開発テストからはいよいよ、国内初となる国産のセルロースエタノール混合ガソリン(低炭素ガソリン:E10燃料)のテストも開始されました。この燃料は既報の通り(ご参照: https://superformula.net/sf3/release/22933/)、復興に取り組む福島県大熊町を拠点にバイオエタノール燃料の製造技術を研究する次世代グリーンCO2燃料技術組合(「raBit」)と、セルロースエタノールを用いた低炭素ガソリンの品質設計と供給を担うENEOS株式会社が製造・供給するもので、来季の実戦投入に向けた最初の開発テストとなりました。
またEPS(エレクトリック・パワーステアリング)の電流値調整によるアシスト強度確認や、新しいステアリングの操作性マップの確認作業、電子制御によるクラッチ及びシフトのテストなども並行して行われました。
開発テストにはWhite Tiger SF23(通称「白寅」)とRed Tiger SF23(「赤寅」)が参加し、「赤寅」は2016年のシリーズチャンピオン国本雄資選手、「白寅」は2013年、18年、20年と3度のシリーズチャンピオンを獲得した山本尚貴選手が引き続き開発ドライバーを担当しました。
テスト初日の午前9時30分から行われた2時間の走行セッションでは、前半は従来使用している燃料を使ったタイムアタックを、後半に低炭素燃料を使用したセットアップとタイムアタッが行われる予定でしたが、今季使用のドライタイヤと従来の燃料を使用した車両各パーツの確認走行のみとなりました。
午後2時30分から2時間の2回目の走行セッションでは、午前行う予定だったテストメニューを中心に、特に現在使用しているハイオクガソリンでの走行と低炭素燃料での走行を比較・評価するテストを重点的に行いました。
テスト2日目も初日同様のタイムスケジュールで開発テストが行われ、午前中は今季仕様のレギュラータイヤの性能向上テストとして、3種類のコンパウンドと2種類のケーシング(タイヤの構造部分)の比較テストが行われました。また午後には、タイヤによる車両の振動や走行バランスの変化を確認するテストを行いました。
夜のうちに激しく降った雨も早朝には上がり、朝からの強い日差しもあり、3日目午前のテストもドライコンディションのもとでも実施されました。前日に引き続き、タイヤの特性によるバイブレーションの強弱の評価が行われました。
午後のセッションまでのインターバルで強めの雨が降ったことにより路面がウエット状態となったため、最後のセッションはレインタイヤ用のテストメニューに一部を切り替えて開始しますが、セッション開始から40分ほどすると路面がドライ状況に変化し始めたため、当初予定のドライメニューにあらためて変更し開発テストが続けられました。なお、初日午後のセッション以降すべてのセッションで低炭素燃料を使用してのテストとなりました。
3日間を通して4.563kmある富士スピードウェイのコースを、ドライコンディションのもと「赤寅」の国本選手が205周、「白寅」の山本選手が223周を周回、ウエットコンディションでは国本選手が7周、山本選手が14周を周回し多くのデータ収集、パフォーマンスの確認を行いました。
JRPではCN開発テストを通して得られた知見を活かし、今後もカーボンニュートラルとエンターテインメント性の両立・向上に向けた活動を継続してまいります。
次回、2025年第3回カーボンニュートラル開発テストは11月初旬にスポーツランドSUGOで実施予定としています。
開発ドライバー 国本雄資選手のコメント
「今回始めて低炭素燃料を使用したわけですが、従来のハイオクガソリンと入れ替えるだけで問題なく走行ができたことには正直驚いています。当然多少の不具合が発生すると覚悟はしていましたが、そこはすごくポジティブに捉えています。簡単に進んだからこそ、エンジンパワーの部分やドライバビリティのところは、エンジンのマップ側でもう少し合わせ込む必要があると感じましたので、本当に大きな一歩になったな、と実感しています。新しく投入した電気系パーツについても意外と好印象です。もちろん細かな合わせこみや、熱に対する対応などありますが、電気だからこそのパワー感、変速時の力強さを感じましたので、今後の改善によっては今よりレベルアップできる感じがしました。タイヤについては今回20セット以上履きましたね(笑)。いずれにしても選手権出場選手たちが安全に楽しく走れるタイヤ作り、ファンの方々に見ていただいて喜んでいただけるレースになるようなタイヤ作りを目指しているので、もちろん開発テストですので課題も必ず見つかりますが、データを検証していいものができあがると思っています」
開発ドライバー 山本尚貴選手のコメント
「事前のベンチテストでもハイオクと変わらない値を示している、と聞いてはいたのですが、経験的に他カテゴリーで合成燃料を入れた場合極端にパワーが落ちたり、合わせ込みが難しかったりといった事象を経験していたので、内心では心配はしていました。そんな中いざ走ってみると、燃料が変わったことを言われなければ気づかないくらい問題がなく、本当に驚きましたね。現時点ですでに来季投入については何も問題はないように思いました。電装系パーツについては改善すれば良くなると思えるもの、今回のテストだけでは評価が難しいものと、両面ありましたね。ですので次回以降の開発テストでどれくらい煮詰められるかだと感じました。タイヤについては今回は性能向上がメインの開発になったわけですが、新たな発見もありましたので、ドライバーの力が十二分に発揮できる最適解を見つけるためにデータ検証や精査をしていきながらフィードバックできればよいと考えています」