シリーズ終盤の山場。第7戦モビリティリゾートもてぎ大会レースプレビュー
2023.08.14
昨年の第8戦スタートの様子
梅雨明け後だったとはいうものの、肌寒いような天候の中で行われた7月の第6戦富士から1ヶ月余り。夏休みも終盤に入る8月19日(土)〜20日(日)に、全日本スーパーフォーミュラ選手権はシリーズの山場となる第7戦を迎える。今回の舞台は、栃木県モビリティリゾートもてぎ。タイトル争いを考えても、非常に重要なこの1戦を制するのは誰になるのか?
今年の夏は、7月から酷暑となっている。それは北関東も同じ。ただし、上空に寒気が入って大気の状態が不安定になると、突然夕立やゲリラ豪雨に見舞われることもあるのが、もてぎ周辺の特徴だ。酷暑は少し収まりを見せそうな感じもあり、実際のレースウィークがどのような天候になるか、今の段階では読めないと言っていいだろう。それでも、今シーズン、最も気温が高い中でのレースとなることは間違いない。それだけに、まずはドライバーたち全員が体調を保ったまま無事にレースを終えられることを願いたい。
さて、今回のレースの舞台となるもてぎは、全長4.8kmという中距離のサーキット。その特徴はストップ&ゴーレイアウトということだろう。5コーナーからS字にかけての高速区間もあるが、1〜2コーナー、3〜4コーナー、ヘアピン、90度コーナーなど、ハードブレーキングを要求されるコーナーが多い。また、コース幅がそこまで広くないことから、オーバーテイクもかなり難易度が高い。高低差もそこまで大きくなく、路面がフラットなのももてぎの特色だ。路面がフラットな分、タイヤへの攻撃性がそれほど高くないことでも知られている。
もてぎの90度コーナー
そのもてぎで好結果を出すために、やはり重要となってくるのがグリッド位置。スタートラインから1コーナーまでの距離が短い分、スタート直後に大きくポジションを上げることは難しく、フロントロウの選手に大きなアドバンテージがあるからだ。SF23で各ドライバーがもてぎを走るのは初めてとなるが、まずは誰が予選で好結果を出すかに注目して欲しい。その予選は、今回もQ1、 Q2で争われるノックアウト方式となる(天候が荒れた場合は計時方式に変更される可能性もある)。今回は、夏場ということもあり、路面温度によってはアウトラップからすぐにタイムアタックに入るドライバーも出てくるはずだ。また、チームによっては、フロントタイヤだけを先にスクラブし、その後リヤにニュータイヤを装着してアタックするドライバーも出てくるかも知れない。これに対し、安全策を取って、アウトラップとウォームアップラップを走ってからアタックするパターンも考えられる。
Q1は2グループに分けて行われ、各グループともに11台から6台に絞り込まれる。また、Q2では12台がPPをかけて争うことになるが、アタックに向けては、トラフィックマネージメントも重要なファクター。もてぎは大きく減速するコーナーが多い分、いいタイミングでコースに出なければ、自分のペースでタイヤを温めることが難しくなる。何周目にアタックするか、そこに違いがあれば、なおさらトラフィックマネージメントは重要となってくるだろう。そのため、各ドライバーがどのようなタイミングでコースに入るかという所から注目していただきたい。
もちろん、その予選を前に行われるフリー走行も重要なセッション。前述のように、各ドライバーにとってSF23でもてぎを走る初のセッションとなるからだ。ここで持ち込んだクルマの状態を確認することになるが、その良し悪しが予選に向けて大きなカギとなる。持ち込みセットが大外ししていれば、なかなか修正は難しいからだそのフリー走行で調子の良さを見せるのはどのような顔ぶれか、非常に気になるところ。ここまで3勝を挙げて、1ポイント差でランキング2位につけているリアム・ローソン(TEAM MUGEN)はもちろんのこと、ここまで2勝を挙げただけでなく、今期表彰台の常連となり、現在ランキングトップに立つ宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)の仕上がり具合はどうなのか。また、今年は第3戦での決勝リタイヤと第4戦欠場というハプニングがあり、宮田とローソンに対して一歩遅れを取っている野尻智紀(TEAM MUGEN)はどのように巻き返してくるのか。はたまた、昨年2レース制で行われたもてぎ大会でそれぞれ優勝を果たしている山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)や関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、今年ももてぎで速さを見せるのか。さらには、これまでもてぎと圧倒的に相性がいい平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が、一発の速さを見せるのか。フリー走行では、推しのドライバー以外にも、気になる存在が必ず出てくるはず。そこから午後の予選では誰が活躍するのか予想するのも楽しいに違いない。
昨年の第7戦決勝ゴールシーン
日曜日の決勝は37周で争われるが、今回もドライであれば、タイヤ交換の義務付けがある。交換のウィンドウは、先頭車両が10周目(9周終了後10周回目に入った周回を指す)の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終周回に入る前まで。昨年は、ドライのレースで関口と平川がバチバチのチームメイト対決を見せて1-2フィニッシュしているが、タイヤ交換のタイミングは大きく違っていた。早めに交換した関口、終盤まで引っ張った平川。今回も、ドライバーによって早めにタイヤ交換するか、引っ張るかは、その時々のトラフィックの状態などによって変わってくるはずだ。ピットロードのロスタイムは約22秒。それにプラス作業時間となってくるが、どのチームが素早い作業を見せるかも見所。もちろん、そこからの各ドライバーのアウトラップが勝負を決める大きなポイントとなる。
各ドライバーの作戦を決める一因となるのは、決勝に先立って行われる30分間のフリー走行やスタート進行時に行われる8分間のウォームアップ。ここでの決勝ペースによって、早めに入れる余地があるか、あるいは終盤まで引っ張る余地があるかなど、各陣営が判断することとなる。特にフリー走行での連続ラップを見ると、各者の大体の仕上がりが分かるはず。そのタイムにも注目だ。
また、決勝ではタイヤ交換の前に、最大の見所がある。それがスタートと、序盤に発生するコース上での攻防だ。前述のように、スタートで大きくポジションを上げるのは難しいコースだが、それでも少しのミスで入れ替わりは起こる。最初の4コーナーまでは激しいバトルとなるだろう。また、そこからタイヤの状態がいい最初の数周は随所で接近戦が見られるはず。これはタイヤ交換後も同様だ。さらに、タイヤ交換を引っ張ったドライバーが終盤オーバーテイクショーを見せる可能性も高い。いずれにせよ、真夏の暑さに負けないだけの熱い戦いが見られるはず。忘れられない思い出の一コマになるだろう。