2014 SUPER FORMULA
Round6 Sportsland Sugo
- Sportsland Sugo
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公式予選 9月27日(土) /
決勝レース 9月28日(日) [68 Laps : 251.872 km]
スポーツランドSUGO : 3.704 km
Race
ルーキーの野尻智紀が完璧なレース運びで初優勝を掴む!
Hondaが今季初勝利。2位の一貴がランキングトップ。デ・オリベイラとロッテラーはリタイア
No.40 野尻智紀
9月28日(日)、スポーツランドSUGO(宮城県)で2014年全日本選手権スーパーフォーミュラ第6戦の決勝レースが行われた。2度もセーフティカーが出る荒れたレースをルーキーのNo.40 野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40T SF14)が、完璧なレース運びを見せ、自身にとっての初ポイントが初優勝という快挙を達成。また、Hondaエンジンにとっても今季初勝利となった。2位にはNo.37 中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)が入り、ドライバーズランキングトップとなる。3位にはNo.8 ロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO SF14)が入った。
スタート宣言を務めたのは、宮城県名取市の佐々木一十郎市長
スタート直後のアクシデントでランキング上位がリタイア
雲一つない秋晴れに恵まれたスポーツランドSUGO。絶好の行楽日和ということもあって、サーキットには朝から家族連れを始め多くの観客が足を運んだ。透き通った秋の陽射しに照らされ、日中は汗ばむようなコンディション。午後3時で気温23℃、路面温度37℃とこの週末最高の気温となる。
フォーメーションラップがスタートし、1周の隊列走行を終え、20台全車がグリッドに着くと、オールレッドからブラックアウト。正式スタートが切られる。ここで好スタートを切ったのは、予選2番手のNo.40 野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40T SF14)と予選4番手のNo.3 ジェームス・ロシター(フジ・コーポレーションKONDO SF14)。ポールポジションのNo.1 山本尚貴(TEAM 無限 SF14)は動き出しが遅れる。その後ろ、予選3番手のNo.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM'S SF14)も、同様に動き出しに遅れただけでなく、「アンチストール(エンストを防ぐシステム)が入ってしまった」ということで、加速が大幅に鈍った。そのため、後方から来た集団に飲み込まれる形となったロッテラー。その中で、2コーナーの入り口では、イン側にもアウト側にもクルマがいる状況となって行き場を失い、アウト側のNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)に左フロントタイヤが接触。その影響でデ・オリベイラがインに巻き込む形でスピン。ロッテラーのクルマがそれに乗り上げる形で、宙に飛んだ。さらに、その後方から来たNo.34 伊沢拓也(DRAGO CORSE SF14)もデ・オリベイラのクルマに乗り上げてジャンプ。この3台は、そのままマシンを止め、リタイアを余儀なくされた。このアクシデントにより、コース上にはすぐさまセーフティカーが導入される。この時点での順位は、野尻、ロシター、山本、一貴、No.38 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING SF14)、No.8 ロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO SF14)だった。
アクシデントに巻き込まれた車両の回収が終わり、レースが実質リスタートしたのは、4周を終えた時点。ここで上手い加速を決めて、トップを守ったのは野尻。これにロシター、山本、一貴、石浦、デュバル、No.10 塚越広大(HP SF14)と、ポジションの変化なく周回を重ねて行く。その中で、白熱したのはデュバルと塚越の争い。塚越がコンマ3〜5秒の差で、オーバーテイクのチャンスをうかがっていた。
後方では、早目のピットインで空いたところを走り、ポジションを上げる作戦に出たクルマも。9周を終えたところでは、No.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING SF14)、10周を終えたところではNo.7 平川亮(ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14)がピットに入っている。また、デュバルの攻略に少し手間取り始めた塚越にも、チームからピットインの指示が飛び、14周を終えたところ戻ってくる予定だった。しかし、そのインラップのレインボーコーナーで、塚越はコースアウト。その後、予定周回でピットに入ったが、給油リグがなかなか給油口にささらず、大きくタイムロス。さらに、まだタイヤが温まり切っていないアウトラップの最終コーナーでコースアウト、クラッシュを喫した。
これをきっかけに、コース上には2度目のセーフティカーが導入された。それを見て、上位のクルマは一斉に動く。野尻、ロシター、山本、一貴、石浦、デュバルが次々にピットロードへとなだれ込んできたが、ここでの作業内容によって、ポジションには入れ替わりが起こった。給油と左リヤタイヤ1本のみの交換を行った野尻はトップをキープ。これに給油のみの一貴とデュバルが続く。さらに給油とタイヤ4本交換を行ったロシターと山本が続き、スタート時の燃料が少し軽めだったために給油時間が長かった石浦という順になった。一方、ここでステイアウトしたのは、No.41 武藤英紀(DOCOMO DANDELION M41Y SF14)、No.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)、No.18 中山雄一(KCMG Elyse SF14)、No.2 中山友貴(TEAM 無限 SF14)。この中で、武藤は上位の1周遅れでピットイン。だが、国本と2人の中山はピットに入らず走行を続けた。
塚越のマシンの回収が終わり、リスタートが切られたのは、21周終了時点。その直後の1コーナーでは、野尻と一貴が友貴をオーバーテイク。その先でデュバルも友貴を捉える。さらに、翌周のストレートではロシターも友貴をオーバーテイクした。その周のS字では、山本が友貴に仕掛ける。だが、友貴もここでは意地を見せ、一歩も引かない。2台は接触寸前まで近づいたため、山本はアクセルを戻した。その間に、後方から来たNo.31 中嶋大祐(NAKAJIMA RACING SF14)と石浦が、山本をかわして前に出た。
No.37 中嶋一貴
無給油の先行車にも野尻は動揺せず勝利を掴む
そこからは、各車一進一退。大きなポジションの入れ代わりはなく、レースは進んで行く。この時点でトップに立っていた国本と雄一は、もう一度セーフティカーが出れば無給油で走り切れる計算。その機会を待っていた。一方、野尻も前の2台がピットインする必要があることを理解し、コンスタントな走りで追従。結局、その後大きなアクシデントなどは発生せず。ギリギリまで粘っていた国本も、とうとう59周を終えたところで給油のためにピットロードに滑り込んだ。さらに、最後まで粘っていた雄一は、ついに65周目のバックストレートでガス欠症状に見舞われる。それを野尻が捉え、再びトップに出る。雄一は65周を終えたところでピットイン。この間に、一貴が2位、デュバルが3位と、それぞれポジションを上げた。
ここからの残り3周、少しペースを落とした野尻に対し、最後は一貴が猛チャージしたが、届かず。野尻はスーパーフォーミュラ参戦わずか6大会目にして初優勝、しかもこれが初ポイントだった。平成生まれのドライバーが、国内トップフォーミュラ公式戦を制したのは史上初。新たなヒーローの誕生に、スタンドの観客からは大きな歓声と拍手が送られた。これに次いで2位に入った一貴は、シリーズポイントを33点にまで伸ばしてトップに浮上した。またデュバルも3位表彰台を獲得。前回のオートポリスで無得点に終わったビハインド分を取り戻した。以下、ロシター、大祐、石浦、山本、平川までがポイントを獲得。
これで最終戦向けタイトルの権利を残したのは、一貴、デ・オリベイラ、ロッテラー、デュバル、石浦、ロシター、国本の7名。この7名にとって、1大会で最大18点を獲得できる最終戦鈴鹿(11/8,9)は、まさに大勝負の一戦となるだろう。
No.8 ロイック・デュバル
No.3 ジェームス・ロシター
No.31 中嶋大祐
2位 No.37 中嶋一貴 / 村岡潔 優勝チーム監督、優勝 No.40 野尻智紀 / 3位 No.8 ロイック・デュバル
記者会見
- 実感がまだ湧いていないという印象です
優勝
今すごくうれしい気持ちなんですが、いきなりすぎてよくわかってないというか、実感がまだ湧いていないという印象です。朝のフリー走行では燃料を積み、決勝を見越してちょっと古いタイヤを装着して走り始めました。バランスとしてはすごくいい状態で、そこからさらにアジャストして決勝に挑みました。
野尻智紀(No.40 DOCOMO DANDELION M40T SF14)
決勝ではスタートが決まって、トップに出てからはちょっとレースが長かったのでタイヤをセーブしつつ走ろうと。意外にも差を保つことができたので、このままいけばそれなりにいいレースができるのかなと思っていました。クルマの状態もすごく良さそうだと感じました。セーフティカー走行中で入ったピットワークも完璧で、チームの作戦面もすごくベストなものでした。
その後は、中山雄一選手が前を走っていたので、もしかしたらこのまま行かれちゃうのかなぁとも思ったのですが、プッシュして詰めていったら、彼はガス欠だったと思うのですが、(代わって)前に出ることができました。その後は、うしろともある程度ギャップができていたので、ミスしないように差をキープしつつ、かつ飛び出さないようにと思っていました。残り3周くらいはペースを落とし過ぎてしまったんですが、レース途中からはプッシュしたいんですが、なかなか気持ちを集中することができず、コース内に留まるのが精いっぱいという感じでした。ここまで僕を支えてくれたHondaさんやチームのみなさん、スポンサーの方にも本当に感謝しています。優勝するのがちょっと思っていたよりも早かったかな、と思うんですが(笑)、1シーズン目に優勝できたのは自分にとっても、ここまで苦戦が続いていたHondaにとっても、チームにとっても良かったことなので、ようやく自分の仕事ができたのかなという思いでいっぱいです。
(レース中)集中できなかったのは、このままレースで何もなければ優勝できる、という気持ちが入ってきたからです。それを思わないように葛藤していました(苦笑)。チェッカー受けた途端から、ずっと泣いてました。無線でチームから“おめでとう”と言われても、涙声で全然うまくしゃべれなくて…。そうこうするうちにパルクフェルメについてしまったので、ちょっと一回落ち着こうと思い、落ち着けてからクルマを降りました。優勝したとき、こんなポーズをしたらカッコいいだろうなって、以前考えてたこともありましたが、それどころじゃなかった(笑)。次はもうちょっとカッコよくいきたいですね。- 決勝に向けてやったことがいい方向に行きました
2位
今週末、ずーっと流れをつかむことができずに、きっかけもなにもないままレースを迎えなきゃいけなくて。予選6番手というのも正直自分としては上出来かなというものでした。そんな中、悪くないスタートが切れて、決勝に向けてやったことが色々とうまくいい方向に行きました。レースペースも決して悪くなかったし、想像していたよりもいいペースで周回を重ねることができました。(ピットワークでは)タイヤを換えないという判断をチームがうまくしてくれたし、すべてがいい方向へ転がったかな、と思います。2回目のセーフティカーが明けてからは前に離されてしまいましたが、ロイックのペースも見ながら、一度後ろから近づかれたこともありましたが、最後は少しずつ離していけるような状況でした。ここまで何戦か出口が見えないような感じでしたが、少し光が見えてきたような感じで最終戦を迎えられると思うので、残りしっかりとがんばっていきます。
中嶋一貴(No.37 PETRONAS TOM’S SF14)
レース中、タイヤを換えなかったんですが、それは周りの様子を見て決めました。クルマのフィーリングも決して悪くなかったので、換えなくてもいけるんじゃないかと思ってたし、事前にロイック(デュバル)は換えないだろうという情報もあったので…。結果、(ポジション争いをしていた)ジェームス(ロシター)と山本(尚貴)がタイヤを換えたので、“しめしめ…”って思いました。結果的には大正解でしたね。
2回目のセーフティカー(SC)とき、前の2台がステイアウトしている(ピットインしない)ことを聞いていたので、(SCが)明けたとき前と詰まったらイヤだなと思っていましたが、ペースが速かったし、最後まで中山(雄一)がピットに入らなかったので「あれぇ!?」とは思いましたが…。やっぱり持たなかったですね(笑)。もしあのペースで走って、(ピットインせずに済んだら)もうお手上げですよね。
今回までの流れで考えると、(チームメイトの)アンドレ(ロッテラー)が速くて僕がちょっと苦労してたので、もう少し(ふたりの間に)差がある状態で最終戦に臨むことになると覚悟していました。そういう意味で今回の結果は自分が思った以上のものだったし、最終戦も開幕戦で調子が良かったとはいえ、周りも調子を上げてきているので気は抜けません。基本的には前を追いかけていくつもりで臨むことに変わりはありませんね。- 前にいた一貴よりも若干速かったので逆転したかった
3位
昨日の予選が終わってから、セットアップに大きな変更を行ったんです。表彰台に上がることを狙ってましたから。朝のフリー走行では手応えがあったんです。でもすぐにエンジンの電気系統のトラブルであまり周回が重ねられなくて…。そんなこともあって、決勝に向けての十分な準備ができず、またスタート練習もすることができず残念に思っていました。でもラッキーなことに、決勝では極めて普通にスタートを切ることができて、前のアンドレ(ロッテラー)がスタートをミスしたことで、僕は1コーナーまでに(7位から)6位へ順位を上げられたんです。前には(中嶋)一貴と石浦(宏明)がいて、彼らについて行きました。ピットストップでは僕らはいい戦略(タイヤ無交換)を採ったので、3番手まで上がることができたんです。ピットワーク不要のオートポリスでもちゃんとタイヤがもったし、ペースも良かったので、換えずにいけるだろうと考えていました。 僕のレースペースは、前にいた一貴よりも若干速かったので逆転したかったんですが、タイヤのことも考えなきゃいけなかったし、差が詰まったり離れたりする感じで…。それに一貴がミスしないドライバーなので、逆転のチャンスはなかったですね。一方で終盤まで前の2台がステイアウトしていたことには気も留めていませんでした。僕にとってはそれよりも前を走っていた緑のハコ(No.37 中嶋)が気掛かりだったし、ただそれを抜きたいだけでした。 残念ながら今年は1戦欠場(第3戦富士)しているし、そのレースでは一貴が勝って10点獲ったんですよね。さらに僕はオートポリスではポイントを獲れずに終わったし、厳しい最終戦になるでしょう。まず、僕らは予選でのパフォーマンスを向上させないと。もちろん、全力を尽くして優勝を狙って行きます。鈴鹿は2レースあるので楽しいバトルができると思います。去年の最終戦のように色んなことが起こる可能性もあるでしょうし。諦めず、できるだけのことをしたいですね。
ロイック・デュバル(No.8 Team KYGNUS SUNOCO SF14)- 今日は落ち着いてレースをやってくれました
優勝チーム監督
ロイック(デュバル)がタイトルを獲ってからは、ずっと新人ドライバーを乗せてきました。新人ドライバーの面倒を見ることは、いつもいつも身体には良くないレースだなと思います。シーズン始まるまでは「今シーズンはノーポイントかなぁ」なんて考えていたんですが、長い目で育てていこうとも思っていました。野尻(智紀)君は(優勝のタイミングが)早かったと言ってますが、僕としては、(第4戦)もてぎで勝たせてあげたかった。
村岡 潔 監督(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
今日、一緒に表彰台に上がったふたりのドライバーとこれからチャンピオンをかけて争うくらいのドライバーであって欲しかったので。今回、きちっとレースをまとめてくれたので、これからは諸先輩にいじめられながらも、押し出されながらレースをやっていくと思うので、これからが楽しみです。本当に今日は落ち着いてレースをやってくれました。