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2016 SUPER FORMULA

Round3 Fuji Speedway

  • Fuji Speedway
  • 公式予選 7月16日(土) / 決勝レース 7月17日(日)
    富士スピードウェイ : 4.563 km

Race

Result Review

ドライになった決勝はNo.19 J.P.デ・オリベイラが終盤の逆転劇で今季初優勝!
一貴が2位。ロッテラーとのバトルを制した関口が初表彰台となる3位

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No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ

梅雨がまだ明け切らない7月17日(日)、静岡県・富士スピードウェイは、どんよりとした曇り空の1日となった。だが、幸い雨が降ることはなく、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦決勝は、完全なドライコンディションの中で行われた。55周のレースで終始速さを見せたのは、No.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)とNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。この2台のバトルは、残り5周というところまで続いたが、後半のペースに勝るオリベイラが終盤にトップを奪い、最後は逃げ切って今季初優勝を果たした。2位には一貴。3位には、No.65 ベルトラン・バゲット(NAKAJIMA RACING)やNo.41 ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、No.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)との接近戦バトルを演じて、場内を沸かせたNo.20 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が入り、ルーキーとして3戦目で初の表彰台を獲得した。

2016-07-17 14:00- 天候:曇 コース:ドライ

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 ハーフウェットだったフリー走行で、各ドライバーが初めてスリックタイヤの感触を試した決勝日の富士。そこから、次第に路面は乾き、サポートレースのF3が終わった後には、完全なドライコンディションとなる。この季節にしては、それほど暑くはならなかったものの、気温は25℃、路面温度は27℃まで上昇。湿度が高く、蒸し暑いコンディションとなった。そんな中、午後2時にフォーメーションラップがスタート。フリー走行でのクラッシュから、マシンの修復が間に合わなかったNo.64 中嶋大祐(NAKAIJIMA RACING)を除く18台が1周の隊列走行を行い、正規グリッドに整列した。

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 シグナルオールレッドからブラックアウト。各ドライバーが1コーナーに向けて一斉に加速する。PPのバンドーンは動き出しこそ良かったものの、予選2番手のNo.1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)の加速が良かったため、牽制すべくイン側へとラインを振る。この2台のアウト側少し後ろまでオリベイラが迫り、さらに予選6番手の一貴も抜群の動き出しと加速で、イン側グリッドから一気にアウトへとラインを変更。オリベイラのすぐ後方に迫った。そこから1コーナーへの進入で、バンドーンがブレーキをロック。大きくはらんでしまう。これでトップに立ったかに見えた石浦も、1コーナー立ち上がりでオーバーラン。ポジションを落とした。前の2台がコースオフしたことで、オリベイラがトップ、一貴が2番手に浮上、以下、No.65 ベルトラン・バゲット(NAKAJIMA RACING)、バンドーン、関口、石浦というのがオープニングラップのオーダーだった。

 スタートから4周目の最終コーナーでオリベイラがプッシュした結果、リヤが流れる形となり、そのまま軽くコースアウト。代わって、一貴がトップを奪う。また、石浦も挽回しようと頑張り過ぎ、プリウスコーナーで再びコースオフ。8番手まで後退した。トップに立った一貴は、他を寄せ付けないハイペースでラップを重ねて行く。10周を終えたところでは、2番手のオリベイラに対して、約3.8秒というギャップを築いた。
 後方では、この頃からピットインするドライバーたちが現れる。No.34 小暮卓史(DRAGO CORSE)が10周を終えたところで給油とフロントタイヤ交換、スタート時にクラッチに問題があり10番手までポジションを落としていたロッテラーが11周を終えたところで給油、No.2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)が12周を終えたところで給油のために、ピットに入った。早目にピットインを行い、前方にクルマがいないクリーンなところで走り、ギャップを縮める作戦だ。

 そこから3周ほど経った16周目の1コーナー。ピットに入ったばかりの国本が1コーナーの進入でスピン。コース上にストップしてしまう。国本はオープニングラップのヘアピンコーナーでNo.8 小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)と接触する場面があったが、それに起因してギヤボックスオイルが少しずつリーク。その結果、ギヤがスタックして、いきなりスピンしてしまい、自力で動き出すことができなかった。ここでコース上にセーフティーカーが導入され、まだピット作業を行っていなかったドライバーたちが一斉にピットイン。上位陣のポジションに入れ代わりはなく、一貴、オリベイラ、バゲット、バンドーン、関口、No.3 ジェームス・ロシター(KONDO RACING)というオーダー。しかし、そのすぐ後ろには、セーフティーカー前にピットインを終えていたロッテラーが浮上してきた。

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No.37 中嶋一貴

 国本のマシンの回収が終わり、レースがリスタートしたのは、19周を終えた時点。セーフティーカーランの間にタイヤやブレーキが冷えてしまった影響もあるのか、1コーナーでは3番手を走行中のバゲットがブレーキロック。バンドーンに迫られるが、ここはポジションをキープ。また同じ周のダンロップコーナーでは、ロシターの後ろにロッテラーが迫り、立ち上がりでオーバーテイクを成功させた。ロッテラーの勢いは、そこからも止まらず、23周目には前を行く関口に迫る。2台のバトルは24周目のヘアピン、27周目の1コーナーなどでドッグファイトに。しかし、関口がポジションを守り切った。その後、一旦は1秒ほどに開いた2台の差。しかし、ロッテラーは30周過ぎから再び関口にプレッシャーをかけはじめ、僅差のバトルが続いた。

 この頃になるとトップ争いのギャップも縮まってくる。前半、オリベイラを凌ぐペースで走っていた一貴だが、後半に入るとタイヤを温存していたオリベイラがペースアップ。37周を終えたところで、2台の差がいよいよ1秒を切り、接近戦にもつれ込んできた。そこから20秒以上離れた3番手争いも次第に白熱。バゲットとバンドーンの後ろには、ドッグファイトを見せながら、関口とロッテラーが迫った。バゲットは、セーフティーカー明けから右フロント足回りにトラブルを抱えており、なかなかペースが上がらなかったため、後方から他のドライバーに迫られる格好に。それでも、残り10周、46周目の1コーナーでは、オーバーテイクボタンを使いながら、追撃をかわすなど健闘を見せていた。そして、同じ周のダンロップコーナーへのブレーキング。バゲットに詰まる形となっていたバンドーンを関口が差す。バンドーンは少しアウトにはらんでしまい、ロッテラーもそれを見逃すことなくオーバーテイク。その翌周、全く同じダンロップコーナーへのブレーキングでは、関口がバゲットもオーバーテイクして3番手に浮上。これにロッテラー、バンドーンも続いた。その翌周の1コーナー手前で、バゲットはさらにロシターにも先行を許したが、その1コーナーへのブレーキングで、5番手を走行中だったバンドーンがスピンアウト。その影響で、バゲットが再びロシターの前に出る。バンドーンは左フロントブレーキに何の兆候もなく問題が発生したためのスピンアウトだった。

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No.20 関口雄飛

 バンドーンがスピンアウトしたため、1コーナーのポストでは黄旗2本の振動となったが、その中でいよいよ白熱し始めたのは、トップ争い。黄旗中も2台の差はコンマ2秒まで縮まっていたが、黄旗が解除されるとオリベイラが一気にプッシュ。そして、チェッカーまで残り5周を切った51周目の1コーナーで、オリベイラが一貴をオーバーテイク。再びトップを取り戻した。オリベイラは、ここから一貴を突き放すペースで走り切り、今季初優勝。一貴は2番手に甘んじた。3位には、激しいバトルを制した関口。以下、ロッテラー、ロシター。さらに、毎周のようにセクター3でNo.7 ナレイン・カーティケヤン(SUNOXO TEAM LEMANS)とサイド・バイ・サイドのバトルを続けていた石浦が、チェッカー目前でカーティケヤンと並ぶと、鼻の差で前に出ることに成功。6位となった。以下、カーティケヤン、No.10 塚越広大(REAL RACING)までが入賞し、ポイントを獲得している。レース終盤まで表彰台争いを演じたバゲットは、51周を終えたところでピットイン。足回りのトラブルが悪化したため、リタイヤを余儀なくされた。

 オリベイラにとっては、昨年の同じ富士大会以来1年ぶりの優勝。開幕から2戦、ノーポイントで終えたが、いよいよタイトル争いに名乗りを上げてきた。

 

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記者会見

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2位 No.37 中嶋 一貴 / 優勝 No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ / 3位 No.20 関口雄飛 / 星野一義 優勝チーム監督

黄旗をうまく使うことができた。日本でのレース10勝目、とてもハッピー

優勝
No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

photo いいスタートを切って、1コーナーに入る時、僕はアウト側にいたんですが、イン側に(ストフェル・)バンドーン選手と石浦(宏明)選手がいるのはわかっていました。彼らのブレーキングのタイミングだと厳しいんじゃないかと思ったら、案の定まっすぐ行ってしまったので、僕の目の前がキレイに開けたんです。これで前に出ることができました。
前に誰もいないクリアなコースをプッシュして走っていたのですが、(中嶋)一貴も僕の後ろにしっかり付いてきて、僕が4周目の最終コーナーでミスしました。クルマは若干オーバーステア気味だったのですが、ブレーキングしてシフトダウンしたときにリヤがロックしてしまい、これはもう曲がれないと思い、諦めてまっすぐ行きました。練習や予選では許されても決勝では本来しちゃいけないことなんですが、2位になってしまってグリップダウンもしていたので、抜くのは難しいなぁ、今日は勝てないかなぁ、と思っていました。そこでタイヤを労るような走りに切り替え、なにか(逆転の)チャンスがあれば、と思いながら、しばらくガマンして一貴の後ろを走りました。するとレース終盤になって2回のチャンスが訪れたんです。1つは1コーナーでの黄旗でした。それを上手く使うことができました。
今日の勝利で日本でのレース10勝目になりました。とてもハッピーです。日本にきたことは自分のドライバー人生でいい選択だったし、今や日本の文化や環境が自分にも合っているし、すごく満足しています。これからも長く日本でのレースでキャリアを重ねていきたいし、もっともっと強く、速くなるよう頑張っていきたいです。
今日の結果は浮上するきっかけになる。ここからがスタートだと思う

2位
No.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)

photo 今朝は濡れたところが残った状態の中でフィーリングも良く、ある程度いいレースができるかな、と思いました。ただ今シーズンはやってみるまで何が起るかわからないというところがあるクルマだし、6番手スタートということもあったので、(決勝は)長いレースになるだろうなとは思ってました。ところが、1コーナーで2台(41号車、1号車)が消え、JPが最終コーナーで失敗したので、知らぬ間にトップに立っていました。
最初のうちは非常にペースが良くて、引き離していくことができたんですが、SCが入る少し前くらいから、JPとの力関係が変わってきたな、と感じていました。実際、SC後もその傾向は変わらず、リスタートからしばらくはこちらのペースが上がったのですが、最後の20周くらいから逆にJPのほうがペースが上がっていったので、苦しいレースでした。オーバーテイクスイッチを使いながら、なんとか残り切れるかなと思い、守り切れるようにがんばったのですが、ちょっと足らなかったですね。残り5周くらいのところだったので、なんとか堪えたかったんですが、残念ですね。
ただ今シーズンはまともなレースができておらず、レースペースは鈴鹿、岡山とも、岡山に関しては予選も良くなかったので、(今日の結果は)少なくとも浮上するきっかけにはなったかなと思います。選手権のポイントを見ても、みなさんわりと近いところにいるようなので、これが開幕戦というような感じでこれから戦っていければいいかなと思います。
今、JPとも話したのですが、僕もル・マン(24時間レースでリタイヤ)で相当ついてなかったですが、JPもGTやこの前のスーパーフォーミュラで相当ついてなかったので、“ツイてない世界選手権”だったんですが(笑)、ふたりで表彰台に立てたので良かったと思います。次のもてぎに向けても、ここからがスタートだと思うので、負けないようにやっていきたいですね。
引くのだけはやめようと思った。『絶対負けない!』という気持ちで走った

3位
No.20 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

photo 朝もスリックタイヤで走りましたが、ダンプというか完全に路面が乾いておらず、ラップタイムも普通のドライのときよりも遅いタイムで走っていました。今日のレース前の8分間でようやくドライでの走行になったんですが、クルマはそんなに悪い感じがしなかったので,大きなセット変更もなく出走しました。レース前半は、結構ペースが悪く、燃料を積んだときにリアのトラクションがなくて、苦しかったですね。でもそんなときに、(後方のアンドレ・)ロッテラー選手がダウンフォースを失いつつもずっと付いてきて、何回か危ない場面(抜かれる)もあったんですが、そんなときにブレーキングで抜かれるのはダサいし、(コーナーを)突っ込んで回れなくてもいいから、引くのだけはやめようと思って、なんとか粘りました。それができたからこそだし、もしあそこで逆転されていたら、ダウンフォースが抜けて前のペースに追いつけなかったと思います。あれで粘ったからこその3位だと思います。
レース参戦を続けていく中、厳しいときに支えてくれたスポンサーさんが誰かひとりでも欠けていたら絶対この場所にいないと思います。またそんな自分を迎え入れてくれたチームのみなさんに支えられ、ようやくこの(スーパーフォーミュラの)シートをつかむことができました。早く結果を出したかったんですが、不運もあって、3戦目で優勝こそできませんでしたが、とりあえず3位に入れて良かったです。バトルのときはロッテラー選手とやり合いましたが、監督が『ガンガン行け!』と行ってくれたので、『絶対負けない!』という気持ちで走りました。消極的にならずに良かったです。

ファンの皆さんに素晴らしいレースを見せられた。今日のレースは最高でした

優勝チーム監督
星野一義 監督(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

photo 正直なところ、今日のレースはヤバいかなと思うものでした。JP(デ・オリベイラ)がちょっとしたミスで(中嶋)一貴に抜かれて…。でもそのあと、JPのタイムが上がって、一貴とはコンマ1秒、2秒というくらいの差で走っている中でちょうどSC(セーフティカーラン)になりました。(SUPER)GTのときはSCが入ってがっかりするようなこともあるんですが、今回はSCが入り、『ほんとうにありがとうございます』というような状況でした(笑)。JPは(SUPER GT第2戦富士で)トップを走っていてタイヤがバーストするっていうこともありましたが、レースって運もいるんですよね。
でも何よりも優勝監督としてうれしいことは、今日はファンの皆さんにレースというもの、その戦いというものは、ドライバーの執念や魂などすべてが合わさって、最後チェッカー受けるまではわからないものであり、そういう素晴らしいレースを見せられたことです。勝ち負けがあるレースの中で今日のレースは最高でした。一方で、関口(雄飛)がほんとに日本人のドライバーの中でファイトあるプレーを見せてくれてました。ロッテラーも抑えて…。誰かと絡むんじゃないかと思ったんですが、そこを抜け出してきたので、それは彼のセンスでしょうね。ありがとうございました。

 

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