2017 SUPER FORMULA
Round4 Twin Ring Motegi
- Twin Ring Motegi
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公式予選 8月19日(土) /
決勝レース 8月20日(日)
ツインリンクもてぎ : 4.801 km
Race
2スペックタイヤ使用で、数々のドラマが発生。
大波乱のレースをNo.15 ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)が初優勝!!
No.15 ピエール・ガスリー (TEAM MUGEN)
前日の雷雨の影響で、日曜日の朝に予選Q2、Q3が行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦。そこから約4時間のインターバルを経て、午後2時10分からはいよいよ注目の決勝レースが行われた。今大会では、横浜ゴムがスリックタイヤを2スペック用意。これまでの3大会で使われてきたミディアムに加え、昨年よりもさらに柔かいソフトタイヤが持ち込まれた。決勝レースでは、この両方のスペックを使用することが義務付けられていたため、各チーム、ドライバーによって作戦が極端に分かれる。また、ミディアムとソフトのタイム差も大きく、各所でオーバーテイクシーンが展開される見応えのあるレースとなった。舞台となった栃木県ツインリンクもてぎにとっては、オープンから20周年という節目の1戦。その歴史に残る1戦を制したのは、No.15 ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)。フロントロウスタートからトップに立って後続に大きなリードを築き、初優勝が目前に見えていたNo.18 小林可夢偉(KCMG)は、ピット作業のミスで大きくタイムロスし、2位フィニッシュ。3位に入ったのは、第3戦富士で初表彰台を獲得したNo.7 フェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS)。ローゼンクヴィストは今回のレースの結果、ランキングでも3位に浮上している。
空は分厚い雲に覆われていたものの、気温28℃、路面温度30℃と軽く汗ばむようなコンディションとなる中、フォーメーションラップがスタートしたのは午後2時10分。この時点で、装着していたタイヤは各ドライバーによって分かれ、PPのNo.4 山下健太(KONDO RACING)、予選2番手の可夢偉、予選3番手のNo.40 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はソフト。予選4番手のガスリー、5番手のNo.3 ニック・キャシディ(KONDO RACING)、予選6番手のローゼンクヴィストはミディアムをチョイス。以下、No.41 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がソフト、No.64 中嶋大祐(TCS NAKAJIMA RACING)がミディアム、No.65 ナレイン・カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING)がソフト、No.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がミディアム、No.50 小暮卓史(B-Max Racing team)がソフト、No.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)がミディアム、No.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)がミディアム、No.10 塚越広大(REAL RACING)がソフト、No.16 山本尚貴(TEAM MUGEN)がソフト、No.2 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)がミディアム、No.1 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)がミディアム、No.8 大嶋和也(SUNOCO TEAM LEMANS)がソフトをチョイス。スタート進行の中で行われた8分間のウォームアップ走行中、4コーナーでコースアウトしてストップしてしまったNo.20 ヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は最後尾スタートとなり、ミディアムタイヤをチョイスしている。
1周の隊列走行を終え、全車がグリッドに着くと、いよいよシグナルレッドからグリーンへ。その瞬間、全ドライバーが52周先のゴールを目指し、一斉に加速した。ここで好スタートを決めたのは、可夢偉。PPの山下は、動き出しこそ悪くなかったものの、そこからの加速が鈍り、野尻、ガスリーに先行を許す。だが、ソフトタイヤの山下は、3コーナーでガスリーをオーバーテイクし返し、3番手に。その後方では、ローゼンクヴィストと伊沢がキャシディをかわして、それぞれ5番手、6番手に浮上。さらに、その後方では予選16番手の山本が大きくポジションアップし、10番手でオープニングラップを終えている。一方、スタートでエンジンストールしてしまったのが、塚越。だが、燃料の搭載量を減らし、2回ピット作戦を敢行した塚越は、ここから大きな見せ場の数々を作ることとなった。
No.18 小林可夢偉(KCMG)
オープニングラップを終えてのオーダーは、可夢偉、野尻、山下、ガスリー、ローゼンクヴィスト、伊沢、キャシディ、カーティケヤン、一貴、山本、小暮、ロッテラー、関口、大祐、国本、石浦、大嶋、マーデンボロー、塚越。その中から、トップの可夢偉が最初から好ペースでの周回を重ね、野尻を引き離して行く。野尻より、1周あたりコンマ3~5秒速いペースを刻み、5周を終えた時点ですでに4秒近いマージンを稼いでいた。野尻の後方には、約1秒差で山下が続いていたが、同スペックのタイヤということでコース上でのオーバーテイクが難しいと見たのか、山下は9周を終えようかというところで真っ先にピットイン。給油とミディアムタイヤでの交換を終え、コースへと戻った。これを見て、翌周ピットに入ったのは伊沢。伊沢も給油とミディアムタイヤへの交換を終えると、コースに戻ったが、ポジションは山下の後ろに留まっている。さらに、11周を終えようかというところでは、山本がピットイン。やはり給油とミディアムタイヤへの交換を終えて、コースに戻っている。
この頃、激しくなっていたのは、後方から猛烈な勢いで追い上げてきた塚越と、その前を行くドライバーたちの攻防。塚越は、4周目に石浦、同じ周のヘアピンでマーデンボローをかわすと、5周目の2コーナーでは大祐をパス。6周目には国本、7周目の最終コーナー手前では大嶋、8周目の第2アンダーブリッジ先では関口、さらには10周目の90度コーナーでロッテラー、11周目の90度コーナーでは一貴と、次々にオーバーテイクして、ポジションを上げて行った。塚越の勢いは、その後も落ちず、14周目の3コーナーでは小暮をオーバーテイク。この時点での7番手まで浮上してきた。
No.7 フェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS)
その後、中団から後方の集団では、13周を終えようかというところで国本、14周を終えようかというところで、小暮、大祐、マーデンボローがピットイン。この中で、国本は左フロントタイヤの交換に時間がかかってしまったうえ、アウトラップで軽くコースオフしてしまった。さらに、17周を終えようかというところで、一貴がピットイン。給油とソフトタイヤへの交換を終えてコースに戻ったが、小暮と大祐が先行。ピットストップで上手くポジションを上げることはできなかったが、その後、ソフトの強みを生かして数台をかわしていった。
一方、トップ集団では、15周を終えた時点で、可夢偉が野尻に対して7秒以上のマージンを作り独走。2番手の野尻は、山下がピットに入ったことで3番手に浮上してきたミディアムタイヤのガスリーよりもわずかにラップタイムが遅くなり始める。そこで、野尻は18周を終えようかというところでピットに入ると、給油とミディアムタイヤへの交換を終えて、山下の前でコースに戻った。だが、すでにタイヤが温まっていた山下が、3コーナーで野尻をオーバーテイクすることに成功する。野尻がピットに入ったのと同じ周には、塚越もピットイン。ソフトタイヤからソフトタイヤに交換して、コースに戻る。ここで塚越の2ピット作戦が明らかになった。
その後も、トップの可夢偉は手綱をゆるめることなく、ソフトタイヤで好タイムをキープ。ミディアムタイヤのガスリー、ローゼンクヴィスト、キャシディもミディアムで引っ張る作戦に出ていた。この頃になると、かなりのドライバーがすでにピットインを行っていたため、後方からスタートしてやはり引っ張る作戦に出ていたロッテラーが5番手、一時は最後尾まで後退した石浦が7番手まで浮上するという展開にもなっていた。
この中で、ほぼレース折り返しでピットに入ったのが、3番手を走っていたローゼンクヴィスト。ローゼンクヴィストは、25周を終えようかというところでピットに入ると、給油とソフトタイヤへの交換を終え、野尻の後ろでコースに戻る。さらに、アウトラップの5コーナーではブレーキをロックアップ。フラットスポットを作ってしまった。これを見て26周を終えようかというところでは、キャシディがピットイン。やはり給油とソフトタイヤへの交換を終えて、ローゼンクヴィストの後ろでコースに戻った。さらに28周を終えようかというところでガスリーがピットイン。給油とソフトタイヤの交換を終えると、序盤にピットインを終えていた山下の後ろでコースに戻ったが、タイヤが温まるとすぐにオーバーテイクしている。また、この頃、バックストレートでローゼンクヴィストが野尻をパス。翌周にはキャシディも野尻を捉えた。さらに、29周を終えようかというところでは、ロッテラーかピットイン。最後方からソフトでスタートして引っ張り、この時点で2番手まで浮上していた大嶋も、30周を終えようかというところでピットに入った。
この時点で、トップの可夢偉、2番手に上がってきた石浦はまだピットに入っておらず、ハイペースで飛ばす作戦ながら、もう1回ピットに入らなければならない塚越が3番手。それ以下は、ピット作業を終えた組で、そのオーダーはガスリー、山下、ローゼンクヴィスト、キャシディ、野尻、伊沢、ロッテラーの順。その中で、31周目のバックストレートでアクシデントが発生。ミディアムを履く伊沢に、ロッテラーが追いついたが、スピード差が大きかったのか、ロッテラーが伊沢に追突し、伊沢はコースアウト。ガードレールにヒットして、左リヤサスペンションにダメージを負ってしまった。これと時を同じくして激しくなったのは、ピットインを終えたグループの中での2番手争い。33周目の1コーナーでは、ローゼンクヴィストとキャシディが、山下に迫り、5コーナーからS字にかけてローゼンクヴィストがまず山下をオーバーテイク。続くV字コーナーではキャシディも山下をかわした。
No.2 石浦宏明 (P.MU/CERUMO・INGING)
その頃、ずっとソフトタイヤで引っ張っていた可夢偉が、いよいよピットインの時を迎える。33周を終えた時点で、ピットインを終えたドライバーたちの中で一番前にいたガスリーに対し、約41秒という巨大なマージンを作り上げていた可夢偉は、34周を終えようかというところでピットイン。ところが、右リヤタイヤの装着に手間取ってしまう。この作業には、何と30秒もかかってしまい、可夢偉はガスリーの先行を許すことになってしまった。ソフトタイヤのガスリーに対して、可夢偉はミディアム。レース前半とは違い、後半は逆にジワジワと引き離される展開になってしまった。それでも、何とかローゼンクヴィスト、キャシディの前でコースに戻れた可夢偉は、ソフトタイヤで追いかけてくる2人のルーキーを封じ込める走りを展開した。
No.15 ピエール・ガスリー (TEAM MUGEN)
さて、この時点でも、まだピットに入っていなかったのは、石浦。石浦は、何と52周のレースのうち、40周を終えようかというところまで引っ張ってからピットイン。給油とソフトタイヤへの交換を終えると、野尻の後ろでコースに戻る。この直前には、伊沢との接触から、ロッテラーに対してドライブスルーペナルティーが課され、前半、石浦の前を走っていたロッテラーは、石浦の後ろにドロップすることになった。終盤ということで燃料が軽く、しかもソフトに交換した石浦は、ここから予選さながらのラップタイムを連発。42周目のヘアピンで野尻をかわすと、44周目のS字では山下をオーバーテイクする。一方、ペナルティーで一時ポイント圏外までドロップしたロッテラーも、怒涛の追い上げ。42周目の90度コーナーで塚越、44周目の90度コーナー手前で大嶋をかわしてポイント圏内に戻ると、ペナルティー前に1回かわしていた野尻の後方に迫った。さらに、1周につき、前方集団より2~3秒速いペースを刻んでいた石浦は、50周目の90度コーナー先、第2アンダーブリッジにいたるところでキャシディを捉えると4番手まで浮上。同じ周の90度コーナーではロッテラーも野尻を捉え、7番手まで浮上している。
そして、52周のレースを終えると、可夢偉のピットイン後に独走態勢となっていたガスリーが嬉しい初優勝。後方から迫るドライバーたちを抑え切った可夢偉が2番手。ローゼンクヴィストが3番手でゴール。序盤最後尾まで後退したものの、そこからレース巧者ぶりを見せた石浦が4番手でチェッカーをくぐり、ランキングトップの位置を死守した。以下、5位にキャシディ、6位に山下。さらに、ロッテラー、野尻までがポイントを獲得している。唯一、2ピット作戦を取った塚越は9位でゴール。スタートでのエンジンストールがなければ、充分にポイントを獲得できるだけのポテンシャルを見せつけた。
No.15 ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)
2位 No.18 小林可夢偉 / 優勝 No.15 ピエール・ガスリー / 手塚長孝 優勝チーム監督 / 3位 No.7 フェリックス・ローゼンクヴィスト