2012 Formula NIPPON
2011年第6戦
ついに残り2戦となった2012年の全日本選手権フォーミュラ・ニッポン。9月22日(土、予選)、23日(日、決勝)は第6戦スポーツランドSUGOでの開催だ。最終戦前の戦いだけに、チャンピオン争いに加われる者が一気に絞られることになる。また、タイトルに絡まないとしても、今後のためにも自らの実力を証明しなければならない時期でもある。より、白熱したレースになるだろう。また今週末は、21日(金)の16時30分から30分間であるが、特別練習走行が行われる。お時間のある方は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
今季のフォーミュラ・ニッポンは全7戦。最終戦の鈴鹿は2レース制で優勝者にはボーナスポイントが付くが、それでも挽回できるポイント数は決まっているわけで、その直前となる第6戦スポーツランドSUGOは、タイトル争いへのサバイバルマッチとなる。
まず第6戦の中心となるのは、ドライバーズ・ランキングで1、2位を占めるPETRONAS TEAM TOM'Sの2人、No.2 中嶋一貴とNo.1 アンドレ・ロッテラーだ。ポイント差もわずかに中嶋が1ポイントリードするだけ。昨年も同様の対決であったが、ルーキーの中嶋に対してロッテラーが圧倒した感がある。しかし、今年はここまで互角とも言える。同じチームの2選手がタイトルを争うのは、フォーミュラレースではよくあり、そのチーム内の緊張感は見どころでもある。
ただ、この2人が必要以上に意識し合い、取りこぼすとライバルが一気に迫ってくる。
Hondaエンジンユーザーとしてこのトヨタユーザー2人に追いすがるのが、No.41 塚越広大(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。トップの中嶋に対し、5ポイント差を付けられている。そして、前戦優勝で勢いがついたNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)も6ポイント差。この2人は、とにかくPETRONAS TEAM TOM'Sの2人の前でのゴール、しかも表彰台は外したくないところだろう。
ポイントを読みながら戦うのは、この4人ぐらい。ランキング5位No.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)以降のドライバーが最終戦にチャンピオンの可能性を繋ぐには、とにかく優勝、大量得点が必要になる。また、ランキング最上位から23ポイント以上離されているランキング9位のNo.38 平手晃平以下は、すでにタイトルの可能性がない。だが、今後のためにも自らの実力を示さないと、来季のシートも危うくなる。厳しいことだが、これがプロの世界だ。彼らのファンのみならず、その奮闘にも注目して欲しい。
さて、第6戦の舞台となるスポーツランドSUGOは、仙台市から山形方面にクルマで1時間少々の山間にあるサーキット。この時期は非常に涼しくなり、レース観戦はうってつけの季節だ。緑も豊かでピクニック気分での観戦もありだ。
だが、レースコースとしてはなかなか難しい部類のようだ。中高速のコーナーが多く、アップダウンもきつい。勝負どころは、スピードを殺さず、思いっきり突っ込んで回る必要があり、そのためアクシデントも少なくない。燃費面でも厳しさがあり、攻めたエンジンセッティングや少ない給油量でピット時間を短縮すると、最後にガス欠というミスも有りうるのだ。
ドライバー、チームには難しいと言うことは、見ている方にはスリリングでおもしろいと言うこと。ましてや最終戦前のレースと言うことで、“一か八か”の勝負に出るドライバーもいるだろう。それがレースに、ひいてはタイトル争いも左右しかねない。この辺も注意して見てほしい。
タイトル争いを圏外の誰かが左右するという意味では、非常に興味深い存在がこのレース、そして最終戦に現れる。それはラスト2戦にスポット参戦する、インディドライバーの佐藤琢磨(No.15 TEAM 無限)だ。説明するまでもないかもしれないが、佐藤は英国F3でチャンピオンを獲得し、フォーミュラ1世界選手権に参戦。日本人最高位の3位入賞を果たしている。その後、アメリカのトップフォーミュラであるインディシリーズに参戦。こちらでも日本人最高位2位を記録する日本を代表するトップドライバーだ。
だが彼自身が言う。「日本のレースのレベルは非常に高い。ましてその最高峰であるフォーミュラ・ニッポンは本当に厳しいです。スポットで出る僕が上位を走れるなんて、そんな甘いことは考えていません」。まして、佐藤はスポーツランドSUGOをまったく走ったことがないのだ。しかし、だからこそ、彼がどんな適応力を見せてくれるのか、またフォーミュラ・ニッポンの競り合いの中で光るものを見せてくれるのか、そこが気になるところ。また、もし上位争いに食い込み、大きなポイントを奪えば、それこそタイトル争いに思わぬ波乱を呼び込んでしまうかもしれない。
さらに彼の参戦は、フォーミュラ・ニッポンのドライバーたちにも大いに刺激になるはず。同じHonda系の塚越は「拓磨さんは素晴らしいドライバーであり先輩です。でも、同じレースで走る限りは、ライバルの1人であり、負ける気なんて考えもしません」と、一歩も引く構えはない。塚越だけでなく、多くの選手が佐藤に対抗心を持っているだろう。琢磨も口では謙遜するが、レースになれば世界の猛者と戦ってきた、あの闘争心を全開にしてくるはず。彼を中心としたバトルも目が離せなくなりそうだ。
このように見どころ沢山の第6戦スポーツランドSUGO。ぜひサーキットに足を運んで観戦してみてはいかがだろうか。また、見たいけど都合で行けない…、という方は、衛星放送のJ SPORTSでの生中継、BSフジの特集番組で楽しんでほしい。
佐藤琢磨(No.15 TEAM 無限)からのビデオメッセージ(※2012年7月時点)