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コラム【武士が斬る!】vol.15 レースの夏、ますます熱く盛り上がる!

2024.08.23

皆さんこんにちは!SUPER FORMULAオフィシャルアドバイザーの土屋武士です。

 

本当に今年の夏は暑いですよね。暑さのうえに湿気が半端ない…、不快感MAXの中でどうやってこのストレスを発散するかだと思いますが、レースを戦う関係者も少しでもリフレッシュをしたいところですが、レースにどっぷり浸かっている“レース屋”にとっては、一番は「優勝」という良い結果でしか発散ができない人種でもありますので、休み中でも頭の中はレースのことばかりだったりします(^-^;  特に職人肌のメカニックはそういう傾向が強いですね。年がら年中、「どうしたら1/1000秒を削れるか?」ということが頭の中を巡っています。え、土屋もそうだろうって?? はい、現役時代は確かにそんな感じでした。でもここ数年は少しレースのこと以外も考える時間を作るようになってきたこともあって、だいぶ客観的に見れるようになってきたんじゃないかなぁ、と自分では思っていますがどうでしょうね… いずれにせよ、これまでの人生の9割くらいの時間は“レース漬け”なのは間違いないので、そろそろ別の景色も見に行きたいなって思っている今日この頃です。

 

さて、話をSUPER FORMULAに戻しましょう。先月行われた第4戦富士ラウンドはたくさんのコンテンツの中、2日間で富士スピードウェイに約5万の観客の皆さんが来てくださり、素晴らしいレースが繰り広げられました!昨年に引き続き「夏祭り」をテーマに、日本レース史上初のレース後のホームストレート上で「アフターレース・グリッドパーティー」なども行われ大いに盛り上がりましたが、何といってもこの大会は「第1回 瑶子女王杯」という栄誉ある賜杯を頂戴する記念すべき大会でもあったので、ドライバーたちのモチベーションも最高潮だったと思います。そして何よりも観客の多さ!!SUPER FORMULAの中でも過去最大級の動員数だったこともあり、ドライバーたちも関係者も本当に多くのファンのまえで走れることに高揚していました。本当にファンの声援が何よりの“エネルギー”になるんですよね。本当にたくさんの声援をありがとうございましたm(__)m

 

 

 

そんな盛りだくさんの富士大会は、多くの話題と多くの賞金(笑)を“坪井家”が獲得し、絵にかいたようなハッピーエンドで幕を閉じました。まずはその舞台の大団円を豪快なオーバーテイクで締めてくれた坪井翔選手にフォーカスしてみますね。

坪井選手は開幕戦こそノーポイントで終わっていましたが、その予選をSFgoアプリでチェックしていると、その走りの鋭さやマシンセッティングにおいては、ポールポジションも狙えていたと感じるくらいの仕上がり具合でした。若干ストレートラインでの“伸び”が不足しているのかなと見ていましたが、決勝でもスピード不足のまま11位に終わり開幕ダッシュは叶わなかったのですが、この時点でも坪井&トムスのパッケージが今季の“軸”になることに疑いを持つことはなかったです。その後の安定した上位フィニッシュを見ても、坪井は必ずくると、ライバル勢は戦々恐々としていたことでしょう。そして誰も予想してなかった、最強のサポートが坪井選手にありましたよね。奥様の斎藤愛未さんのKYOUJO CUPの2連勝!これまでも愛未さんの献身的なサポートをサーキットで目にすることはありましたが、スポーツ選手のマインドに根っこから火をつける鮮烈な優勝は、坪井選手の身体の隅々からパワーを絞り出したに違いありません。トップのパッケージを持つ陣営が、こんな“元気玉”まで手に入れて走られたら手に負えない——、終わってみれば“坪井家”劇場でしたが、スポーツの場面では時に奇跡的なストーリーを用意してくれます。しかし、それもここまでの準備があったからこそ。坪井選手とトムスには優勝を勝ち獲る準備ができていたということだと思います。

 

 

 

具体的には、事前の富士公式テストからこのレースのイメージはできていたと思います。テストの時に私はコーナーで見ていましたが、決勝ペースの鍵になる「セクター3」でのマシンの動きが非常に安定していて、なおかつ速かった。その安定感が予選一発の部分を出し難くする要因にもなり得るのですが、予選Q2ではしっかりと4位を獲得。この時点でスタートさえ決めれば坪井選手の優勝はかなり高い確率ではないかなと、個人的に思っていました。

決勝でのポイントはピットインのタイミング。これ以上はタイヤのパフォーマンスが落ちてタイムロスが大きくなるという周で、小枝エンジニアとの息もピッタリにピットに飛び込みました。ピット作業も無難にこなしトラックに戻ると、そこからは坪井選手の真骨頂!狙った獲物は必ず仕留めるという“ファイター”の一面が出ましたね。果たして、「第1回 瑶子女王杯」は坪井選手とトムスがその栄誉を下賜されました。その賜杯を頂戴するに値する走りだったと思いますし、ここまでの道のりが無駄ではなかったことを証明した結果だったと思います。そして、更に強くなった坪井翔をこれからもっと見れるのではないかなと思うので、いちファンとしてはすごく楽しみですね!(^^)

 

 

 

そしてこのレースではもう一人、“主役級”の走りをした選手がいました。福住仁嶺選手です。チームがトップフォーミュラに参戦後、初のポールポジションを獲得し、決勝もスタートからトップを走っていました。ピットストップまでは…

KCMGのチームでは小林可夢偉選手がトップを狙えるレースに限ってタイヤ交換時にロスがあるという、本当に目を覆いたくなるような光景が何度も訪れていたのですが、今回の仁嶺選手のピット作業の際も痛恨のロスがありました。こういったことが重なると我々外野ですら、“言葉がない”という表現になってしまいます。。。

しかし、その後のレースは仁嶺選手が果敢に追い上げ4位まで挽回しました。タイヤ交換後のペースを見ても、もしロスがなければ坪井選手と優勝争いをしていたことは誰もが分かっていることです。ドライビングの話をすると技術的には、富士のGR SUPRAコーナーでのマシンコントロールは“芸術的”と言えるほどの走りで駆け抜けていきます。スピードセンスと繊細な操作が仁嶺選手の特色だと、私は思っていますが、マシンを煮詰めていく際にもこの仁嶺選手のテクニックは有益なのではないかなと想像します。

今回のレースでは残念な結果でしたが、ここでの収穫はしっかりあったと思います。「我々は勝てる」、チームの全員がそう思えるレースができたのではないかなと。今後のKCMG、仁嶺選手の活躍に目が離せません!

 

 

 

そして2位になった大湯都史樹選手も素晴らしいレースでしたね。移籍後初表彰台ですが、予選3位から戦っての2位ということも良かったのではないかなと思いますが、昨年までの“危うさ”の漂う速さから一皮向けた安定した速さと感じる“成長”を見せてくれたように感じます。本人はどう感じているか分かりませんが、大湯選手本来の速さが結果に結びつくようになると、他陣営は「嫌なライバルが目を覚ましたな~」と思っていることと想像します。今回の移籍は大湯選手にとって「吉」となっているのではないかなと思いますし、自身のレース人生のいい“転換期”になっているのではないかと思います。

 

 

あと表彰台の一角をしっかりと獲得したのが、流石の野尻智紀選手。もう何回目でしょうか、「流石」と枕詞をつけるのは…(笑) 予選7位からの攻めの戦略で誰よりも早いピットインからの3位は、これまでの野尻選手のレースパターンにはあまりないような展開だったので、また一つステージを上げたのかなと思うようなレースでした。予選での強さは疑いのないところだと思いますので、今回のように決勝でも順位を上げていくパターンを身に着けたとしたら、これもライバルにとっては脅威になりうることでしょう。まだまだ成長するチャンピオンというのも、他の選手たちを刺激することと思います。

 

 

まだまだ他にも上げなければいけない選手が多い…、これは現在のSUPER FORMULAでは仕方のないことですよね。中盤でもいいバトルがたくさんありました。6位に入った国本雄資選手は予選16位からのジャンプアップは素晴らしいの一言ですし、チームメイトの平良響選手は、実質デビュー戦で9位入賞という大金星!

 

そして常に上位につけている牧野任佑選手もしっかり5位入賞を果たし、シリーズランキングも3位をキープしています。ここでちょっと今年のシーズン開幕前の私のコラムを振り返ってみると、コラム【武士が斬る!】vol.10 2024年シーズンの主役は!??|SUPER FORMULA 公式WEBサイト

今年の軸には牧野・野尻・坪井の3選手を上げていますが、ここまでのシリーズランキングのトップ3をこの3選手が占めています。やはり、このシリーズには「しっかりと準備ができている」ことが戦ううえで必要不可欠なものと言えると思います。フロックでは上位にこれないというのがSUPER FORMULAの厳しさだと。

ただ、レースを終えるごとにライバルたちも力をつけてきていることが見て取れると思います。これがレースを一段と激しく、面白くしている要因ですよね。本当に今のSUPER FORMULAは“REAL Racing”だと感じます。ドライバーにとってもここに身をおくことが、レーサーとしてのプライドであり、挑戦になります。「ここで速い者が一番速い」このシンプルな環境がレーサーにとっては最高の魅力なんです。

 

そんなステージに新たな“刺客”がやってくることが発表されました。元F1ドライバーでWECのTOYOTA GAZOO Racingのドライバーでもあるニック・デ・フリース選手が、インパルから今週の茂木戦に参戦するということです。またまた素晴らしいドライバーの登場ですが、第5戦茂木と第6戦&7戦富士の3レースにデ・フリース選手がドライブし、第8戦&9戦鈴鹿のレースには平良選手がドライブということで、“見たい選手”がシートをシェアして参戦してくれるということもファンにとっては喜ばしいことですよね!

まずはデ・フリース選手のSUPER FORMULA初ドライブに注目となりますが、何よりも今週の茂木の“暑さ”にビックリするのではないかなと想像します。8月の茂木は本当に過酷な暑さですからね… もちろん誰にとってもこの暑さは酷だと思います。今週の天気はいまのところ微妙な感じですが、関係者の皆さんにとっても観客の皆さんにとっても、少しでも過ごしやすい天候を期待したいと思います。お天道様、どうかよろしくお願いしますm(__)m

 

ではでは、今回はこの辺で!

 

written by 土屋 武士
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。

 

土屋武士オフィシャルアドバイザー

土屋武士 オフィシャルアドバイザー

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