2014 SUPER FORMULA
Round3 Fuji Speedway
- Fuji Speedway
-
公式予選 7月12日(土) /
決勝レース 7月13日(日)
富士スピードウェイ : 4.563 km
Race
ラストの超スプリントを制した中嶋一貴が大逆転で今季初優勝!
惜しくも優勝を逃した平川が自己最高の2位。3位は国本。山本は5位に入る
No.37 中嶋一貴
7月13日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で2014年全日本選手権スーパーフォーミュラ第3戦の決勝レースが行われた。終盤の降雨で状況が一変する難しい展開の中、No.37 中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)が今季初優勝。2位には自身最高位となるNo.7 平川亮(ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14)、3位にはNo.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)が入賞した。
レース終盤まではデ・オリベイラが完璧に進める
午後2時、気温22℃、路面温度25℃と、肌寒く感じられるコンディションの中、フォーメーションラップがスタート。1周の隊列走行を終えた後、いよいよ正式スタートが切られる。
ここで抜群の動き出しを見せたのは、2番グリッドのNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)。ポールポジションのNo.8 アンドレア・カルダレッリ(Team KYGNUS SUNOCO SF14)の動き出しも悪くはなかったが、デ・オリベイラにはかわされ、2番手に後退。さらに、3番グリッドのNo.3 ジェームス・ロシター(フジ・コーポレーションKONDO SF14)が、オープニングラップのコカ・コーラコーナーでカルダレッリのインを突き、前に出る。さらに、No.37 中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)がプリウスコーナーでカルダレッリのインを突き、一旦はオーバーテイク。しかし、最終コーナーでカルダレッリがクロスラインを掛け、オーバーテイクボタンを使用しながら、再逆転を狙う。それを守ろうとした一貴だったが、2周目の1コーナーへのブレーキングで軽くコースアウト。この間に、カルダレッリ、No.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM'S SF14)、石浦が一貴をかわすこととなった。
さらにスタート直後には、1コーナーでクラッシュも発生。朝のフリー走行でエンジントラブルに見舞われ、積み替えを行ったために最後尾スタートとなったNo.11 ヴィタントニオ・リウッツィ(HP SF14)が、チームメイトのNo.10 塚越広大(HP SF14)に乗り上げる形で追突、さらにNo.2 中山友貴(TEAM 無限 SF14)も巻き込まれた。この結果、リウッツィはリタイヤ。塚越と中山はピットに戻り、マシンの修復を行って再スタートを切ったが、大きく遅れることとなった。
その後、レース前半、大きくリードを築いて行ったのは、スタートでトップに立ったデ・オリベイラ。2番手以下を毎周少しずつ引き離したデ・オリベイラは、55周のレースが20周を終えたところで、2番手のロシターに対して5秒4あまりのギャップを持っていた。さらに、それを広げるだけの力走を見せた。その後方、2番手のロシターから5番手のNo.38 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING SF14)までは、それぞれ2秒以内のギャップ。ピット作業次第で、ポジションの入れ代わりもあるという状態で緊迫した走りが続いた。
そのトップ集団で、最初にピットロードに滑り込んできたのは石浦。石浦は27周を終えたところでピットに入ると、15.1秒で給油とタイヤ交換を行い、コースへと戻る。これを見て、翌周には石浦の後ろを走っていた一貴がピットイン。石浦よりも前でコースには戻ったが、タイヤがまだ温まっておらず、コカ・コーラコーナーで石浦が再び前に出た。さらに、29周を終えたところで、前半8番手争いをしていたNo.7 平川亮(ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14)とNo.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)、No.20 ナレイン・カーティケヤン(Lenovo TEAM IMPUL SF14)もピットに入る。そして、30周を終えたところで、3番手を走っていたカルダレッリと4番手を走っていたロッテラーが同時ピットイン。ここでカルダレッリはタイヤ交換に少し手間取り、ロッテラーが前に出ることに成功した。さらに、32周を終えたところで、トップに立っていたデ・オリベイラと2番手を走っていたロシターもピットイン。この時点で、デ・オリベイラは6秒あまりのマージンがあり、順当に作業を終えると、トップをキープしたままコースに戻る。同様に、ロシターも2番手のポジションを守った。だが、後半、ペースを上げてきたロッテラーが、次第にロシターとの差を詰め始める。ピットアウト直後、3秒半あまりあった2人の差だが、ロッテラーはそれをコンマ数秒ずつ削り取って行った。
No.7 平川 亮
突然の強い雨によりラスト2周の超スプリントに
そこに再び雨が降り始める。チェッカーまで残り10周あまりとなった45周目に降り始めたこの雨で、路面は非常に滑りやすいコンディションに。その中で、4番手につけていたカルダレッリが300R先でコースアウトし、マシンを止めてしまう。一方、こうした滑りやすいコンディションを大得意としているロッテラーは、46周目のヘアピンで前を行くロシターを捉え、2番手に浮上した。さらに、ロッテラーの爆走は止まらず、トップを走るデ・オリベイラとの差も見る見る縮めて行く。42周を終えたところで、デ・オリベイラとロッテラーの差は10秒近かったが、ロッテラーはわずか6周で、その差を2秒あまりとし、トップ争いが激しくなることを予感させた。ところが、その矢先、ヘアピンでデ・オリベイラがスピンし、ストップ。これは、目の前でNo.62 嵯峨宏紀(DENSO Le Beausset SF14)がクラッシュ、パーツがコース上に飛散した。これを避けるために、デ・オリベイラはライン変更を余儀なくされるが、その時に雨に足元をすくわれてスピン。エンジンが止まってしまい、コース上にストップしてしまう。
これをきっかけに、コース上にはセーフティーカーが導入されるが、それを見て真っ先にピットインしたのが一貴。雨脚が強まる方に掛け、レインタイヤへの交換を行った。その翌周には、平川、国本もレインタイヤに交換するためピットインしている。その間にも、雨は次第に強まる方向。結局上位陣ではトップに立っていたロッテラーとロシター、さらにカーティケヤンだけがレインへの交換を行わず、コース上にステイする道を選んだ。
No.39 国本雄資
そして、マシン回収が終わり、セーフティーカーがピットに戻ったのは、52周終了時。この時には、すでにレインタイヤに適したコンディションとなっており、リスタート直後のコカ・コーラコーナーで一貴がカーティケヤンをかわして3位に浮上。ロシターも仕留める。
だが、ヘアピンでロッテラーにしかけた一貴は、オーバーラン。その間に、トップを奪ったのは、平川だった。一貴はそれを取り返そうとダンロップコーナー手前までに平川の背後に付けるが、そのブレーキングでオーバーラン。平川がトップを守った。しかし、平川も滑りやすいコンディションに翻弄され、54周目の1コーナーのブレーキングでオーバーラン。ここで一貴がトップに出ると、その後は危なげない走り。残り約2周をきっちりと走り切ると、今季初優勝を果たした。これに続いたのが、初表彰台獲得となる平川。さらに、国本が続いた。
以下、セーフティーカー導入前に、レインタイヤに交換していた石浦、No.1 山本尚貴(TEAM 無限 SF14)と続く。山本は苦戦のHondaエンジン勢の中、2戦連続の5位となった。ロッテラーは6位。さらに、スリックタイヤ対決の中で、ロシターをかわしたカーティケヤンが7位、ロシターが8位となった。
この結果により、20ポイントでランキングトップに立ったのは、一貴。これに16.5ポイントのロッテラー、今回欠場となった15.5ポイントのロイック・デュバル、13.5ポイントの平川、12ポイントのデ・オリベイラと続き、ここからのシリーズ戦は熾烈を極めることとなりそうだ。
No.1 山本尚貴
記者会見
舘信秀 優勝チーム監督 / 2位 No.7 平川 亮 / 優勝 No.37 中嶋一貴 / 3位 No.39 国本雄資
- たまにはこんなこともあってもいいのかな
優勝
こんなこともたまにはあるのかな(笑)というようなレースでした。ドライのときはあまりペースが良くなくて、レース前半もちょっと行き過ぎたりすることもありました。ウェットになってからも行き過ぎてしまったり、みっともない内容だったとは思いますが、結果として勝てたのは非常に大きい。今年はここまであまりいいことがなかったので、たまにはこんなこともあってもいいのかなと思います。
中嶋一貴(No.37 PETRONAS TOM'S SF14)
レインタイヤに交換するタイミングとして、石浦(宏明)選手がまずピットインした時点で彼のタイムを見ておいて、ということはエンジニアに伝えました。そのあと何周あったかわかりませんが、ただ走っている感覚としては2〜3周は明らかにドライのほうが速かったので、あの時点では入らなくて良かった。ちょうどセーフティカーが入る周には雨脚が結構強くなってきたので入ろうかと迷いつつも入れなかったんです。結局セーフティカーがコースに出たときも正直天気次第なんで…。そのあと雨が降るかどうかによって選択も変わってくるので悩みましたが、チームとしてすごくいい判断をしてくれました。それにアンドレ(ロッテラー)がステイアウトするということだったので、僕がピットに入れたということも言えますね。ただあの時点で雨が降ってきていたので、勝負をかけるなら(ピットに)入るしかないという感じでもあったし。結果としてピットインし、セーフティカーの隊列に並んだら前のクルマが全員ドライタイヤだったので、リスタートしたら行ける(トップに立てる)なと思いました。でも気持ちが空回りして、ちょっとはみ出したり、と色々ありました。
今回は予選を含め、ペース的にはあまりチームとして良くなかったんですが、そこら辺は今後に向けてちょっと見直さなければいけないのでしょうね。シーズン後半に向けてはまだまだ課題があって、パフォーマンス的にはまだ改善しなきゃいけない部分はありますね。
後半戦はもてぎやらSUGOやら、オートポリスを含め、このクルマで走ったことのないサーキットへ行くので、僕らにとってはチャンスじゃないかと期待しています。見る限り走れば走る限りなんか追い付かれて追い抜かれていく感じが富士ではありましたが、ドライバーとしては気分も新たに後半戦を戦っていけるので、コツコツとポイントを積み重ね、何か起こすのは最終戦まで残しておきたいなと思いますね(笑)。- うれしさよりも悔しさのほうがまだ大きい
2位
悔しいです! (自身初表彰台に関しては)うれしいのはうれしいんですが、勝てるレースでもあったので、うれしさよりも悔しさのほうがまだ大きいです。次のレースではその悔しさをバネにしてがんばります。
平川 亮(No.7 ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14)
最初はちょっと作戦的にも前半は辛い状況で走っていたんですが、タイヤを変えてからはペースが良くなって『(中嶋)一貴さんを抜いていこう!』と思ってずっと走っていました。そしたら雨が降ってきたので、チャンスだなと思ったんです。レインタイヤに変えるかどうかずーっと悩んでいたんですが、変えて良かったですね。ウェットタイヤに交換したのは、チームの判断でした。それがピッタリだったので、チームに感謝しています。リスタート後、100Rからヘアピンにかけての勢いが良くてトップに立てたんですけど、1コーナーでブレーキを踏んだ瞬間にタイヤがロックしてしまい『あぁ終わった〜って』。オーバーランして抜かれちゃいました。勝てたレースだったので悔しいんですが、チャレンジした結果なので、ここから学んで次に活かしたいたいですね。いつもは(チームメイトの)ロイック(デュバル)選手にやられて悔しい思いをしているので、この流れをキープしてロイック選手をやっつける勢いで後半戦もがなばります。- なんとか走り切ることができた。タフなレースだった
3位
非常にタフなレースでした。スタートから1コーナーでインから飛び込んできたクルマを抜くのにへんなところを走ったので、1周目はポジションを下げてしまったんです。そこから追い上げていったんですが、タイヤがタレてくるとペースがあんまり良くなくて『ドライのままならこれはチャンスないな。ポイントが獲れたらラッキーだな』というくらいのレースでした。
国本雄資(No.39 P.MU/CERUMO・INGING SF14)
ところが最後に雨が降ってきて、セーフティカーが入ったときにチームがいい判断をしてくれて早めにウェットタイヤに変えてくれました。かなり危険な状態だったんですが、なんとか走り切ることができました。さらに3位に入ることができて良かったと思います。 昨日はトラブルが出ましたが、今日になってトラブルが全部解消されて、問題なく走れました。でも山本(尚貴)選手のセクター3が速くて、1コーナーと高速コーナーでは差が詰まるもののなかなか抜かすチャンスがありませんでした。オーバーテイクシステムを何回か連打して使ったら意外と追い付いて(笑)、抜けないだろうなという感じだったのがそのうちにどんどん追い付いて、さらにブレーキは僕のほうが良かったので、抜けましたね。- 2台が同じ作戦でいくのは難しく、ちょっと複雑な気持ち
優勝チーム監督
最後雨が降ってきてから中嶋(一貴)君のタイヤを変えたんですが、アンドレ(ロッテラー)は悩んだ揚げ句、ステイ(コース上に留まる)することを選びました。一方で、2台が同じ作戦でいくのはなかなか難しくて…。そういう意味では、一貴にはおめでとうを言いたいんですが、アンドレにはごめんなさいという、ちょっと複雑な気持ちですね。
舘 信秀 監督(PETRONAS TEAM TOM'S)