2012 Formula NIPPON
No.2 中嶋一貴
11月4日(日)、鈴鹿サーキット(三重県)で2012年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第7戦(最終戦)の決勝日を迎えた。最終戦は2レースで、午前にレース1、午後にレース2が行われた。レース1ではNo.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が優勝。レース2では、No.2 中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM'S)が優勝。この結果、中嶋が参戦2年目にして、初のドライバーズ・チャンピオンに輝いた。
温かな秋晴れの1日となった日曜日。鈴鹿サーキットで行われた最終戦の決勝レースは、2レース制で行われた。
これもあって、今大会は通常設定されている午前のフリー走行はなく、第1レースからスケジュールが始まった。レース1はピットインの義務はなく、20周を一気に走るスプリントスタイルだ。
午前10時20分、気温17℃、路面温度23℃というコンディションの中、フォーメーションラップがスタート。ここでエンジンストールのため、コース上にストップしてしまったのは、9番グリッドのNo.15 佐藤琢磨(TEAM 無限)。その結果、琢磨は最後尾からのスタートとなってしまう。その後、1周の隊列走行を終えて、全車正規グリッドに着くと、シグナルオールレッドからブラックアウト。注目のスタートが切られた。
ここでいい動き出しを見せたのは、2番グリッドからスタートのNo.40 伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。ポールポジションのNo.20 松田次生(TEAM IMPUL)は若干加速が遅れ、伊沢に先行を許してしまった。この2台に続いたのは、3番グリッドからスタートしたNo.41 塚越広大(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。塚越も素晴らしい動き出しを見せたが、松田にはわずかに届かず。4番グリッドからスタートしたNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(TEAM IMPUL)も1コーナーの入り口から2コーナーにかけて塚越のテールに迫ったが、オーバーテイクには至らず、ポジションキープとなった。No.1 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)も同様。ロケットスタートに定評があるロッテラーだが、今回はポジションを上げることができず、5番手キープとなった。
No.20 松田次生 トップに立った伊沢は猛プッシュ。松田との差を次第に広げて行く。伊沢は中盤までに4秒以上のマージンを稼ぐと、そのまま逃げ切り。前戦SUGOに続いて、鈴鹿でも優勝を果たした。2位には今季初表彰台獲得となった松田。以下、塚越、デ・オリベイラ、ロッテラーと、タイトル争いに絡んでいるドライバーたちが上位で続く。
一方、16番手グリッドからのスタートとなったNo.2 中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM'S)は、スタートでポジションアップ。ここから前を追いたいところだったが、なかなかペースを上げることができない。結局、12位でチェッカーを受けた。その結果、第1レースはノーポイントに終わっている。また、この第1レースを終えて、ランキングトップに立ったのは塚越。同ポイントで伊沢が続く。以下、トップと2ポイント差で一貴、5ポイント差でロッテラー、5.5ポイント差でオリベイラという並びになった。
スタートコールを行う末松則子鈴鹿市長
その後、約3時間半のインターバルを経て午後2時30分、レース2がスタートする。この直前まで、鈴鹿は陽射しに包まれていたが、次第に曇りがちとなり、気温は17℃、一時24℃まで上昇した路面温度は20℃というコンディションとなった。このレース2は28周。タイヤ4輪交換義務付けがあり、最低でも1回のピットインをする必要がある。
1周のフォーメーションラップを終えて、全車正規グリッドに着くと、シグナルオールレッドからブラックアウト。ここでトップを奪ったのは、ポールポジションのデ・オリベイラ。2番グリッドの塚越は、動き出しが良く、1コーナー手前ではデ・オリベイラとサイド・バイ・サイドとなったが、デ・オリベイラがノーズを塚越の前にねじ込み、ポジションを守っている。これに続いたのは、松田、No.32 小暮卓史(NAKAJIMA RACING)、No.8 ロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO)、No.16 山本尚貴(TEAM 無限)、一貴。ロッテラーと伊沢はスタートで大きくポジションを落とし、それぞれ9番手、10番手で1コーナーに入って行った。
多くのドライバーが1周目終了時点でピット作業を行った その後、レースはオープニングラップから大きな動きを見せる。3番手を走っていた松田がドライブシャフトに問題を抱え、130R先で突然失速。その脇をかわして行ったドライバーたちの中で、一貴、伊沢、No.31 中嶋大祐(NAKAJIMA RACING)、No.7 大嶋和也(Team LeMans)、No.62 嵯峨宏紀(TOCHIGI Le Beausset Motorsport)、No.39 国本雄資(Projectμ/cerumo・INGING)がタイヤ交換のためにピットに入った。また松田もここでピットインするが、そのままレースを終えている。
1周目のタイヤ交換組では、伊沢のピット作業が非常に早く、ここで一貴をかわすかと思われたが、一貴は伊沢の鼻先をかすめる形でピットアウト。ここでのポジション入れ代わりはなかった。この翌周には、一貴のチームメイト、ロッテラーも2周目にピットイン。しかし、コースに戻った時は、一貴と伊沢に先行を許している。また4周目に入ると、5番手を走行していた山本が、ミッショントラブルからスローダウン。ここでレースを終えた。
オープニングラップを終えてタイヤ交換を行った一貴は、序盤から圧巻の走りを展開。1分43秒台のタイムを連発して、まだピットに入っていないデ・オリベイラや塚越との差を削り取って行くが、この頃、トップのデ・オリベイラは自らのクルマにバイブレーションを感じながら走行していた。そのオリベイラは8周を終えたところでピットイン。タイヤ交換を行って一貴の前でコースに戻った。しかし、その翌周、再度デ・オリベイラはピットイン。チームは再びタイヤ交換だけを行ってコースに戻したが、マシンの異変は収まらない。13周を終えて、デ・オリベイラが3度目のピットに入った時には、リヤウィングのフラップが飛んでおり、結局リタイヤを余儀なくされた。その結果、デ・オリベイラはタイトル獲得の可能性も失った。
2位を争うNo.41 塚越広大とNo.8 ロイック・デュバル
一方、その後も上位陣の動きは続き、11周を終えたところでデュバルがピットイン。チームは素早い作業を見せ、デュバルは塚越と伊沢の間でコースに戻る。さらに、タイヤ交換した後のタイムが他を大きく上回っており、塚越との差もジワジワと詰め始めた。塚越は、1分44秒台のラップタイムが続いており、ペースが上がらない。そして、18周目のシケイン。デュバルはワンチャンスをものにして、塚越の前に出ることに成功する。塚越も1コーナーまでにオーバーテイクボタンを使用して、再逆転を狙ったが、わずかに及ばず。ポジションを3番手に落とすことになった。
さて、デュバルがピット作業を行った段階で、トップに立っていたのは、小暮。小暮は、一貴以上のハイペースで飛ばしており、タイムギャップは34秒以上。タイヤ交換だけなら、30秒ほどのギャップがあれば一貴の前に出ることができるということで、場内も小暮の今季初優勝に期待した。しかし、15周を終えて小暮がピットに入ると、そこには給油ホースも用意されていた。唯一、小暮はタイヤ交換と給油を行う作戦だったのだ。そのため、作業には14秒6という時間が掛かり、小暮は一貴のみならず塚越、デュバルの先行を許すことになる。
No.2 中嶋一貴 そして、21周を終えたところで、最後までピットを延ばしたNo.38 平手晃平(Projectμ/cerumo・INGING)がピットインを行うと、いよいよ一貴はトップとなる。その後も、最後まで1分43秒台から44秒台前半のタイムをマークして最後まで走り切った一貴は、後方から迫ってくるデュバルを振り切って、開幕戦以来となる今季2勝目をマーク。デュバルが2位、塚越が3位となった。伊沢は6位。最終ラップ手前の130Rで大嶋のオーバーテイクを許したロッテラーは8位という結果に終わった。
この結果、第1レースではノーポイントだった一貴が、第2レースで一挙に8ポイントを獲得して、塚越、伊沢を逆転。フル参戦2年目にして、フォーミュラ・ニッポンのチャンピオンタイトルを獲得した。一方、塚越、伊沢の両名が、2レースともにポイントを獲得したことで、チームタイトルはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが獲得。チームがタイトルを獲得するのは、意外にも設立以来の初(ドライバーズは2004年に獲得)。初の栄冠に表彰台では、村岡潔代表の目からは涙が溢れていた。
2位 No.8 ロイック・デュバル/舘信秀優勝チーム監督/優勝 No.2 中嶋一貴/3位 No.41 塚越広大
第7戦 決勝レースダイジェスト [VIDEO LIBRARY]