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コラム【THE 二刀流ドライバー、イゴール】vol.2 開幕戦で見えた「チャンピオン争い確実!」な選手は…

2023.04.20

どうも、SUPER FORMULA eMotorsportsアンバサダーのイゴール・フラガです!

富士の第1戦と第2戦が終わりましたね!今回はもう予選から何がおこるかわからなくて、レース展開も2戦とも大きく変動した所もあって、チェッカーフラッグが振られるまで僕はこの戦いに釘付けにされました。この開幕戦では印象に残る場面がいくつもあり、中の人としての目線を通して富士のレースウィークで何が起こったのか、どの選手・チームが活躍したのかを皆さんにお伝えできればと思います。鈴鹿の第3戦も今週末に迫っているので、最後には第3戦にどんな楽しみがあるかご紹介しますね。

開幕戦のレースウィーク、金曜日に僕が富士に着いた時、雨と風がもの凄く強くて、唯一あった90分のフリー走行が中止になってしまいました。天候がこのような状況になってしまったので、第1戦の予選のフォーマットが変更されました。普段の予選と違い、グループ分けをせずに1回の45分間走行でグリッド順が決められました。フリー走行がなくなり本当に各チーム「ぶっつけ本番」となって、ファンとしてはとても面白い展開にはなったと思うんですが、チームとしては不安とドキドキでいっぱいでしたでしょうね。レーシングカーはメカニカルの部分でも限界を常に追求しているので、ちょっとした事でトラブル発生したり、敏感です。ので、まず予選前にそのチェックができない事がすでに不安になりますよね。そして車のセットアップが前回行われたテストの鈴鹿から富士に合わせる必要もあったし、この新しいSF23では鈴鹿以外どのサーキットに対しても初走行になるのでセットアップのベースがほぼ無いんです。

こういう状況の中でもトップをとってきたのは野尻選手とTEAM MUGENのコンビでした。しかもダブルポール。TEAM MUGENの2台の最終セクターをみていると、コーナーの進入で安定感が凄く有って、ドライバーがほぼハンドルを修正せず自信を持って飛び込んでいける印象がありました。リアム選手も富士は初めてだったにも関わらず、3番手と4番手のタイムをマークしていました。予選で2位に食い込んできたのは宮田選手。トムスの車は無限と比べて最終セクターでは進入がオーバーステア(リアが滑る)傾向にあるような印象がありました。

SFgoアプリでオンボードなどテレメトリーで見ていたんですが、ブレーキを残しながら曲がっていくコーナーでは特にハンドルをそっときる必要が有って、なんとかその辺り上手い事コントロールしてアタックラップをまとめてきた感じでした。そしてもう一人富士の予選で活躍したのが大湯選手。予選のトップ5の中では一番オーバーステアが出ていて、走行シーンをみていても迫力満載でした。Bコーナーみたいな低速コーナーではフロントの入りが抜群に良かったです。

第1戦では野尻選手の余裕というか、落ち着きが印象に残りました。スタートも完璧に決めて、ピットのタイミングでリアム選手に抜かれてポジションを落としてしまったんですが、自分ができる範囲の事を成し遂げて『今回は無理なら次戦でしっかり取りにいこう』みたいな姿勢で2位で走り切った感じがしました。第2戦では続けてポールポジションからのスタートで、大湯選手にリードを奪われましたが、そこも落ち着いた対応で1位を取り戻していました。自分が出来る事をミスなくこなす、見ているだけでその強さが伝わってきました。

リアム選手は予選はトップまで少し及ばなかったが、デビュー戦で富士も初めてという状況からすると両方のレースを2列目からスタート出来たのはかなり凄いです。スタートはちょっとまだ苦戦しているように見えたが、レース運びや特にタイヤのケアに対してとんでもないパフォーマンスを初戦から見せてデビューウィンを飾りました。第2戦ではまたスタートを上手く決められず、6位にポジションダウン。ただレース終わりには2位争いを繰り広げていたぐらいです。最終的にはペナルティで5位フィニッシュとなったが、予選とスタートが決まるようになれば確実にチャンピオン争いに入ってくる選手です。

もう一人レースペースがとても安定していたのが平川選手でした。第1戦では7位からのスタートでオーバーカットを見事に成功させて3位入賞。第2戦ではドライブスルーペナルティを受けてしまい、セーフティカーがでた時にはピットインせず賭けに出ました。戦略は上手く行かなかったが、最終ラップ手前までタイヤ無交換で引っ張ったのにタイムが全然落ちていませんでした。予選のパフォーマンスがさらに上がれば、かなり手強いパッケージになるはずです。

この週末でとにかく迫力があって、派手にレースをしてくれたのが大湯選手でした。予選ではオーバーステアと戦って車をねじ伏せてタイムをマークしていました。レースは両日ともスタートがパーフェクトに決まってポジションアップ、2レース目ではトップに上がってきました。レースにおいては車のセットアップが決まっていなくて、リアが早い段階で摩耗してしまう印象がありました。バトルの面では一か八かの勝負を仕掛けた所、1コーナーのブレーキングでフロントをロックさせて、タイヤを痛めてしまいました。結果としてはレース全体のペースとしては苦戦しているように見えますが、刺激的な争いを見せてくれました。ロングランで車も決まってくれば、更に面白いレースを見せてくれると思います。

宮田選手も予選で凄いスピードを発揮しました。ただレースペースでは若干まだ足りない部分があり、第1戦目から2戦目に向けて決勝でセットアップの変更を試みたようです。第2戦では序盤が少し伸びなかったが、後半でバランスが良くなりタイムが安定し始めました。宮田選手もインタビューでそのセットアップでヒントを見つけたと言っていたので、鈴鹿の決勝がどうなるのか楽しみです。

第2戦で3位入賞した山下選手は、あの状況からするとほぼ優勝みたいな感じだったとは僕は思います。シーズン明けで他のカテゴリーでのクラッシュで怪我をしてしまい、ようやく回復してまた車に乗れるようになった中で、SF23を初めてドライブして3年ぶりの表彰台を獲得。引き続き活躍して欲しいです

 

さて、今週末は第3戦の鈴鹿ラウンドが待ち受けています。鈴鹿ではコース幅が富士より狭くて、ストレートも短いのでオーバーテイクがかなり困難なサーキットです。富士ではこの新しいエアロパッケージの影響で近戦がかなり増えていたので、鈴鹿でもそんなバトルが見られるのが期待できますね。コースが狭いと言う事は、コーナー並んで入った場合は二台ともあたりそうであたらない熱い戦いがみられるかもしれないです。天候にもよりますが、今回からはもう少しドライバーとチームの戦闘力の図が少しずつ明らかになってくると思います。富士からようやくもっと正確なデータもとれたと思うので、誰がパフォーマンスアップしてくるのかも見所です。
ドライバーチームの情報はSUPER FORMULAオフィシャルHPでそれぞれチェックして、今週末のSUPER FORMULA第3戦も一緒に楽しみましょう!

 

 

Written by イゴール・フラガ
日本生まれの日系ブラジル人レーシングドライバー。幼い頃からカートのタイトルを獲得し、その後多数の国でF3に参戦し好成績を残す。同時に「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」のワールドチャンピオンを獲得し、e-Motorsports界でも有名なリアル&バーチャルの『二刀流』ドライバーとして活躍している。

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