鈴鹿での第2戦、もてぎでの第3戦と、連続で雨に見舞われた今季のフォーミュラ・ニッポン。しかし、結果的には、その雨が白熱したバトルを演出し、非常に見応えのあるレースが展開された。前戦のもてぎでは小暮卓史(No.32 NAKAJIMA RACING)が1年半ぶりの優勝を遂げ、タイトル争いに加わった。そして来たる6月27、28日のフォーミュラ・ニッポン第4戦、その舞台は再び富士スピードウェイ(静岡県)となる。
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No.2 ブノワ・トレルイエ
富士スピードウェイは、今季の開幕戦が行われている。この時はドライコンディションでレースが行なわれたが、今回はどんなコンディションとなるのか。すでに梅雨入りしていることもあり、ウェットの可能性も十分。そうなるとまた激しくポジションが入れ代わる目まぐるしい展開になることも考えられる。
一方、ドライとなった場合に注目されるのは、誰がどのタイミングでオーバーテイク・システム(OTS)を使うかという点。このシステムは、他のマシンの後ろについた際、エンジンが通常のリミッターに当たるサーキットで最も有効と言われ、富士はまさにその条件に当てはまる。そして本大会より、決勝日午前の練習走行中に2回のOTSのテスト使用ができるようになった。これで使いどころのシミュレーションやマシン・セッティングへの反映も可能となり、よりOTSが有効に使われだろう。加えて、第3戦より前戦に使用したタイヤ1セット(タイヤ外側に白いマーキングあり)を土曜、日曜の練習走行時に使用できるようになり、セッティングの精度も高まり、予選・決勝の接戦に拍車が掛かりそうだ。忘れてならないのは富士のメインストレートでの最高速だ。F1と比べても遜色がない時速320㎞近くでの迫力あるパッシング、これは一見の価値ありだ。
No.31 ロイック・デュバル
そんな風に、まずは天候の予測のつかない今回のレースだが、注目される対決はやはり昨年のチーム・チャンピオン・LAWSON TEAM IMPULと、今季2勝と好調なNAKAJIMA RACINGだ。現在のところ、ランキングトップは、LAWSON TEAM IMPULのブノワ・トレルイエ(No.2)で、すでに27ポイントを獲得している。これに続いているNAKAJIMA RACINGのロイック・デュバル(No.31)が15ポイント、同じくNAKAJIMA RACINGの小暮が12ポイント。今の段階で10ポイント以上、つまり優勝1回分以上の差がついているのは、チャンピオンシップを考えれば非常に厳しい状況でもある。だが、第2戦以降のNAKAJIMA RACINGのマシンの仕上がり具合を考えれば、中盤以降、他を圧倒する可能性も拭い切れない。とは言うものの、マシンのコンディションで負けている場合、LAWSON TEAM IMPULも決して黙って引き下がるようなチームではない。第3戦もてぎ以降の1ヶ月のインターバルで、彼らがどんなマシンセットアップを考えて富士に持ち込むのか。その進化の度合いはどうなのか。
No.1 松田次生
そう考えると土曜日最初の練習走行から見逃せないものとなりそうだ。そこで、トレルイエがNAKAJIMA RACING勢との差を広げるのか、あるいはNAKAJIMA RACING勢がトレルイエに詰め寄るのか。その点が今回のレース最大の見所となるだろう。もちろんトレルイエのチームメイト、昨年、一昨年のチャンピオン・松田次生(No.1)の復活も待たれる。チームタイトルやトレルイエの援護、というより彼自身もここで勝てば、まだタイトル争いもできる。小暮に続き、松田が復活すれば今季はさらにおもしろくなるだろう。
No.20 平手晃平
そして、富士は若手が活躍することでも知られているサーキットだ。先の開幕戦でも平手晃平(No.20 ahead TEAM IMPUL)がポールポジション、伊沢拓也(No.41 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が決勝2位と、2年目の若手2人が勢いを見せたが、今回はどうなのか。前戦もてぎで終盤までトップを争った塚越広大(No.10 HFDP RACING)、同じくもてぎで初表彰台を獲得した石浦宏明(No.8 Team LeMans)なども、今回は予選から上位争いに加わってきそうだ。彼らを中心とした1年目、2年目の若手にも注目して見ていただきたい。
No.10 塚越広大